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平成27年6月30日判決言渡
損害賠償請求事件
判決
主文
1Y1及びY2は,原告に対し,連帯して,1億6850万円及びこれに対す
る平成21年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,原告に対し,連帯して,1億2705万円及び内金1465万円
に対する平成22年9月14日から,内金1億1240万円に対する平成23
年2月28日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3Y1及びY3は,原告に対し,連帯して,8555万円及びこれに対する平
成22年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4Y1及びY3は,原告に対し,連帯して,3370万円及びこれに対する平
成23年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告らは,原告に対し,連帯して,3785万5000円及び内金3370
万円に対する平成23年8月31日から,内金157万円に対する平成23年
11月30日から,内金258万5000円に対する平成24年1月31日か
らそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6原告のその余の請求をいずれも棄却する。
7訴訟費用はこれを20分し,その19を被告らの負担とし,その1を原告の
負担とする。
8この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
<目次>
第1請求.........................................................................4
第2事案の概要...................................................................4
1請求の概要...................................................................4
2前提事実.....................................................................5
3争点........................................................................20
4当事者の主張................................................................21
締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について.....................21
締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役
としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について.................................................25
複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取
締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について..........................................28
締結及びこれに基づく金員の支出が,取
締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について..........................................31
締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について......................................35
災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティン
グ契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法
行為に当たるか)について...............................................................................................37
並びにこれらに基
づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について...39
と損害との間の因果関係の
有無)について................................................................42
第3当裁判所の判断..............................................................43
1認定事実........................................................................................................................43
2締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について......................................54
3締結及びこれに基づく金員の支出が,取締役
としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について.................................................59
4複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取
締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について..........................................63
5締結及びこれに基づく金員の支出が,取
締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について..........................................65
6締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について......................................66

グ契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法
行為に当たるか)について...............................................................................................68
8並びにこれらに基
づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について...69
9と損害との間の因果関係の
有無)について................................................................71
10まとめ......................................................................74
第4結論........................................................................74
(前注)以下,別紙1略語一覧表のとおり,氏名及び法人名等を略称する。
第1請求
1Y1及びY2は,原告に対し,連帯して,1億7325万円及びこれに対す
る平成21年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告らは,原告に対し,連帯して,1億3051万5000円及び内金15
01万5000円に対する平成22年9月14日から,内金1億1550万円
に対する平成23年2月28日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
3Y1及びY3は,原告に対し,連帯して,8805万5000円及びこれに
対する平成22年11月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
4Y1及びY3は,原告に対し,連帯して,3465万円及びこれに対する平
成23年4月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告らは,原告に対し,連帯して,3892万3500円及び内金3465
万円に対する平成23年8月31日から,内金161万7000円に対する平
成23年11月30日から,内金265万6500円に対する平成24年1月
31日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1請求の概要
本件は,原告の代表取締役会長であったY1,同代表取締役社長であったY
3及び同取締役副社長であったY2が,架空の業務委託契約等を複数締結し,
それらの契約に基づき,原告の財産を不正に流出させた等と主張して,原告が
被告らに対し,取締役の任務懈怠による損害賠償請求(会社法423条1項)
又は不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として,合計4億653
9万3500円及びこれに対する各不法行為の日からいずれも支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2前提事実(各項末尾に証拠を掲記したもののほかは,当事者間に争いがな
い。)
当事者等
ア原告は,東京証券取引所市場第一部及び名古屋証券取引所市場第一部に
上場している株式会社である。
原告の平成23年10月31日までの商号は,株式会社Aであり,同年
11月1日に,原告は新設分割により子会社を設立し,同子会社に事業部
門の権利義務を承継して,持株会社となった。同子会社の商号は,株式会
社Aであり(以下,同子会社を「新A」という。),同日,原告は株式会
社Aホールディングスに商号変更した。
原告の主たる事業は,映像ソフト,音楽ソフト,ゲームソフト及び書籍
の制作,販売並びにレンタル等の事業を営む新A等の株式を保有すること
により,当該会社の事業活動を支配・管理することである。なお,新Aの
上記事業は,平成23年10月31日まで原告が行っていたものである。
イY1は,平成16年6月から平成19年6月まで原告の代表取締役社
長,平成19年6月から平成23年11月1日まで原告の代表取締役会長
(ただし,平成20年7月から平成21年6月までは取締役会長),その
後,平成23年12月21日まで原告の取締役会長であった者で,同日取
締役を辞任した(弁論の全趣旨)。なお,Y1は,少なくとも平成19年
11月29日から平成24年2月29日まで,Bの取締役であった。
Y2は,平成17年6月から平成23年12月21日まで原告の取締役
であった者で,同日取締役を辞任した(弁論の全趣旨)。なお,Y2は,
平成23年5月27日から平成24年2月29日まで,Bの取締役であっ
た。
Y3は,平成21年6月26日から平成22年1月1日まで原告の社外
取締役,平成22年1月1日から平成23年11月1日まで原告の代表取
締役社長,その後,同年11月28日まで原告の取締役であった者で,同
日取締役を辞任した(弁論の全趣旨)。
ウaは,平成20年6月から原告の常勤監査役の地位にある者である。
エbは,平成18年4月から原告の取締役,平成23年11月1日以降
は,原告の代表取締役社長の地位にある者である。
オ被告ら補助参加人は,原告の主幹事証券会社である。
その他の関係者等
アcは,原告の顧問と称していたことのある者である。
dは,cの知人であり,Cの代表取締役を務める者である(弁論の全趣
旨)。
イBは,不動産の売買・賃貸借・仲介及び管理並びに鑑定業を主たる業務
とする株式会社であり,代表取締役はeである。Bは,原告の不動産事業
部門として,当初は,いわゆる売れ残りのマンションを安値で購入し,廉
価で販売する営業等を主たる業務としていたところ,原告の信用力も背景
として,金融機関より事業資金を独自に調達して業容を拡大し,平成20
年3月には名古屋証券取引所セントレックス市場に上場した。なお,B
は,平成23年3月30日以前は原告の連結子会社であったが,後記の
とおり,同日付け株式譲渡により,原告の連結子会社ではなくなった。
ウDは,経営一般及び株式公開に関するコンサルティング業を主たる業務
とする株式会社であり,代表取締役はcである。
エEは,新車・中古車の売買,映像コンテンツの企画・制作及び広告・宣
伝・イベントの企画等を主たる業務とする株式会社であり,平成23年1
2月13日に本店を移転する前の本店所在地は,東京都港区<以下略>
(後記オのFの本店所在地と同じ),代表取締役はfである。
オFは,新車・中古車の売買,不動産の売買・仲介,映像コンテンツの企
画・制作及び広告・宣伝・イベントの企画等を主たる業務とする株式会社
であり,本店所在地は東京都港区<以下略>(前記エのEの本店移転前の
本店所在地と同じ),代表取締役はgである。Fは,平成22年9月2日
に「株式会社F’」に商号変更した。
カGは,有価証券等の保有・管理・運用・取得等の投資事業,投資事業組
合財産の運用・管理及び不動産の売買・交換・賃貸等を主たる業務として
いた株式会社である。なお,平成23年7月14日以降は,企業の営業譲
渡,資産売買,資本参加,業務提携及び合併に関する調査,企画並びにそ
れらのあっせん,仲介等を主たる業務としている(甲16の1ないし
3)。
Gの代表取締役はhであるが,同社を実質的に支配しているのはcであ
る。なお,Gは,平成22年6月24日にG’,平成23年4月23日に
株式会社G”にそれぞれ商号変更している。
G’が平成22年8月1日に本店を移転する前の本店所在地は,大阪府
八尾市<以下略>(後記キのHの平成23年5月6日更正前の本店所在地
と同じ)である。
キHは,有価証券等の保有,管理,運用及び取得等の投資事業等を主たる
業務とする合同会社であり(甲36),平成23年5月6日の更正前の本
店所在地は大阪府八尾市<以下略>(前記カのGの本店移転前の本店所在
地と同じ),代表社員はDの契約社員のiである。
クIの代表取締役であるjは,c及びdと交流がある。
原告の内部規定
ア取締役会決議を要する場合
原告の職務権限基準表によると,1件1億円以上の有形・無形固定資産
の取得,投資額1億円以上の新規アミューズメント店出店計画立案,総額
1億円以上の直営店舗売却の選定・決定(社員独立以外),月額50万円
以上の顧問・コンサルティング契約,その他経営全般における企画業務等
は,すべて取締役会決議事項とされている(甲14,15,23,24,
31,52)。
イ稟議を要する場合
原告の職務権限基準表によると,「支出に関する事項(商品仕入に関す
る支払を除く)(単発支出)1件100万円以上の支出」には,稟議,す
なわちブロック長代理,ブロック長,次長又は部長が起案し,執行役員,
取締役が審査し,代表取締役が決裁するという手続を経る必要がある(甲
29ないし31,40)。
Bのリファイナンスに関する経緯
アBによる本牧不動産の取得
平成19年6月20日,Bは,Jが所有する本牧不動産について,Jと
共同開発することを決定し,その2分の1の共有持分をJから購入した。
Bは,上記本牧不動産の購入に際して,K銀行を主幹事とするシンジケ
ートローン(以下「本件シンジケートローン」という。)によって28億
円を借り入れ,JはL銀行から借り換えをして,上記本牧不動産に各銀行
の根抵当権(極度額32億円)が設定された。
その後,Jが実質破綻状態となったため,Bは,Jと共同で商業施設と
しての本牧不動産の再開業を進めることが不可能となり,L銀行の根抵当
権を残したまま,平成20年10月14日,本牧不動産に対するJの共有
持分(2分の1)を買い受け,B単独で本牧不動産を商業施設として再開
業させることを決めた。
イMによるBに対するファイナンス
本件シンジケートローンの返済期限は平成21年9月末日であったとこ
ろ,同年5月頃に至っても,本牧不動産の商業施設としての再開業はでき
ておらず,Bには同返済を行える資金はなかった。
Y1は,Y2に対し,本件シンジケートローンのリファイナンス(借入
等による返済資金の手当て)について対応するように指示した。原告から
は,当時,Bに対し,役員としてY1,a,k及びlの4名が派遣されて
いたが,Y2は,原告の財務担当取締役として,上記のとおりY1から特
別の指示を受けたものであった。
Y2は,同年8月27日開催の原告の部門連絡会議及び取締役会におい
て,「K銀行に本件シンジケートローンの返済期限延長の要請を行ったも
のの,同意を得ることができなかったため,リファイナンス先として,N
ホールディングス(代表取締役はm)とその関連会社(以下,Nホールデ
ィングスとその関連会社を合わせて「Nグループ」という。)と交渉を行
っており,Nグループからは,同グループと原告又はBの共同出資により
特別目的会社を設立し,当該会社において本牧不動産の取得及び開発を行
うことを目的とした共同事業(以下「本件共同事業」という。)の提案を
受けるとともに,貸付けの条件として,本件シンジケートローン28億円
のうち,根抵当権によって担保されている価値を15億円と見積もり,担
保不足となる13億円分について,Bの親会社である原告に対して,Nグ
ループに対する投資をするよう求められた。」との説明を行った。これを
受けて,上記取締役会において,30億円の範囲内でNグループへの投資
をY1に一任する旨が決議され,この決議に基づき,原告はNグループに
対して,合計28億円の投資や貸付けを実行した(弁論の全趣旨)。
同年9月28日,BはNグループからファイナンスを受け,K銀行等に
対して本件シンジケートローン28億円を返済した。具体的には,Nホー
ルディングスの子会社であるMが,K銀行等から債権譲渡を受ける方式で
リファイナンスを行い,本牧不動産の根抵当権もMに移転された(以下
「本件リファイナンス」という。)。
ウO銀行によるBに対するリファイナンス
その後,Nグループとの本件共同事業計画は進展しなかった。本件リフ
ァイナンスの返済期限は平成22年3月であったところ,Bの代表取締役
であるeは,O銀行との間で諸条件を交渉し,同年6月25日,O銀行か
ら30億円のリファイナンスを受けるに至った。具体的には,O銀行が,
L銀行のJに対する債権とMのBに対する債権をそれぞれ15億円で買い
取り,L銀行及びMの本牧不動産に対する根抵当権は,いずれもO銀行に
移転された。
その後,Bは,本牧不動産を単独で事業展開することにし,内装工事を
進めてテナントを入れ,同年10月22日に本牧不動産を「○○」として
再開業した。
本件共同事業に関するコンサルティング名目での業務委託契約(以下「本
件共同事業コンサルティング契約」という。)の締結と金員の支出
ア平成21年9月初め頃,Y1は,Y2以外の取締役や監査役には知らせ
ることなく,原告を代表して,cが代表取締役を務めるD,並びにcの関
連会社であるE及びF(以下,D,E及びFを合わせて「Dほか」と呼ぶ
ことがある。)との間で下記の内容を含む本件共同事業コンサルティング
契約を締結した(甲10ないし12)。

業務範囲
①原告とNグループの双方が出資した共同事業会社の設立
②原告が希望する金融事業の計画立案
③原告が希望する金融事業に対するNグループによる事業支援の取付

④原告が希望する金融商品のNグループによる開発及び提供
⑤原告が希望する原告のグループ会社に対するNグループによる支援
の取付け
以下略
対価
D:業務委託成功報酬9000万円(税別。甲10)
E:業務委託成功報酬5000万円(税別。甲11)
F:業務委託成功報酬1000万円(税別。甲12)
なお,業務委託の成功とは,前記グループの双
方が出資した共同事業会社の設立が対外的に公表された日を規準と
し,原告とDほかが協議の上で決するものとする。
本件共同事業コンサルティング契約書記載の契約締結日は平成21年
7月1日となっているが(甲10ないし12),これは日付を遡らせて
作成されたものである。
イ同年9月18日,Y1及びY2は,本件共同事業コンサルティング契約
に基づき,Dに対して9450万円(税込),Eに対して5250万円
(税込),Fに対して1050万円(税込)の合計1億5750万円(税
込)を原告の資金からそれぞれ支払った。
ウY1及びY2は,本件共同事業コンサルティング契約締結及びこれに基
づく前記イの各支出に際して,原告において取締役会決議を行わなかっ
た。
Bの株式譲渡に関するコンサルティング名目でのアドバイザリー業務委託
契約(以下「株式譲渡アドバイザリー契約」という。)の締結と金員の支出
ア平成22年9月14日,Y3は,Y1及びY2以外の取締役や監査役に
は知らせることなく,原告を代表して,Dとの間で,下記の内容を含む株
式譲渡アドバイザリー契約(甲17。以下「株式譲渡アドバイザリー契約
①」という。)を締結し,同日,原告の資金から,Dに対し着手金として
1365万円(税込)を支払った。

Dによるコンサルティングの内容
①Bの財務審査,法務審査,業務審査,株式譲渡及びその禁止事項に
関する助言
②本件の譲渡先との交渉仲介
③本件に必要となる事務手続等に対する助言
④本件に必要な書面の作成等についての助言
Dの報酬
原告は,D
株式譲渡アドバイザリー契約①締結後5日以内に,着手金として136
5万円(税込)をDに支払うものとする。また,原告が希望するBの株
式の譲渡が実行された場合には,別途原告とDとの間で誠実に協議した
上,成功報酬を原告からDへ支払うものとする。
イ同月28日の取締役会では,Y3がB株式につき売却に向けた検討を進
めている旨説明し,bを含む出席取締役,監査役全員からその賛同を得
た。
ウ平成23年2月1日,Y3は,Y1及びY2以外の取締役や監査役には
知らせることなく,原告を代表して,D及びGとの間でそれぞれ下記の内
容を含む株式譲渡アドバイザリー契約(甲19,20。以下「株式譲渡ア
ドバイザリー契約②」という。)を締結した。

DないしGのアドバイザリー業務内容
①本件の基本スキームの立案並びに本件手続・交渉の日程の作成
②原告と対象企業の株式購入先との交渉の仲介,調整並びにその支援
③基本合意書,最終契約書等,本件に関連する諸契約書の内容確定及
び作成
④本件実行に関し必要となる日本証券業協会等の関係諸機関及び関係
諸官公庁に対する手続並びに必要書類の作成の支援
⑤本件に関する企業精査(デュー・ディリジェンス)の調整並びに支

⑥本件の対外公表に関するアドバイス
⑦本件の最終契約書に基づく資本取引等(クロージング)に関する支

⑧本件に関し必要な弁護士,公認会計士,不動産鑑定士等の専門家の
選任に関する助言及び原告のための上記専門家への情報提供,指示並
びに事務連絡の実行
⑨原告とDないしGとの間で随時合意する上記以外のサービス
アドバイザリー業務報酬
原告は,本件が成約し,Bの株式が事前に原告が承諾した先に譲渡さ
れた場合,D及びGに各5000万円(税別)を成功報酬として支払う。
エ原告は,同月28日,保有していたB株式49万株を1株あたり355
円(前日の終値)の代金1億7395万円でPに対して譲渡し,同様に,
同年3月30日,B株式46万株を1株あたり285円(前日の終値)の
代金1億3110万円でQに対して譲渡した。
同年2月28日,被告らは,D及びGに対し,株式譲渡アドバイザリー
契約②に基づく報酬として,5250万円(税込)ずつ,合計1億050
0万円(税込)を原告の資金から支払った。
オ被告らは,株式譲渡アドバイザリー契約①及び②の締結並びに各契約に
基づく前記ア及びエの支出に際して,原告において取締役会決議を行わな
かった。
店舗用複合機の導入に関するコンサルティング名目での業務委託契約(以
下「複合機導入コンサルティング契約」という。)の締結と金員の支出
アY3は,原告を代表して,G’との間で下記の内容を含む複合機導入コ
ンサルティング契約を締結した(甲25)。

G’が行う業務
原告における店舗用複合機(コピー・FAX・プリンター・スキャナ
ーの複合機)の導入に係る以下の助言及び必要に応じた事務手続その他
の業務
①店舗用複合機の導入に必要な資料の提供
②店舗用複合機の導入における価格その他取引条件の交渉等
コンサルタント料
成功報酬として,店舗用複合機の導入にかかる月額費用につき,業務
遂行に伴いコストの削減に成功した場合,当該削減額の2か月分に相当
する金員を支払う。
なお,平成22年11月5日付け「コンサルティング費用についての
合意書」(甲26)において,コンサルタント料は2625万円(税
込)と合意された。
複合機導入コンサルティング契約書記載の契約締結日は平成22年8
月18日となっているが(甲25),印章押印依頼書記載の印章押印実
行日は平成23年2月5日となっており(甲27),契約書は日付を遡
らせて作成されたものである。
イ平成22年11月25日,Y3は,複合機導入コンサルティング契約に
基づき,G’に対して2625万円(税込)を原告の資金から支払った。
ウなお,Y3は,前記イの支出に際して,原告において稟議手続を行わな
かった。
車両の調達及び維持管理に関するコンサルティング名目での業務委託契約
(以下「車両調達等コンサルティング契約」という。)の締結と金員の支出
アY3は,原告を代表して,Eとの間で下記の内容を含む車両調達等コン
サルティング契約を締結した(甲33)。

Eが行う業務
原告における車両(自動車・リフト等)の調達及び維持管理に係る以
下の助言及び必要に応じた事務手続その他の業務
①効率的な車両の調達及び維持管理に必要な資料の提供
②効率的な車両の調達及び維持管理のための価格その他取引条件の交
渉等
コンサルタント料
成功報酬として,車両にかかる月額費用につき,業務遂行に伴いコス
トの削減に成功した場合,当該削減額の2か月分に相当する金員を支払
う。
なお,平成22年11月1日付け「コンサルティング費用についての
合意書」(甲34)において,コンサルタント料は3076万5000
円(税込)と合意された。
車両調達等コンサルティング契約書記載の契約締結日は平成22年8
月23日となっているが(甲33),印章押印依頼書記載の印章押印実
行日は平成23年2月5日となっており(甲27),契約書は日付を遡
らせて作成されたものである。
イ平成22年11月25日,Y3は,車両調達等コンサルティング契約に
基づき,Eに対して3070万円(税込)を原告の資金から支払った。
ウなお,Y3は,前記イの支出に際して,原告において稟議手続を行わな
かった。
金融商品仲介業に関するコンサルティング名目での業務委託契約(以下
「金融商品仲介業コンサルティング契約」という。)の締結と金員の支出
ア原告は,平成22年7月28日開催の取締役会において,金融商品部
を設置する組織変更を決議するとともに,金融商品仲介業登録申請を行
うために必要となる規程の整備を行う旨決議した。さらに,同年8月末
頃に,原告は,東海財務局長に金融商品仲介業登録の申請を行い,同年
11月初めに,東海財務局長より金融商品仲介業者登録が完了した旨の
通知を受けた。(以上,弁論の全趣旨)
イY3は,原告を代表して,Dとの間で下記の内容を含む金融商品仲介
業コンサルティング契約を締結した。

Dが行う業務
原告において金融商品仲介業(金融商品取引業者との業務委託契約に
より,上場株式及び投資信託並びに債権等の有価証券の売買を媒介する
行為)を開業するにあたり,必要となる手続き及び社内体制の構築等に
関して,以下の助言及び必要に応じた事務手続その他の業務を提供する。
①金融商品仲介業の開業に必要な資料の提供及び社内体制構築等の助
言等
②所属金融商品取引業者の選定及び取引条件の交渉等
③金融商品仲介業の登録手続き及び外務員の育成に係る手配等
コンサルタント料
2200万円(税別)
金融商品仲介業コンサルティング契約書記載の契約締結日は平成22
年11月22日となっているが(甲35),印章押印依頼書記載の印章
押印実行日は平成23年2月5日となっており(甲27),契約書は日
付を遡らせて作成されたものである。
ウ平成22年11月25日,Y3は,金融商品仲介業コンサルティング契
約に基づき,Dに対して2310万円(税込)を原告の資金から支払った
(甲28,弁論の全趣旨)。
エなお,Y3は,前記ウの支出に際して,原告において稟議手続を行わな
かった。
東北関東大震災(以下「本件震災」という。)の被害の対応に関するコン
サルティング名目での業務委託契約(以下「本件震災対応コンサルティング
契約」という。)及びニンテンドー3DS大量仕入れに関するコンサルティ
ング名目での業務委託契約(以下「ニンテンドー3DSコンサルティング契
約」という。)の締結と各金員の支出
アdは,前記エのとおり,PがB株式を取得した後,cに対して,その
株式購入に関するあっせん報酬として3000万円を要求した。また,d
はcに対し,「この支払については,直接原告から報酬をもらうことは避
けたい」とも要望していた。
これを受けて,cはかかるdの要望をY3に伝えたところ,Y3は,平
成23年3月頃,原告からcを介して,dに対し3000万円を支払うよ
う,原告総務本部長であったnに指示した。
nは,かかる指示を受けてcと相談し,当時原告内で検討されていた事
項であり,仮装のコンサルティング契約の名目として使っても不自然では
ないものとして,本件震災への対応とニンテンドー3DSの仕入れを選ん
だ。そして,助言等の実体は全くないにもかかわらず,原告から,これら
のコンサルティング料の名目で合計3150万円(税込)を支払うことと
した。
イ前記アの経緯に基づき,Y3は,原告を代表して,Hとの間で下記の
内容を含む本件震災対応コンサルティング契約を締結した。

Hが行う業務
本件震災による原告及び原告子会社の被害等(以下「本件被害」とい
う。)の対応等。具体的には
①本件被害の収束に至るまでの適切な対応等に係る助言及び指導
②①に係る事務局の立ち上げ及び運営等に係る一切の業務
③本件震災に類する大規模災害発生時に備えた社内体制構築に係る助
言等
④③に付随するマニュアル等の整備に係る助言及び指導
コンサルタント料
1000万円(税別)
ウまた,前記イと同様に,Y3は,原告を代表して,Iとの間で下記の
内容を含むニンテンドー3DSコンサルティング契約を締結した。

Iが行う業務
原告における店舗にて取り扱う商材のうち,ニンテンドー3DSの大
量仕入れに係る以下の助言及び必要に応じた事務手続その他の業務
①ニンテンドー3DS仕入れに係る窓口担当者に係る情報の提供及び
紹介等
②ニンテンドー3DS仕入れにおける価格・数量その他の取引条件の
交渉等
③②の交渉結果に基づく契約の締結業務等
④②の交渉等に係るノウハウ等の助言及び指導等
コンサルタント料
2000万円(税別)
エ本件震災対応コンサルティング契約書(甲37,41)記載の契約締結
日は平成23年4月27日(甲37),ニンテンドー3DSコンサルティ
ング契約書記載の契約締結日は同年4月11日となっているが(甲41),
前記各コンサルティング契約に関する印章押印依頼書記載の印章押印実行
日は同年9月7日となっており(甲38),これらの契約書は日付を遡ら
せて作成されたものである。
オ同年4月28日,Y3は,本件震災対応コンサルティング契約及びニン
テンドー3DSコンサルティング契約に基づき,Hに対して1050万円
(税込),Iに対して2100万円(税込)を原告の資金からそれぞれ支
払った。
カなお,Y3は,前記オの各支出に際して,原告において稟議手続を行わ
なかった。
原告と被告ら補助参加人との間のアドバイザリー・サービス委託契約(以
下「株主総会アドバイザリー契約」という。)締結に至る経緯
ア平成23年7月27日,bが,原告の株主として,①社外取締役5名の
選任,②取締役の任期を2年から1年に短縮する定款一部変更を議案とす
る臨時株主総会の招集を請求した(甲109)。これを受けて,同年8月
19日開催の原告取締役会において,上記臨時株主総会を同年10月13
日に開催すること等が決定された(甲59)。
イ同年8月22日,被告らは,原告を代表して,被告ら補助参加人との間
で下記の内容を含む株主総会アドバイザリー契約を締結した(甲44)。

被告ら補助参加人のアドバイザリー業務内容
平成23年8月8日に原告の取締役会において決議された原告の臨時
株主総会を検討及び実施することに関する助言及びそれに関連するサー
ビス
アドバイザリー報酬
3000万円(税別)
ウ同月31日,被告らは,株主総会アドバイザリー契約に基づき,被告ら
補助参加人に対して3150万円(税込)を原告の資金から支払った。
エなお,被告らは,株主総会アドバイザリー契約締結及びこれに基づく前
記ウの支出に際して,原告において取締役会決議を行わなかった。
原告とRとの間の情報提供サービス利用契約(以下「サービス利用契約」
という。)締結に至る経緯
ア平成23年9月9日,被告らは,原告を代表して,特定の者だけがアク
セス権限を有するインターネットを介した情報提供サービスを提供する事
業者であるRとの間で,サービス利用契約を締結した。そして,被告ら
は,被告ら補助参加人に対し,上記情報提供サービスを通じて,原告の企
業価値を算定するのに必要な情報を提供した(甲48,弁論の全趣旨)。
イY1及びY3が代表取締役を退任した後,原告は,サービス利用契約に
基づき,Rに対して,利用料金として,同年11月30日に147万円
(税込),平成24年1月31日に241万5000円(税込)をそれぞ
れ支払った。
ウなお,被告らは,サービス利用契約締結に際して,原告において取締役
会決議を行わなかった。
3争点
本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出
が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,取締
役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
車両調達等コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支出
が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティ
ング契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈
怠ないし不法行為に当たるか
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の締結並びにこれらに
基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか
原告の損害及び被告らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間の因果関係
の有無
4当事者の主張
(本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員
の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
法令違反(取締役会決議の欠缺)
原告とDほかとの間の本件共同事業コンサルティング契約の締結は,
1億5750万円(税込)もの多額の支払の原因となるものであり,会
社法362条4項の規定する「重要な業務執行」に該当し,同規定を具
体化した原告の職務権限基準表においても,「1件1億円以上の債務負
担の決定」ないし「月額50万円以上の顧問・コンサルティング契約」
として取締役会決議事項とされていた。しかし,Y1及びY2は,原告
において必要であったかかる社内統制手続を全く無視して,敢えて総額
1億5750万円(税込)の支出を3本に分割し,取締役会決議が不要
な1件1億円未満の案件として処理し,取締役会決議を行わなかったの
であり,取締役としての善管注意義務に違反した(会社法355条,3
62条4項)。
本件共同事業コンサルティング契約締結等の必要性の不存在
そもそも,K銀行をはじめとする本件シンジケートローン参加行にお
いて,Bに対する早期返済を強硬に主張していたとの事実はなく,リフ
ァイナンス自体が不可避であったとはいえないし,仮にリファイナンス
の必要があったとしても,原告が直接Bに貸付けを行うなどの方法もあ
ったのであり,Mへの金利及び手数料の支払並びにcへの多額の報酬の
支払を強いてまで原告が表に出ることを避け,Nグループへの投資を介
して融資を行うという迂遠な方法をとる必要性はなかった。なお,原告
がBに対して直接融資を行うことができなかったとの事情も存しない。
また,MによるBへの貸付金28億円は実質的に原告が負担している
ことに加え,Mが本牧不動産の根抵当権の全部を取得していることから
すれば,Mは実質的に全くリスクをとっていないのであって,このよう
な好条件であれば,Nグループでなくてもリファイナンスに応じる相手
はいくらでもいたのである。
業務提供の実体の不存在
原告とDほかとの間の本件共同事業コンサルティング契約は,cに対
してコンサルティング料名目の金員を支払うための仮装の契約であり,
Dほかが何らかの役務を提供したわけではない。すなわち,M及びO銀
行は,自らリスクを判断し,かつ保全措置を用意してBに対し融資を実
行したのであり,法務やファイナンス実務の経験のないcの言動がかか
る融資の実行の成否に影響を与えたはずがなく,cが本件リファイナン
スに関し,何らかの具体的な成果をもたらす役務を提供した事実はなか
った。
報酬金額の過大性
実務上,28億円のリファイナンスをなしえたことについての対価が
1億5750万円というのはあり得ない高額報酬であって,不合理な支
出としか評価できない。
小括
以上のとおり,Y1及びY2が,cないしcの支配する会社に金銭を
支払うために,社内手続規定を敢えて無視して,原告にとって実質的に
必要性のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を締結し,これに
基づいて金員を支出した行為は,取締役としての善管注意義務違反に該
当し(会社法330条,民法644条),原告に対する任務懈怠ないし
不法行為を構成する。
イY1及びY2の主張
Y1及びY2が行った,原告からDほかへの各支出行為は適正であり,
Y1及びY2において何ら損害賠償責任を負ういわれはない。
法令違反(取締役会決議の欠缺)について
Dに加えて,他の2社との契約を求めたのはあくまでcの側であっ
て,Y1及びY2においては,cへの報酬の支払先について何ら関与す
るものではなかったのであるから,Y1及びY2において,原告の職務
権限基準表による社内手続規制を免れようとの意図のもと,本件共同事
業コンサルティング契約を3本に分けて締結したという事情は全くな
い。なお,原告の職務権限基準表については,原告がM&Aを繰り返し
て急激に業容を拡大した新興企業ということもあって,必ずしも厳格に
運用されてはいなかったところ,Y1及びY2において,本件共同事業
コンサルティング契約締結に当たって,取締役会の承認が必要であると
の認識は全くなかった。
本件共同事業コンサルティング契約締結の必要性及びcによる業務提
供の実体の存在
コンサルティング業務を主たる業務とするDの代表取締役であり,原
告の顧問と称するようになっていたcは,Bにおける本件シンジケート
ローン返済に関する問題の概略を把握していたところ,担当責任者であ
るY2に対しその解決策の提案をするようになり,Y2は,当然のこと
ながらcからの提案についても原告の部門連絡会議や取締役会で説明を
行っていた。Y2は,本件シンジケートローン返済に向けて,L銀行の
担当者に対し,債権一部放棄の申入れを行っていたが,断られるなど交
渉が全く進展しない中,cよりNグループの紹介を受け,本件シンジケ
ートローンの返済期限である平成21年9月末までという限られた時間
の中で,相当密にc及びNグループとの打合せを実施していた。なお,
週に2~3回程度のcとの打合せの際には,D及びEの担当者も同行し
ていた。そして,平成21年8月28日,原告とNホールディングスと
の間で基本合意の締結に至り,包括業務提携が実現でき,かつ本件リフ
ァイナンスが実行される旨の合意がなされたことから,同年9月初め
頃,cとの間で成功報酬についての協議を行い,Dほかとの間で本件共
同事業コンサルティング契約を締結し,同月18日,Dほかに対する合
計1億5750万円(税込)の報酬支払がなされたのである。
また,同月末に本件リファイナンスが完了した後も,Y2は,安定的
な長期の借入先を模索しており,cも引き続き積極的に長期借入先のあ
っせんに当たっており,新たに損害保険会社,証券会社,中国系も含め
た各種ファンド等に対し,Bに係る様々な投資,買収等の提案をもたら
していた。Y2は,平成22年春頃,cが本件に関し知己を得た税理士
のdを通して,さらなるリファイナンス先としてO銀行を紹介され,Y
2らにて,O銀行担当者と面談したところ,同銀行がBへの融資につい
て積極的な姿勢であることが確認され,諸条件については,dが原告の
窓口となってO銀行と調整していくことになった。その結果,同年6月
25日,O銀行から,合計30億円の融資を受けられることになったも
のである。
以上のとおり,cは自己の人脈を駆使しながら本件リファイナンスに
尽力したのであり,cによる実際の役務の提供が不存在であるとの原告
の主張は,ファイナンスにおける交渉・アドバイザリー業務を全否定す
るに等しく,暴論である。
報酬金額の相当性
Y1及びY2としては,Bが破綻懸念先に陥る以前の本件シンジケー
トローンの手数料が7000万円(税別)であったことからして,破綻
懸念先に陥った後のBへのファイナンスアレンジメントフィーをその倍
額の1億5000万円(税別)とすることは妥当な水準にあると判断し
たものである。
(株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出
が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
法令違反(取締役会決議の欠缺)
原告とD及びGとの間の株式譲渡アドバイザリー契約の締結は,1億
1865万円(税込)もの多額の支払の原因となるものであり,会社法
362条4項の規定する「重要な業務執行」に該当し,同規定を具体化
した原告の職務権限基準表においても取締役会決議事項とされていた。
しかし,被告らは,原告において必要であったかかる社内統制手続を全
く無視して,敢えて総額1億1865万円(税込)の支出を2社への支
払に分割し,取締役会決議が不要な1件1億円未満の案件として処理
し,取締役会決議を行わなかったのであり,取締役としての善管注意義
務に違反した(会社法355条,362条4項)。
株式譲渡アドバイザリー契約締結等の必要性の不存在
そもそも,本牧不動産の減損が必然ではなかったこと,株式譲渡先に
よる原告の融資肩代わりは受けられないにもかかわらず,原告がBに対
し36億円を貸し付けてその経営を軌道に乗せた直後に,単に時価でB
株式が売却されたことを考え合わせると,原告には特にメリットがな
く,原告がかかるB株式譲渡を行う必要性は全くなかった。
業務提供の実体の不存在
株式譲渡アドバイザリー契約は,cに対してコンサルティング料名目
の金員を支払うための仮装の契約であり,D及びGが何らかの役務を提
供したわけではない。被告らもcからの指示で支払先を分割しただけで
あると述べ,個々の会社に独立の作業実態が存在しなかったことを認め
ており,上記各契約は虚偽契約というべきものである。
また,cが紹介したとされる株式譲渡先はP及びQという出自不明の
会社であり,特に信用のある譲渡先を開拓したとはいえない上,P及び
Qは上場株式を購入する以上,自らリスクを判断して購入を実行してい
るのであり,cの言動が株式譲渡の実行の成否に影響を与えたはずがな
く,cがBの株式譲渡に関し,何らかの具体的成果をもたらす役務を提
供した事実はなかった。
報酬金額の過大性
仮にcがBの株式譲渡のために何らかの関与をしていたとしても,そ
の対価が1億1865万円(株式売却合計金額の38%超)というの
は,M&Aアドバイザリーの一般的な報酬相場が取引金額の1~5%で
あることに鑑みれば,あまりに高額であり,不合理な支出としか評価で
きない。
小括
以上のとおり,被告らが,cないしcの支配する会社に金銭を支払う
ために,社内手続規定を敢えて無視して,原告にとって実質的に必要性
のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を締結し,これに基づい
て金員を支出した行為は,取締役としての善管注意義務違反に該当し
(会社法330条,民法644条),原告に対する任務懈怠ないし不法
行為を構成する。
イ被告らの主張
法令違反(取締役会決議の欠缺)について
Dに加えて,Gとの契約を求めたのはあくまでcの側であって,被告
らにおいては,cへの報酬の支払先について何ら関与するものではなか
ったのであるから,被告らにおいて原告の社内手続規制を免れようとの
意図のもと,株式譲渡アドバイザリー契約を複数に分けて締結したとい
う事情は全くない。なお,原告の職務権限基準表については,原告がM
&Aを繰り返して急激に業容を拡大した新興企業ということもあって,
必ずしも厳格に運用されてはいなかったところ,被告らにおいて各株式
譲渡アドバイザリー契約締結において,取締役会の承認が必要であると
の認識は全くなかった。
株式譲渡アドバイザリー契約締結の必要性及びcによる業務提供の実
体の存在
O銀行以外の協力金融機関が現れず,Bは,ブリッジファイナンスで
あるMへの残債の返済に苦慮していたところ,cを介して,dから,B
のM&Aに興味がある旨の意向が示され,平成22年8月以降,原告の
取締役会等の場において,その旨が協議されていた。その後,BのM&
Aについては成就する可能性が高いとの判断のもと,同年9月14日,
Y1及びY3らの了解を得て,原告はcの関連会社であるDとの間で株
式譲渡アドバイザリー契約①を締結し,着手金1365万円(税込)を
支払った。なお,この頃,原告経理部において,Bにおける本牧不動産
の減損額についての試算を行ったところ,30億円を超える減損が発生
する可能性が指摘されており,原告においては,Bの原告からの切り離
しが急務であるとの認識になっていた。
平成23年1月頃,dが,M&A候補先企業であるSグループの窓口
を務めていたところ,かかるdから原告の窓口であるcを介して,「B
株式の取得につき,一度にTOBで過半を取得するよりも,まずは,ブ
ロックトレード(市場外で行われる相対の大口取引)できる範囲内で取
得しておき,その事業性・事業レバレッジを見極めたうえで,その後の
投資判断を検討したい。」旨の申し出がなされた。さらに,cよりその
他の候補先数社の紹介を受け,このうちT(d税理士顧問先)が名乗り
を上げてきたが,名古屋証券取引所に確認したところ,「同一性の事業
投資会社2社によるブロックトレードは認め難い。事業投資会社と純投
資先であれば問題はない。」との見解が示され,cにおいてさらに候補
先に当たることになった。M&A先企業が2社になるということで,同
年2月1日,Y1及びY3らの了解のもと,従前のDに加えて,cの関
連会社であるGとの間で成功報酬を各5000万円(税別)とする株式
譲渡アドバイザリー契約②を締結し,同月28日,D及びGに対し,成
功報酬として各5250万円(税込)の支払を行ったものである。
以上のとおり,cは自己の人脈を駆使しながらBの株式譲渡に尽力し
たのであり,cによる実際の役務の提供が不存在であるとの原告の主張
は,M&Aにおける交渉・アドバイザリー業務を全否定するに等しく,
暴論である。
争点(複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の
支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
複合機導入コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実体の
不存在
Y1及びY3は,cから8000万円もの不当な金銭的要求を受け,
同氏に対して4000万円程度を支払うために,G’との間で複合機導
入コンサルティング契約という架空の取引を作出して,cに資金を流出
させたものである。そして,G’が複合機導入の助言義務等を実施した
事実はない。
また,店舗用複合機の取引については,以前から原告とのつきあいが
深かったUが原告グループに好条件での営業をかけてきたため,これに
応じる形で同社との契約を締結したものであり,cが交渉等を行った結
果としてコスト削減が実現したわけではないし,そもそも店舗用複合機
の選択に当たって必要なシステムに関する専門知識をcが有していたと
は認められないから,cによるコンサルティングの実体も存在しない。
したがって,複合機導入コンサルティング契約に基づく金員の支出は
原告にとって全く必要性のないものであり,原告の取締役であったY1
及びY3がかかる支出を行うことはそもそも許されない。
内規違反(稟議手続の欠缺)
原告の職務権限基準表によれば,複合機導入コンサルティング契約に
基づく2625万円(税込)の支出には稟議を要することとなってい
た。しかし,Y1及びY3は,原告において必要であったかかる社内統
制手続を全く無視して,稟議手続を行わなかった。
小括
以上のとおり,Y1及びY3が,cないしcの支配する会社に金銭を
支払うために,社内手続規定を敢えて無視して,原告にとって実質的に
必要性のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を締結し,これに
基づいて金員を支出した行為は,取締役としての善管注意義務違反に該
当し(会社法330条,民法644条),原告に対する任務懈怠ないし
不法行為を構成する。なお,Y1とcとの関係性に鑑みれば,Y1が上
記支出について何も知らず,関与もしていないということはおよそ考え
られない。
イY1及びY3の主張
Y1について
そもそもY1は,複合機導入コンサルティング契約締結及び同契約に
基づく金員支出に全く関与していないから,何ら損害賠償責任を負わな
い。
複合機導入コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実体の
存在
原告が当時営業していた800店ほどの各店舗には必ず複合機が備え
付けられていたが,必ずしも大口ユーザーであることによる経済削減効
果を得られていない状況であったところ,平成22年7月上旬頃,複合
機の切り替えに当たって,原告の営業店舗全店の複合機を一斉に入れ替
えることで相当額のコスト削減効果が見込める状況であった。そこで,
当時,原告の顧問であったcからコンサルティング契約書記載の①店舗
用複合機導入に必要な資料の提供及び②店舗用複合機の導入における価
格その他取引条件の交渉等を受けることで,そのコスト削減効果を最大
限にしようとしたものである。具体的には,東京に在住するcと原告本
社担当者との間で,電話や,当時○○にあった原告東京オフィスの応接
室での面談,各メーカーから提出された資料のファックス送信等を通じ
てやりとりをしていた。国内最大手のV,W,Uの3社を競わせた結
果,Uが最もコスト削減効果の大きい提案を行ってきたので,原告は,
cのコンサルティングを受けながら,Uとの契約リスクを見極めつつ調
整を進め,同年11月中旬には,cのコンサルティングを受けながら,
Uとの間で契約条件の最終的な調整を行い,Uとの契約締結に至ってい
る。本件複合機導入に係るcの提案によるコスト削減効果は,1億円強
と見積もられたことから,同年11月5日頃,原告は,G’との間で,
支払うべき具体的なコンサルティング料2か月分相当として2625万
円(税込)と合意し,同月25日に同額のコンサルティング料を支払っ
たものである。
なお,複合機導入コンサルティング契約の当事者をcの関連会社であ
るG’にすることを求めたのはあくまでもcの側であって,Y3におい
ては,Dと同様にcが支配している企業群に属する会社への支払との認
識であり,cに係る報酬の支払先につき何ら関与するものではなかっ
た。
内規違反(稟議手続の欠缺)等について
契約書及び合意書等への原告の押印が遅れた点については,当時,原
告において,急激に成長した企業ということで十分な文書管理がなされ
ておらず,押印の申請が遅れるということはしばしばあったところ,特
に本件においては,契約の相手方が,原告の顧問であったcの関連会社
という事情もあり,契約書の原案までは作成していたものの,その押印
が後回しになってしまったものである。
また,稟議書の作成漏れの点についても,上記契約書への押印漏れと
同様,稟議書による管理という点でも必ずしも十分な体制となっておら
ず,単に漏れてしまったものである。
(車両調達等コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の
支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
車両調達等コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実体の
不存在
前記cからの不当な金銭要求に応
じて4000万円程度を支払うこととしたところ,前記複合機導入コン
サルティング契約の報酬として支払った2500万円(税別)を差し引
いた,残りの1500万円(税別)の支払をするために,Eとの間で車
両調達等コンサルティング契約を締結し,1500万円(税別)を水増
ししてEへ支払うこととした。このように,車両調達等コンサルティン
グ契約に基づく報酬のうち,1500万円(税別)分は,架空の取引を
作出して原告の資金をcに流出させたものであるし,これを差し引いた
残りの1430万円(税別)分についても,Eが車両の調達及び維持管
理に関する助言業務を実施した事実はない。また,原告がリバースオー
クションの取扱いを依頼した甲社は,原告の顧問であるоがnに紹介
し,nが社内の流通部に提案を行ったのであり,その後の甲社との交渉
も原告の担当者が直接行っていたものであるから,cは車両調達に何ら
関与していない。さらに,実際の経費削減効果は,車両107台につい
て4986万2743円,甲社への報酬額は,上記削減額の3割に相当
する1495万0882円であるところ,車両調達の実務を行った甲社
に対する報酬が1500万円に満たないにもかかわらず,何らの貢献も
していないcが3070万円(税込)もの高額の報酬の支払を受ける理
由はどこにもない。
したがって,車両調達等コンサルティング契約に基づく金員の支出は
原告にとって全く必要性のないものであり,原告の取締役であったY1
及びY3がかかる支出を行うことはそもそも許されない。
内規違反(稟議手続の欠缺)
原告の職務権限基準表によれば,車両調達等コンサルティング契約に
基づく3070万円(税込)の支出には稟議を要することとなってい
た。しかし,Y1及びY3は,原告において必要であったかかる社内統
制手続を全く無視して,稟議手続を行わなかった。
小括
以上のとおり,Y1及びY3が,cないしcの支配する会社に金銭を
支払うために,社内手続規定を敢えて無視して,原告にとって実質的に
必要性のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を締結し,これに
基づいて金員を支出した行為は,取締役としての善管注意義務違反に該
当し(会社法330条,民法644条),原告に対する任務懈怠ないし
不法行為を構成する。なお,Y1とcとの関係性に鑑みれば,Y1が上
記支出について何も知らず,関与もしていないということはおよそ考え
られない。
イY1及びY3の主張
Y1について
Y1は,車両調達等コンサルティング契約締結及び同契約に基づく金
員支出に全く関与していないから,何ら損害賠償責任を負わない。
車両調達等コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実体の
存在
原告は,営業用車両のリース契約について見直すことで相当額のコス
ト削減効果が見込める状況であったことから,当時原告の顧問であり,
以前から営業用車両に関してのアドバイスを受けていたcから,コンサ
ルティング契約書記載の①効率的な車両の調達及び維持管理に必要な資
料の提供並びに②効率的な車両の調達及び維持管理のための価格その他
取引条件の交渉等の役務の提供を受けることで,そのコスト削減効果を
最大限にしようとしたものである。すなわち,原告において,平成22
年10月以降,1年間の間にリース契約が終了する100台分の車両入
れ替え契約についてコスト削減を図るということで,cのコンサルティ
ングを受けつつ,甲社のリバースオークションを利用し手続を進めるこ
ととなった。そして,本件の担当者であるnは,cと主に電話でやりと
りをし,毎月2~3回所用により上京する都度,原告東京事務所でcと
打合せを行い,cから様々な助言を得た。
かかるリバースオークションを利用して一括での契約を進めるという
ことで,平成22年10月以降,1年間の間にリース契約が終了する1
00台分についてだけでも約1億4000万円程度の経費削減効果が得
られることとなり,残りの300台についてもこのときのリバースオー
クションを利用してのやりとりを通じて交渉のノウハウを得ることがで
きたことから,リバースオークションを利用することなく,同水準以上
の経費削減効果を得られる契約に順次切り替えていっている。原告とc
との間では,Eの報酬につき,経費削減効果の2か月分ということで合
意していたところ,平成22年11月1日頃,当初400台全ての切り
替えを予定しての報酬を想定していたという事情も加味して,3076
万5000円(税込)と合意し,同月25日に同額を支払った。ちなみ
に,リバースオークションを取り扱った甲社へは,経費削減効果の3
5%ということで,報酬として5000万円程度を支払っている。
なお,車両調達等コンサルティング契約の当事者をcの関連会社であ
るEにすることを求めたのはあくまでもcの側であって,Y3において
は,Dと同様にcが支配している企業群に属する会社への支払との認識
であり,cに係る報酬の支払先につき何ら関与するものではなかった。
また,Eへの支払は,あくまでcが支配している企業群に属する会社へ
の支払というもので,Eによる役務提供の有無に左右されるものではな
い。
内規違反(稟議手続の欠缺)等について
契約書及び合意書等への原告の押印が遅れた点については,当時,原
告において,急激に成長した企業ということで十分な文書管理がなされ
ておらず,押印の申請が遅れるということはしばしばあったところ,特
に本件においては,契約の相手方が,原告の顧問であったcの関連会社
という事情もあり,契約書の原案までは作成していたものの,その押印
が後回しになってしまったものである。
さらに,稟議書の作成漏れの点についても,上記契約書への押印漏れ
と同様,稟議書による管理という点でも必ずしも十分な体制となってお
らず,単に漏れてしまったものである。
(金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金
員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
金融商品仲介業コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実
体の不存在
原告とDとの間の金融商品仲介業コンサルティング契約に基づくコン
サルタント料2200万円(税別)のうち,少なくとも1000万円
(税別)分は,前記2銀行によるファイナンスに関するdへの
支払であったが,原告とdとの間では何らの合意も存在せず,原告がd
に対する支払をしなければならない法的根拠は全く存在しない。また,
残りの1200万円(税別)分についても,金融商品仲介業開業のため
の申請書類等は,原告の金融商品部部長の職を兼務していたpが,証券
会社勤務経験があり二種外務員資格を有している部下従業員に作成させ
ており,cが助言を与えたり,何らかの具体的成果をもたらす役務を提
供したりした事実はない。
したがって,金融商品仲介業コンサルティング契約に基づく金員の支
出は原告にとって全く必要性のないものであり,原告の取締役であった
Y1及びY3がかかる支出を行うことはそもそも許されない。
内規違反(稟議手続の欠缺)
原告の職務権限基準表によれば,金融商品仲介業コンサルティング契
約に基づく2310万円(税込)の支出には稟議を要することとなって
いた。しかし,Y1及びY3は,原告において必要であったかかる社内
統制手続を全く無視して,稟議手続を行わなかった。
小括
以上のとおり,Y1及びY3が,c及びd並びに同人らの支配する会
社に金銭を支払うために,社内手続規定を敢えて無視して,原告にとっ
て実質的に必要性のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を締結
し,これに基づいて金員を支出した行為は,取締役としての善管注意義
務違反に該当し(会社法330条,民法644条),原告に対する任務
懈怠ないし不法行為を構成する。なお,Y1は,前記2Bのリファ
イナンスに深く関わったものであるし,同人とcとの関係性に鑑みれ
ば,Y1が上記各支出について何も知らず,関与もしていないというこ
とはおよそ考えられない。
イY1及びY3の主張
Y1について
Y1は,金融商品仲介業コンサルティング契約締結及び同契約に基づ
く金員支出の手続に全く関与していないから,何ら損害賠償責任を負わ
ない。
金融商品仲介業コンサルティング契約締結の必要性及び業務提供の実
体の存在
原告においては,800店余りの店舗網及びアクセス数の多い原告ウ
ェブサイトを利用して多角的な収益源を確保するため,Nグループと提
携して,金融商品の仲介業を行うことを検討していたところ,当時原告
の顧問であったcから,原告において金融商品仲介業を開業するに当た
り,必要となる手続及び社内体制の構築等に関し,コンサルティング契
約書①ないし③記載のコンサルティングを受けることで,その円滑な導
入を図ろうとしたものである。原告は,cの助言に基づき,pによる二
種外務員資格の取得,金融商品部の設置などの組織変更,金融商品仲介
業登録申請を行うために必要となる規程の整備及び同申請等を行ったの
であり,cはかかる原告社内における体制整備に関する助言に加えて,
提携先であるNグループとの交渉も行っており,具体的な成果をもたら
す役務が提供された。
内規違反(稟議手続の欠缺)等について
契約書及び合意書等への原告の押印が遅れた点については,当時,原
告において,急激に成長した企業ということで十分な文書管理がなされ
ておらず,押印の申請が遅れるということはしばしばあったところ,特
に本件においては,契約の相手方が,原告の顧問であったcの関連会社
という事情もあり,その押印が後回しになってしまったものである。
また,稟議書の作成漏れの点についても,上記契約書への押印漏れと
同様,稟議書による管理という点でも必ずしも十分な体制となっておら
ず,単に漏れてしまったものである。
(本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコン
サルティング契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役として
の任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
ア原告の主張
本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサル
ティング契約締結の必要性並びに業務提供の実体の不存在
本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサル
ティング契約は,dへ3000万円を支払うために仮装された契約であ
り,上記各契約に基づく役務の提供は全く存しない。また,そもそも原
告とdとの間には何らの合意も存在せず,原告がdに対する支払をしな
ければならない法的根拠も全く存しない。
したがって,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3
DSコンサルティング契約に基づく金員の支出は原告にとって全く必要
性のないものであり,原告の取締役であったY1及びY3がかかる支出
を行うことはそもそも許されない。
内規違反(稟議手続の欠缺)
原告の職務権限基準表によれば,本件震災対応コンサルティング契約
及びニンテンドー3DSコンサルティング契約に基づく3150万円
(税込)の支出には稟議を要することとなっていた。しかし,Y1及び
Y3は,原告において必要であったかかる社内統制手続を全く無視し
て,稟議手続を行わなかった。
小括
以上のとおり,Y1及びY3が,dに金銭を支払うために,社内手続
規定を敢えて無視して,原告にとって実質的に必要性のない契約ないし
実体的に原因のない仮装契約を締結し,これに基づいて金員を支出した
行為は,取締役としての善管注意義務違反に該当し(会社法330条,
民法644条),原告に対する任務懈怠ないし不法行為を構成する。な
お,Y1は,前記2のBの株式譲渡に深く関わったものであるし,同
人とcとの関係性に鑑みれば,Y1が上記各支出手続について何も知ら
ず,関与もしていないということはおよそ考えられない。
イY1及びY3の主張
Y1について
Y1は,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DS
コンサルティング契約締結並びにこれらの契約に基づく金員支出の手続
に全く関与していないから,何ら損害賠償責任を負わない。
本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサル
ティング契約締結の必要性
原告にとって懸案であったBの株式譲渡に成功し
たのは,原告が株式譲渡アドバイザリー契約を締結していたcと,Sグ
ループの窓口となっていたdとの間の調整によるところが大きかったも
のである。Y3としては,本来であれば,dは,自らが窓口を務めてい
るSグループ等から報酬をもらうべきものと考えたが,cから多岐にわ
たるアドバイスを受けており,dに対するcの立場も慮って,やむを得
ず,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサ
ルティング契約に基づくコンサルティング料という名目で,B株式譲渡
に関するdへの報酬を支払うことにしたのである。
争点(株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の締結並びに
これらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当
たるか)について
ア原告の主張
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約締結目的の不当性

取締役が自己の会社支配権を維持するために買収防衛策等をとること
は,会社及び株主の利益を害する危険があり,取締役の善管注意義務違
反ないし誠実義務違反を構成しうるものである。そして,本件におい
て,被告らがbの請求した臨時株主総会における議案の成立を妨害し,
明らかになりつつあった被告らの不正行為の隠蔽を図り,bからの責任
追及を免れようとする目的,すなわち自己保身のために株主総会アドバ
イザリー契約及びサービス利用契約を締結し,これに基づく支出を行っ
たことは明白である。
また,株主総会アドバイザリー契約において提供される業務内容であ
る「臨時株主総会を検討及び実施することに関する助言及びそれに関連
するサービスの提供」という名目は全くの虚偽であり,被告らは,被告
ら補助参加人と共謀し,上記買収計画の一環として,サービス利用契約
を締結し,特定の者だけがアクセス権限を有するインターネットを介し
た情報提供サービスを通じて,原告の企業価値を算定するのに必要な原
告に関する大量の機密情報を,被告ら補助参加人,原告の買収を検討し
た企業,法律事務所及び会計事務所に提供した。かかる機密情報の提供
が臨時株主総会にかかる助言及びそれに関連するサービスの提供とは全
く関係のないことは明らかであり,被告ら補助参加人との上記契約に基
づいて実際に提供された役務は存在しない。
以上のとおり,株主総会アドバイザリー契約に基づく金員の支出は対
価性のないものであるから,原告の取締役であった被告らがそのような
支出を行うことはそもそも許されず,また,株主総会アドバイザリー契
約及びサービス利用契約は,被告らの自己保身のために,原告を第三者
に買収させる検討を行うことを目的とする契約であり,そのような目的
で原告の財産を費消することは許されず,かかる被告らの行為が善管注
意義務違反を構成することは明らかである。
法令違反(取締役会決議の欠缺)
仮に上記各契約の締結が,正当な業務執行の目的に基づくものであっ
たとしても,原告の買収に関わる企画である以上,会社法362条4項
に規定する「重要な業務執行」に該当し,原告の取締役会で決議する必
要があり,「重要な業務執行」を具体化した原告の職務権限基準表にお
いても,取締役会決議事項とされていた。しかし,被告らは「臨時株主
総会を検討及び実施することに関する助言及びそれに関連するサービス
の提供」にかかるアドバイザリー・サービス委託契約(株主総会アドバ
イザリー契約)の締結という全く虚偽の内容の稟議をY1及びY3限り
で行い,他の取締役への通知や連絡は一切無く,取締役会決議も行われ
なかった。したがって,被告らは,原告において必要であった内部統制
秩序を保持するための社内手続を全く無視したのであり,取締役として
の善管注意義務に違反した(会社法355条,362条4項)。
小括
以上のとおり,被告らが,自らの保身を目的として,原告を第三者に
買収させる検討を行うために,社内手続規定を敢えて無視して,原告に
とって実質的に必要性のない契約ないし実体的に原因のない仮装契約を
締結し,これに基づいて金員を支出した行為は,取締役としての善管注
意義務違反に該当し(会社法330条,民法644条),原告に対する
任務懈怠ないし不法行為を構成する。
イ被告らの主張
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約締結目的の正当性

平成23年7月29日,被告ら補助参加人従業員のq,r,sらが原
告本社に来社して,bが原告の代表者となるのは問題があるので,原告
の株主の利益のために,bに対抗して,現経営陣の会社支配権を維持す
る方策をとるよう強く勧め,同年8月5日には,「弊社のアドバイザリ
ー・サービスについて」と題するリーフレットをY3らに対して提出し
た。なお,乙銀行小牧支社の担当者からは,bが原告の経営の主要ポス
トに就任した場合には,以後は,原告への新規の融資には応じられない
旨の通告も受けていた。Y3らとしては,bが原告の株式のうち30%
以上を掌握している状況であったことから,bとの全面的な対決はでき
る限り回避したいと考えつつも,bの原告における稼働状況あるいは過
去の反社会的勢力との関係性についての指摘から,Y3ら現経営陣の会
社支配権維持には全くこだわるところがないものの,bが代表取締役と
なって原告についての会社支配権を確立してしまうことは原告の株主の
利益にならないものと考えた。その後,被告ら補助参加人から最低限の
実費相当額ということで,費用につき,3000万円(税別)とする旨
の申入れがあったので,Y3らはこれを了解し,同年8月22日に被告
ら補助参加人との間で株主総会アドバイザリー契約を締結し,同月31
日に約定の3150万円(税込)を支払ったものである。また,被告ら
は,サービス利用契約を締結し,原告の企業価値を算定するのに必要な
情報を被告ら補助参加人に提供した。
以上のとおり,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の
締結並びにこれらに基づく金員の支出は,被告ら当時の原告の経営陣が
その保身を図ったものではなく,bが代表取締役に就任することによる
原告の混乱を回避し,原告の株主の利益に資することを目的とするもの
であった。
業務提供の実体の存在等
被告ら補助参加人からは,その後,原告に興味を示したファンド等か
らのTOBの話がいくつか持ち込まれ,Rのサーバーにデュー・デリジ
ェンスのためのデータのアップを行ったが,結局,特に協議が進展する
ことのない状況下で被告らは原告の役員を退任することとなった。な
お,当然のことながら,原告の営業に係る秘密は保持されることが前提
であり,実際にも,サーバー費用を負担したほかには,原告には何らの
支出あるいは損害も生じていない。
争点(原告の損害及び被告らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間の
因果関係の有無)
ア原告の主張
前記で主張した被告らの任務懈怠ないし不法行為により原告
から支出した合計4億2308万5000円全額が原告の損害である。
また,本件訴訟にかかる弁護士費用相当額の損害は,上記金額の1割で
ある4230万8500円を下らない。
その結果,別紙2損害計算表の請求額欄のとおり,原告の損害額は合計
4億6539万3500円となり,Y1が支払うべき金額は同額,Y2が
支払うべき金額は3億4268万8500円,Y3が支払うべき金額は2
億9214万3500円となる。
イ被告らの主張
否認ないし争う。
前記過によれば,本件共同事業コンサルティ
ング契約及び株式譲渡アドバイザリー契約については,仮に原告の取締役
会決議に付していたとしても,bを含め被告ら以外の取締役が反対したと
いうことはおよそあり得ず,問題なく取締役会での承認が得られていたは
ずである。また,前記2ないしの各契約締結及びこれに基づく金員支
出に関しても,仮にnらにおいて稟議書が起案されていた場合の決裁はY
1及びY3によってなされるのであり,いずれにしても問題なく承認決裁
がされていたはずである。
よって,原告が主張する被告らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間
には因果関係がない。
第3当裁判所の判断
1認定事実
前記前提事実に加え,後掲証拠(特に明記しない限り,枝番があるものは枝
番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
原告の概要並びに役員の変遷状況とその経緯等
原告は,Y1により平成元年に設立された会社を母体とし,平成8年4
月,tが経営していた会社と合併してできた会社であり,tが代表取締役社
長,Y1が代表取締役専務となって,その後,積極的にM&A及び店舗買収
を行い,業容を拡大していった。その結果,原告は,平成○年○月,大阪証
券取引所のナスダック・ジャパンに,平成○年○月には東京証券取引所及び
名古屋証券取引所の各第一部に株式を上場した。
同年6月,tが交通事故で死亡したため,Y1が原告の代表取締役社長に
就任し,資本・業務提携等を積極的に推進していった。
平成19年6月,Y1は,原告の代表取締役社長を退任して,同代表取締
役会長に就任し,tの息子であるbの意向を受けて,uが原告の代表取締役
社長に就任した。Y1は,平成20年7月頃に原告の代表権を返上していた
が,原告の業績が悪化した等の事情により,bの要望を受けて,平成21年
6月,原告の代表取締役会長に復帰した。なお,uは,平成22年1月ま
で,原告の代表取締役社長であり続けたが,実質的な降格人事として,原告
の旧本社である別棟での勤務となった。(以上,乙28,Y1)
また,Y3は,公認会計士であり,原告と同業の丙社の代表取締役をして
いたが,Y1の依頼を受け,平成21年6月,原告の非常勤取締役に就任
し,月に2回ほど原告本社に出社して執務していた。そして,Y3は,Y1
からの依頼を受け,平成22年1月にuの後任として原告の代表取締役社長
に就任した。(以上,乙27)
Y2は,K銀行(当時は株式会社K’銀行)の勤務を経て,平成17年4
月から原告に勤務し,同年6月から取締役監査室長,平成19年6月から取
締役副社長に就任した。
社外調査委員会による調査()が行われていた期間中の平成23
年11月1日,Y1及びY3は代表取締役を退任し,bが原告の代表取締役
社長に就任した。
社外調査委員会による調査に至る経緯等について
ア平成23年5月下旬頃,bは,丁社の代表取締役であるvから,①平成
22年2月頃,cの仲介により,Y1及びY2と会合し,原告の子会社で
ある戊社(なお,平成22年10月1日に原告に吸収合併された。)から
丁社に対し協賛加盟保証金名目で3億円の資金提供を受けた,②かかる3
億円のうち2億2000万円をcの指示に基づきGへ業務委託料名目で送
金した,③その後,調査事務所の調査により,Gは不審な会社であるとの
調査結果を得たため,今後も原告が引き続き丁社の事業に融資等の支援を
してくれるのか確認したい等の事実説明及び追加融資の相談を受け,上記
調査事務所の報告書や,丁社からGへの送金に関する資料等を受領した。
bは,上記vからの相談を受け,原告の監査役であるa及びwに相談し
たところ,上記戊社の丁社に対する協賛加盟保証金名目での3億円の支出
は,内規上要求されていた原告の取締役会決議を潜脱して行われた疑いが
あるとともに,戊社が拠出した資金のうち2億2000万円もがGに流れ
ているとの事実が判明した以上,代表取締役社長であるY3にも相談の
上,事実調査を進めていくべきだということになった。(以上,甲80,
81,84)
イ平成23年6月,原告からのcないしc関連会社に対する不正支出の有
無を調査するため,Y3を委員長とし,原告の取締役であるb及びα並び
に原告の監査役4名を調査委員とする社内調査委員会が設置された。しか
し,Y3は,w監査役とともに,vと一度面談したが,その他には具体的
な調査を行うことはなかったため(Y3),上記調査は進捗しなかった。
ウそこで,w監査役の紹介により,原告の監査役会において,調査事務所
にcに関する調査を依頼し,同年8月9日,調査事務所による調査報告書
が提出されたところ,その内容は,c及びc関連会社には多大な問題があ
るというものであった。
上記調査結果を受け,原告の監査役会は,c関連の不正支出の有無に関
して,社外の第三者による調査を行うことを決定し,同年8月19日,監
査役会から調査依頼を受けた己法律事務所の弁護士等が原告を訪問して,
調査を開始しようとした。しかし,Y2及びY3らが,上記弁護士らの公
正中立性に問題があるなどの指摘をして調査に協力せず,警察を呼ぶなど
したため,結局上記弁護士らは調査を行うことができなかった。(以上,
甲4,108)
エその後,Y3がNホールディングス代表取締役のmに対して社外調査委
員の推薦を依頼し,mが推薦したβ弁護士が委員長を務め,その他弁護士
及び公認会計士から構成される社外調査委員会(以下「本件調査委員会」
という。)が同年9月6日に発足し,同月7日から同年12月16日ま
で,同調査委員会が聞き取り等の調査を行い,同日付けで,調査報告書
(甲4)を作成した。
本件調査委員会による調査報告書(甲4,5)の内容
調査報告書(甲4,5)の記載によれば,以下の事実が認められる。
ア本件共同事業コンサルティング契約について
c及びY2は,当初,本件調査委員会あるいは原告監査役会に対し,c
に対する1億5000万円(税別)の報酬支払を3社に分けた理由は,そ
れぞれの会社がBに関する業務を行ったため,その業務遂行の程度に応じ
て金額を振り分けたからであると説明していたが,その後,上記説明を変
遷させ,cの税金対策として3社に振り分けたにすぎず,上記3社が実際
に業務を分担して遂行したわけではないと説明するに至った。
イ株式譲渡アドバイザリー契約について
cは,当初,本件調査委員会に対し,1億円(税別)の報酬支払を2社
に分けた理由は,それぞれの会社がBに関する業務を行ったため,その業
務遂行の程度に応じて金額を振り分けたからであると説明していたが,そ
の後,上記説明を変遷させ,2社に分割して支払った意味はなく,全てD
に支払われてもよかったと考えているなどと説明するに至った。
ウ複合機導入コンサルティング契約について
隠蔽工作等の事実
平成22年10月頃,nは,Y3の指示により,当時Uの複合機導入
を担当していた原告従業員であるγに対し,複合機導入コンサルティン
グ契約という架空名目の契約に基づきcに2500万円(税別)を支払
った旨説明した。しかし,平成23年6月頃,nは,αから,複合機導
入コンサルティング契約の実態について問いただされたことから,かか
る契約が架空契約であることが発覚することを危惧し,γに対し,複合
機導入に関するコンサルティングの実態があるように仮装するための,
コンサルティングの成果物としての報告書及びコンサルティング業務の
内容や経緯等をまとめた文章を作成するように指示した。これを受け
て,同年7月7日頃,γは,上記報告書作成のための材料となる文章を
作成して,これを原告サーバー内の共有フォルダに保存するなどして,
nが同データを利用できる状態にした。また,同月8日頃,γは,複合
機導入に関する架空のコンサルティング業務内容や経緯等をまとめた
「ストーリー」と題する書面(甲32)を作成し,上記同様の方法でn
が同データを利用できる状態にした。さらに,nは,γが作成した書面
に複合機メーカーから受け取っていた資料等を添付して編集するなどの
加工を施した「複合機リプレースに関するご報告書」と題する書面を作
成し,これをコンサルティングによる成果物と偽って,本件調査委員会
に提出するなどしていた。しかし,その後,n及びγは,本件調査委員
会の追及によって,複合機導入コンサルティング契約が実体を伴わない
こと及び関係者間で口裏合わせ等を行ったことを認めるに至った。
関係者の最終的な説明内容
Y1,Y3,n,γ及びcらは,複合機導入コンサルティング契約締
結及びこれに基づく支出の経緯について,本件調査委員会に対し,最終
的に,以下のような説明をした。すなわち,平成22年2月から同年9
月頃までの間に,cがY3に対し,①過去のuとの交際費7000万円
と,②庚社株式売却のあっせん手数料1000万円の合計8000万円
程度の支払を要求したため,Y3はY1に相談したところ,Y1が「何
かの案件のときに上乗せして支払ってあげたらどうか」などと言ったた
め,上記要求額の半額である4000万円程度の支払には応じることと
した。そこで,Y3は,nに対し,cに4000万円を支払うことにな
ったため何らかの名目を立てるよう指示したため,nは,同年9月頃,
cと相談の上,その当時原告社内で進められていたコスト削減案件につ
いてのコンサルティング報酬という名目を用いてその支払を実行しよう
と考え,複合機導入コンサルティング契約を支払名目とすることとし
た。そして,同契約に基づいてG’に2500万円(税別)を支払うと
ともに,車両調達等コンサルティング契約に基づくコンサルティング報
酬に1500万円(税別)を水増しし,両社合計で4000万円(税
別)という業務としての実体的な裏付けのない支出をcに対して行っ
た。
なお,uは,本件調査委員会に対し,上記cの要求内容について,①
Y2とともにcと会食をした事実はあるものの,合計7000万円もの
接待を受けた事実はない,②庚社の株式譲渡あっせんに関する報酬支払
については,cとの間で確たる約束をしたものではない旨説明した。
エ車両調達等コンサルティング契約について
n及びY3は,本件調査委員会に対し,車両調達等コンサルティング契
約に基づくコンサルティング報酬合計3076万5000円(税込。税別
2930万円)(税別)の水増し分を差
し引いた残りの1430万円(税別)は,cによるコンサルティングの実
体がある正当な報酬であると述べ,n及びcは,かかるコンサルティング
の内容について以下のように説明した。
すなわち,nは,原告の社有車の管理経費削減について検討していたと
ころ,以前,原告顧問のоから「リバースオークション」という仕組みが
あると聞いていたことから,оに相談して,リバースオークションを取り
扱う業者として甲社を紹介してもらった。しかし,nは車両のリースやオ
ークションについての知識等がなかったため,オークションに詳しいcに
リバースオークションに関する助言を依頼し,cを介して,Eのfが行っ
た調査結果に基づく報告や助言を受けた。ただし,cによるかかる報告や
助言はいずれも口頭によるものであった。nは,これらの助言を受けて,
最終的に甲社にリバースオークションを依頼することとした。
なお,Eのfは,本件調査委員会に対し,原告の依頼により,車両のリ
バースオークションについて調査した事実やこの案件に関与した事実はな
い旨説明した。
オ金融商品仲介業コンサルティング契約について
支出名目の不整合
金融商品仲介業コンサルティング契約における支払依頼書の支払内容
欄には,「社有車ディスカウントオークション利用のコンサルティング
費用」という,金融商品仲介業コンサルティング契約の業務内容とは異
なる記載がされており,同支払依頼書に添付されているDから送付され
た請求書の備考欄にも「社有車ディスカウントオークション利用のコン
サルティング経費節減効果による成功報酬」と記載されていた。
コンサルティング業務についての関係者の説明内容等
n及びcらは,本件調査委員会に対し,金融商品仲介業コンサルティ
ング契約に基づくコンサルティング報酬合計2200万円(税別)のう
ち,①1000万円(税別)はdに対する報酬支払のために水増しした
ものであるが,②残りの1200万円(税別)は,cによるコンサルテ
ィングの実体がある正当な報酬であると述べ,契約締結の経緯やコンサ
ルティングの内容について以下のように説明した。
すなわち,①dがO銀行をBのリファイナンス先として紹介し,平成
22年6月に同銀行からの30億円の融資が実現したことから,dは原
告に対し,同融資金額の1.5%である4500万円を報酬として請求
するなどしたが,cによる減額交渉により,Y1及びY3の了解のも
と,最終的に1000万円を原告からdに支払うこととなった。そこ
で,nは,Y3らから指示を受け,cと相談の上,同年11月25日当
時,Dに支払うこととしていた金融商品仲介業コンサルティング料に1
000万円を水増しして支払うこととした。なお,これに先立つ同年8
月から9月にかけて,Dから,dが代表取締役を務めるC宛てに100
0万円が立替払された。また,②金融商品仲介業コンサルティング契約
においてコンサルティングの対象となった原告の金融商品仲介業とは,
Nホールディングス関連証券会社が扱っている金融商品を原告のホーム
ページに設置したバナーに掲載したり,原告の店舗内にパンフレットを
置いたりするなどして原告の顧客に宣伝し,上記金融商品が販売された
場合に原告がその仲介手数料を得るというものである。そして,原告が
上記金融商品仲介業を始めるに当たって,cは,原告経理本部長のpに
依頼して,その営業登録に必要な日本証券業協会の二種外務員資格を取
得してもらい,また,平成22年度の原告の定時株主総会で定款上の会
社の目的に金融商品仲介業を追加するための資料作成を行った。
なお,金融商品仲介業コンサルティング契約の契約書に記載されている
「金融商品仲介業の登録及び外務員の育成にかかる手配」について,n
は,本件調査委員会に対し,外務員資格試験の概要を聞くためのnとN
ホールディングス関連証券会社担当者の打ち合わせ(ただしcは欠席)
をcが手配した以外に,Dやcから助言を受けた事実はない旨説明し
た。
カ本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルテ
ィング契約について
隠蔽工作等の事実
nは,本件調査委員会に対し,当初,「3Dゲーム機の登場による市
場動向について(調査報告書)」と題する書面(甲42)がニンテンド
ー3DSコンサルティング契約の成果物であると回答していたが,本件
調査委員会の弁護士から,上記書面がジェトロのレポート(甲43)を
冒用したものであるとの指摘を受けて,ニンテンドー3DSコンサルテ
ィング契約が,B株式譲渡に関するdへの報酬支払をするための架空の
契約である旨を認めるに至った。
Y1の関与
Y3,n及びcは,本件調査委員会に対し,原告からcを介してdに
3000万円を支払うことについては,Y1の了解を得ていた旨説明し
ていた。
キ調査報告書の信用性に関する被告らの主張等について
被告らは,①本件調査委員会の委員の大半は,平成23年7月にbが原
告の社外取締役としての選任を求めたδ弁護士の主宰する己法律事務所に
所属する弁護士であって,一方当事者である原告ないしbと密接な関係が
あることからすれば,そもそも公正な調査を期待出来ない上,②調査報告
書(甲4)において,被告らに加えてuも決裁に関与していたことについ
て何ら記載がないことなどからして,かかる調査報告書の内容は信用性を
欠くと主張する。
しかし,①本件調査委員会の委員長であるβ弁護士は,調査の公平性を
求める被告らの意向に基づき,被告ら自ら選任したものである。また,本
件調査委員会の委員のうち5名は,bが社外取締役候補者の一人として選
任を求めたδ弁護士が主宰する己法律事務所に所属している弁護士である
ものの(乙36),かかる事実以外に,これらの者が原告ないしbと密接
な利害関係を有していたことをうかがわせる事情は見出せない。なお,本
件調査委員会の委員は,いずれも弁護士ないし公認会計士という社会的地
位と専門的知見を有する者であるから,かかる観点からしても,調査委員
の人選が公正性を欠くとは言い難い。また,②たとえuが一連のc関連の
不正支出に関する稟議を行っていたとしても,それによって被告ら自身の
責任の成否に直接の影響はなく,uの決裁に関する記載がないことをもっ
て,調査報告書の内容に信用性がないとまでは認められない。以上によれ
ば,被告らの主張には理由がなく,調査報告書の内容のうち,事実に関す
る評価が記載されている部分はともかくとして,少なくとも前記アないし
カのような,関係者の供述の聞き取り内容等の事実関係の記載について
は,十分に信用性が認められる。
被告らと被告ら補助参加人との交渉の経緯等
ア平成23年7月27日,被告ら補助参加人関係者が,名古屋証券取引所
において臨時株主総会招集請求に関する原告のプレスリリースが投函され
たのを偶然目撃し,同月28日,別件で原告本社を訪問した被告ら補助参
加人関係者が,原告の主幹事証券会社として,上記臨時株主総会招集請求
に関する事情を聴取しようとしたが,充分な回答を得られなかった。(以
上,丙7)
イそこで,同月29日,当時被告ら補助参加人の専務執行役員投資銀行副
本部長であったq,東京企業金融部第1グループリーダーであったsを含
む被告ら補助参加人関係者4名が,上記臨時株主総会招集請求に関する事
情を把握すべく原告本社を訪問し,Y2から事情説明を受け,同年8月1
日にも被告らから事情説明を受けた。被告らは,補助参加人に対して,被
告らがbの経営能力に疑問を抱いており,上記臨時株主総会招集請求は,
現取締役であるbが株主提案として行ったものであって,経営に関する支
配権をbのもとに移動させることを目的としたものである等の理由から,
bが原告の経営を支配する立場に立つことは,原告の株主の利益に適うも
のではない旨説明した。そして,被告らは,被告ら補助参加人との間で,
bによる上記臨時株主総会招集請求への対抗策として,①当該臨時株主総
会におけるプロキシーファイト(委任状争奪戦)と,これが奏効せずbの
提案議案が可決された場合を想定した②第三者(ホワイトナイト)による
公開買付けに向けた準備を進めることを決定した。(以上,丙7,s)
ウ同年8月3日,sらは,プロキシーファイトに関し,辛社と意見交換を
行い,臨時株主総会におけるプロキシーファイトの方策及び株主への働き
かけの方法について協議し,本件における臨時株主総会への対応について
検討した。しかし,当時の原告におけるbの議決権割合は30%を超えて
いること,辛社の要求する手数料が高額であり,同月5日に被告ら補助参
加人がY3に対して提示した手数料も高額となったため,Y3がこれを拒
絶したこと等から,被告ら補助参加人は,辛社へのプロキシーファイトに
関する依頼は断念し,ホワイトナイトの候補となるファンド等との交渉に
注力していった。(以上,丙7,s)
エ同月22日,被告ら補助参加人は,被告ら当時の原告経営陣に対し,主
に前記イ②のホワイトナイトに関する助言等を提供することとし,株主総
会アドバイザリー契約を締結した(s,弁論の全趣旨)。
オ被告らは,平成23年7月29日に被告ら補助参加人従業員のqらが原
告本社に来社した際,qらが,bが原告の代表者となるのは問題があるの
で,原告の株主の利益のために,bに対抗して,被告ら現経営陣の会社支
配権を維持する方策を採るように強く勧めた旨主張し,本人尋問において
これに沿う供述をする。しかし,会社の経営者の資質等について,あくま
で部外者にすぎない被告ら補助参加人が詳細に把握していたとは考え難
く,また,原告の経営の根幹に関わる方策を,当時の経営陣の意向も聞か
ないうちに被告ら補助参加人のほうから主体的・積極的に提案したという
ことは到底措信し難く,事情説明を求めて来社した被告ら補助参加人関係
者に対し,被告らが事情を説明した上で,対抗策の提案を求めたと見るの
が自然である。よって,上記被告らの供述は採用できない。
また,被告らは,前記イの対抗策のうち①のプロキシーファイトについ
ては,被告ら補助参加人に依頼しておらず,被告ら補助参加人が思い込み
でプロキシーファイトに関する業務を遂行していたにすぎないなどとも主
張し,本人尋問においてこれに沿う供述をする。しかし,被告ら補助参加
人が被告らからの依頼もなく独断でプロキシーファイトに関する業務を遂
行したとは通常考え難く,少なくとも被告らが被告ら補助参加人に臨時株
主総会への対応を依頼した平成23年7月29日時点においては,被告ら
は被告ら補助参加人に対し,プロキシーファイトを依頼していたとみるの
が自然である。よって,この点に関する被告らの供述も採用できない。
2本件共同事業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の
支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
法令違反(取締役会決議の欠缺)
Y1及びY2は,原告とDほかとの間での本件共同事業コンサルティング
契約を締結し,同契約に基づき,上記各社に対し,それぞれ9450万円
(税込),5250万円(税込),1050万円(税込)を支出するに当た
って,原告の取締役会決議を行っていない。たしかに,本件共同事業コンサ
ルティング契約は,形式的には3本に分かれているため,各契約金額は1億
円を下回っており,原告の職務権限基準表上の取締役会
決議事項に該当しない。しかし,Y2は,cが代表取締役を務めるDのみに
上記各契約金額の合計1億5750万円(税込)を支払うということで構わ
なかったと述べていることからして(Y2),上記のように契
約を3本に分割したことに合理的な理由は見出せず,実質的には1件1億5
750万円(税込)の支出があったと見るべきである。そうすると,かかる
1件1億円以上の契約案件は,原告の職務権限基準表
上,取締役会決議事項に該当する。そして,かかる原告の職務権限基準表上
に定められている取締役会決議事項は,原告にとって「重要な業務執行」
(会社法362条4項)を類型化したものと解するのが相当であるから,本
件共同事業コンサルティング契約締結及びこれに基づく金員支出に際し,取
締役会決議を経なかったことは,「重要な業務執行」について取締役会決議
を要求する会社法362条4項に違反する。
したがって,Y1及びY2が,取締役会決議を経ずに本件共同事業コンサ
ルティング契約を締結し,これに基づく合計1億5750万円(税込)の支
出を行ったことは善管注意義務違反(法令違反)に該当する(会社法355
条,362条4項)。
本件共同事業コンサルティング契約締結の必要性等
ア本件リファイナンスの経済合理性と原告による直接融資の可能性等
本件リファイナンスは,いわゆるブリッジファイナンスであり,事実
上,わずか6か月の返済期限延長をもたらすにすぎないものであった。
また,本件リファイナンスは,形式的にはMが合計28億円の貸倒れリ
スクを負うものではあるものの,原告のNグループに対する合計28億円
の投資等と見合いになっているため,Nグループ全体としてみれば,実質
的にリスクはなかったものと評価しうる。そうすると,かような好条件で
あれば,Nグループ以外の企業グループであっても融資に応じた可能性が
高いと推察される。
そして,上記のとおりの本件リファイナンスの構造からして,経済的に
見れば,原告がBに直接融資している状況と相違ないところ,原告は,さ
らにcに対しても報酬として1億5750万円(税込)を支払わなければ
ならず,直接融資をするよりも原告からの支出額が増大している。この
点,Y1及びY2は,①仮に原告がBに直接融資をすると,L銀行が原告
に対し,本牧不動産の担保解除に応じる条件としてJ向け債権額全額の支
払を要請してくるおそれがあること,②子会社支援は親会社の経営判断と
して役員の責任を問われるおそれがあることからして,表だって原告がB
に対し直接融資することはできなかった旨供述する。
しかし,L銀行が原告に対し,上記①のような要請をしていたことをう
かがわせる客観的な証拠はなく,本件リファイナンスがなされた後である
平成22年1月25日に10億円,同年5月31日に5億円を原告がBに
直接融資している事実(甲54)に鑑みれば,原告がL銀行との関係に照
らしてBへの直接融資を躊躇している状況であったとはいい難い。また,
②上記のとおり本件リファイナンスは,経済的に見れば,原告が子会社で
あるBを支援しているのと変わりがないことは明らかである上,原告がB
に対し上記15億円の直接融資をした後も融資を継続し,最終的に貸付残
高が41億円にまでのぼっていたこと(甲54)を考え合わせると,Y1
及びY2がB支援による法的責任を問われることを懸念して,原告がBに
対し直接融資をすることを躊躇していたともいい難い。なお,原告のε監
査役は,平成21年4月ころ,Bの経営状況が深刻であり,このまま放置
すると役員の法的責任問題が生じる可能性があるとして,原告がBに直接
融資をすることに反対していた(乙12の1,2)が,これが原告の監査
役会の意見であったとは認められない。
よって,上記Y1及びY2の主張は採用できない。
イ本件シンジケートローンの返済期限延長の可能性
また,Y1及びY2は,K銀行らが本件シンジケートローンの返済期限
における全額返済をBや原告に対し強硬に求めていたため,本件リファイ
ナンスを実行せざるを得ない状況に置かれていたと主張する。
たしかに,平成21年2月期から平成22年2月期頃のBの資金繰りは
悪化しており(乙15の2,4及びa),また,いわゆるリーマンショッ
クにより,平成20年頃,上場している不動産関連企業のうち,とりわけ
新興の企業が多く破綻したところ(乙17,19及びa),同年3月に上
場したBも当時,相当厳しい財務環境に置かれていたものと推認できる。
他方,Bは当時,原告の連結対象子会社であり,本件シンジケートロー
ンの主幹事であるK銀行は原告のメインバンクでもあった(a及びY
2)。そうすると,K銀行は原告との今後の関係性も考慮に入れる必要が
あるところ,Bに対し,新たな貸付けに一切応じないで,本件シンジケー
トローンの一括返済を強硬に求め続けたかどうかは不明というべきであ
る。
ウ小括
以上のとおり,K銀行等の本件シンジケートローン銀行団の最終的な態
度が不明であった以上,本件リファイナンスは,本件シンジケートローン
返済に関する1つの解決方法であったとはいえる。もっとも,本件リファ
イナンスは,経済的には原告がBに融資しているのと同様であって,原告
及びBにとって有利な内容であったとはいえず,また,Bがかかる本件リ
ファイナンスを行わざるを得ない状況に陥っていたとまではいえない。し
たがって,原告が本件リファイナンスに関し,cとの間で業務委託契約を
締結し,これに基づいて報酬1億5750万円(税込)を支出する必要性
も乏しかったものと認められる。
業務提供の実体の存否
Y1及びY2は,原告とNグループとの業務提携について,cがNグルー
プらと相当密に打合せを重ねていたと主張し,Y2もこれに沿う供述をする
が,cがNグループを原告に紹介した以外に具体的にどのような動きをして
いたのかをうかがい知ることのできる客観的証拠は何ら存しない。よって,
cやその関連会社において,本件共同事業コンサルティング契約に基づく業
務提供の実体があったとは直ちには認められない。
善管注意義務違反
Y1及びY2は,cの交渉により,原告とNグループとの間で本件リファ
イナンス及び本件共同事業の具体的な検討に入ったことから,平成21年9
月初め頃に本件共同事業コンサルティング契約を締結し,その後cとの報酬
額に関する交渉の末,同月18日に上記契約に基づく報酬を支払ったと主張
し,本人尋問においてこれに沿う供述をする。しかし,c
がNグループを原告に紹介した以外に,本件共同事業コンサルティング契約
の内容に沿った業務提供を行っていたとは認め難いから,Y1及びY2が,
Dほかとの間で本件共同事業コンサルティング契約を締結し,報酬として合
計1億5750万円(税込)を支出した行為は,正当な理由なく原告の財産
を流出させたものとして,善管注意義務違反に該当する(会社法330条,
民法644条)。
Y1及びY2の故意又は過失
ア法令違反(取締役会決議の欠缺)について
Y1は,本件共同事業コンサルティング契約締結及びこれに基づく金員
の支出に当たって,本来であれば取締役会決議を経るべき場合であるとの
認識があった旨供述しており,取締役会決議を経なかったことについて故
意があったものといわざるを得ない。他方,Y2は,本件共同事業コンサ
ルティング契約締結及びこれに基づく金員の支出に当たって,取締役会決
議を経るべきであるとの認識がなかった旨主張し,本人尋問においてこれ
に沿う供述をする。しかし,のとおり本件共同事業コンサルティン
グ契約を各1億円未満の金額の3本の契約に分けて締結したことに合理的
理由は見出せない上,原告の職務権限基準表上には,1件1億円以上の契
約案件等には取締役会決議を要する旨が明記されており,Y2がかかる規
定の存在を認識していなかったとは考え難い。したがって,Y2が取締役
会決議を経なかったことについて,故意あるいは少なくとも過失が認めら
れる。
イ本件共同事業コンサルティング契約の締結及び支出行為について
前記のとおり,Y1及びY2は,高額の報酬を支払うのに見合った業
務提供を受けることなく,Dほかとの間で漫然と本件共同事業コンサルテ
ィング契約を締結し,これに基づきcに対し合計1億5750万円(税
込)もの報酬支払を行ったものであるから,かかる善管注意義務違反行為
について故意あるいは少なくとも過失があったものといわざるを得ない。
小括
以上によれば,Y1及びY2が,法令及び原告の内規に違反して,取締役
会決議を経ずに,また,cによる業務提供の実体が融資先の紹介以外は不明
であるにもかかわらず,原告にとって必要性の乏しい本件共同事業コンサル
ティング契約を締結し,これに基づく報酬として合計1億5750万円(税
込)もの支出を行った行為は,原告に対する任務懈怠(会社法423条1
項)ないし不法行為(民法709条)に該当する。
3株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこれに基づく金員の支出が,
取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
法令違反(取締役会決議の欠缺)
被告らは,原告とD及びGとの間での株式譲渡アドバイザリー契約を締結
し,同契約に基づき,原告から上記各社に対し,それぞれ6615万円(税
込),5250万円(税込)を支出するに当たって,原告の取締役会決議を
行っていない。たしかに,形式的には,Dに着手金として1365万円(税
込)を支払う内容の株式譲渡アドバイザリー契約①,その後D及びGにそれ
ぞれ報酬として5250万円(税込)ずつを支払う内容の株式譲渡アドバイ
ザリー契約②に分かれているため,各契約金額は1億円を下回っており,前
原告の職務権限基準表上の取締役会決議事項に該当しな
い。しかし,被告ら及びcが,上記各契約金額全額が実質的にcへの報酬支
払であるとの認識であったことを自認していることからして(被告ら,前記
),上記のように株式譲渡アドバイザリー契約を各1億円未満の3本
の契約に分けて締結したことに合理的な理由は見出せず,実質的には1件1
億1865万円(税込)の支出があったと見るべきである。そうすると,か
かる1件1億円以上の契約案件は,原告の職務権限基準
表上,取締役会決議事項に該当するとともに,「重要な業務執行」(会社法
362条4項)として法令上も取締役会決議事項に該当する。
したがって,被告らが,取締役会決議を経ずに株式譲渡アドバイザリー契
約を締結し,これに基づく合計1億1865万円(税込)の支出を行ったこ
とは善管注意義務違反(法令違反)に該当する(会社法355条,362条
4項)。
株式譲渡アドバイザリー契約締結の必要性等
まず,①B株式の譲渡にcが関与していること及び同人への報酬支払が予
定されていることの説明はなかったものの,B株式を譲渡すること自体につ
いては原告取締役会において承認決議がされていること(乙13,Y2),
②原告がBを完全子会社化する意向を積極的に有していたわけではなかった
こと(a)等を考え合わせると,原告が保有するB株式を譲渡することにつ
いては原告役員の間で合意されていたと認められる。また,株式譲渡に当た
って,株式譲渡先のあっせんや譲渡価格等に関するコンサルティングを内容
とするアドバイザリー契約を締結する一般的必要性がないとまではいえな
い。
業務提供の実体の存否
被告らは,cによって提供されたコンサルティング業務の内容について株
式買受人の紹介や条件交渉等に関して多大な貢献をした等と主張し,Y2も
これに沿う供述をするが,株式買受人の紹介をした以外にこれらを客観的に
裏付ける証拠は何ら存しない。そして,株式売却代金合計3億0505万円
の約38%(消費税を考慮しなければ約37%)という高額の報酬を支払う
ような株式譲渡のアドバイザリーにおいて,譲渡先との交渉経過や条件面の
検討状況等を示す報告書等の成果物が一切存在しないというのは極めて不自
然である。
この点,被告らは,cの具体的な活動実績を示すものとして,乙5号証を
提出する。乙5号証は,東京証券取引所から照会があった場合に備えて作成
していた報告書とされているが(Y2),同書面の作成年月日は不明であ
り,実際に東京証券取引所へ提出された事実があるのかも不明である。ま
た,乙5号証別紙にはB株式の譲渡に至る経緯が時系列で書いてあるにすぎ
ず,同書面上に記載されている各話し合い期日において作成された書面や議
事録等が一切提出されていないため,cが具体的にどのようなことをしたの
かが明らかでない。さらに,原告からP及びQへの株式売却価格は,その取
引日の前日の市場終値で合意されたことが認められる(乙26,Y2)か
ら,譲渡価格が原告にとって特に有利であったともいえない。
よって,cによる株式譲渡アドバイザリー契約に基づく業務提供の実体は
株式買受人の紹介以外は不明であり,多額の報酬を支払うのが相当な業務提
供があったとは認められない。
善管注意義務違反
被告らは,本件リファイナンスを成功させたcの交渉により,Bの株式譲
渡についても成功する可能性が高くなったことから,平成22年9月14日
にDとの間で株式譲渡アドバイザリー契約①を締結し,着手金1365万円
(税込)を支払い,さらに平成23年2月1日にD及びcの関連会社である
Gとの間で株式譲渡アドバイザリー契約②を締結し,同月28日に成功報酬
として合計1億0500万円(税込)を支払ったと主張し,同人らもこれに
沿う供述をする。しかし,前記2のとおり,cが本件リファイナンスにおい
て具体的なコンサルティング業務を提供していたとは認め難い上,の
とおり,平成22年8月以降,cが乙5号証記載のとおりの活動をしていた
とも直ちには認め難いから,被告らが,D及びGとの間で株式譲渡アドバイ
ザリー契約を締結し,着手金及び成功報酬として合計1億1865万円(税
込)を支出した行為は,正当な理由なく原告の財産を流出させたものとし
て,善管注意義務違反に該当する(会社法330条,民法644条)。
被告らの故意又は過失
ア法令違反(取締役会決議の欠缺)について
被告らは,株式譲渡アドバイザリー契約締結及びこれに基づく金員の支
出に当たって,取締役会決議を経るべきであるとの認識がなかった旨主張
し,同人らもこれに
ドバイザリー契約を各1億円未満の金額の3本の契約に分けて締結したこ
とに合理的理由は見出せない上,Y1アのとおり,本件共同
事業コンサルティング契約締結及びこれに基づく金員支出に当たって,本
来であれば取締役会決議を経るべき場合であるとの認識があった旨供述し
ていることから,1件1億円以上の契約案件等には取締役会決議を要する
ことを認識していたものといえる。また,原告の職務権限基準表上には,
1件1億円以上の契約案件等には取締役会決議を要する旨が明記されてい
ることから,Y2及びY3もかかる規定の存在を認識していなかったとは
考え難い。よって,被告らが,株式譲渡アドバイザリー契約の締結及びこ
れに基づく金員支出に当たって取締役会決議を経なかったことについて,
故意あるいは少なくとも過失が認められる。
イ株式譲渡アドバイザリー契約の締結及び支出行為について
被告らは,高額の報酬を支払うのに見合った業務提供
を受けることなく,D及びGとの間で漫然と株式譲渡アドバイザリー契約
を締結し,これに基づきcに対し合計1億1865万円(税込)もの金員
支払を行ったものであるから,かかる善管注意義務違反行為について故意
あるいは少なくとも過失があったものといわざるを得ない。
小括
以上によれば,被告らが,法令及び原告の内規に違反して,取締役会決議
を経ずに,また,cによる業務提供の実体が株式買受人の紹介以外は不明で
あるにもかかわらず,株式譲渡アドバイザリー契約を締結し,これに基づく
着手金及び成功報酬として合計1億1865万円(税込)の支出を行った行
為は,原告に対する任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為(民法
709条)に該当する。
4複合機導入コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員の支
出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)
業務提供の実体の存否等
複合機導入コンサルティング契約は,Y1
及びY3が,cから要求された金員を原告から支出するための架空名目の契
約であったといわざるを得ず,同契約に基づく業務提供の実体があったとは
認められない。なお,原告がcの要求した4000万円程度の金員を支払う
べき正当な理由があったことをうかがわせる事情も存しない。
この点,Y3は,本件調査委員会に対して行った上記説明内容は,本件調
査委員会による調査を早期に終了させるために,cから平成23年7月に送
られてきた手紙の内容を参考に創作した虚偽の説明であった旨供述する。し
かし,Y3が本件調査委員会に対して行った説
めて詳細かつ具体的である一方,Y3が供述するcからの手紙が実在したか
どうかは証拠上明らかでなく,本件調査委員会の調査時におけるY3の説明
内容と矛盾するY3の法廷での上記供述は採用できない。
小括
以上によれば,複合機導入コンサルティング契約の締結及び同契約に基づ
く2625万円(税込)の支出は,実体を伴わない架空の契約に基づく金員
支出といわざるを得ず,かかる契約を締結してcに対し金員を支出すべき必
要性も認められないから,Y1及びY3のかかる行為について,原告に対す
る善管注意義務違反(会社法330条,民法644条)が認められる。
この点,Y1は,複合機導入コンサルティング契約締結及び同契約に基づ
く金員支出に関与していなかったと主張し,本人尋問においてこれに沿う供
述をするとともに,Y3もY1には相談していない旨供述する。
しかし,Y1及びY3Y
1の当時の原告における地位及びY1とY3の関係性に鑑みれば,上記Y1
は,原告の創業
者の一人であり,かつ原告の業績向上に長年貢献してきた人物であるとこ
ろ,原告社内においてbを含む他の役員や従業員から絶大な信頼を寄せら
れ,社内で最も発言力を有する人物であったことが容易に推認される。そし
て,Y3は,Y1の依頼を受けて,平成21年6月に原告の非常勤取締役に
就任し,平成22年1月から原告の代表取締役社長に就任したものであると
ころ,それから間もない時期に,上記のような架空契約の締結及びそれに基
づく金員支出という,原告に損害を与えることが明らかな行為を行うについ
て,Y1の意向を一切確認せずに独断で実行したものとは到底考え難い。ま
た,Y3は,平成21年6月以降に原告の経営に関わるようになったのであ
るから,それより以前に起こった事情に関してcが要求する8000万円を
原告が支払うべきか否かを判断できないことは明らかであり,Y3からの相
談を受けたY1が,cへの支払の可否を決定する等,複合機導入コンサルテ
ィング契約の締結と,これに基づく金員支出に主体的に関与していたことが
強く推認される。
なお,以上によれば,Y1及びY3は,原告からcに対しコンサルティン
グ報酬名目で不正に金員を得させる目的で店舗用複合機導入コンサルティン
グ契約を締結し,これに基づいて金員を支出したものといえるから,前記善
管注意義務違反についての故意が優に認められる。
したがって,Y1及びY3が,複合機導入コンサルティング契約を締結
し,これに基づく2625万円(税込)の支出を行った行為は,原告に対す
る任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為(民法709条)に該当
する。
5締結及びこれに基づく金員の支
出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
業務提供の実体の存否等
で認定したとおり,車両調達等コンサルティング契約におけ
る報酬額のうち,少なくとも1500万円(税別)部分については,Y1及
びY3が,cから要求された金員を原告において支出するための架空名目の
契約であったといわざるを得ず,同契約に基づく業務提供の実体があったと
は認められない。
そして,車両調達等コンサルティング契約に基づく報酬額のうち,上記金
額部分を差し引いた残りの1430万円(税別)について,Y1及びY3
は,cから提供された車両の調達及び維持管理に関するコンサルティング業
務に対する正当な報酬であると主張するが,実際にcからかかる業務提供が
されたことを裏付ける客観的証拠は何ら存しない。また,Y3は,cから受
けた具体的なコンサルティングの内容について把握しておらず,曖昧な供述
に終始している。
に対し,cによって行われたとするコンサルティング業務の内容について
縷々述べているものの,fの説明内容と矛盾している等,その説明内容の信
用性は直ちには認め難い。したがって,cによる車両調達等コンサルティン
グ契約に基づく業務提供の実体があったとは認められない。
小括
以上によれば,車両調達等コンサルティング契約は,全体として,業務提
供の実体のない架空名目の契約であったといわざるを得ず,かかる契約を締
結してcに対し金員を支出すべき必要性も認められないから,Y1及びY3
が,車両調達等コンサルティング契約を締結し,これに基づき3070万円
(税込)を支出した行為について,原告に対する善管注意義務違反(会社法
330条,民法644条)が認められる。
この点,Y1は,車両調達等コンサルティング契約の締結及びこれに基づ
く金員の支出に関与していないと主張し,本人尋問においてこれに沿う供述
をするが,
とおり,Y1の当時の原告における地位及びY1とY3の関係性等に鑑みれ
ば,Y1が車両調達等コンサルティング契約の締結及び同契約に基づく金員
支出に関与していなかったとはおよそ考え難く,上記Y1の主張は採用でき
ない。
なお,以上によれば,Y1及びY3は,原告からcに対しコンサルティン
グ報酬名目で不正に金員を得させる目的で車両調達等コンサルティング契約
を締結し,これに基づいて金員を支出したものといえるから,前記善管注意
義務違反についての故意が優に認められる。
したがって,Y1及びY3が,車両調達等コンサルティング契約を締結
し,これに基づく3070万円(税込)の支出を行った行為は,原告に対す
る任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為(民法709条)に該当
する。
6金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに基づく金員
の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
業務提供の実体の存否等
酬のうち,少なくとも1000万円(税別)部分については,Y1及びY3
が,dから要求された金員を原告において支出するための架空名目の契約で
あったといわざるを得ず,同契約に基づく業務提供の実体があったとは認め
られない。
ファイナンスに関して何ら契約関係はなく,原告がdに対し,上記1000
万円(税別)を支出すべき合理的な理由は存しない。
そして,Y1及びY3は,cから提供されたとする金融商品仲介業に関す
るコンサルティング業務の内容について縷々主張するが,実際にcからかか
る業務提供がされたことを裏付ける客観的証拠は何ら存しない。また,Y3
は,cから受けた具体的なコンサルティングの内容について把握しておら
ず,曖昧な供述に終始している。さらに,金融商品
仲介業コンサルティング契約の支払依頼書等には,支出名目として同契約の
業務内容とは異なる記載がされており,金融商品仲介業コンサルティング契
約の業務内容は重要視されていなかったことがうかがえ,実質的には,コン
サルティング報酬という名目で原告からcに対し金員を不正に支出するため
の契約であったことが推認される。なお,
仲介業コンサルティング契約の支払依頼書の支払内容欄に記載されている
「社有車ディスカウントオークション利用のコンサルティング費用」は,車
両調達等コンサルティング契約に基づくコンサルティング費用に対応するも
のと考えられるが,かかる契約が架空契約であり,コンサルティング報酬の
支払が不正支出に当たることは前記5で認定したとおりであり,いずれにし
ても原告からの金員支出を正当なものとみる余地はない。
小括
以上によれば,金融商品仲介業コンサルティング契約は,全体として,業
務提供の実体のない架空名目の契約であったといわざるを得ず,かかる契約
を締結してdないしcに対し金員を支出すべき必要性も認められないから,
Y1及びY3が,金融商品仲介業コンサルティング契約を締結し,これに基
づいて2310万円(税込)を支出した行為について,原告に対する善管注
意義務違反(会社法330条,民法644条)が認められる。
この点,Y1は,金融商品仲介業コンサルティング契約の締結及びこれに
基づく金員の支出に関与していないと主張し,本人尋問においてこれに沿う
で認定したとおり,Y1の当時の原告における地位
及びY1とY3の関係性等に鑑みれば,Y1が金融商品仲介業コンサルティ
ング契約の締結及び同契約に基づく金員支出に関与していなかったとはおよ
そ考え難く,上記Y1の主張は採用できない。
なお,以上によれば,Y1及びY3は,原告からdないしcに対しコンサ
ルティング報酬名目で不正に金員を得させる目的で金融商品仲介業コンサル
ティング契約を締結し,これに基づいて金員を支出したものといえるから,
前記善管注意義務違反についての故意が優に認められる。
したがって,Y1及びY3が,金融商品仲介業コンサルティング契約を締
結し,これに基づく2310万円(税込)の支出を行った行為は,原告に対
する任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為(民法709条)に該
当する。
7本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサ
ルティング契約の締結並びにこれらに基づく金員の支出が,取締役としての任
務懈怠ないし不法行為に当たるか)について
業務提供の実体の存否等
本件震災の被害の対応及びニンテンドー3DS大量仕入れに関するコンサ
ルティング業務が提供されたという事実がないことは当事者間に争いがな
い。また,Y3も,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3
DSコンサルティング契約は,dへの報酬支払のために架空名目で締結する
契約であると認識していた(Y3)。
Y1及びY3は,前記の原告のB株式譲渡におけるdの功績か
らして,原告からdに対し,金員を支出することもやむを得なかったと主張
するようである。しかし,Y1及びY3自身も認めるように,dはB株式譲
渡に当たってSグループの代理人を務めていたのであるから(弁論の全趣
旨),報酬はSグループから受領すべきものであって,dと契約関係にない
原告がかかる報酬をdに支払うべき合理的理由は見出し難い。
小括
以上によれば,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3D
Sコンサルティング契約は,業務提供の実体のない架空名目の契約であった
といわざるを得ず,かかる契約を締結してdに対し金員を支出すべき必要性
も認められないから,Y1及びY3が,上記各契約を締結し,これらに基づ
いて合計3150万円(税込)を支出した行為について,原告に対する善管
注意義務違反(会社法330条,民法644条)が認められる。
この点,Y1は,dへの報酬が架空契約によってcの関連会社を介して支
払われていたとは知らなかった旨供述する。しかし,かかる供述内容は,前
Y1自身,dへの報酬は本来Sグループから支払わ
れるべきとの認識だった旨述べているところ(Y1),かかるdへの報酬を
原告から支出するために,支出名目を仮装するようnらに指示したことが容
易に推認されるから,上記Y1の供述は措信し難い。
以上によれば,Y1及びY3は,原告からdに対しコンサルティング報酬
名目で不正に金員を得させる目的で本件震災対応コンサルティング契約及び
ニンテンドー3DSコンサルティング契約を締結し,これらに基づいて金員
を支出したものといえるから,前記善管注意義務違反についての故意が優に
認められる。
したがって,Y1及びY3が,本件震災対応コンサルティング契約及びニ
ンテンドー3DSコンサルティング契約を締結し,これらに基づく3150
万円(税込)の支出を行った行為は,原告に対する任務懈怠(会社法423
条1項)ないし不法行為(民法709条)に該当する。
8争点(株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約の締結並びにこ
れらに基づく金員の支出が,取締役としての任務懈怠ないし不法行為に当たる
か)について
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約締結の目的等
被告らは,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約締結の目的
は,原告株主の利益のためであり,被告らの保身を目的としたものではない
旨主張し,本人尋問においてこれに沿う供述をするとともに,s証人も被告
らが原告の経営にとどまることを求めていなかった旨証言する。
しかし,以下の事情に鑑みれば,上記被告らの主張は採用できない。
すなわち,まず,前記1bが臨時株主総会招集請求をした平
成23年7月当時,c関連の不明朗取引の真相解明に向けて,b及び原告の
監査役らが社内調査委員会を設置するなどの具体的な行動を起こし始めてお
り,さらに同年8月19日には原告の監査役会が調査を依頼した弁護士ら
が,調査のためY2及びY3に直接接触するなどしており,c関連の不明朗
会計の真相解明に向けた動きが着実に進行している状況にあった。そして,
前記1被告らは,上記bによる臨時株主総会招集請求のわずか
2日後には被告ら補助参加人に接触し,当該臨時株主総会決議に伴ってbが
経営の実権を握ることを阻止する対抗策を講じることを依頼した上,上記弁
護士らによる調査があってからわずか3日後に株主総会アドバイザリー契約
を締結している。なお,被告らは,被告ら補助参加人と接触したり,株主総
会アドバイザリー契約及びサービス利用契約を締結したりするに当たって,
原告の他の取締役及び監査役に対し,何らの相談ないし報告もしていなかっ
た(Y2,Y3)。以上の事実経過に鑑みれば,前記2ないし7で認定した
とおり,cに対する不正支出に関与していた被告らが,かかる不正支出につ
いての真相が解明されることにより,民事上ないし刑事上の責任を問われる
などし,自身らの原告取締役としての地位が失われることを危惧して,bに
よる経営権掌握の動きを阻止しようとする目的のもと,被告ら補助参加人と
の間で株主総会アドバイザリー契約を締結し,これに伴ってRとの間でサー
ビス利用契約を締結したことが容易に推認される。
小括
以上によれば,被告らは,自己保身ひいては被告ら自身の経営支配権維持
を目的に,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約を締結し,こ
れらに基づいて原告から合計3538万5000円(税込)を支出したもの
と認められる。そして,かかる支出行為は,原告の株主の利益に資するもの
であるとは到底いえず,原告にとって必要性のない支出といわざるを得ない
から,被告らの上記行為について,原告に対する善管注意義務違反(会社法
330条,民法644条)が認められる。なお,被告らは,自己保身ひいて
は被告ら自身の経営支配権維持の目的で株主総会アドバイザリー契約及びサ
ービス利用契約を締結し,これらに基づいて金員を支出したものといえるか
ら,前記善管注意義務違反についての故意が認められる。
したがって,被告らが,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契
約を締結し,これらに基づく合計3538万5000円(税込)の支出を行
った行為は,原告に対する任務懈怠(会社法423条1項)ないし不法行為
(民法709条)に該当する。
9争点(原告の損害及び被告らの任務懈怠ないし不法行為と損害との間の因
果関係の有無)について
本件共同事業コンサルティング契約について
ア損害額
前記2で認定したとおり,そもそも本件共同事業コンサルティング契約
を締結する必要性が乏しかった上,cが同契約に基づいて役務を提供した
事実も認められないから,Y1及びY2が原告から支出した1億5750
万円(税込)全額が原告の損害に当たる。
イ因果関係
Y1及びY2は,仮に取締役
会決議を経ていても,問題なく承認決議がなされたはずであるとして,同
人らの任務懈怠ないし不法行為と損害発生との間に因果関係が存しない旨
主張し,cに対し本件リファイナンスに関する報酬を支払うことをbない
しuにおいてY1及
びY2が主張するような事実経過が存したとはいえないことは前記2で認
定したとおりであるし,Y1及びY2がbないしuに対し上記報告をして
いたと認めるに足りる客観的な証拠も存しないことからして,Y1及びY
2の任務懈怠ないし不法行為と損害発生との間には因果関係が優に認めら
れる。
株式譲渡アドバイザリー契約について
ア損害額
前記3で認定したとおり,cが株式譲渡アドバイザリー契約に基づいて
役務を提供した事実は認められないから,被告らが原告から支出した1億
1865万円(税込)全額が原告の損害に当たる。
イ因果関係
被告らは,仮に取締役会決議を経ていても,問題なく承認決議がなされ
たはずであるとして,任務懈怠ないし不法行為と損害発生との間に因果関
係が存しない旨主張する。しかし,cに対し,株式売却合計金額の38%
超に及ぶ合計1億1865万円(税込)ものアドバイザリー報酬を支払う
という株式譲渡アドバイザリー契約の内容が,取締役会で適時に告知され
ていれば,そのような多額の報酬を支払う必要性について疑問が提起さ
れ,cが介入したB株式売却の必要性についてまで疑義を生じかねなかっ
たことは容易に推認されるのであり,被告らの任務懈怠ないし不法行為と
損害発生との間には因果関係が認められる。
複合機導入コンサルティング契約及び車両調達等コンサルティング契約に
ついて
前記4及び5で認定したとおり,複合機導入コンサルティング契約及び車
両調達等コンサルティング契約は,Y1及びY3が,cに不正に金員を得さ
せる目的で締結した架空契約であり,コンサルティング業務が提供された事
実は認められないから,かかる契約に基づいて,Y1及びY3が原告から支
出した5695万円(税込)全額が原告の損害に当たる。なお,Y1及びY
3の任務懈怠ないし不法行為と損害発生との間には因果関係が優に認められ
る。
金融商品仲介業コンサルティング契約について
前記6で認定したとおり,金融商品仲介業コンサルティング契約は,Y1
及びY3が,cに不正に金員を得させる目的で締結した架空契約であり,コ
ンサルティング業務が提供された事実は認められないから,かかる契約に基
づいて,Y1及びY3が原告から支出した2310万円(税込)全額が原告
の損害に当たる。なお,Y1及びY3の任務懈怠ないし不法行為と損害発生
との間には因果関係が優に認められる。
本件震災対応コンサルティング契約及びニンテンドー3DSコンサルティ
ング契約について
前記7で認定したとおり,本件震災対応コンサルティング契約及びニンテ
ンドー3DSコンサルティング契約は,Y1及びY3が,dに不正に金員を
得させる目的で締結した架空契約であり,コンサルティング業務が提供され
た事実は認められず,その他原告からdに報酬を支払うべき必要性は何ら存
しないことから,かかる契約に基づいて,Y1及びY3が原告から支出した
合計3150万円(税込)全額が原告の損害に当たる。なお,Y1及びY3
の任務懈怠ないし不法行為と損害発生との間には因果関係が優に認められ
る。
株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用契約について
前記8で認定したとおり,株主総会アドバイザリー契約及びサービス利用
契約は原告にとって締結する必要性が認められないものであるから,かかる
契約に基づいて,被告らが原告から支出した合計3538万5000円(税
込)全額が原告の損害に当たる。なお,被告らの任務懈怠ないし不法行為と
損害発生との間には因果関係が認められる。
弁護士費用
原告が,被告らに対する損害賠償請求のために,原告訴訟代理人に対して
本件訴訟提起を委任したことは本件記録上明らかであり,これにより原告が
弁護士費用相当の損害を被ったことは明らかというべきところ,本件事案の
性質,審理の経過及び認容額に鑑みると,原告が被告らの任務懈怠ないし不
法行為による損害として賠償を求めうる弁護士費用の額は,損害額の7%相
当額(ただし,別紙2損害計算表のとおり,各項目毎の損害について算定
し,損害金額が1000万円以上の場合は10万円未満を,損害金額が10
00万円未満の場合は1万円未満を,それぞれ四捨五入する。)と認めるの
が相当である。
遅延損害金
被告らの原告に対する前記2ないし8の各善管注意義務違反行為は,取締
役の任務懈怠ないし不法行為に該当するので,弁護士費用相当額の損害を含
めて,不法行為の日となる各支出の日から年5分の遅延損害金の支払義務が
発生する。
10まとめ
以上によれば,原告の本件請求は,別紙2損害計算表のとおり,Y1につい
て4億5265万5000円,Y2について3億3340万5000円,Y3
について2億8415万5000円及び各支出日から支払済みまで年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める限度において,理由がある。
第4結論
よって,原告の請求を上記限度で認容することとし,主文のとおり判決す
る。
名古屋地方裁判所民事第7部
裁判官湯浅徳恵
裁判官那智久美子
裁判長裁判官永野圧彦は,転補のため署名押印することができない。
裁判官湯浅徳恵
別紙添付省略

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