弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人樋渡道一の上告趣意第一点について。
 所論は、原判決が何ら判断を加えていない原判決宣告後に発生した事実に基いて、
原判決の憲法違反を主張するものであつて、原判決に対する適法な上告理由となら
ない。
 しかし、職権を以て、刑訴四一一条五号にいわゆる判決後に「刑の廃止」があつ
たか否かについて調査するに、重要物資輸送証明規則(昭和二二年九月二〇日総理
庁令、外務省令、内務省令、大蔵省令、司法省令、文部省令、厚生省令、農林省令、
商工省令、運輸省令、逓信省令、労働省令第一号―以下旧令と略称する)はその後
再三の改正を経た後、昭和二四年六月二〇日から施行された指定物資輸送証明規則
(同年五月二七日総理庁令、外務省令、大蔵省令、法務庁令、文部省令、厚生省令、
農林省令、通商産業省令、運輸省令、逓信省令、労働省令、建設省令第一号―以下
新令と略称する)附則二項によつて廃止されたのであるが、それと同時に同附則三
項によつて、新令施行前になした行為に対する罰則の適用については、旧令は新令
施行後もなおその効力を有するものとされ、そして旧令三条一項と同趣旨のことが
新令、二条一項に規定された。従つて新令施行前に旧令三条に違反したものとして、
臨時物資需給調整法一条四条の責任を問われている本件においてはこの場合実質上
刑の廃止も変更もなかつたものと云わなければならない。尤もその後、本件物資た
る「いか油」は原判決宣告後たる昭和二五年四月一日総理府令、法務府令、外務省
令、大蔵省令、文部省令、厚生省令、農林省令、通商産業省令、運輸省令、郵政省
令、電気通信省令、労働省令、建設省令、経済安定本部令第六号により、新令一条
にいわゆる「指定物資」から除外され、従つて新令二条一項の適用を受けないこと
になつたので、ここに刑の廃止があつた如く見える。しかし、この新令自体を廃止
した昭和二六年三月三一日前同府令省令本部令第一号も、その附則二項において「
この命令施行前にした行為に対する罰則の適用についてはこの命令施行後も、なお
従前の例による」との規定を設けている。して見ると、旧令も新令もいわゆる限時
法的性格を有するものと解するを相当とするから、昭和二五年四月一日の前記命令
が本件物資たる「いか油」を新令一条にいわゆる「指定物資」から除外した際に、
「罰則の適用については、なお従前の例による」と云うような附則を設けなかつた
からといつて、立法者の意思がこの場合に限り「刑の廃止」の効果を生ぜしめよう
とするにあつたとは到底考えられない、(なお所論油糧需給調整規則の改廃につい
ても同様のことがいえるばかりでなく、「いか油」を右規則の適用から除いた所論
農林省令第二三号の附則二項は「この省令施行前にした行為に対する罰則の適用に
ついては、この省令施行後もなお従前の例による」と規定している)。以上の次第
であるから本件は刑訴四一一条五号にいわゆる判決後「刑の廃止」があつた場合に
はあたらないものといわなければならない。従つて、この点に関して原判決を破棄
すべき理由はない。
 同第二点について。
 所論確定判決のあつた事件は、被告人がその生産にかかる「いか油」を油糧需給
調整規則三条に違反してA、Bに自宅において譲渡した事実について、臨時物資需
給調整法一条四条に該当するものとして起訴され、右事実について有罪の判決を言
い渡されて確定したものである。ところが、本件は被告人が右「いか油」を前記A、
B方まで輸送するため、重要物資輸送証明規則三条に違反して法定の出荷証明書な
くして、その輸送方をC株式会社に委託した事実について、右は臨時物資需給調整
法一条四条に該当するものとして起訴された案件である。従つて、右両者は別個の
犯罪を構成するものであるばかりでなく、その基礎たる事実関係においても同一性
を認め難く、科刑上一罪として取り扱われる場合にも該当しない。従つて又、所論
確定判決のあつた事件の記録を精査しても、同事件において被告人が重要物資輸送
証明規則に違反し、法定の出荷証明書なくして本件「いか油」の輸送を委託したか
否かと云う点が審理の対象とされた事跡を認めることができない。されば控訴趣意
が右両者は同一の事実であるとして憲法三九条及び刑訴三三七条違反を主張したの
に対し、原審が両者は別個の行為を対象とするものであり、同一の犯罪でないとし
て之を排斥したのは固より正当であつて、所論の違憲論はその前提を欠くものであ
るから、採用することはできない。
 同第三点について。
 所論は、憲法違反を主張するけれども、その実質は単なる法令違反の主張に帰す
るから、適法な上告理由とならない。
 なお、本件においては、論旨第一点において説示した以外の点についても刑訴四
一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、刑訴四〇八条に則り、全裁判官一致の意見を以つて、主文のとおり判決
する。
  昭和二六年一〇月一二日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
 裁判長裁判官霜山精一は出張につき署名押印することができない。
            裁判官    栗   山       茂

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