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平成一一年(ワ)第二〇九六五号 著作権侵害確認請求事件
(口頭弁論終結日 平成一一年一一月一九日)
判     決
 原告      A
 被告      日本電信電話株式会社
右代表者代表取締役      B
 右訴訟代理人弁護士升永英俊
 同松添聖史
  主   文
一 本件訴え中「東京地方検察庁平成九年検第一九九八七号著作権違反について、
平成九年一一月二五日に不起訴処分となった本件に新たに違反が行われたので確認
する。」との請求に係る部分を却下する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告の負担とする。
  事実及び理由
第一 請求
 一 東京地方検察庁平成九年検第一九九八七号著作権違反について、平成九年一
一月二五日に不起訴処分となった本件に新たに違反が行われたので確認する(以
下、右不起訴処分を「本件不起訴処分」といい、この請求を「本件著作権侵害行為
確認請求」という。)。
 二 被告は、原告に対し、金四五四万四八九〇円を支払え。
第二 事案の概要
一 争いのない事実等
1 原告は、「古本情報」という書籍に別紙目録一記載の「古本物語」という漫画
を掲載し、右漫画を、原告が出版を営んでいる「・・・・・ ・・・・・」という
書籍に転載した(甲一の一及び二、乙一。右漫画の下半分のうち、最後の枠を除い
た四枠を「原告漫画」という。)。
2 原告は、平成九年八月二日、被告を著作権法違反の罪名で告訴した(甲八)
が、被告は、同年一一月、不起訴処分となった。
3 被告が平成一一年三月に発行したハローページ東京都渋谷区版の裏表紙の内側
のページは、別紙目録二記載のとおりである(このうち、タウンページと記載され
ている三体のキャラクターがマンホールから出ている絵及び吹き出しの部分を「被
告イラスト」という。)。
 二 本件は、原告が、「被告イラストは、原告漫画に類似しており、原告漫画に
依拠して製作されたものである。」と主張して、「本件不起訴処分となった本件に
新たに違反が行われたので確認する」ことを求めるとともに、損害の賠償を求める
事案である。
第三 争点及びこれに関する当事者の主張
 一 争点
1 被告イラストによる原告の著作権侵害の有無
2 損害の発生及び額
 二 争点に関する当事者の主張
  1 争点1について
   (原告の主張)
   (一)(1) 原告漫画は、本を擬人化したキャラクターによって、起承転結のス
トーリーを表現したものである。原告漫画の、一段目の左の枠は、口を縦長にした
古書が買われてきたという「起」を、一段目の右の枠は、右古書が、他の本に騒が
れ苛められても沈黙している「承」を、二段目の左枠及び中枠は、右古書が泣きな
がら、苛められながらも、卒論を書いている「転」を、別紙目録一の最後の枠は、
卒論が出来上がった「結」を表している。
 原告漫画のキャラクターは、腕先の手を○形にした点、眉毛、目、口、腕等で表
情を表現している点に特徴がある。
(2) 被告イラストは、本を擬人化したキャラクターによって、起承転のストーリー
を表現したものである。
被告イラストにおいては、三体のキャラクターが道路のマンホールから飛び出よう
として、顔や手等を出し、左端のキャラクターが口を開け「僕らに知らない店はな
い。」と左手を上げている。また、中央のキャラクターは、口を閉じ、両手を道路
に置き、タウンページを誇示している。右端のキャラクターは、左手を道路に置き
右手を上げ眉毛をつけ、通行人に手を振っている。
このマンホールから出た所が「起」であり、「僕らに知らない店はない。」が
「承」であり、「転」は、タウンページの利用者への販売促進である。
 被告イラストのキャラクターには、腕先の手が○形のものがある上、眉毛、目、
口、腕等で表情を表現している。
(3) したがって、被告イラストは、原告漫画に類似する。
(二) 被告イラストの作者であるジェイ・オット・セイボルドが活動を始めたのが
「古本情報」が流通していた時期に近いこと、同人が昭和六一年から昭和六二年に
かけて日本に来たものと推認されること、昭和五九年三月二〇日から二六日まで、
東京都世田谷区三軒茶屋において、「三軒茶屋古本まつり」が開催され、「古本情
報」が販売されていたところ、同人のマネージメント及び著作権管理をしている岩
吉隆久は、当時三軒茶屋に自宅を有していたことからすると、ジェイ・オット・セ
イボルドが古本情報の原告漫画を見たことは十分に考えられるのであり、被告イラ
ストは、原告漫画に依拠して製作されたものというべきである。
   (被告の主張)
原告の右主張は否認する。
   (一) 原告漫画のキャラクターと被告イラストのキャラクターには、以下の
とおり、類似点は全く存在しない。
(1) 被告イラストのキャラクターは、平面的な顔にあえて斜めに目を配置
することで、独自の立体感、動感を表しているところ、原告漫画のキャラクター
は、単純に目を真横に並べただけである。
(2) 被告イラストのキャラクターには、大きく鼻が描かれているのに対
し、原告漫画のキャラクターには鼻が存在しない。
    (3) 被告イラストのキャラクターは、本の中央から腕が生えているのに対
し、原告漫画のキャラクターは、本の表紙、すなわち顔の面から、あたかも髭の様
に手が生えている。また、被告イラストのキャラクターの手は黒く塗りつぶされた
丸形で、通常の人間の腕と手のバランスに比べて非常に大きくデフォルメされてい
るが、原告漫画のキャラクターの手は、何の色もなく、その大きさも通常の人間の
腕と手のバランスに近い。
(4) 被告イラストのキャラクターは、足と脚部は一本の線で描かれているのに対
し、原告漫画のキャラクターは、足は手と同様に白い囲みで表現され、足と脚部が
明確に区別されている。
(5) 被告イラストのキャラクターの額にあたる部分にはタウンページという文字が
描かれているが、原告漫画のキャラクターには何らの文字もない。
(二) 被告イラストには、起承転結のストーリーは認められない。
   (三) 被告イラストの創作者であるジェイ・オット・シーボルドは、原告漫
画に依拠して被告イラストを製作したものではない。
  2 争点2について
   (原告の主張)
東京都渋谷区の住民基本台帳世帯数は九万九三〇七世帯であり、事業者数は三万〇
五四七である。
この世帯数及び事業者数の合計をハローページ東京都渋谷区版の発行部数と仮定
し、この発行部数にハローページ東京都渋谷区版の定価三五〇円の一〇〇分の一〇
である三五円を乗じた額である四五四万四八九〇円が、通常受けるべき著作権使用
料相当額であり、これが原告の損害額となる。
   (被告の主張)
   損害の発生及び額については争う。
第四 当裁判所の判断
一 本件訴え中本件著作権侵害行為確認請求に係る部分について
  本件著作権侵害行為確認請求は、確認を求める対象が特定されていないので、
原告に対して、特定するよう命じたところ、原告は特定しないので、本件訴え中本
件著作権侵害行為確認請求に係る部分は、不適法であって、却下を免れない。
 二 争点1について
1 原告漫画のキャラクターと被告イラストのキャラクターには、次のような違い
があるものと認められるから、被告イラストのキャラクターが、原告漫画のキャラ
クターを複製又は翻案したものであるとは認められない。なお、原告漫画のキャラ
クターと被告イラストのキャラクターは、本を擬人化したという点は共通している
が、それ自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではない。
 (一) 原告漫画のキャラクターの本の形状は、背表紙の付近が丸みを帯び、
やや本が開いた状態のものもあるが、被告イラストのキャラクターの本は、全体的
に角張っており、表表紙の上辺よりも裏表紙の上辺の方が長い独特の形状となって
いる。
   (二) 被告イラストのキャラクターは、目が斜めに配置されているが、原告
漫画のキャラクターは、目は真横に並べられている。
 (三) 被告イラストのキャラクターには、大きく鼻が描かれているのに対
し、原告漫画のキャラクターには鼻が存在しない。
   (四) 被告イラストのキャラクターは、本の中央から腕が生えているのに対
し、原告漫画のキャラクターは、本の表紙、すなわち顔の面から、腕が生えてい
る。また、被告イラストのキャラクターの腕及び手は立体的で、手は黒く塗りつぶ
された丸形である(別紙目録二記載の被告イラストに手が白い丸形のものが存する
とは認められない。)が、原告漫画のキャラクターの腕及び手は立体的でなく、手
も白い丸形である。
   (五) 被告イラストのキャラクターの額にあたる部分にはタウンページとい
う文字が描かれているが、原告漫画のキャラクターには何らの文字もない。
2 原告漫画には、ストーリーがあるものと認められ、それについて、原告が主張
するように「起承転結」が存するとしても、被告イラストにおいては、原告が主張
するような起承転のストーリーがあるとは認められないし、また、仮に、被告イラ
ストに何らかのストーリーがあるとしても、そのストーリーは、原告漫画とは異な
っている。
3 原告漫画も、被告イラストも、キャラクターの目、口、腕等で表情を表現して
いるということができるが、そのこと自体はアイデアであって、著作権法で保護さ
れるものではなく、原告漫画と被告イラストとでは、キャラクターが異なること
は、前示のとおりである。
4 以上述べたところを総合すると、被告イラストが原告漫画を複製又は翻案した
ものであるとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告
の損害賠償請求は理由がない。
 三 よって、主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第四七部
       裁判長裁判官  森 義之
裁判官  榎戸道也
          裁判官岡口基一

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