弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
原判決を取り消す。
中央労働委員会が中央労働委員会平成18年(不再)第47号事件
につき平成19年10月3日付けでした命令を取り消す。
訴訟費用の総費用は,補助参加によって生じた費用は各被控訴人補
助参加人の負担とし,その余は被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1控訴の趣旨
主文同旨
2控訴の趣旨に対する答弁
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
控訴人は,住宅設備機器の修理補修等を業とする会社であるが,その業務に
関し基本的業務委託契約を締結した者をカスタマーエンジニア(以下「CE」
という。)と呼称し,控訴人の個別業務につきCEと個別的業務委託契約を締
結してその業務を遂行させている。
補助参加人らは,平成16年9月6日,控訴人に対し,CEが補助参加人ら
に加入して分会を結成したことを通知するとともに,労働条件の変更等を議題
とする団体交渉を申し入れた。控訴人は,CEは控訴人と雇用契約を締結した
労働者ではないとして,この申入れを拒絶した。補助参加人らは,控訴人が団
体交渉に応じないことは不当労働行為に該当するとして平成17年1月27
日に大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」という。)に救済を申し立てた(大
阪府労委平成17年(不)第2号事件)。大阪府労委は,平成18年7月24
日,CEは労働組合法上の労働者と認めるのが相当であり,控訴人が上記のよ
うに団体交渉に応じないことは同法7条2号の不当労働行為に該当するとし
て,控訴人に対し,上記の団体交渉に応じることを命じるとともに,団体交渉
に応じなかったことが大阪府労委において不当労働行為と認められたこと及
び以後このようなことを繰り返さないことを明記する文書を補助参加人らに
手交することを命じた(以下「初審命令」という。)。控訴人は,これを不服と
して平成18年8月2日中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対し,
初審命令の取消しと補助参加人らの救済命令申立ての棄却を求めて再審査を
申し立てた(中労委平成18年(不再)第47号事件)が,中労委は平成19
年10月3日,初審命令は相当であるとして,再審査申立てを棄却した(以下
「本件救済命令」という。)。
本件は,控訴人が,補助参加人らが申し入れた団体交渉に応じることなどを
命じる本件救済命令はCEが労働組合法上の労働者に該当することを前提と
しており不当であるとして,その取消しを求める事案である。
2前提となる事実,争点及び当事者の主張
標記の点は,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の1ない
し3(原判決2ページ21行目から12ページ25行目まで)に記載のとおり
であるからこれを引用する。
第3当裁判所の判断
1証拠(甲3,5の1及び2,同6の1ないし5,同7の1ないし5,同8,
14ないし17,26,29,31の1及び2,同37の1ないし9,乙A9
ないし25,64,67ないし70,75ないし80,83,84,87ない
し95,101,102,110,乙B1,7,8の1ないし4,同9,18,
44の1ないし3,同50,51,82ないし88,丙1の1ないし19,2
の1ないし9,同5ないし8,10ないし13,同14の1ないし4,乙C1
ないし7,証人P1,同P2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認定す
ることができる。
(1)控訴人がCE制度を導入した経緯等
株式会社INAXは,大正13年にタイル,陶管,テラコッタの製造等を
業として設立された伊奈製陶株式会社が,その後住宅設備機器製造販売や建
材販売へと事業を拡大し,昭和60年に現在の社名に変更したという来歴を
有する株式会社(以下時期を問わず「INAX」という。)であり,現在日本
の衛生陶器,住宅設備機器,建材の大手メーカーとして認知されるに至って
いる。
控訴人は,INAXブランドの住宅設備機器のアフターメンテナンス(ト
イレ,浴室,洗面台,キッチンなどの水回りに係る商品の修理補修等)を主
力事業として昭和55年4月に設立された株式会社であり,INAXが資本
金を全額出資するINAXの子会社である。
企業が上記のような修理補修等の業務を行う場合,自社の従業員が直接業
務を遂行する方法,修理補修業者に委託(外注)して業務を遂行する方法な
どがあり得るところ,控訴人も当初は従業員が直接行う方法と,業者(控訴
人では「件数契約者」と呼んでいた。)に委託する方法とを併用していた。と
ころで,控訴人の業務は水回りの住宅機器の故障等に対応するものであるか
ら,その性質上顧客から修理補修等を求める連絡が入るや速やかに業務に着
手し確実に完遂することが求められるところ,取り分け業者へ委託する場合
には,控訴人が迅速に業者へ発注し,受注した業者が迅速に修理等の業務へ
着手し,かつ業務が完了したことを控訴人へ速やかに連絡することなどが重
要となる。また,控訴人はINAXの傘下の会社が修理補修等を行うことを
社名などにおいて明示していることや,全国規模で事業を展開していること
などから,INAXのブランド・イメージを低下させないよう全国一律一定
水準以上の技術で確実な修理補修等を行うことが求められているため,委託
業者にも業務遂行に当たりINAXのブランドイメージを低下させないよう
一定水準以上の技術で確実に修理補修等を行うことを求めることになる。そ
のため控訴人は,昭和60年以降委託業者への業務委託の方法を整備し,控
訴人と委託業者との連絡の効率化・確実化・迅速化を図り,併せて遂行され
る業務が全国一律一定水準以上の技術をもって確実に行われるよう,認定制
度やランキング制度を導入したり,業務内容や接客態度に関するマニュアル
を作成配布したりしながら,次に詳述するような現在のCE制度を導入確立
していった。そして,控訴人の従業員は約200名いるものの,そのうち控
訴人の修理補修業務を行う可能性がある者を,サービス長(通常は後記のサ
ービスセンターのマネージメントを行う。平成19年現在11名)やFG(難
易度の高い修理やCEの研修等を担当する技術担当者。平成19年現在16
名)らに限定していった。
(2)控訴人とCEとの基本的業務委託契約等
ア控訴人は,CEになろうとする業者(個人,法人を問わない。)との間で,
「業務委託に関する覚書」と題する文書(乙B1。以下「本件覚書」とい
う。),「業務委託に関する覚書の付帯契約書」と題する書面(乙B2。平成
17年以降作成されるようになる。以下「付帯契約書」という。)に記載し
た内容で,基本的業務委託契約を締結する。
本件覚書では,第1条において,控訴人とCEがそれぞれ独立した事業
者であることを認識した上で契約を遂行する旨,第3条において,委託業
務内容を,INAX製品全般のアフターサービス(修理,点検),INAX
製品全般のリフレッシュサービス,INAX製品全般の販売・取付け,i
-mate(24時間・365日水回りサポート等を受けられるなどの特
典を有する会員)となる会員契約の仲介その他関連業務とする旨明記した。
そして,あくまでINAXの子会社による修理補修業務等を委託するとの
委託業務の性質上,INAXのブランド・イメージを損ねないために,C
Eに対し一定水準以上の業務遂行能力を保有し続けることを求めて,毎年
能力,実績,経験等を基準に級を定めるライセンス制度(乙A23)を導
入し(第2条),確実に業務が完了したことを確認するために業務内容の報
告を求め(第5条,第11条),発注連絡の取れる時間帯や日にち(休日等
の事前通知)を予め明らかにし(第11条,第12条),制服等を定めた(第
8条。なお乙A21参照)。他方で,前記のとおりCE制度は委託業者との
関係やその業務を効率化・迅速化・確実化させ,またINAXの傘下の会
社が修理補修等を行うとの信頼を裏切らないようにするためのものにすぎ
ないため,発注のための連絡を取る時間を定めたものの,受注を義務付け
ることはせず(第4条),また受注後の業務遂行の時期や方法等については
特段定めを置かずにCEに一任し,業務の完了報告を義務付けたものの修
理等の依頼に対する結果以上の報告は求めず,事務所や事務所内の各種機
器,使用車両,工具等は原則としてCE側で用意する(第7条,第9条。
ただし,部材に関してはINAX製品を控訴人が用意してCEに預託する
(第10条)。)こととした。
また付帯契約書においても,INAXの子会社による修理補修業務等を
委託するとの性質上,控訴人の業務委託者であることを明らかにする身分
証明書や名刺等の携行や制服の着用を求め(第5条),業務終了後は控訴人
所定の検査確認用紙に顧客の署名押印を求めることを定め(第6条),委託
業務遂行中控訴人と利益相反する営業活動を禁止し(第7条),毎月開催す
るエリア会議(委託業務の遂行に関する連絡事項,技術情報等の伝達を行
うもの)への出席を求める(第13条)などの規定があり,違反した場合
には厳重注意や契約解除などによって対処する旨定める一方で,個別の業
務委託契約は所定の方法による発注をCEが承諾することにより成立する
こととし(第4条。ただし,上記の効率化迅速化の観点から,発注後直ち
に承諾拒否の通知を発しないときは,発注内容を連絡した時点で委託を承
諾したものとみなすこととした。),発注後の委託業務の遂行の時期や方法
等はすべてCEに一任した(第6条)。
さらに控訴人は,INAXの子会社により修理補修業務等を委託すると
の性質上,INAXのブランド・イメージを損なわないよう,全国で一定
水準以上の技術をもって確実に修理補修等をする必要があるため,業務マ
ニュアル,安全マニュアル,修理マニュアル,新人研修マニュアルなど,
修理補修等の作業手順や控訴人への報告方法,CEの心構えや役割,接客
態度などを記載した各種マニュアルを配布しているが,現場での実際の修
理補修等はCE各人の能力にゆだねており,マニュアルが確実に実施され
ているかを検証する制度はない。
イ業務委託手数料については,顧客(修理等が有償の場合)や製造元のI
NAX(修理等が無償の場合)に直接請求する金額に,ランキング制度に
おいて当該CEの属するランクに定められている一定率を乗じる方法で支
払うこととした(乙A19)。顧客等に対する請求金額が基準となるため全
国一律の金額とする必要があることから,商品や修理内容に従ってその額
は予め控訴人において決定したが,他方で修理補修等の難易度等によって
CEがこれをある程度割増しして請求することや,別のCEを補助者とし
て使用した上割増しして請求することを認めていた。
ウ控訴人は,CEの募集広告を出す際には,一日数件受注することができ
るので経済的安定性が確保される,取扱商品がINAX製品に定まってお
り控訴人によるサポート体制もある,傷病の場合のための互助会制度があ
るなど独立事業を行う場合には期待できない利点がある一方で,基本的に
は独立事業者であり,受注した仕事に応じて手数料を受け取ることができ
るなどの会社勤務にはない独立性,報酬出来高制があることなどを謳い(乙
13,14),CEになろうとする者と面接する際にも,CEは事業者であ
るため所得税は事業税として申告することになるなどの説明を行っている。
CEに応募する者も,独立性がありながら経済的安定性も一定程度確保さ
れていることを応募理由とする者が多い。
エ控訴人は,CEを独立事業者と認めていることから,次に述べる個別的
業務委託契約を締結した修理補修業以外について,CEとなった者が自ら
当事者となって各種の修理補修等の営業活動を行い,契約を締結し,修理
補修等の業務を行い,収益を上げることを認めており,CEが自ら当事者
となって締結した契約に基づいて行う業務については,当然上記の条件の
履行を求めていない。このようにCEは,控訴人から受注するほか,別途
自ら営業主体となって,営業活動を行い,顧客から修理補修等の業務を契
約を締結して受注し,修理補修等の業務を行い,収益を上げることができ
るし,そのような実例もみられる。
オなお,控訴人は,傷病に対する休業補償や技術向上のための教育受講補
助等を目的として全国のCEを対象としたCE協力会を平成8年に発足さ
せ(事務局は控訴人事務所内にあり,事務処理は控訴人が代行する。),平
成16年末ころからはCEの意見及び要望等を聴取する場としても使用す
るようになっている。
(3)控訴人とCEとの個別的業務委託契約締結の実情と受託業務の遂行の実際
ア控訴人は,全国を7区分(東日本,首都圏,関東,中部,近畿,中国・
四国,九州)して各地域ごとに営業所を置き,その下に複数のサービスセ
ンターを配置した。そして,現在約590名いるCEの居住場所や過去の
業務発生状況等に従って各サービスセンターの管轄区域を細分化し,CE
の担当地域を決定した。なお,CEが単独で対処できない場合があること
も考慮して,一つの地域に複数のCEを順位を付けて担当させることもあ
る。
控訴人は,顧客からの修理等の依頼を全国に4箇所ある修理受付センタ
ーで受け付けた後,顧客の所在場所を担当地域とするCEにこれを割り振
り委託業務として発注する。その発注は,原則として本件覚書で定められ
た,休日ではない日の午前8時30分から午後7時までの間に行われる。
発注方法は,修理日を当日とする場合や緊急を要する場合には修理受付セ
ンターからCEに直接電話をする方法で,それ以外の場合にはCEに対し
て予め所持することが指示されている情報端末に修理依頼データ(訪問日
時,顧客の氏名・電話番号・住所,対象となる商品の商品番号及びそれが
取り付けられた年月日,修理依頼内容等)を送信する方法で行う。電話を
受けたCEが応諾した場合には個別の業務委託契約が成立するが,電話を
受けたCEが対応できないと断ったり,そもそも電話連絡が取れない場合
には,順位が下位のCEあるいは別の担当地域にいるCEに連絡を取って
依頼したり,サービスセンターにいる控訴人の従業員が業務の遂行に赴い
たりすることになる。また,修理依頼データを送信した場合,直ちに承諾
拒否の連絡がない場合はその送信時に個別の業務委託契約が成立する。修
理依頼データを送信する場合にも,CEが承諾拒否通知をする場合が1パ
ーセント弱ある。電話を受けたCEが断った場合,あるいは修理依頼デー
タを送信したところCEが承諾拒否通知をした場合,その理由が控訴人と
の基本的業務委託契約の遂行とは無関係の事情(自らが営業主体となって
締結した契約に基づく修理補修等の業務の遂行など)によるものであるこ
とが判明したとして(そもそも拒否の詳細な理由付けは求められていな
い。),控訴人がそのことをもって基本的業務委託契約の債務不履行と判断
することはない。また電話連絡が取れなかった場合,それが当該CEの休
日ではない日の発注時間帯であっても,控訴人がそのことをもって同契約
の債務不履行と判断することもない。
イCEは,修理依頼データ受信後,同データに基づき直ちに顧客と連絡を
取って修理等の日時を調整し,調整された時間に顧客先等を訪問して修理
等の作業を行う。受信しかつ承諾拒否通知をしなかったものの業務に対応
できない場合は他のCEにこれをゆだねることが認められており(その場
合はその旨控訴人に報告する。),発注件数の約6パーセントはこの方法に
よりCEの変更手続がとられている。
ウCEは,制服を着用し,名刺を携行して顧客先に赴き,INAXの子会
社による修理補修等であることを明示しながら,所定の修理等の業務を行
い,場合によっては業務内容でもあるINAX製品のリフォーム等の営業
活動も行う。
エCEは,修理等の業務が終了したときには,顧客に,控訴人所定用紙の
検査確認用紙に署名押印を求めるとともに,修理補修等顧客の名前,住所,
業務日,業務内容,技術料等所定の料金(部品代,技術料,取付料,出張
料,処分料など),その他を記載したサービス報告書を控訴人に送付する。
その内容は,顧客の修理補修等の依頼内容が結果として完遂されたかどう
かを判断できるのみであって,それ以上の報告が求められているわけでは
ない。CEは修理を行うほか顧客から料金を回収し,これを週1回程度控
訴人に振り込む。その他CEは業務日ごとに行動の予定,経過,結果等を
控訴人に報告することになっている。
オ平成16年7月現在の実績データによれば,作業時間は1件につき平均
70分,一日作業時間計は平均3.7時間,控訴人の平均依頼件数は月1
13件,CEの平均取得日数は月平均5.8日である(乙B53)。なお上
記作業時間以外の時間におけるCEの行動ないし業務実態については控訴
人は関知しない。
(4)控訴人は,平成14年10月にある顧客から修理依頼を受けてこれをCE
であるP3に業務委託したが,平成15年3月同じ顧客から修理が不完全で
あるとの苦情が申し入れられたため調査したところ,P3が他社製品をIN
AX製品と偽って修理したこと,その際控訴人とは無関係に自らの営業活動
を行って代金を全額自分の収入としていたことなどが判明した。控訴人が平
成15年5月にP3を呼び出して注意したところ,その後上記顧客から,P
3が上記の点での口裏合わせや自らの営業活動を行った際の領収書の破棄な
どを求めていたこと,同顧客は畏怖しながらもこれを拒絶したことなどの連
絡が入った。控訴人は,P3が控訴人やサービスセンター長の私宅に電話を
かけて脅迫的な発言を行うなどしたため,平成15年5月19日付けでP3
との基本的委託業務契約を解除する旨の意思表示をし,P3への対応につい
て警察にも相談した。
控訴人は,平成15年6月6日,予告なく補助参加人である全日本建設交
運一般労働組合大阪府本部の書記長の訪問を受け,P3との契約解除の件で
の話合いの機会を設定するよう求められた。同組合との話合いは,同年末に
上記書記長から一方的に終了する旨の連絡があるまで,何度か行われた。
補助参加人らは上記の件を本件で問題とはしていないが,業務委託者との
関係を整備し始めた昭和60年以降上記の書記長の訪問までの間に,また一
方的な終了連絡後本件の紛争が発生するまでの間に,控訴人がCEから労働
者として認めるよう求められたりしたことを示す証拠はない。また,平成8
年に発足したCE協力会を労働組合とするようCEが求めたことを示す証拠
もない。
2以上の事実に基づき検討する。
(1)労働組合法は,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する労働
者(同法3条)が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進し労
働者の地位を向上させること,その交渉のために労働者が労働組合を組織し
て団結することを擁護すること,使用者と労働者との関係を規律する労働協
約締結のための団体交渉をすることなどを目的とする(同法1条)。したがっ
て同法上の労働者は,使用者との賃金等を含む労働条件等の交渉を団体行動
によって対等に行わせるのが適切な者,すなわち,他人(使用者)との間に
おいて,法的な使用従属の関係に立って,その指揮監督の下に労務に服し,
その提供する労働の対価としての報酬を受ける者をいうと解するのを相当と
いうことができる。そして,同法における労働者に該当するか否かは,法的
な使用従属関係を基礎付ける諸要素,すなわち労務提供者に業務の依頼に対
する諾否の自由があるか,労務提供者が時間的・場所的拘束を受けているか,
労務提供者が業務遂行について具体的指揮監督を受けているか,報酬が業務
の対価として支払われているかなどの有無・程度を総合考慮して判断するの
が相当というべきである。
なお,業務委託契約が締結された場合,契約関係の成立により契約当事者
は互いに契約目的の実現に向ってそれぞれの負担義務を遂行すべき制約ない
し拘束を受けることになるところ,委託者と受託者の間には法的な使用従属
関係はないが,何らかの業務を受託する以上委託内容によって拘束あるいは
指揮監督関係と評価できる面が認められることがあるのが通常である。した
がって,上記の法的な使用従属関係を基礎付ける諸要素の存否の評価に当た
っては,契約関係の一部にでもそのように評価できる面があるかどうかなど
の局部的視点で判断するのは事柄の性質上適当ではなく,両者の関係を全体
的に俯瞰して労働組合法が予定する使用従属関係が認められるかの観点に立
って判断すべきである。
(2)前記認定事実のとおり,CEは控訴人との間で基本的業務委託契約を締結
しているものであるが,個別の業務は控訴人からの発注を承諾するという個
別的業務委託契約の締結によって行っていること,CEはサービスセンター
から電話で連絡を受けたり,修理依頼データを送信されたりする方法で個別
的業務委託契約の申込みを受けた際,これを控訴人との基本的業務委託契約
とは無関係の理由,取り分け自らが事業者として行う修理補修等の業務を行
うとの事情の存在を理由に拒絶することが認められていること,CEが上記
申込みを拒絶した場合,それがいかなる理由による拒絶であっても控訴人は
基本的業務委託契約の債務不履行に該当するとは解しておらず,CEをその
拒絶によって不利益に扱うことはないこと,CEは休日以外の日の午前8時
半から午後7時までサービスセンターから発注連絡を受けることとなってい
るが,この連絡が取れなかったとしても控訴人は基本的業務委託契約の債務
不履行に該当するものとはしていないこと,CEは決められた時間帯に発注
連絡を受け,当該業務遂行中は,INAXの子会社である控訴人による委託
業務であることの性質上,制服の着用や名刺の携行,各種マニュアルに基づ
く業務の遂行が求められてはいるものの,発注連絡を受けて受注することに
なった修理補修等の業務を実際にいついかなる方法で行うかについては全面
的にCEの裁量にゆだねられていること,控訴人は終了後の報告や業務内容
報告等により,顧客からの修理依頼等が確実に履行されたか否かを確認する
以外に,CEの業務内容や業務遂行時間以外の行動等について関知せず,C
Eが独自に営業活動を行い,それにより収益を上げることを認めていること,
控訴人は,CEが行った修理等の内容について,全国一律の標準額を基本と
しているものの,CEの裁量による増額を認めた上で,出来高制で報酬を支
払っていること,したがってCEは自らが事業者となって業務を遂行する方
がCEとして活動するよりも収益率が高いと判断した場合には自らが事業者
となる業務の営業活動を重視し,CEとして活動する方が収益率が高いと判
断した場合には控訴人からの発注を積極的に受注するという選択が可能であ
ること,以上の事実を指摘することができる。
そうすると,CEは,業務の依頼に対して諾否の自由を有しており,業務
の遂行に当たり時間的場所的拘束を受けず,業務遂行について控訴人から具
体的な指揮監督を受けることはなく,報酬は行った業務の内容に応じた出来
高として支払われているというべきであり,その基本的性格は控訴人の業務
受託者でありいわゆる外注先とみるのが実体に合致して相当というべきであ
る。
なお,修理依頼データを受信後直ちに承諾拒否を連絡しなければ受諾した
ものとみなされる,休日を予め届け出ておかなければならず,発注連絡時間
が定められている,制服の着用や名刺の携行,各種マニュアルに基づく業務
遂行が求められ,業務終了後は各種の報告をしなければならず,その他研修
やエリア会議の出席が求められる,控訴人の定める認定制度やランキング制
度によって報酬額が左右される,規定に反した場合には厳重注意や契約解除
などがされることがあるなどの点については,これだけを取り上げれば拘束
性があるとか指揮監督関係にあると評価することはできなくはない。しかし,
これらはいずれも,控訴人の委託する修理補修業務が,水回りに関するIN
AXの住宅設備機器の修理補修等という連絡効率性,迅速性,確実性が求め
られかつ全国一律一定以上の技術水準を求められるという本件における基本
的業務委託契約の委託内容による制約にすぎないというべきであり,これら
の事情をもってCEがその業務を受諾しなければならない義務が発生してい
るとか,受諾後の業務遂行においてCEの裁量が否定され控訴人が指揮監督
を行っているとかいうことはできない。そうすると,上記の事情の存在をも
って,控訴人とCEとの関係がその基本的部分において法的に使用従属関係
にあると評価することは困難であり,相当ではないというべきである。
3被控訴人及び補助参加人らは,①その者が当該企業の事業遂行に不可欠な
労働力として企業組織に組み込まれていること,②契約内容が一方的に決定
されていること,③業務の遂行の日時・場所・方法などにつき指揮命令を受
けていること,④業務の発注に対し,諾否の自由がないことなどの事情が認
められる場合には,労働組合法上の労働者性が認められるのであり,CEはこ
れらの要件を充たすから労働組合法上の労働者ということができると主張す
る。
しかしながら,①については,控訴人の正社員が200名であり,CEが5
90名であることや,控訴人の主力業務である修理補修等の業務はCEが遂行
していることなど被控訴人及び補助参加人らが指摘する事情が認められる一
方で,CEが控訴人の発注に対し理由なく拒絶しても基本的業務委託契約上の
債務不履行とならない,CEは控訴人から受注するほか,自ら営業主体となっ
て修理補修等の業務を行うことができるなどの事情も認められる本件におい
ては,CEが控訴人の労働力として企業組織に組み込まれていると評価するこ
とは困難である。②や③については,前記認定によれば,顧客と調整をした結
果CEの行う業務の日時・場所が定まること,INAX製品の修理等であるこ
とからその修理等の方法を控訴人がCEに指定していることなどの事実が認
められ,これを控訴人がCEに一方的に指揮命令していると評価することは可
能であるが,いずれの事実も控訴人とCEとの業務委託の性質上そのように定
めざるを得ないものにすぎず,法的関係において使用従属関係の存在を是認さ
せるものではないから,やはりCEが控訴人の労働者であるとの結論を導くこ
とは困難である。④については前記のとおりであって,CEには諾否の自由が
認められるというべきである。
CEは労働組合法における労働者に該当するとの被控訴人らの主張は,控訴
人との間に締結された業務委託契約に基づく法律関係の実体に対する全体的
あるいは合理的考察を欠き,部分的あるいは表面的であっても指揮監督関係や
拘束性について肯定的に評価できるものがあれば,契約内容のその余について
考察を遮断し,これをもって控訴人とCEとの間に使用従属関係を基礎付ける
指揮監督関係や拘束性の存在を認め,労働者性を肯定しようというものであっ
て,社会の実情ないし経験則に照らしても合理的とは言い難い見解というほか
なく,採用の限りではない。
4以上の次第であるから,CEは控訴人との関係において労働組合法上の労働
者に当たるということができず,したがってCEが労働者であることを前提と
する団体交渉に控訴人が応じなかったとしても,これをもって労働組合法7条
2号の不当労働行為に該当するということはできない。
そうすると,控訴人の団体交渉拒絶行為を不当労働行為に該当するとして,
控訴人に対し,補助参加人らが申し入れた団体交渉に応じること,補助参加人
らに対して,団体交渉を拒否したことが大阪府労委から労働組合法7条2号に
該当する不当労働行為であると認められたため今後このような行為を繰り返
さないようにすることを記載した文書を手交することを命じた本件救済命令
は,不当であって取り消されるべきである。
5よって,以上と異なる原判決は相当ではないからこれを取り消すこととし,
主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官藤村啓
裁判官坂本宗一
裁判官大濱寿美

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛