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平成11年(ワ)第10596号 損害賠償請求事件(A事件)
同年(ワ)第10599号 損害賠償請求事件(B事件)
同年(ワ)第13548号 損害賠償請求事件(C事件)
同年(ワ)第13550号 損害賠償請求事件(D事件)
口頭弁論終結日 平成12年12月25日
   判  決
A・B事件原告X
C・D事件原告Y
上記両名訴訟代理人弁護士   山元真士
C・D事件原告補佐人弁理士橋爪英彌
AないしD事件被告   松下電工株式会社
訴訟代理人弁護士   小 松 陽一郎
同             池下利男
訴訟復代理人弁護士   平野和宏
補佐人弁理士   井 澤 眞樹子
同             荒川伸夫
    主  文
1 A・B事件原告及びC・D事件原告の各請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、A・B・C・D事件を通じて、A・B事件原告及びC・
D事件原告の負担とする。
   事実及び理由
第1 請求
(A事件)
 被告は、原告Xに対し、金1億3500万円及びこれに対する平成11年1
0月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(B事件)
 被告は、原告Xに対し、金1億1250万円及びこれに対する平成11年1
0月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(C事件)
 被告は、原告Yに対し、金1億1250万円及びこれに対する平成11年1
2月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(D事件)
 被告は、原告Yに対し、金1800万円及びこれに対する平成11年12月
29日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、合計4つの特許権の各特許権者である原告らが被告に対し、被告が
地震ロック装置付きの家具、吊り戸棚等を販売する行為は原告らの特許権を侵害
(方法の発明に係るものは間接侵害)するものであると主張して、補償金及び損害
賠償を請求した事案である。
1 争いのない事実等
(1) 被告は、電気機械器具及び各種機械器具の製造並びに販売、建築材料の製
造並びに販売等を目的とする株式会社である。
(2) 原告Xは、次のA及びB記載の各特許権を、原告Yは、次のC及びD記載
の各特許権を有している(以下、AないしD記載の各特許権を順次「A特許権」な
どといい、後記各請求項に係る発明を順次「A発明」などといい、各特許権に係る
明細書(補正後のもの)を順次「A明細書」などという。)。
Aa 発明の名称 地震時ロック装置及びその解除方法
b 特許番号 第2926114号
c 出 願 日 平成7年7月16日(特願平7-210921号)
d 公 開 日 平成8年8月6日(特開平8-199886号)
(ただし、平成9年3月6日付、平成10年4月17日付及び同年10
月19日付で手続補正がされた。)
e 登 録 日 平成11年5月14日
f 特許請求の範囲は、別添特許公報A該当欄記載のとおり。
g A発明の構成要件は、次のとおり分説できる。
【請求項2】
(a)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体に
(b)動き可能に係止手段を設け
(c)該係止手段が開き戸の係止具に
(d)地震時のゆれが原因で振動を伴わず係止するロック方法において
(e)開き戸を閉止状態からわずかに開かれた位置で開き停止させ
(f)開き戸の解除を伴って戻る際に弾性手段の抵抗が作用する
(g)開き戸の地震時ロック方法
【請求項4】
(h)請求項2を用いた
(i)吊り戸棚
【請求項5】
(j)請求項2を用いた
(k)家具
【請求項6】
(l)閉じる方向の動きで係止解除される際に
(m)弾性手段の抵抗が存在する解除方法を用いた
(n)地震時に開き停止される開き戸
【請求項7】
(o)閉じる方向の動きで係止解除される際に
(p)弾性手段の抵抗が存在する解除方法を用いた
(q)地震時に開き停止される開き戸において
(r)解除を達成するに十分な距離を確保した隙間を有して地震時に開き停
止される開き戸
【請求項8】
(s)請求項6又は7を用いた
(t)吊り戸棚
【請求項9】
(u)請求項6又は7を用いた
(v)家具
Ba 発明の名称 地震時ロック方法、装置及びその解除方法
b 特許番号 第2873441号
c 出 願 日 平成7年10月13日(特願平7-301860号)
d 公 開 日 平成9年6月17日(特開平9-158591号)
(ただし、平成9年3月24日付及び平成10年5月3日付で手続補正
がされた。)
e 登 録 日 平成11年1月14日
f 特許請求の範囲は、別添特許公報B該当欄記載のとおり。
g B発明の構成要件は、次のとおり分説できる。
【請求項1】
(a)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体の係止手段が開き戸
の係止具に地震時に係止するロック方法において
(b)開き戸が閉止状態からわずかに開かれた位置で
(c)弾性手段による戻り抵抗で開き保持して開き停止させ
(d)及び開き停止した前記開き戸が前記戻り抵抗に抗して閉止位置に戻る
際にその動きで前記係止手段が係止解除される解除方法を用いた
(e)ロック及び解除方法であって
(f)軸で支持された係止手段とした
(g)地震時ロック及び解除方法
【請求項3】
(h)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体の係止手段が開き戸
の係止具に地震時に係止するロック方法において
(i)開き戸が閉止状態からわずかに開かれた位置で開き停止させ
(j)及び開き停止した前記開き戸が閉止位置に戻る際にその動きで前記係
止手段が係止解除される解除方法を用いた
(k)ロック及び解除方法であって
(l)装置本体に収納された係止手段が地震時に装置本体外に突出して開き
戸の係止具に係止する
(m)地震時ロック及び解除方法
【請求項6】
(n)請求項1又は3の地震時ロック及び解除方法を用いた
(o)吊り戸棚
【請求項7】
(p)請求項1又は3の地震時ロック及び解除方法を用いた
(q)家具
Ca 発明の名称 開き戸の地震時ロック装置、ロック方法、開き戸、吊り
戸棚及び家具
b 特許番号 第2873445号
c 出 願 日 平成8年3月1日(特願平8-84445号)
d 公 開 日 平成9年9月9日(特開平9-235931号)
(ただし、平成9年5月19日付及び平成10年5月3日付で手続補正
がされた。)
e 登 録 日 平成11年1月14日
f 権利の移転 原告Yは、出願人であるZから原告Xを経て特許を受け
る権利を譲り受けた。
g 特許請求の範囲は、別添特許公報C該当欄記載のとおり。
h C発明の構成要件は、次のとおり分説できる。
【請求項1】
(a)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体側に係止手段を設け
該係止手段が開き戸の係止具に地震時に係止するロック方法において
(b)ゆれで動き可能な係止手段の動きを係止手段とは別体の振動可能に収
納された振動手段が
(c)前記係止手段の動きを補助する
(d)開き戸の地震時ロック方法
【請求項2】
(e)振動手段が係止手段に接触することにより該係止手段の動きを補助す

(f)請求項1記載の
(g)開き戸の地震時ロック方法
【請求項7】
(h)請求項1又は2記載の開き戸の地震時ロック方法を用いた
(i)吊り戸棚
【請求項8】
(j)請求項1又は2記載の開き戸の地震時ロック方法を用いた
(k)家具
Da 発明の名称 開き戸の地震時ロック方法及び地震検出方法
b 特許番号 第3005596号
c 出 願 日 平成7年5月2日(特願平7-143812号)
(ただし、平成7年5月10日付、同年7月12日付、同月14日付、
同年9月27日付、平成8年11月19日付、平成10年5月3日付及び同年8月
21日付で手続補正がされた。)
d 公 開 日 平成9年1月14日(特開平9-13781号)
e 登 録 日 平成11年11月26日
f 権利の移転 原告Yは、原告XからD特許権を譲り受け、平成11年
11月14日付で、その旨の登録がされた。
g 特許請求の範囲は、別添特許公報D該当欄記載のとおり。
h D発明の構成要件は、次のとおり分説できる。
【請求項1】
(a)その安定位置から両方向にゆれ動き可能な本体側に設けられた振動体
であって
(b)該振動体自体が開き戸の係止具に地震時に係止してロックする
(c)開き戸の地震時ロック方法
(3) 警告
 原告Xは、被告に対し、A特許権につき平成9年3月10日到達の書面
で、B特許権につき同年7月14日到達の書面で、C特許権につき同年9月18日
到達の書面で、D特許権につき同年10月9日到達の書面で、それぞれ、特許法6
5条1項に基づく警告をした。
(4) 被告は、別紙イ号物件目録及び別紙ロ号物件目録各記載の吊り戸棚等を販
売している(以下、各吊り戸棚等を「イ号物件」、「ロ号物件」、各吊り戸棚等に
用いられる地震ロック装置を「イ号装置」、「ロ号装置」という。)。
2 争点
(1) イ号物件及びロ号物件の構成
(2) A発明について
ア 明白な特許無効理由の存在
イ 構成要件充足性
(3) B発明について
ア 明白な特許無効理由の存在
イ 構成要件充足性
(4) C発明について
ア 明白な特許無効理由の存在
イ 構成要件充足性
(5) D発明について
ア 明白な特許無効理由の存在
イ 構成要件充足性及び均等の成否
(6) 補償金及び損害の発生と額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(イ号物件及びロ号物件の構成)について
〔原告らの主張〕
 イ号物件及びロ号物件の構成は、別紙「原告ら主張イ号物件構成目録」及び
「原告ら主張ロ号物件構成目録」各記載のとおりである。
〔被告の主張〕
 イ号物件及びロ号物件に設置されるイ号装置及びロ号装置の構成は、別紙
「被告主張イ号装置構成目録」及び「被告主張ロ号装置構成目録」各記載のとおり
である。
2 A発明について
(1) 争点(2)ア(明白な特許無効理由の存在)について
〔被告の主張〕
ア 抽象的、機能的クレームからなることについて
(ア)a 請求項2では、構成要件(b)の「動き可能に(係止手段を設
け)」、同(d)の「振動を伴わず係止する」、同(f)の「弾性手段」及び「(弾性手
段の)抵抗」、
b 請求項6では、構成要件(m)の「弾性手段の抵抗」、
c 請求項7では、構成要件(p)の「弾性手段の抵抗」、同(r)の「解除
を達成するに十分な距離を確保した隙間」、
等の文言が記載されている。しかし、「弾性手段」や「弾性手段の抵
抗」という用語は、「ばね」からなる構成のものは容易に想到できるが、それ以外
の構成のものがどこまで含まれるかは明確ではなく、また、「解除を達成するに十
分な距離を確保した隙間」とは実際にはどの程度のものを指すのかは全く不明であ
る。
 その他、「動き可能な係止手段」、「振動を伴わず係止する」という
機能的表現の文言についても、具体的な構成としてどのようなものが含まれるのか
は到底理解できない。
(イ) そこで、特許法70条2項に従い、A明細書の発明の詳細な説明や
図面を参照して上記各文言の意味を探求することとする。
a 「動き可能な係止手段」(「動き可能に(係止手段を設け)」)に
ついて
 A明細書によれば、「動き可能」という用語自体の説明は特にな
く、「発明の詳細な説明」の「実施例」中に、地震のゆれによってそれ自体が動き
係止する手段の存在と、その係止手段としては鋼や鋼球は開示されているが、それ
以外の構造のものは何ら開示・示唆されておらず、作用効果の記載もない。
b 「振動を伴わず係止する」について
 係止手段が「係止具に地震時のゆれが原因で振動を伴わず係止す
る」との文言は、ばね手段が振動することについての記載があるのみで、係止手段
はその受け手として説明されている。その他に「振動を伴わず係止する」との文言
と同一の文言や近似する文言、それを示唆する記載は一切ないし、作用効果の記載
もない。そもそも口語的にも意味不明である。
c 「弾性手段」及び「弾性手段の抵抗」について
 「弾性手段」については、A明細書の図1、図9及び図10等の「弾
性手段」、図5のコイルばね(4欄4~5行)が記載されているだけであり、共通
してばねが使用されているものしか例示されておらず、その他の具体的な構造は何
ら開示されていないし、示唆するものもない。
 また、「弾性手段の抵抗」との文言に関しては、図1と図9に示さ
れる実施例では、弾性手段が係止手段を押さえる例が示されているのに対し、図
10以下では弾性手段が解除具を押さえる例が示されており、このように何に対する
抵抗か分からないのである。
d 「解除を達成するに十分な距離を確保した隙間」について
 A明細書には同文言を直接・一義的に説明している個所がない。
 この文言は「弾性手段の抵抗が存在する解除方法を用いた地震時に
開き停止される開き戸において」という要件を前提とするものであるが、A明細書
に、弾性手段の抵抗との関係で説明されているのは、「地震が終わり開き戸(2)を開
くには使用者は開き戸(2)を強く押す。」(3欄39~41行等)という表現のみであっ
て、「解除を達成するに十分な距離を確保した隙間」は「隙間」であるから何らか
の数値的なものとして特定されるべきであるが、明細書には何らの記載もないし、
それを示唆するものもなく、対応する作用効果の記載もない。
 なお、B発明の請求項1、3では「開き戸が閉止状態からわずかに
開かれた位置で…開き停止」とされており、B明細書の図16の説明にも「わずかに
開く」(6欄11行)との表現があり、A明細書の図4もこれとほとんど同じ図であ
り、同じく「わずかに開く」(3欄30行。なお、ここに図3とあるのは図4の誤記
である。)とされていることからすると、「十分な距離を確保した隙間」とは、
「わずかに開」かれた図4より当然広い隙間でなければならないはずであるが、そ
のような図や説明個所はどこにも見当たらない。
e その他、請求項6の構成要件(l)の「係止解除」の文言も、何と何と
の係止解除か判明しないため、その概念の外延を把握することができない。
(ウ) そうすると、上記各文言は、概念自体が不明瞭であり、概念の外延
も把握しようがないのであって、A発明の各請求項の記載は、抽象的すぎるもので
あり、当業者が実施できる程度に「明確かつ十分に記載」(特許法36条4項)さ
れておらず、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したもの」
(同条6項1号)でなく、「明確」(同項2号)でもないことが明白であり、特許
無効理由(同法123条1項4号)を有する。
 したがって、A特許権に基づく本件請求は権利の濫用であり許されな
い。
イ その他の無効理由について
(ア) A発明の請求項2は、その出願前に頒布された刊行物である米国特
許第5035451号公報(乙1の1・2、以下「乙1公報」、その発明を「乙1発
明」という。)、米国特許第5312143号公報(乙3の1・2、以下「乙3公
報」、その発明を「乙3発明」という。)に記載された発明と、「開き戸の解除を
伴って戻る際に弾性手段の抵抗が作用する」(構成要件(f))の点で異なっているだ
けである。この相違点に関しては、開き戸が閉止状態に戻る際に、開き戸の衝撃的
当たりを避けるために、キャビネット本体側にバネのような弾性体を配置しておい
たり、不用意に開かないようにしておくことは普通に考慮されてきている公知ない
し周知慣用の技術にすぎず(例えば、特開昭63-315786号公開特許公報
(乙4、以下「乙4公報」、その発明を「乙4発明」という。)参照)、当業者で
あれば、これらの公知技術から容易に想到し得たことであり、一見明白に進歩性が
ない。
(イ) A発明の請求項6の構成要件は、A発明の請求項2の構成要件(f)
(開き戸の解除を伴って戻る際に弾性手段の抵抗が作用する)及び同(g)(開き戸の
地震時ロック方法)の組み合わせと同一であるから、A発明の請求項2について述
べたとおり、当業者であれば、前掲の公知技術から容易に想到し得たものであり、
一見明白に進歩性がない。
 A発明の請求項7の構成要件も、同請求項6と実質的に同一と考えら
れる。
(ウ) A発明の請求項6、7は、先願に係る特願平6-293587号
(特開平7-305551号、乙21。以下「乙21発明」という。)の出願当初
の明細書又は図面に記載された発明と同一であって、特許法29条の2の規定に違
反するものであり、無効理由を有する。
(エ) A発明は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていな
い補正をした特許出願に対して特許されたものであり、無効理由(同法123条1
項1号)を有する。
  すなわち、平成10年4月15日付手続補正書による補正で、請求項
2に「弾性手段の抵抗が作用する開き戸」との事項が(請求項3の補正は除く)付
加され、また、平成10年12月19日付手続補正書による補正で、請求項2に
「動き可能に」及び「地震時のゆれが原因で振動を伴わず係止する」との事項が、
請求項6及び7に「弾性手段の抵抗が存在する」との事項がそれぞれ付加された。
 しかし、いずれの補正内容についても不明瞭であり、発明の詳細な説
明とも対応しておらず、出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲内のもの
に直接的かつ一義的に対応するものでなく、自明なものでもない。
(オ) A発明の請求項2、6、7(出願日平成7年7月16日)は、その
先願のB発明の請求項1(優先日平成7年7月4日)の上位概念であるから、特許
法39条1項の規定に違反して特許されたものであり、無効理由を有する。
〔原告Xの主張〕
ア A発明の構成要件が発明の詳細な説明等を参酌しても概念自体が不明瞭
で概念の外延も把握しようがないとの被告の主張は争う。
(ア) 請求項2の構成要件(b)の「動き可能に(係止手段を設け)」が明確
な概念であることは明らかである。
(イ) 請求項2の構成要件(d)の「振動を伴わず係止する」とは、机の上の
倒れやすい物がある強さ以上のゆれで転倒する場合のように、振動しない動きによ
り係止することを意味し、A明細書中に「動く」という表現で説明されている。
(ウ) 請求項2の構成要件(f)の「弾性手段」及び「(弾性手段の)抵
抗」、請求項6の構成要件(m)の「弾性手段の抵抗」、請求項7の構成要件(p)の
「弾性手段の抵抗」とは、「弾性手段」すなわち「撓みを利用するためのもの」
が、解除抵抗として用いられていることを意味し、そのことは当業者であれば明ら
かである。
(エ) 請求項7の構成要件(r)の「解除を達成するに十分な距離を確保した
隙間」とは、解除するための「解除しろ」を確保するという意味であり、そのこと
はA明細書の記載から明らかである。
イ その他の無効理由について
(ア) 乙1発明は、開き戸側で、閉じる際の衝撃を検出し、係止手段に弾
性手段の抵抗が存在しないものであり、請求項2の発明のように、吊り戸棚等の本
体側で地震検出し、係止手段に弾性手段の抵抗が存在するものではない。
 乙3発明は、手で操作して解除し、係止手段に弾性手段の抵抗が存在
しないものであり、請求項2の発明のように、開き戸の戻る動きで解除し、係止手
段に弾性手段の抵抗が存在するものではない。
 乙4公報の技術は、開き戸自動解放防止方法についての開き戸の解除
方法ではない。
 乙21発明は、閉じる方向の動きで障害物(ころがり部材)を除去
し、次の操作である開き戸を開く操作で初めて「係止解除」されるものであり、請
求項2の「解除を伴って戻る」、請求項6、7の「閉じる方向の動きで係止解除さ
れる」ものではない。また、乙21発明における上記「閉じる方向の動き」は、
「わずかに開かれた位置から」の動きではなく、閉じられた位置から更に内方に押
すものであって、この点において、請求項2、6、7の発明とは異なる。
 したがって、上記いずれの技術も、A発明とは異なるものであり、被
告の上記技術を根拠とする進歩性の欠如、特許法29条の2違反の主張は理由がな
い。
(イ) 被告が特許法17条の2第3項違反であると主張する「弾性手段の
抵抗」「動き可能」「振動を伴わず」等の補正事項は、いずれも当初の明細書の
「発明の詳細な説明」において明示ないし示唆されていたものであり、同項違反は
ない。
(ウ) 被告は、A発明の請求項2、6、7が、その先願のB発明の請求項
1の上位概念であり、特許法39条1項の規定に違反するものであると主張する。
 しかし、A発明の請求項2は「振動を伴わず係止するロック方法にお
いて」との限定があるのに対して、B発明の請求項1はそのような限定はない。
 また、A発明の請求項2においては「解除を伴って戻る際に弾性手段
の抵抗」とされ、その抵抗は「解除抵抗」、すなわち開き戸の保持のためではな
く、係止手段を保持するために弾性手段を用いた結果としての抵抗であるのに対
し、B発明の請求項1における抵抗は「戻り抵抗」、すなわち開き戸をわずかに開
かれた位置で開き保持するための抵抗である。
 したがって、両者は異なる技術であるから、特許法39条1項違反は
ない。
(2) 争点(2)イ(構成要件充足性)について
〔原告Xの主張〕
ア(ア) 請求項2について
   イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、
(a)家具、吊り戸棚等の本体(91)内に固定された装置本体(2)に
(b)動き可能に係止手段(アーム)(4)を設け
(c)該係止手段(アーム)(4)が開き戸(92)の係止具(5)に
(d)地震時のゆれが原因で振動を伴わず係止するロック方法において
(e)開き戸(92)を閉止状態からわずかに開かれた位置で開き停止させ
(f)開き戸(92)の解除を伴って戻る際に弾性手段(舌片)(5c)の抵抗が
作用する
(g)開き戸(92)の地震時ロック方法
であり、請求項2の構成要件をすべて充足する。
(イ) 請求項6について
  イ号物件及びロ号物件は、
(l)閉じる方向の動きで係止解除される際に
(m)弾性手段(舌片)(5c)の抵抗が存在する解除方法を用いた
(n)地震時に開き停止される開き戸(92)
であり、請求項6の構成要件をすべて充足する。
(ウ) 請求項7について
  イ号物件及びロ号物件は、
(o)閉じる方向の動きで係止解除される際に
(p)弾性手段(舌片)(5c)の抵抗が存在する解除方法を用いた
(q)地震時に開き停止される開き戸(92)において
(r)解除を達成するに十分な距離を確保した隙間を有して地震時に開き
停止される開き戸(92)
であり、請求項7の構成要件をすべて充足する。
(エ) イ号物件及びロ号物件は、上記の各構成を有する吊り戸棚、家具で
あるから、請求項4、5、8、9も充足する。
イ 上記構成のうち、被告が争っている部分について反論する。
(ア) A発明の請求項2、6、7の「弾性手段」について
 「弾性手段」とは、「撓みを利用するためのもの」であり、ばねに限
定されるわけではないから、イ号物件及びロ号物件の舌片(5c)がこれに該当する。
イ号装置は特許第2957137号の発明の実施品であり、ロ号装置は特許第29
57151号の発明の実施品であるところ、これらの特許公報(乙9、11)にお
いて舌片(5c)を「弾性手段」と認める記載があることからも、そのことは明らかで
ある。
 また、弾性手段を本体側に設けるか、開き戸側に設けるかについて
は、特許請求の範囲で限定しているものではなく、当業者であれば、適宜設計変更
できる事項であって、A明細書中に弾性手段を開き戸側に設けた実施例が記載され
ていないとしても、弾性手段を本体側に設けたもののみに限定されるものではな
い。
(イ) A発明の請求項2の「係止手段が…振動を伴わず係止する」につい

 「振動を伴わず係止する」とは、机の上の倒れやすい物がある強さ以
上のゆれで転倒する場合のように、振動しない動きにより係止することを意味す
る。
 イ号物件及びロ号物件は、地震波の強弱によって、係止手段(アー
ム)(4)が「振動を経て」係止する場合と「振動を伴わず」係止する場合があるが、
一定の地震波のもとにおいて「振動を伴わず係止する」という作動をする以上、同
構成を備えているといえる。
〔被告の主張〕
ア 争点(2)アの〔被告の主張〕で述べたように、A発明の特許請求の範囲の
記載は抽象的、機能的であるから、明細書の実施例に限定して技術的範囲を定める
べきである。そうすると、イ号物件及びロ号物件はA発明の実施例とは全く異なる
構成であるから、その技術的範囲に属さない。
イ A発明の請求項2、6、7の「弾性手段」について
(ア) 「弾性手段」に関して具体的な開示があるのは、A明細書の図1~
13のみである。また、B明細書の図1~9、14~19、21~23の実施例にも開示され
ている。発明に使用されている用語の意義を探求する場合に、同じ発明者の同一分
野における他出願での用語の使い方を参考にすることは一般的に認められている。
 そこで、これらの実施例における「弾性手段」を見ると、いずれもドア
側ではなく家具等の本体側に設けられており、ゆれの力より大きく設定された押さ
え力を有し、開き戸を閉じる方向に作用するゆれに抗して係止手段又は解除具を押
さえ、その戻り抵抗で開き戸を開き停止させるものであり、いずれにもばねが存在
している。それ以外のパターンの構成については、何の開示も示唆もない。
 そして、その用語自体が極めて抽象的である上、乙3発明のように弾性
手段を有する公知技術が存在していることをも参酌すれば、どのような構造であっ
てもすべてA発明でいう弾性手段に該当するということにはなり得ない。
(イ) また、「弾性手段」は前述のとおり補正により請求項に追加された文
言であるが、原告Xの主張のようにあらゆる弾性手段を意味するとすると、願書に
最初に添付した明細書から直接的かつ一義的に導き出すことのできない事項を含む
こととなり、新規事項の追加となって、特許無効理由を有することになる。
 したがって、第1に、弾性手段は、係止手段が戻るのを抑える機能を持
つものに、第2に、係止手段を抑える弾性手段は、装置本体の係止手段の戻り路に
設けられたものに限定解釈されるべきである。
(ウ) そうすると、原告Xが弾性手段であるとする舌片(5c)は開き戸(92)側
に設けられており、ばねではなく、戻り路に設けられたものでもないから、A発明
の技術的範囲に属するものでないことは明らかである。
ウ A発明の請求項2の「係止手段が…振動を伴わず係止する」について
 「係止手段が…振動を伴わず係止する」は、原告Xが主張するように一
定以上の加速度がかかった場合に動くものであるとしても、他の振動体によって動
かされる係止手段(アーム)(4)はA発明で想定されている「係止手段」ではない。
 以上のことは、原告Xが、平成9年4月30日付刊行物提出書(乙5)
において、係止手段がゆれに対してどのように反応してロック作動するかというこ
とに関し、①タイプA=係止手段を振動させて一定以上の振幅になれば係止具に係
止するようにしたもの、②タイプB=係止手段は振動せずゆれに起因する一定以上
の加速度がかかればその力で動くようにしたもの、③タイプC=係止手段に別に設
けられた振動体が当たれば係止手段が突出し係止具に係止するようにしたもの、の
3つに分類し、A明細書中の実施例をタイプAないしタイプBのみに位置づけてい
ることからも裏付けられる。
 そうすると、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)は、原告X
の主張を前提としても、(振動を伴わない)「係止手段」に当たらない。
3 B発明について
(1) 争点(3)ア(明白な特許無効理由の存在)について
〔被告の主張〕
ア 抽象的、機能的クレームからなることについて
(ア)a 請求項1では、構成要件(c)の「弾性手段」、同(f)の「軸で支
持」、(その他構成要件(c)の「弾性手段による戻り抵抗で開き保持して」、同(d)
の「前記戻り抵抗に抗して」も含む。)、
b 請求項3では、構成要件(l)の「装置本体外に突出」、
等の文言が記載されているが、これらの文言は一義的に明確であるとは
いえない。
(イ) そこで、特許法70条2項に従い、B明細書の発明の詳細な説明や
図面を参照して各文言の意味を探求する。
a 「弾性手段」については、B明細書についても、A発明で主張した
ところと同じである。
b 「軸で支持」について
 B明細書中には、「軸(3f)に回動可能に係止手段(4)が支持され
る。」との記載(4欄最終行~5欄1行)があり、【符号の説明】で「軸」とされ
るのは3fのみである。ただし、係止手段が軸で支持されることの作用効果は不明で
ある。なお、符号54も軸とされているが、係止手段とは無関係である(図26参
照)。
c 「装置本体外に突出」について
 B明細書によると、装置本体にほとんど収納されていた係止手段が
下や横に突出する態様と一応理解できる。しかし、B明細書には、その作用効果は
特に記載されていないし、示唆するところもない。
d その他
 B発明は、「軸で支持」ということと原告Xが主張する「解除が容
易である」という効果との対応、「装置本体外に突出」ということと「解除が容易
である」という効果との対応等について、発明の詳細な説明に記載されていない。
(ウ) そうすると、B発明は、明細書の特許請求の範囲に記載された発明
が、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、明確でもないから、特許法36条
4項、6項の規定に違反して特許されたものであり、無効理由を有する。
イ その他の無効理由について
(ア)B発明の請求項1について
 B発明の請求項1は、当業者であれば、出願時の公知技術である乙1
公報、乙3公報及び乙4公報に記載された発明から、容易に想到し得たものであ
り、一見明白に進歩性がない。
(イ) B発明の請求項3について
 係止手段が地震時に装置本体外に突出する構成は、明確には公知技術
に存在しない。しかし、公知技術にみられる係止手段の装置本体にカバーをしてお
けば、係止手段の動きによって、その先端部分が突出することは容易に想到でき
る。そして、この種の装置にカバーをすることは米国特許第5152562号公報
(乙2の1・2、以下「乙2公報」、その発明を「乙2発明」という。)記載の発明
からも容易に考えられるから、これら公知技術から一見明白な容易推考性がある。
 
(ウ)特許法17条の2第3項違反の無効理由
 B発明は、平成10年5月3日付手続補正書による補正で、請求項1
に「弾性手段による戻り抵抗で」及び「前記戻り抵抗に抗して」との事項が付加さ
れているが、これら付加された事項は、出願当初の明細書(乙20)及び図面に記
載した事項の範囲内のものとして直接的・一義的に対応するものでなく、自明なも
のでもない。
 したがって、B発明は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満
たしていない補正をした特許出願に対し特許されたものであり、無効理由を有す
る。
〔原告Xの主張〕
ア B発明の構成要件が発明の詳細な説明等を参酌しても概念自体が不明瞭
で概念の外延も把握しようがないとの被告の主張は争う。
(ア) 「弾性手段」については、A発明における主張のとおりである。
(イ) 「軸で支持」については、B明細書中の図10の(3f)を軸とするも
の、図5のローラーを軸とするものが記載されており、不明確ではない。「軸で支
持」された係止手段の動きは、図26のように板ばねで支持されたものより単純にな
り、待機位置とロック位置の2つの位置を往復させることが容易となるから、「解
除が容易である」という効果を生じるのである。
(ウ) 「装置本体外に突出」についても、B明細書中、図10、18、19、21
~24の実施例について「突出する」旨の記載があり、不明確ではない。そして、
「装置本体外に突出」するという構成により、係止手段を待機位置とロック位置の
2つの位置を往復させることが容易となるから、「解除が容易である」という効果
を生じるのである。
イ その他の無効理由について
(ア) B発明の請求項1、3は、「棚側の本体内で地震検出し、その棚側
の係止手段でロックし、開き戸の戻る動きで棚側の係止手段を解除するという原
理」を用いたものであるが、乙1発明は棚側の係止手段に関するものではなく、乙
3発明は開き戸の戻る動きで棚側の係止手段を解除するものではなく、乙4発明は
自動ロックではないから、これらの公知技術をもってB発明が進歩性を欠くとする
ことはできない。
(イ) 被告は「弾性手段による戻り抵抗」等との補正が特許法17条の2
第3項に違反すると主張するが、B発明の出願当初の明細書に「地震が終わり開き
戸(2)を開くには使用者は開き戸(2)を強く押す。これにより図4に示すように弾性
手段(6)が退いていき一定以上退くと弾性手段(6)による押さえが外れる」と「弾性
手段による戻り抵抗」そのものを説明した記載があり、被告の主張は理由がない。
(2) 争点(3)イ(構成要件充足性)について
〔原告Xの主張〕
ア(ア) 請求項1について
   イ号物件及びロ号物件の地震時ロック及び解除方法は、
(a)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体(2)の係止手段(ア
ーム)(4)が開き戸(92)の係止具(5)に地震時に係止するロック方法において
(b)開き戸(92)が閉止状態からわずかに開かれた位置で
(c)弾性手段(舌片)(5c)による戻り抵抗で開き保持して開き停止させ
(d)及び開き停止した前記開き戸(92)が前記戻り抵抗に抗して閉止位置
に戻る際にその動きで前記係止手段(アーム)(4)が係止解除される解除方法を用い

(e)ロック及び解除方法であって
(f)軸(突出ピン)(4c)で支持された係止手段(アーム)(4)とした
(g)地震時ロック及び解除方法
であり、請求項1の構成要件をすべて充足する。
(イ) 請求項3について
 イ号物件及びロ号物件の地震時ロック及び解除方法は、
(h)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体(2)の係止手段(ア
ーム)(4)が開き戸(92)の係止具(5)に地震時に係止するロック方法において
(i)開き戸(92)が閉止状態からわずかに開かれた位置で開き停止させ
(j)及び開き停止した前記開き戸(92)が閉止位置に戻る際にその動きで
前記係止手段(アーム)(4)が係止解除される解除方法を用いた
(k)ロック及び解除方法であって
(l)装置本体(2)に収納された係止手段(アーム)(4)が地震時に装置本
体外に突出して開き戸(92)の係止具(5)に係止する
(m)地震時ロック及び解除方法
であり、請求項3の構成要件をすべて充足する。
(ウ) イ号物件及びロ号物件は、上記構成を有する吊り戸棚、家具である
から、請求項6、7の構成要件も充足する。
イ 上記構成のうち、被告が争っている部分について反論する。
(ア) B発明の請求項3の「突出」について
 イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)は、別紙イ号物件目録
及び同ロ号物件目録各添付の図7に示すとおり、係止位置においては、安定位置と
比較して、その根元部分が装置本体外に露出する。
 「突出」については、どこの部分が突出するとの限定は全くないので
あるから、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)の動きも突出に当たる。
 そして、係止時に突出する、すなわち待機状態においては係止時より
も露出長さが短くなることによって、収納物の出し入れの際の衝突を防止し、衝突
しても損傷され難いという効果を有する。
(イ) B発明の請求項1の「軸で支持」について
 イ号装置及びロ号装置の係止手段(アーム)(4)が軸(突出ピン)(4c)
で支持されていることは明らかであって、被告が主張するように、別体として固定
された軸で支持されているものに限定して解する理由はない。
 そのことは、ロ号装置を実施品とする特許第2957151号の特許
公報(乙11)において、当該軸(突出ピン)(4c)が「軸(24)」とされていること
からも裏付けられる。
〔被告の主張〕
ア 争点(3)アの〔被告の主張〕で述べたように、B発明の特許請求の範囲の
記載は抽象的、機能的であるから、明細書の実施例に限定して技術的範囲を定める
べきである。そうすると、イ号物件及びロ号物件はB発明の実施例とは全く異なる
構成であるから、その技術的範囲に属さない。
イ B発明の請求項3の「突出」について
 原告Xは、見えなかった部分が一部であっても露出することをもって
「突出」であり、イ号物件及びロ号物件のアーム(4)の根元部分が露出することをも
って「突出」に該当すると主張するが、突出するのはアーム(4)の本体ではなく、根
元部分にすぎず、突状体(4a)はもとより、アーム(4)本体は常に装置本体(2)外にあ
り、地震時に装置本体(2)外に露出していたアーム(4)及び突状体(4a)が安定位置か
ら上方にだけ動くものであるから、アーム(4)の根元部分の露出をもってアーム(4)
及び突状体(4a)の「突出」と解することができないことは明らかである。
ウ B発明の請求項1の「軸で支持」について
 この「軸で支持」の部分は、補正により追加された文言であり、出願当
初の明細書で「軸で支持」という文言及び説明が存在するのは図10の実施例のみで
あったことからすれば、「軸で支持」の構成は、図10の実施例に限定して解釈すべ
きである。
 そうすると、図10の実施例には戻り抵抗を有する「弾性手段」が存在し
ないので、請求項1に対応する実施例がないということになる。このような意味で
も、B発明の請求項1は無効理由を有する。
 また、請求項1の「軸」とは、発明の詳細な説明の実施例及び図10で
(符号を付けて)明確に示されている「軸(3f)」と解すべきであり、それによれば
「係止手段」が「(別体として固定された)軸」で支持されているものに限定して
解するほかない。
 そうすると、イ号物件及びロ号物件には、係止手段とは別体の「軸」は
存在しないし、ロ号物件では、突出ピンは移動可能であるから、固定された「軸」
は存在しない。
4 C発明について
(1) 争点(4)ア(明白な特許無効理由の存在)について
〔被告の主張〕
ア 抽象的、機能的クレームからなることについて
(ア) C発明の請求項1、2では、「動きを補助」の文言が記載されてい
るが、この意義は一義的に明確ではない。
(イ) そこで、特許法70条2項に従い、C明細書の発明の詳細な説明や
図面を参照して上記文言の意味を探求する。
 C明細書を見ても、「動きを補助」という特許請求の範囲の文言に相
当する記載はどこにもない。せいぜい、「振動が大きくなると振動手段(振動
体(10))は係止手段(4)に接触しこれを動き開始させる」(6欄41~43行)という
記載だけである。そして、振動手段と係止手段の2つの手段が存在するのは図11と
図12のみである。
 しかし、この記述等を見ても、「動きを補助」という概念との整合性
は見つけられない。
 また、請求項2では、「振動手段が係止手段に接触」と限定されてい
るが、そうするとその上位概念を規定した請求項1の「(接触しないで)動きを補
助」いうパターンがどのような構成を意味するのか皆目見当が付かない。
 したがって、「動きを補助」との文言の意義が直接的・一義的に明確
であるとはいえず、C発明は特許法36条4項、6項違反の特許無効理由がある。
イ その他の無効理由について
(ア)C発明の請求項1について
 C発明は、出願時の公知技術である乙3発明、乙2発明と同一であっ
て、全部公知である。
(イ) 仮に乙2発明及び乙3発明の構成がC発明の請求項1の構成の一部
を欠き、C発明の請求項1が全部公知の発明でないとしても、C発明の請求項1
は、乙2発明、乙3発明及びC発明の出願前に頒布された刊行物である特表平10
-502713号公表特許公報(国際公開日:平成8年1月25日。乙18、以下
「乙18公報」という。)に記載された発明から、当業者が容易に発明することが
できたものであり、一見明白に進歩性を欠如する。
(ウ) C発明は、先願である特願平7-222831号(特開平9-67
969号)(乙17、以下「乙17発明」という。)又は特願平7-202863
号(特開平9-32392号)(乙23、以下「乙23発明」という。)の出願当
初の明細書又は図面に記載された発明と同一であって、特許法29条の2の規定に
違反するものであり、無効理由を有する。
(エ) C発明は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていな
い補正をした特許出願に対して特許されたものであり、無効理由を有する。
 すなわち、平成9年5月19日付手続補正書及び平成10年5月3日
付手続補正書による補正で、請求項1において、「ゆれで動き可能な係止手段」、
「係止手段とは別体の振動可能に収納された振動手段」及び「(振動手段)は係止
手段の動きを補助する」との事項が付加されているが、これら付加された事項は、
出願当初の明細書(乙15)及び図面に記載した事項の範囲内のものとして直接
的・一義的に対応するものではなく、自明なものでもないからである。
〔原告Yの主張〕
ア C発明の構成要件が発明の詳細な説明等を参酌しても概念自体が不明瞭
で概念の外延も把握しようがないとの被告の主張は争う。
(ア) 被告は、「動きを補助」という文言の意義がC明細書から明らかで
ないと主張する。しかし、原告Xが審査過程で審査官に対し平成10年5月3日付
意見書を提出して、その中で述べたとおり、係止手段がゆれで動き可能であり、係
止手段とは別体の振動手段もゆれで振動して、係止手段に接触しこれを動かすこと
が「補助」に当たることは、技術常識を有する者がC明細書を見れば直ちに理解で
きることである。
(イ) 「別体の振動可能に収納された振動手段」との文言の意味も、その
用語の普通の意味に解釈すれば自明である。
イ その他の無効理由について
(ア) 乙2発明は、「振動可能に収納された振動手段」を備えていない
(感度調節ねじ(24)は、装置本体に固定されており、振動可能ではない。)。
 乙3発明は、「ゆれで動き可能な係止手段」を備えていないし(アー
ム(18)は地震のゆれの力により直接動くものではない。)、「係止手段の動きを補
助する振動手段」を備えていない(ピン(34)はコイルばね(32)で動こうとしている
アーム(18)を抑止していた状態から、開放するだけである。)。
 乙18公報の技術は、「係止手段とは別体の振動手段」を備えていな
い(釣合い錘(17)はラッチ突起(20)とは別体ではない。)。
 したがって、C発明が、上記公知技術から、全部公知、あるいは進歩
性を欠くということはできない。
(イ) 乙17発明及び乙23発明は、「地震時に係止手段はゆれで動き同
時に振動手段もゆれで振動する」という両者共にゆれで動き可能なものがあってそ
れらが「補助」し「補助」されるという構成を欠く。
 したがって、特許法29条の2に違反するとの主張は理由がない。
(ウ) 被告が特許法17条の2第3項違反であると主張する「ゆれで動き
可能な係止手段」、「係止手段とは別体の振動可能に収納された振動手段」及び
「振動手段は係止手段の動きを補助する」の補正事項は、いずれも出願当初の明細
書の「発明の詳細な説明」において明示ないし示唆されていたものであり、同項違
反はない。
(2) 争点(4)イ(構成要件充足性)について
〔原告Yの主張〕
ア(ア) 請求項1について
   イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、
(a)家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体(2)側に係止手段
(アーム)(4)を設け該係止手段(アーム)(4)が開き戸(92)の係止具(5)に地震時に
係止するロック方法において
(b)ゆれで動き可能な係止手段(アーム)(4)の動きを係止手段(アー
ム)(4)とは別体の振動可能に収納された振動手段(球)(3)が
(c)前記係止手段(アーム)(4)の動きを補助する
(d)開き戸の地震時ロック方法
 であり、請求項1の構成要件をすべて充足する。
(イ) 請求項2について
  イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、
 振動手段(球)(3)が係止手段(アーム)(4)に接触することにより該
係止手段(アーム)(4)の動きを補助する(ア)記載の開き戸の地震時ロック方法
であり、請求項2の構成要件をすべて充足する。
(ウ) イ号物件及びロ号物件は、上記構成を有する吊り戸棚、家具である
から、請求項7、8の構成要件をすべて充足する。
イ 上記構成のうち、被告が争っている部分について反論する。
(ア) C発明の請求項1、2の「補助」について
 「補助」とは、係止手段がゆれで動き可能であり、振動手段はゆれで
振動し、係止手段のゆれによる動きを振動手段が助ける意味と解すべきであり、実
験結果(甲4)が示すとおり、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)は地
震のゆれで動くこと、振動手段(球)(3)があれば同じ加速度のゆれでも動きが大き
くなるのであるから、イ号物件及びロ号物件は、振動手段(球)(3)が係止手段(ア
ーム)(4)を補助するとの構成を備えている。
 被告は、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)のみではロッ
クしないから、「補助」する関係にないと主張するが、請求項1には「ゆれで動き
可能な係止手段」としているだけであり「係止する程度まで動く」とか「何ガルで
どの程度まで動く」といった限定はされていないから、被告の主張は理由がない。
(イ) C発明の請求項1の「別体の振動可能に収納された振動手段」につ
いて
 出願当初の明細書には、「振動手段」の文言が記載され、振動の説明
もされているから、「振動手段」はその用語の普通の意味に解釈すべきであって、
被告が主張するように限定的に解さなければならない理由はない。そうすると、イ
号物件及びロ号物件が、係止手段(アーム)(4)とは別体の移動可能に収納された振
動手段(球)(3)を備えていることは明らかである。
〔被告の主張〕
ア 争点(4)アの〔被告の主張〕で述べたように、C発明の特許請求の範囲の
記載は抽象的、機能的であるから、明細書の実施例に限定して技術的範囲を定める
べきである。そうすると、イ号物件及びロ号物件はC発明の実施例とは全く異なる
構成であるから、その技術的範囲に属さない。
イ C発明の請求項1、2の「補助」について
 原告Yは、「補助」の意義について、出願過程で出願人が提出した意見
書の記載を引用しているが、それによれば、出願人は、係止手段も振動手段も共に
動くことを前提にしている。
 これに対し、イ号物件及びロ号物件は、両者が共に動く構成ではない。
すなわち、イ号物件及びロ号物件は、アームはゆれで若干上下することはあって
も、前述のとおりアーム4の後端部の方が突出ピンより軽く、C明細書の図11、12
のように、球がなければそれ固有の機能としてゆれによって動き係止することはな
い。そのことは、甲4に示される実験結果(ただし、実験の客観性については不
知。)が、十勝沖地震の最大加速度である450ガルでも球なしアームの動きはイ
号装置でわずか5㎜、ロ号装置で12㎜にすぎず、全くロックしないことを示して
いることからも明らかである。
 したがって、係止手段のみではゆれによって動き係止しないイ号物件及
びロ号物件は、構成要件(c)の「補助」との構成を備えていない。
ウ C発明の請求項1の「別体の振動可能に収納された振動手段」について
 これは前述のとおり補正により追加されたものである。補正に際しては
新規事項の追加は許されないのであるから、実施例(図11、12)に限定して解釈さ
れなければならない。
 そうすると、C発明の「振動手段」は、振動路を有するものでなければ
ならないが、イ号物件及びロ号物件は一定の振動路を有しないものであり、この要
件を欠くことになる。
5 D発明について
(1) 争点(5)ア(明白な特許無効理由の存在)について
〔被告の主張〕
ア 抽象的、機能的クレームからなることについて
(ア) D発明の「両方向にゆれ動き可能」、「振動体」の文言が記載され
ているが、これらの文言の意義は直接的・一義的に明確ではない。
(イ) そこで、特許法70条2項に従い、D明細書の発明の詳細な説明や
図面を参照するに、これらの文言自体がいずれも記載されておらず、そのため、特
許請求の範囲の記載が、直接的・一義的に明確であるとはいえない。
(ウ) D発明は、特許法36条4項、6項違反の特許無効理由がある。
イ その他の無効理由について
(ア) D発明は、出願時の公知技術である乙2発明と同一であって、全部
公知である。
(イ) 仮に乙2発明の構成がD発明の構成の一部を欠き、D発明が全部公
知の発明でないとしても、これらの発明は、乙2発明に基づいて当業者が容易に発
明することができたものであって、一見明白に進歩性を欠如する。
〔原告Yの主張〕
ア D発明の構成要件が発明の詳細な説明等を参酌しても「両方向にゆれ動
き可能」、「振動体」の概念自体が直接的・一義的でないとの被告の主張は争う。
  D明細書の実施例として、図1、15、16の各ばね手段(1)、図24、
25の各振り子(72)、図26の振り子体(86)が示されており、それらの図面を参照
すれば、これらのばね手段等がそれぞれ左右あるいは前後両方向にゆれ動き可能で
あることが明らかである。これらについて、D明細書の作用の説明に、地震時に振
動するとはっきり記載されているから、「振動体」であることは明らかである。し
たがって、「両方向にゆれ動き可能」と「振動体」のいずれもが、明細書と図面か
ら明確である。
イ その他の無効理由について
 乙2公報に示された技術は、振動体が「その安定位置から両方向にゆれ
動き可能」との構成を有しない。
 したがって、乙2公報を根拠として、全部公知又は進歩性を欠くとの被
告の主張は理由がない。
(2) 争点(5)イ(構成要件充足性及び均等の成否)について
〔原告Yの主張〕
ア イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、
(a)その安定位置から両方向にゆれ動き可能な本体(91)側に設けられた振
動体〔球(3)と係止手段(アーム)(4)の集合体〕であって
(b)該振動体〔球(3)と係止手段(アーム)(4)の集合体〕自体が開き
戸(92)の係止具に地震時に係止してロックする
(c)開き戸(92)の地震時ロック方法
であり、D発明の構成要件をすべて充足する。
イ 均等
 仮に球(3)と係止手段(アーム)(4)が、集合体として「振動体」に該当
しないとしても、次の各要件を満たすから、イ号物件及びロ号物件は、D発明と均
等であって、その技術的範囲に含まれるものというべきである。
(ア) 振動体が単一体か集合体かという相違部分は、結果として著しい効
果の差異が生じるものではないから、本質的部分ではない。
(イ) 振動体を、単一体から集合体に置き換えても、D発明の目的を達成
することは可能であるし、同一の作用効果を奏するから、置換可能である。
(ウ) 振動体を、単一体から集合体に置き換えることは、D発明の出願当
時の当業者が容易に想到することができた。
(エ) イ号物件及びロ号物件は、D発明の出願時における公知技術と同一
又は当業者がこれから容易に推考できたものではない。
(オ) 出願過程で意識的に集合体の振動体をD発明の特許請求の範囲から
除外していない。
〔被告の主張〕
ア 「振動体」について
 D発明の「振動体」は、「両方向にゆれ動き可能」と「振動体自体がロ
ックする」の2つの機能を持つものでなければならないことは、特許請求の範囲の
記載から明らかである。
 前記明細書の記載からすれば、その「振動体」には図26の球が該当する
ことになるが、イ号及びロ号物件にはそのような機能を持つ球は存在しない。
 なお、仮にイ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)が振動体だと
仮定してみても、地震のゆれに対して一方向(上方向)にしか動かず、両方向にゆ
れ動き可能ではないから、この意味からも要件を欠く。
イ 均等について
 原告Yは、仮に球(3)と係止手段(アーム)(4)が、集合体として「振動
体」に該当しないとしても、イ号物件及びロ号物件はD発明と均等であると主張す
る。
 しかし、「振動体」が上記2つの機能を有するという点は、平成10年
5月3日付手続補正書によって補正された部分であって、出願当初の明細書では、
振動体自体がロック機能を有するものとはしていなかったのである。このような出
願経過からしても、D発明の振動体が2つの機能を有するものであることは、D発
明の本質的部分であり、また、上記補正によって、振動体を2つの機能を有するも
のに意識的に限定したものというべきである。
 さらに、D発明の作用効果は構造が簡単であるということであるが、イ
号物件及びロ号物件は、2つの機能を有した単一部材はなく構造が複雑であって、
作用効果が異なるため、置換可能性、容易推考性もない。
 したがって、原告Yの均等の主張は理由がない。
6 争点(6)(補償金及び損害の発生と額)について
〔原告らの主張〕
(1) 警告の効果について
 原告Xは、被告に対し、AないしD特許権に関し、補正後に改めて警告を
していないが、それぞれの補正内容は、警告時の請求項の内容を減縮しているもの
であるから、同原告がした警告は、現在の請求項に基づく警告としての効果を有す
る。
 (2) 補償金及び損害の額
 ア 被告は、イ号物件及びロ号物件を1セット3000円で販売したが、A
ないしD各特許権につき、1セット当たりの補償金及び特許後の損害賠償金として
は同販売代金の5%に当たる150円が相当である。
 イ A事件(原告X)
 被告は、原告XがA特許権に関する警告を行った平成9年3月10日か
ら平成11年9月9日までの30か月間、イ号ないしロ号物件を1か月当たり少な
くとも3万セット、合計90万セット販売したから、A特許権に基づく補償金ない
し損害賠償金としては合計金1億3500万円が相当である。
イ B事件(原告X)
 被告は、原告XがB特許権に関する警告を行った平成9年7月14日か
ら平成11年8月13日までの25か月間、イ号物件及びロ号物件を1か月当たり
少なくとも3万セット、合計75万セット販売したから、B特許権に基づく補償金
ないし損害賠償金としては合計金1億1250万円が相当である。
ウ C事件(原告Y)
 被告は、原告XがC特許権に関する警告を行った平成9年9月18日か
ら平成11年10月17日までの25か月間、イ号物件及びロ号物件を1か月当た
り少なくとも3万セット、合計75万セット販売したから、C特許権に基づく補償
金ないし損害賠償金としては合計金1億1250万円が相当である。
エ D事件(原告Y)
 被告は、原告XがD特許権に関する警告を行った平成9年10月9日か
ら平成11年12月8日までの26か月間、イ号物件及びロ号物件を1か月当たり
少なくとも3万セット、合計78万セット販売したから、D特許権に基づく補償金
ないし損害賠償金の合計金1億1700万円の内金として、平成9年10月9日か
ら平成10年2月8日までの4か月分(合計12万セット)合計金1800万円を
請求する。
〔被告の主張〕
(1) 警告についての原告らの主張は争う。
 補正前にした警告が現在の請求項に基づく警告の効果を有するためには、
当該補正が補正前の特許請求の範囲を減縮するものであり、かつ対象物件が補正の
前後を通じて特許発明の技術的範囲に属することが必要であるが、その要件を具備
していることが明らかになっていない。
 また、C、D特許権に関する警告は、現在の権利者(原告Y)以外の者に
よってされたものである。
(2) 補償金及び損害の額についての原告らの主張は争う。
第4 争点に対する判断
1 争点(1)(イ号物件及びロ号物件の構成)について
(1) 別紙イ号物件目録及びロ号物件目録の記載(争いがない)に加えて、証拠
(乙6、7、検甲1)と弁論の全趣旨を総合すれば、イ号物件及びロ号物件の構成
は次のとおりであることが認められる。
ア イ号物件の構成
(ア) イ号物件は、イ号装置(地震ロック装置)の付いた家具、吊り戸棚
又は開き戸であって、本体(91)内に装置本体(2)が固定され、開き戸(92)に係止
具(5)が固定される。
(イ) 装置本体(2)には、球(3)、係止手段(アーム)(4)が設けられ、
球(3)を載置する底面は係止手段(アーム)の反対方向に向かって下方に2度傾斜し
ている。
(ウ) 係止手段(アーム)(4)は、係止部(突状部)(4a)、後部(後端
部)(4b)、軸(突出ピン)(4c)が一体に形成され、装置本体(2)に軸(突出ピ
ン)(4c)で支持され、安定位置から上方に動き可能であり、安定位置と上方に動い
た状態は、別紙イ号物件目録添付の図3、図4b、図7に示すとおりである。
(エ) ゆれのない状態では、同目録添付の図1に示すように、開き戸(92)
はその係止具(5)と装置本体(2)の係止手段(アーム)(4)が係止することなく自由に
開閉できる。係止手段(アーム)(4)は、その先端の係止部(突状部)(4a)が下降し
た状態、すなわち軸(突出ピン)(4c)を中心としてその重力により安定した位置に
ある。
(オ) 球(3)は、ゆれに伴い装置本体(2)内で不定方向に移動可能であり、
一定以上のゆれにより傾斜底面を登り、係止手段(アーム)(4)の後部(後端
部)(4b)を押し、係止手段(アーム)(4)は上方に動く。
(カ) 係止具(5)は、同目録添付の図5及び図6に示すように、基部(5a)、
先端の鉤状部(5b)及び舌片(5c)を有し、係止手段(アーム)(4)が上方に動くことに
より、その係止部(突状部)(4a)が、鉤状部(5b)と舌片(5c)と脱落防止部(5d)で形
成される空間部(5e)に遊嵌されて、係止具(5)に係止される。
(キ) 係止された状態(ロック状態)においては、係止具(5)の舌片(5c)に
よる戻り抵抗が作用し、開き戸(92)はわずかに開いた状態を維持する。
(ク) 開き戸(92)の上記のロック状態を解除するには、開き戸(92)を閉止
方向に舌片(5c)の戻り抵抗以上の力で押し、それにより、係止部(突状部)(4a)が
鉤状部(5b)と脱落防止部(5d)との間隙を通過して空間部(5e)より脱落し、係止手段
(アーム)(4)の係止部(突状部)(4a)が下降することによってロック状態が解除さ
れる。
イ ロ号物件の構成
(ア) ロ号物件は、ロ号装置(地震ロック装置)の付いた家具、吊り戸棚
又は開き戸であって、本体(91)内に装置本体(2)が固定され、開き戸(92)に係止
具(5)が固定される。
(イ) 装置本体(2)には、球(3)、係止手段(アーム)(4)が設けられ、
球(3)を載置する底面には、凹所(凹溝部)(2a)と逆円錐状凹部(2b)が設けられ、
球(3)は通常時には逆円錐状凹部(2b)に位置している。
(ウ)、(エ) イ号物件の構成(ウ)、(エ)と同じ(ただし、図面は、別紙ロ
号物件目録添付の同番号のもの)。
(オ) 球(3)は、ゆれに伴い装置本体(2)内で不定方向に移動可能であり、
一定以上のゆれにより逆円錐状凹部(2b)から、凹所(凹溝部)(2a)に落ち込み、係
止手段(アーム)(4)の後部を押すことにより、係止手段(アーム)(4)は上方に動
く。
(カ)~(ク) イ号物件の構成(カ)~(ク)と同じ(ただし、図面は、別紙ロ
号物件目録添付の同番号のもの)。
2 争点(2)イ(A発明の構成要件充足性)について
(1) 「弾性手段」(請求項2の構成要件(f)、請求項6の構成要件(m)、請求項
7の構成要件(p))について
ア A発明の請求項2では「開き戸の解除を伴って戻る際に弾性手段の抵抗
が作用する」(構成要件(f))とされ、請求項6では「弾性手段の抵抗が存在する解
除方法を用いた」(構成要件(m))とされ、請求項7では「弾性手段の抵抗が存在す
る解除方法を用いた」(構成要件(p))とされているところ、これらの表現と請求項
2、6、7全体の特許請求の範囲の記載によれば、A発明においては、地震時に
「開き停止」する開き戸の「開き停止」を解除する際に、「弾性手段の抵抗」が作
用するものである。そして、「弾性」とは、一般的に、「物体に外から力を加えれ
ば変形し、その力を取り除けば元の状態に戻ろうとする性質」(大辞林)をいうか
ら、A発明の「弾性手段」は、被告も認めるように、ばねからなる構成のものが含
まれることは容易に想到できるが、特許請求の範囲の記載上は、それ以外のものが
どこまで含まれるか、どのような作用をすることが「弾性手段の抵抗」といえるの
かといったことは、一義的に明確とはいえない。
イ そこで、A明細書の発明の詳細な説明及び図面を検討する(甲1)。
  まず、【従来の技術】、【発明が解決しようとする課題】及び【課題を
解決するための手段】の項には、従来、解除が容易な開き戸の地震時ロック装置は
未だ開発されていなかったところ、本発明はこの従来の課題を解決し解除が容易な
開き戸の地震時ロック装置の提供を目的とし、「家具、吊り戸棚等の本体内に固定
された装置本体の動き可能な係止手段が開き戸の係止具に地震時に振動を経て係止
する開き戸の地震時ロック装置等」を提案するものであると記載されているが、
「弾性手段」については何ら触れるところがない。また、【発明の効果】の項に
は、本発明の効果として、「開き戸がわずかに開かれた位置で開き停止するため開
き戸を押したり手で操作するだけで容易にロックが解除される」ことなどが記載さ
れているが、「弾性手段」に直接触れた記述はない。
  次に、【実施例】の項を見ると、「弾性手段」に関して具体的な開示が
あるのは、図1~13に示された4種類の実施例(図1~9の弾性手段(6)、図10~
13の弾性手段(9)。なお、このうち図5の弾性手段はコイルばねと明記されている
(4欄4~5行)。)であるが、いずれの実施例も「弾性手段」は、ドア側ではな
く吊り戸棚等の本体側に係止手段や解除具と共に設けられ、係止手段ないし解除具
が初期状態に戻る経路に位置したものになっている。そして、実施例の説明中に
は、「弾性手段」が、係止手段の戻り路に設けられ、ゆれの力より大きく設定され
た押さえ力を有し、開き戸を閉じる方向に作用するゆれに抗して係止手段又は解除
具を押さえ、開き戸がわずかに開いた位置で係止手段の係止部が係止具に係止した
状態で開き戸をロックするとともに、地震が終わった後に使用者が開き戸を強く押
すことにより、弾性手段による押さえが解除され初期状態に戻る機能を有するもの
であることが記載されている(3欄22~23行、34~43行、4欄4~7行、17~25行、
5欄7~20行)。
ウ A発明の出願経過についてみると、証拠(甲2、40)及び弁論の全趣
旨によれば、A発明の出願当初の明細書の特許請求の範囲には「弾性手段」との構
成は記載されておらず、実施例の項の「弾性手段」に関する部分の記載は補正後の
A明細書と同じであったところ、平成10年4月15日付手続補正書による補正
で、請求項2に「弾性手段の抵抗が作用する開き戸」との事項が付加され、また、
平成10年12月19日付手続補正書による補正で、請求項6及び7に「弾性手段
の抵抗が存在する」との事項がそれぞれ付加されたことが認められる。
エ A発明の出願時の公知技術をみると、A発明の出願前に頒布された刊行
物であると認められる乙3公報には、「キャビネット本体内に固定された装置本体
としての安全ラッチ10に、係止手段としてのフック状の端部20を有するアーム18と
ピン34とを設け、この係止手段はフック状の端部20を係止位置へ移動するための動
きを可能とし、開き戸の係止具としての下向き湾曲端26を有するキャッチ22に、地
震時に衝撃的なゆれによるピン34の解除に伴って、ばね付勢されているアーム18を
動かしてそのフック状の端部20を瞬時に係止し、開き戸の閉止状態からわずかに開
かれた位置で開き停止させる開き戸の地震ロック装置」が示されており、A発明の
請求項2と比較すると、構成要件(f)の「開き戸の解除を伴って戻る際に弾性手段の
抵抗が作用する」という構成が異なっているだけであると認められる。
 また、証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば、家具やキャビネットの
開き戸において、開き戸が閉止状態に戻る際に開き戸の衝撃的当たりを避けるため
に、キャビネット本体側にばねのような弾性体を配置する構造のものは、A発明の
出願前から公知技術として存在したことが認められる。
 なお、上記のような開き戸に関して、本体側でなく開き戸の側に係止具
と共に弾性手段を設けた構造のものが公知技術あるいは周知技術であることを認め
るに足りる証拠はない。
オ 以上の事実によれば、A発明の「弾性手段」は、明細書の発明の詳細な
説明中にその技術的な意義について明確な記載がなく、出願当初の明細書の特許請
求の範囲には記載がなかったところ、当初明細書の実施例の記載に基づいて、補正
によって、開き戸の解除の際に「弾性手段の抵抗」が作用するという構成が加えら
れたものであって、実施例においては、「弾性手段」が、ドア側ではなく吊り戸棚
等の本体側に係止手段や解除具と共に設けられ、係止手段ないし解除具が初期状態
に戻る経路に位置したものになっている構成しか開示されていない。加えて、弾性
手段を有する開き戸の地震ロック装置に関する公知技術が存すること等をも考慮す
ると、A発明の「弾性手段」とは、A明細書の実施例に示されているように、装置
本体に係止手段や解除具と共に設置され、係止手段ないし解除具が初期状態に戻る
経路に位置して、係止手段ないし解除具が戻るのを抑える機能を持つものに限られ
るものと解釈するのが相当である。
カ これに対し、イ号物件及びロ号物件における弾性手段(舌片)(5c)は開
き戸(92)側に設けられており、また、係止手段(アーム)(4)が初期状態に戻る経路
に位置するものでもないから、請求項2の構成要件(f)、請求項6の構成要件(m)、
請求項7の構成要件(p)の「弾性手段」を備えていないというべきである。
  仮にイ号物件及びロ号物件における弾性手段(舌片)(5c)がA発明の
「弾性手段」に含まれるという解釈を採るとするならば、A発明の請求項2、6、
7の技術的範囲を当初明細書に開示された事項の範囲を超えるものとすることにな
り、前記補正は特許法17条の2第3項に反するものとして、これらの請求項につ
いて特許の無効理由を有することになるから、そのような解釈は相当ではない。
(2) したがって、イ号物件及びロ号物件並びにこれらの地震時ロック方法は、
A発明の請求項2、6、7の技術的範囲に属さず、また、これらの請求項を引用す
る請求項4、5、8、9の技術的範囲にも属さない。
3 争点(3)イ(B発明の構成要件充足性)について
(1) 請求項1の「弾性手段」(構成要件(c))について
ア B発明の請求項1においては、その特許請求の範囲の記載によれば、地
震時ロック及び解除方法において、ロック方法としては、家具、吊り戸棚等の本体
内に固定された装置本体の係止手段が開き戸の係止具に係止するもので、開き戸が
閉止状態からわずかに開かれた位置で「弾性手段による戻り抵抗で開き保持して開
き停止させ」(構成要件(c))るというものであり、解除方法としては、「開き停止
した前記開き戸が前記戻り抵抗に抗して閉止位置に戻る際にその動きで前記係止手
段が係止解除される解除方法」(構成要件(d))であるとされている(なお、請求項
1は、そのほかに「軸で支持された係止手段」(構成要件(f))が要件とされてい
る。)。この特許請求の範囲の記載からすれば、請求項1の「弾性手段」は、その
「戻り抵抗」によって「開き戸が閉止状態からわずかに開かれた位置で開き保持し
て開き停止させる」作用を行うとともに、その係止解除の際には開き停止した開き
戸が「弾性手段」の「戻り抵抗」に抗して閉止位置に戻るというものであるから、
A発明の「弾性手段」と比較すると、ロック方法に関わることが特許請求の範囲上
明らかにされている点が異なっている。そして、B発明の請求項1の「弾性手段」
についても、A発明について述べたのと同じく、その意義は特許請求の範囲の記載
から一義的に明らかであるとはいえない。
イ そこで、B明細書の発明の詳細な説明と図面を検討する(甲5)。
 まず、【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】の項には、
従来、解除が容易な開き戸の地震時ロック装置は未だ開発されていなかったとこ
ろ、本発明はこの従来の課題を解決し解除が容易な開き戸の地震時ロック装置の提
供を目的とすることが記載されており(A明細書と全く同じ)、【課題を解決する
ための手段】の項には、以上の目的達成のための提案として請求項1の内容をその
まま引用して記載されているだけであり、それ以上に「弾性手段」についての説明
はない。また、【発明の効果】の項には、「本発明の地震時ロック及び解除方法は
係止手段として軸で支持された係止手段、球の係止手段又は突出する係止手段を用
いるため解除が容易である。」と記載されているが、「弾性手段」には触れられて
いない。
 次に、【実施例】の項を見ると、「弾性手段」に関して具体的な開示が
あるのは、図1~19、21~23に示された実施例であるが、いずれの実施例も「弾性
手段」は、ドア側ではなく吊り戸棚等の本体側に係止手段や解除具と共に設けら
れ、係止手段ないし解除具が初期状態に戻る経路に位置している(なお、B明細書
の図1~13に示された実施例はA明細書の図1~13の実施例と同一である。)。そ
して、実施例の説明中には、A明細書と同様に、「弾性手段」が、係止手段の戻り
路に設けられ、ゆれの力より大きく設定された押さえ力を有し、開き戸を閉じる方
向に作用するゆれに抗して係止手段又は解除具を押さえ、開き戸がわずかに開いた
位置で係止手段の係止部が係止具に係止した状態で開き戸をロックするとともに、
地震が終わった後に使用者が開き戸を強く押すことにより、弾性手段による押さえ
が解除され初期状態に戻る機能を有するものであることが記載されている(B明細
書3欄40~41行、4欄2~10行、23~26行、36~44行、5欄29~42行、6欄3~5
行、17~25行、36~42行。なお、図5と図18の実施例の弾性手段(6)はコイルばね
であることが明記されている。)。
ウ B発明の出願経過についてみると、証拠(甲6、24、乙20)及び弁
論の全趣旨によれば、B発明の出願当初の明細書の特許請求の範囲には「弾性手
段」との構成は記載されておらず、実施例の項の「弾性手段」に関する部分の記載
及び添付の図面は補正後のB明細書のものと同じであったところ、平成10年5月
3日付手続補正書による補正で、請求項1に「弾性手段による戻り抵抗で」及び
「前記戻り抵抗に抗して」との事項がそれぞれ付加されたことが認められる。
エ B発明の出願時の公知技術をみると、B発明の出願前に頒布された刊行
物であると認められる乙3公報には、前記2(1)エで認定したとおりの技術が開示さ
れており、B発明の請求項1と比較すると、構成要件(d)の部分の構成が異なってい
るだけであると認められるほか、前記2(1)エで認定したところと同じである。
オ 以上の事実によれば、B発明の請求項1の「弾性手段」は、明細書の発
明の詳細な説明中にその技術的な意義について明確な記載がなく、出願当初の明細
書の特許請求の範囲には記載がなかったところ、当初明細書の実施例の記載に基づ
いて、補正によって、開き戸の解除の際に「弾性手段の抵抗」が作用するという構
成が加えられたものであって、実施例においては、「弾性手段」が、ドア側ではな
く吊り戸棚等の本体側に係止手段や解除具と共に設けられ、係止手段ないし解除具
が初期状態に戻る経路に位置したものになっている構成しか開示されていない。加
えて、弾性手段を有する開き戸の地震ロック装置に関する公知技術が存すること等
をも考慮すると、B発明の「弾性手段」とは、B明細書の実施例に示されているよ
うに、弾性手段は、装置本体に係止手段や解除具と共に設置され、係止手段ないし
解除具が初期状態に戻る経路に位置して、係止手段ないし解除具が戻るのを抑える
機能を持つものに限られるものと解釈するのが相当である。
カ これに対し、イ号物件及びロ号物件における弾性手段(舌片)(5c)は開
き戸(92)側に設けられており、係止手段(アーム)(4)が初期状態に戻る経路に位置
するものでもないから、B発明の請求項1の構成要件(c)の「弾性手段」を備えてい
ないというべきである。
キ したがって、イ号物件及びロ号物件の地震時ロック及び解除方法は、B
発明の請求項1の技術的範囲に属さない。
(2) 請求項3について
ア B発明の請求項3においては、「装置本体に収納された係止手段が地震
時に装置本体外に突出して開き戸の係止具に係止する」(構成要件(l))地震時ロッ
ク及び解除方法とされているところ、ここにいう「係止手段が地震時に装置本体外
に『突出』して」という文言の意義は、特許請求の範囲の記載から一義的に明確で
あるとはいえない。
イ そこで、B明細書の発明の詳細な説明と図面の記載を検討する(甲
5)。 B明細書の【従来技術】、【発明が解決しようとする課題】、
【課題を解決するための手段】及び【発明の効果】の項の記載は前記(1)イのとおり
であって、発明の効果として「突出する係止手段を用いるため解除が容易である」
との記載があるが、それ以外には、「突出」について触れた記載はなく、「突出」
の具体的な構成、作用や技術的意義の説明となる記載は見られない。
 次に【実施例】の項及び図面を見ると、係止手段が装置本体外に突出し
た状態として図3~5(収納された状態は図1)、図11~13(収納された状態は図
10)、図16、17(収納された状態は図14)、突出した状態と収納された状態を共に
示す図18、19、21~23があるが、実施例の説明としては、「係止手段が…突出す
る」等の記載があり、また、突出の態様として、係止手段が図19のように下向きに
突出する場合のほかに、横向きに突出するもの(図22等)があることや、その違い
に伴う係止方法の違いが記載されている(7欄32~48行等)が、それ以上の特段の
説明はない。実施例の説明と図面を参酌しても、「突出する」ことの技術的な意義
は明確とはいえず、前記の発明の効果として記載された「解除が容易である」との
関係も明らかではない。
 そして、係止手段が収納された状態と突出した状態とを示す上記各図に
よれば、収納された状態では、係止手段の大部分が装置本体に収納されており、装
置本体外に飛び出している部分があるとしてもごくわずかな部分のみであり、一
方、突出した状態では、収納されていた係止手段の一部が装置本体外に飛び出し、
飛び出した部分が開き戸の係止具に係止する状況が示されている。そして、係止手
段の装置本体外に飛び出している部分を比較すると、収納されている状態では、極
めてわずかな部分のみであるが、突出した状態では、その数倍にも及ぶ部分が装置
本体外に飛び出し、係止手段の装置本体外に飛び出している部分の割合が大きく異
なっていることが認められる(甲36参照)。
ウ B発明の出願当初の明細書(乙20)では、【請求項4】が「係止手段
が横向きに突出する請求項1又は2記載の地震時ロック装置」というものであり、
【請求項5】が「係止手段が下向きに突出する請求項1又は2記載の地震時ロック
装置」というものであって、発明の詳細な説明の【実施例】の項中の「突出」に触
れた記載及び図面は補正後のB明細書のそれと同じであったことが認められる。
エ 以上の事実によれば、B発明の請求項3において、係止手段が「装置本
体外に突出」するいうことの意義は、B明細書及び出願当初明細書の発明の詳細な
説明及び図面の記載に即して、係止手段が、装置本体内にその大部分が収納され、
装置本体外に全く出ていない、あるいはわずかに出ている収納状態から、係止手段
の一定の部分が装置本体外に突き出ることと解釈するのが相当であり、また、この
ような解釈は「突出」という文言の自然な解釈にも沿うものというべきである。
オ これに対し、イ号物件及びロ号物件は、係止部(突状部)(4a)はもとよ
り、係止手段(アーム)(4)は大部分が終始装置本体(2)の外にあるし、係止手段
(アーム)(4)の根元部分のみが収納され、その部分が露出することをもって係止手
段(アーム)(4)及び係止部(突状部)(4a)の突出と解することはできないから、請
求項3の構成要件(l)の「装置本体に収納された係止手段が地震時に装置本体外に突
出して」との構成を備えていないというべきである。
 原告Xは、イ号物件及びロ号物件においても、係止手段(アーム)が待
機状態においては係止時よりも露出長さが短くなることによって、収納物の出し入
れの際の衝突を防止し、衝突しても損傷され難いという効果を有すると主張する。
しかし、B発明の請求項3が「突出」という構成を採ったことによりそのような効
果を奏することは、B明細書に記載されていないし、また、B発明が「突出」との
構成によってそのような効果を奏するものであるとしても、イ号物件及びロ号物件
は、前記のとおり、係止手段(アーム)の大部分が終始装置本体外に露出している
ものであるから、同原告が主張するような効果を特に奏していると見ることもでき
ない。
カ したがって、イ号物件及びロ号物件の地震時ロック及び解除方法は、B
発明の請求項3の技術的範囲に属さない。
(3) 以上によれば、イ号物件及びロ号物件は、B発明の請求項1、3を引用す
る請求項6、7の技術的範囲にも属さない。
4 争点(4)イ(C発明の構成要件充足性)について
(1) 「係止手段の動きを補助する係止手段とは別体の振動手段」(請求項1の
構成要件(b)(c))について
ア C発明の請求項1は、家具、吊り戸棚等の本体内に固定された装置本体
側に設けられた係止手段が開き戸の係止具に係止する地震時ロック方法において、
「ゆれで動き可能な係止手段の動きを係止手段とは別体の振動可能に収納された振
動手段が」(構成要件(b))「前記係止手段の動きを補助する」(同(c))というも
のであるが、ここにいう「係止手段の動きを補助する係止手段とは別体の振動手
段」の意義は、特許請求の範囲の記載から一義的に明確であるとはいえない。
イ そこで、C明細書の発明の詳細な説明及び図面を検討する(甲22の
2)。
 まず、C明細書の【従来の技術】及び【発明が解決しようとする課題】
の項には、従来、誤動作が少なく確実に作動する開き戸の地震時ロック装置が求め
られていたところ、本発明はこの従来の課題を解決し誤動作が少なく確実に作動す
る開き戸の地震時ロック装置の提供を目的とするということが記載されており、
【課題を解決するための手段】の項には、以上の目的達成のための提案として請求
項1の内容をそのまま引用して記載されているだけであり、それ以上の説明はな
い。また、【発明の効果】の項には、発明の効果として、「地震時ロック装置は係
止手段とは別体の振動手段が前記係止手段の動きを補助する」ために「確実に作動
する」ことと「誤動作が少なくなる」ことの2つの効果があることが記載されてい
る。
 次に【実施例】の項及び図面を見ると、実施例の説明の最初に、「ここ
で本発明の地震時ロック装置の理解を容易にするためにロックの原理について図1
乃至10についてまず説明する。」(3欄19~21行)として、以下、C発明の実施例
ではない図1~10に基づき説明がされているが、そこで示されている地震時ロック
装置は、装置本体に設けられた地震のゆれで動き可能な係止手段が地震時に動いて
開き戸の係止具に係止するようになっている。そして、上記説明に続いて(5欄
50行目以下)、C発明の実施例について説明されているところ、C発明に係る地震
時ロック装置の実施例を示す図11は、装置本体に振動路(11)及び振動体(10)からな
る振動手段が設けられた実施例(図12は図11の地震時ロック装置の作動状態を示す
図)であるが、それについて、「振動体(10)は地震のない状態では図11に図示する
安定位置に静止しており係止手段(4)には接触しない。しかし地震時には振動手段
(振動体(10))は振動しその固有振動数を例えば1.75Hz程度にしておけば地
震のゆれ(多くは1~3Hz程度)に対して共振することになる。地震以外の衝撃
(高周波成分が多い)等に対しては振動手段はあまり動かないことになり誤動作の
防止が図られる。いずれにしても振動が大きくなると振動手段(振動体(10))は係
止手段(4)に接触しこれを動き開始させる(動き始めるとその摩擦は静止摩擦から動
摩擦に変わり摩擦係数が相当程度低下する)。」(6欄34~45行)と記載されてい
る。また、図11、12には、係止手段の安定位置においては、横長の係止手段が、そ
の左の方をローラーの上に乗せ、右端を下げた状態で静止しており、振動手段は、
地震による振動により係止手段の動きを開始させる役割を果たし、いったん動き出
した係止手段は、振動手段の助けを借りることなく、自ら地震の振動により付勢さ
れて係止具との係止位置に達する機能を有する装置が示されている。
 なお、請求項2は、「振動手段が係止手段に接触することにより該係止
手段の動きを補助する」構成であるのに対し、請求項1は「振動手段が係止手段に
接触」することは要件としていないが、C明細書には、振動手段が係止手段に接触
しないでその動きを補助するような実施例の開示はない。
ウ 上記のようなC明細書の記載に照らせば、C発明において、係止手段
は、初期状態の安定位置においては一定の摩擦により静止しているものであるが、
地震のゆれで動き可能で、その動きによってそれ自体でも係止具に係止できるもの
であることを要し、また、振動手段は「係止手段の動きを補助」するものであるか
ら、係止手段は、振動手段の接触により静止摩擦から動摩擦に変わった後は、振動
手段の助けを借りることなく係止具との係止位置に達するものと解される。そし
て、このような係止手段と振動手段の双方の機能により、作動の確実性、誤動作の
減少という効果が得られることになるのである。
エ これに対し、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)は、軸支さ
れており、地震のない状態において、摩擦により静止しているとはいえない状態で
あり、したがって、振動手段(球)(3)がなくとも、地震の振動により容易に作動開
始すると考えられ、地震のゆれに振動手段(球)(3)が共振して初めて係止手段が動
きを開始するものではない。
 ところで、証拠(甲4、42)によれば、地震時におけるイ号装置及び
ロ号装置(球(3)のある場合とない場合)の作用は次のとおりである(なお、係止手
段(アーム)(4)の動きの最大値は15㎜である。)と認められる。
(ア) アームがわずかに動き始める加速度(4Hz)(加速度が下記の値より
小さい場合には、アームは動かない。)
イ号装置        球なし:100ガル
            球あり:70ガル
ロ号装置        球なし:100ガル
            球あり:50ガル
(イ) 十勝沖地震の最大加速度である450ガルの振動下(4Hz)
イ号装置のアームの動き 球なし:5㎜
            球あり:15㎜
ロ号装置のアームの動き 球なし:12㎜
            球あり:15㎜
(ウ) 兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の最大加速度164ガルよりや
や小さい140ガルの振動下(4Hz)
イ号装置のアームの動き 球なし:わずかに振動
            球あり:4㎜
ロ号装置のアームの動き 球なし:1㎜
            球あり:15㎜
(エ) アームの動きが15㎜に達する加速度(4Hz)
イ号装置のアームの動き 球なし:15㎜に達せず
            球あり:550ガル
ロ号装置のアームの動き 球なし:550ガル
            球あり:90ガル
 上記認定によれば、係止手段(アーム)(4)が係止に至る過程をみると、
イ号装置及びロ号装置は、振動手段(球)(3)なしの場合には、100ガルで係止手
段(アーム)(4)が動き始めるのに対し、振動手段(球)(3)ありの場合にはそれよ
り小さい加速度で係止手段(アーム)(4)が動き始めるから、振動手段(球)(3)
は、地震による振動により係止手段の動きを開始させる役割を果たしているという
ことができる。
 しかし、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)や十勝沖地震の最大加速度
時における係止手段(アーム)(4)の動きは振動手段(球)(3)がある場合とない場
合とでは大きく異なり、係止手段(アーム)(4)がどの程度の加速度で係止具に係止
するかについて球が大きく寄与するなど、係止手段(アーム)(4)が動き始めた後
も、振動手段(球)(3)は、係止手段(アーム)(4)を動かす積極的な役割を果たし
ているから、イ号物件及びロ号物件は、係止手段(アーム)(4)が動き始めた後は、
振動手段(球)(3)の助けを借りることなく係止具との係止位置に達するものとはい
えない。
 以上によれば、イ号物件及びロ号物件は「係止手段の動きを補助する別
体の振動手段」との構成を備えていないというべきである。
オ したがって、イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、C発明の請
求項1の技術的範囲に属さない。
(2) また、請求項2は、前記のとおり、「振動手段が係止手段に接触する」と
の要件が加わっているほかは、請求項1と同じであるから、イ号物件及びロ号物件
の地震時ロック方法は請求項2の技術的範囲にも属さない。さらに、イ号物件及び
ロ号物件は、これらの請求項を引用する請求項7、8の技術的範囲にも属さない。
5 争点(5)イ(D発明の構成要件充足性)について
(1) 「振動体」(構成要件(a)、(b))について
ア D発明の特許請求の範囲の記載によれば、D発明の「振動体」は、「そ
の安定位置から両方向にゆれ動き可能」であるとともに、「振動体自体が係止具に
ロックする」ものであることを要することが明らかである。
 D明細書(甲31)の発明の詳細な説明と図面を見ると、D発明は、構
造が単純な開き戸の地震時ロック方法を提供することを目的とし、発明の効果とし
ても、「本発明の地震時ロック方法としてその安定位置から両方向にゆれ動き可能
な振動体が振動し該振動体自体が開き戸をロックする方法を用いた場合には構造が
単純である。」(9欄27~30行)と記載されている。そして、「振動体」の実施例
として、板ばねやコイルばねのばね手段を用いたもの、振動検出用ばね手段付きマ
グネットキャッチを用いたもの、振動検出用振り子を用いたもの、振り子体が振り
子軌道内で動けるようにしたもの等が示されており、いずれも、該振動体自体が係
止具に係止してロックする構造になっている。
イ これに対し、イ号物件及びロ号物件には、「その安定位置から両方向に
ゆれ動き可能」で、かつ「振動体自体が係止具にロックする」ような「振動体」に
該当するものが存在するとは認められない。
 原告Yは、イ号物件及びロ号物件の球(3)と係止手段(アーム)(4)から
なる集合体が請求項1の「振動体」に該当すると主張する。
 しかし、イ号物件及びロ号物件においては、球(3)と係止手段(アー
ム)(4)はそれぞれ独立のものであり、両者が一体となって振動体として一定の動き
をするわけではないから、これを集合体として振動体ととらえることはできない。
前記認定のD明細書の目的、効果や実施例の記載に照らせば、D発明の「振動体」
は、このような互いに独立したものの集合体を含まないものというべきである。
 また、イ号物件及びロ号物件の係止手段(アーム)(4)は安定位置から係
止手段の先端が上方向、すなわち一方向に動くことができるものであるから、係止
手段も「その安定位置から両方向にゆれ動き可能」なものではない。
(2) 原告Yは、仮に球(3)と係止手段(アーム)(4)が、集合体として「振動
体」に該当しないとしても、イ号物件及びロ号物件はD発明と均等であると主張す
る。
 しかし、前記認定のとおり、D明細書の発明の詳細な説明中に、発明の目
的及び効果として、D発明が構造の単純な開き戸の地震時ロック方法の提供を目的
とし、「本発明の地震時ロック方法としてその安定位置から両方向にゆれ動き可能
な振動体が振動し該振動体自体が開き戸をロックする方法を用いた場合には構造が
単純である。」とされていることからすると、D発明において、「振動体」に「そ
の安定位置から両方向にゆれ動き可能」であることと「振動体自体が係止具にロッ
クする」ことの2つの機能を同時に持たせ、これを単一部材で構成することにより
単純な構造にしたことは、発明の本質的部分に当たるというべきである。
 そうすると、イ号物件及びロ号物件とD発明とは、D発明の本質的部分で
異なるものであるから、均等の要件を充足しない。
 また、イ号物件及びロ号物件では、球(3)と係止手段(アーム)(4)からな
る構成とすることにより、単純な構造とはいえないものになっているから、振動体
が単一部材であるD発明の作用効果を奏するとは認められず、置換可能性があると
もいえない。
 以上のとおりであるから、原告Yの均等の主張は理由がない。
(3) したがって、イ号物件及びロ号物件の地震時ロック方法は、D発明の技術
的範囲に属さない。
6 以上によれば、原告X及び原告Yの各請求は、その余の争点について判断す
るまでもなく、いずれも理由がない。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官   小松一雄
裁判官   阿多麻子
裁判官   前田郁勝
(別紙) イ号物件目録
 別添図1~図9に示される地震対策付き家具(固定収納家具等)、吊り戸棚、
開き戸(以下「吊り戸棚等」という。)
〔別添図1~図9の説明〕
図1:イ号物件である吊り戸棚等の通常の状態の断面側面図
図2:イ号物件に用いられるロック装置の装置本体の平面図
図3:同上装置本体の右側面図
図4b:同上装置本体の一部切り欠き右側面図
図5:イ号物件に用いられるロック装置の係止具の断面側面図
図6:同上係止具の底面図
図7:イ号物件に用いられるロック装置の装置本体の右側面図
図8:イ号物件である吊り戸棚等の係止手段(アーム)が動いた状態の断面側
面図
図9:イ号物件である吊り戸棚等の開き戸の開き停止状態の断面側面図
〔別添図中の部品名称〕
1  ロック装置(地震ロック装置)   5a 基部
2  装置本体5b 鉤状部
2a 凹溝部       5c 舌片
2b 傾斜底面  5d 当たり面(脱落防止部)
3  球5e 空間部
4  係止手段 (アーム)6  蓋
4a 係止部  (突状部)91 本体
4b 後部   (後端部)92 開き戸
4c 軸    (突出ピン)93 弾性材
5  係止具
 図1・2 図3・4b・5 図6・7 図8・9
(別紙) ロ号物件目録
 別添図1~図11に示される地震対策付き家具(固定収納家具等)、吊り戸
棚、開き戸(以下「吊り戸棚等」という。)
〔別添図1~図11の説明〕
図1:ロ号物件である吊り戸棚等の通常の状態の断面側面図
図2:ロ号物件に用いられるロック装置の装置本体の平面図
図3:同上装置本体の右側面図
図4b:同上装置本体の一部切り欠き右側面図
図5:ロ号物件に用いられるロック装置の係止具の断面側面図
図6:同上係止具の底面図
図7:ロ号物件に用いられるロック装置の装置本体の右側面図
図8:ロ号物件である吊り戸棚等の係止手段(アーム)が動いた状態の断面側
面図
図9:ロ号物件である吊り戸棚等の開き戸の開き停止状態の断面側面図
図10:図9と同様開き停止状態であるが前後動余地だけ開き戸が戻った断面
側面図
図11:同上開き戸が開いている際に係止手段(アーム)が動いた状態の断面
側面図
〔別添図中の部品名称〕
1  ロック装置(地震ロック装置)   5a 基部
2  装置本体5b 鉤状部
2a 凹所   (凹溝部)5c 舌片
2b 逆円錐状凹部5d 当たり面(脱落防止部)
3  球5e 空間部
4  係止手段 (アーム)5f 傾斜
4a 係止部  (突状部)6  蓋
4b 後部   (後端部)91 本体
4c 軸    (突出ピン)92 開き戸
5  係止具 93 弾性材
 図1・2図3・4b・5図6・7
 図8・9図10・11
(別紙) 原告ら主張イ号物件構成目録
1 別添図10は、イ号物件である吊り戸棚等の開き戸の開き停止状態の斜視図
である(図1~図9は、別紙イ号物件目録添付の図を示す。)。
2 イ号物件の構成
(1) イ号物件は地震対策付き家具(固定収納家具等)、吊り戸棚又は開き戸
(以下「吊り戸棚等」という。)である。
 イ号物件の吊り戸棚等は図1に示す様に家具(固定収納家具等)、吊り戸
棚等の本体(91)を有している。
 さらにイ号物件は家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)に開閉
可能に設けられた開き戸(92)を有している。
 該開き戸(92)が閉じられた際に当接する本体正面開口縁には弾性材(93)
(又はパッキン)が装着される。
(2) 次に前記本体(91)にはロック装置(地震ロック装置)(1)の装置本体(2)が
及び前記開き戸(92)にはロック装置(地震ロック装置)(1)の係止具(5)が各々固定
される。
(3) 次に図1及び図4bに示される様に前記ロック装置(地震ロック装
置)(1)の装置本体(2)には球(3)が設けられる。
(4) 次に図2及び図3に示される様に装置本体(2)には地震時に開き戸(92)の
係止具(5)に係止する係止手段(アーム)(4)が設けられる。
 該係止手段(アーム)(4)は図1ないし図3に示す様にゆれで動き可能であ
り前の係止部(突状体)(4a)及び後の後部(後端部)(4b)を有し装置本体(2)に軸(突
出ピン)(4c)で支持される。
 ここで図7に示す様に係止手段(アーム)(4)は通常の状態で装置本体(2)
に収納された部分が開き戸(92)の係止具(5)に係止する状態においては装置本体(2)
外に露出する(露出部分を大きく図示する)。
 係止手段(アーム)(4)がゆれで大きく動いた際にそれと同時に図9に示す
開き戸(92)が開こうとすると開き戸(92)の係止具(5)に係止手段(アーム)(4)は係
止され開き戸(92)は開き停止される。
 該係止手段(アーム)(4)は地震でない通常の状態では図1に示す様に開き
戸(92)を開閉しても係止具(5)に係止しない位置にある。
 球(3)(約12g)は合成樹脂の係止手段(アーム)(4)(約7g)より重
くされて球(3)の力が十分作用する様に設定されている。
(5) 次に開き戸(92)に固定される係止具(5)は図5及び図6に示す様に基
部(5a)及び先端の鉤状部(5b)を有する。
 該鉤状部(5b)は前記係止手段(アーム)(4)の係止部(突状体)(4a)を係止
して開き戸(92)を開き停止するものである。
 係止された係止部(突状体)(4a)は係止具(5)の舌片(5c)と鉤状部(5b)に挟
持される。
 すなわち舌片(5c)は係止具(5)と一体的に延出しその先端に当たり面(脱落
防止部)(5d)を有する。
3 イ号物件の作用
(1) 地震でない通常の状態では図1に示す様に開き戸(92)はその係止具(5)と
装置本体(2)の係止手段(アーム)(4)が係止することなく自由に開閉出来る。
 すなわち係止手段(アーム)(4)はその先端の係止部(突状体)(4a)が下降
した状態(軸(突出ピン)(4c)を中心としてその重力により安定した位置)にあ
る。
 球(3)は係止手段(アーム)(4)の後方空間において後寄りに静止した(係
止手段(アーム)(4)で押された)状態である。
(2) 次に地震が起こると家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)は地
震のゆれの通り動くが開き戸(92)はゆれが弱い場合はばね蝶番のばね力で閉じたま
まである。
(3) 次に地震のゆれが強くなると開き戸(92)を開く力はばね蝶番のはね力より
も大きくなり開き戸(92)は開閉を始める。
 それにより開き戸(92)はバタつくことになるが閉じる際には該開き戸(92)
は家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)の正面(そこには弾性材(93)が
設けられている)に衝突する。
 一方地震のゆれの通り家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)は
動いておりこれにより球(3)は図4に示す様に係止手段(アーム)(4)に接触しそれ
に力を作用する。
(4) 次に係止具(5)が図9に示す様に係止部(突状体)(4a)に係止された後は
該係止具(5)に係止状態を保持する舌片(5c)が設けられているため開き戸(92)の開
閉動は停止し開き保持される。
 すなわち図10に示す様に開き戸(92)は解放端において約20㎜の隙間を
有して開き保持され開き停止するのである。
 要するに図1の状態から係止手段(アーム)(4)が動いた図8の状態になり
同時に開き戸(92)が開こうとすると図9の状態になるのである。
 図9及び図10から明らかな様に開き戸(92)は家具(固定収納家具等)、
吊り戸棚等の本体(91)に当接する閉止状態から約20㎜のわずかに開かれた位置で
開き保持され開き停止している。
 開き戸(92)は図9に示す係止具(5)の舌片(5c)に停止されてわずかに開かれ
た位置で開き保持されるのである。
 すなわち図10に示す様に開き停止した状態においては開き戸(92)は前後
動余地なく約20㎜の隙間のままの状態になるのである。
 開き保持する舌片(5c)により約4㎏以上の力が作用するまでは開き戸(92)
は隙間を有する状態でわずかに開かれた位置で開き保持される。
(5) 次に地震が終わりロックを解除するには図10に示す様に使用者は開き
戸(92)を約4㎏以上の力で押す。
 これにより係止部(突状体)(4a)は当たり面(脱落防止部)(5d)から滑っ
て外れ係止手段(アーム)(4)は係止具(5)の開き保持から解除され(バキッと音が
し)同時に開き戸(92)は弾性材(93)に当たりそれに緩衝されながら閉止位置にな
る。
 すなわち図9の状態から図1の状態に復帰するのであり同時に係止手段
(アーム)(4)は軸(突出ピン)(4c)を中心に回動しその安定位置に戻る。
(6) 次に開き戸(92)の係止に必要な加速度は図10に示す様に開き戸(92)の重
量、ばね蝶番の力、開き戸(92)の幅及び係止具(5)の係止抵抗によって予想出来る
(但しゆれの波形にも影響される)。
 例えば開き戸(92)の幅×高さ×板厚が300㎜×500㎜×18㎜の場合には係止
に必要な加速度の予想値は約1500ガルであり450㎜×700㎜×18㎜の場合には係
止に必要な加速度の予想値は約480ガルであり相当幅がある。
  図10
(別紙) 原告ら主張ロ号物件構成目録
1 別添図12は、ロ号物件である吊り戸棚等の開き戸の開き停止状態の斜視図
である(図1~図11は、別紙ロ号物件目録添付の図を示す。)。
2 ロ号物件の構成
(1) ロ号物件は地震対策付き家具(固定収納家具等)、吊り戸棚又は開き戸
(以下「吊り戸棚等」という。)である。
 ロ号物件の吊り戸棚等は図1に示す様に家具(固定収納家具等)、吊り戸
棚等の本体(91)を有している。
 さらにロ号物件は家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)に開閉
可能に設けられた開き戸(92)を有している。
 該開き戸(92)が閉じられた際に当接する本体正面開口縁には弾性材(93)
(又はパッキン)が装着される。
(2) 次に前記本体(91)にはロック装置(地震ロック装置)(1)の装置本体(2)が
及び前記開き戸(92)にはロック装置(地震ロック装置)(1)の係止具(5)が各々固定
される。
(3) 次に図1及び図4bに示される様に前記ロック装置(地震ロック装
置)(1)の装置本体(2)には球(3)が設けられる。
(4) 次に図2及び図3に示される様に装置本体(2)には地震時に開き戸(92)の
係止具(5)に係止する係止手段(アーム)(4)が設けられる。
 該係止手段(アーム)(4)は図1ないし図3に示す様にゆれで動き可能であ
り前の係止部(突状体)(4a)及び後の後部(後端部)(4b)を有し装置本体(2)に軸
(突出ピン)(4c)で支持される。
 ここで図7に示す様に係止手段(アーム)(4)は通常の状態で装置本体(2)
に収納された部分が開き戸(92)の係止具(5)に係止する状態においては装置本体(2)
外に露出する(露出部分を大きく図示する)。
 係止手段(アーム)(4)がゆれで上昇位置に到った(前記球(3)が凹所(凹
溝部)(2a)に嵌入した)後は図9に示す開き戸(92)が開こうとすると開き戸(92)の
係止具(5)に係止手段(アーム)(4)は係止され開き戸(92)は開き停止される。
 該係止手段(アーム)(4)は地震でない通常の状態では図1に示す様に開き
戸(92)を開閉しても係止具(5)に係止しない位置にある。
 球(3)(約12g)は合成樹脂の係止手段(アーム)(4)(約5g)より重
くされて球(3)の力が十分作用する様に設定されている。
(5) 次に開き戸(92)に固定される係止具(5)は図5及び図6に示す様に基
部(5a)及び先端の鉤状部(5b)を有する。
 該鉤状部(5b)は前記係止手段(アーム)(4)の係止部(突状体)(4a)を係止
して開き戸(92)を開き停止するものである。
 係止された係止部(突状体)(4a)は係止具(5)の舌片(5c)と鉤状部(5b)に挟
持される。
 すなわち舌片(5c)は係止具(5)と一体的に延出しその先端に当たり面(脱落
防止部)(5d)を有する。
 さらに係止具(5)の前端には傾斜(5f)が設けられて図11に示す様に開き
戸(92)が開いている状態で係止手段(アーム)(4)が上昇位置になった場合において
も開き戸(92)が閉じられていく際にその動きで係止手段(アーム)(4)がガイドされ
て通常の位置に戻る様になっている。
3 ロ号物件の作用
(1) 地震でない通常の状態では図1に示す様に開き戸(92)はその係止具(5)と
装置本体(2)の係止手段(アーム)(4)が係止することなく自由に開閉出来る。
 すなわち係止手段(アーム)(4)はその先端の係止部(突状体)(4a)が下降
した状態(軸(突出ピン)(4c)を中心としてその重力により安定した位置)にあ
る。
 球(3)は係止手段(アーム)(4)の後方空間の中央一定位置において静止し
た)状態である。
(2) 次に地震が起こると家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)は地
震のゆれの通り動くが開き戸(92)はゆれが弱い場合はばね蝶番のばね力で閉じたま
まである。
(3) 次に地震のゆれが強くなると開き戸(92)を開く力はばね蝶番のはね力より
も大きくなり開き戸(92)は開閉を始める。
 それにより開き戸(92)はバタつくことになるが閉じる際には該開き戸(92)
は家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等の本体(91)の正面(そこには弾性材(93)が
設けられている)に衝突する。
 すなわち図1の状態から係止手段(アーム)(4)が上昇位置にある図8の状
態になり、さらに開き戸(92)が開こうとすると図9の状態になるのである。
 図9から明らかな様に開き戸(92)は家具(固定収納家具等)、吊り戸棚等
の本体(91)に当接する閉止状態からわずかに開かれた位置で開き停止している。
 すなわち図12に示す様に開き停止した状態では開き戸(92)は開放端にお
いて約20㎜の隙間と約14㎜の隙間の両者の間を動ける前後動余地がある。
 これは係止手段(アーム)(4)の軸(突出ピン)(4c)が前後動可能に支持さ
れているからであり地震のゆれが開く方向か戻る方向かによって図9に示す状態と
図10に示す状態が繰り返されることになる。
 ここで図10は戻す方向のゆれの状態であり係止手段(アーム)(4)全体が
後方に移動し移動のリミットである蓋(6)に当たってその移動が阻止され同時に舌
片(5c)に停止されている状態である。
 これにより球(3)は嵌入していた凹所(凹溝部)(2a)から押し出され装置本
体(2)の後方床面に戻っている。
(4) 次に逆のゆれである開き戸(92)を開く方向のゆれになると図9に示す様に
係止手段(アーム)(4)全体が前方に移動する。
 同時に球(3)はゆれの力を受けて後方床面から凹所(凹溝部)(2a)に再び嵌
入することになる。
 以上の結果開き戸(92)は閉止状態からわずかに開かれたままの状態におい
てゆれによりその開かれた隙間の大きさが変化(約20㎜と約14㎜に変化)する
ことになる。
 すなわち地震が終了するまで開き戸(92)は閉止位置には戻らず舌片(5c)で
閉止状態からわずかに開かれた状態のままである。
 すなわち開き保持する舌片(5c)により約3㎏以上の力が作用するまでは開
き戸(92)は隙間を有する状態でわずかに開かれた位置で開き保持された状態のまま
である。
 地震が終わった際には係止手段(アーム)(4)と係止具(5)は係止している
ため開き戸(92)はわずかに開かれた位置で開き保持されている。
 その場合にロックを解除するには使用者は開き戸(92)を図10の状態(ば
ね蝶番の力で図9でなく図10の状態になっている)から約3㎏以上の力で押す。
これにより係止部(突状体)(4a)は当たり面(脱落防止部)(5d)から滑って外れ係
止手段(アーム)(4)は係止具(5)との係止を解除され(バキッと音がし)同時に開
き戸(92)は閉止状態になる。
 すなわち図10の状態から図1の状態に復帰するのであり同時に係止手段
(アーム)(4)は軸(突出ピン)(4c)を中心に回動しその安定位置に戻る。
(5) 次に開き戸(92)の係止に必要な加速度は図12に示す様に開き戸(92)の重
量、ばね蝶番の力、開き戸(92)の幅及び係止具(5)の係止抵抗によって予想出来る
(但しゆれの波形にも影響される)。
 例えば開き戸(92)の幅×高さ×板厚が300㎜×500㎜×18㎜の場合には係止
に必要な加速度の測定値は「耐震吊り戸棚等のロック装置(地震ロック装置)(1)の
振動試験」の第16頁を参照すれば約1400ガルであり450㎜×700㎜×18㎜の場
合には係止に必要な加速度の予想値は約450ガルであり相当幅がある。
  図12
(別紙) 被告主張イ号装置構成目録
1 イ号装置の構成
a家具、吊り戸棚等の本体(91)内に固定され、斜度2度の傾斜底面に球(3)
を載置する装置本体(2)の、
b 突出ピン(4c)が一体に形成され、安定位置から上方に動き可能な突状
体(4a)を有するアーム(4)が、
c開き戸(92)の鉤状部(5b)に、
d地震時に装置本体(2)内で不定方向に移動して傾斜底面を登る球(3)に後
端部(4b)を押されたアーム(4)の突状体(4a)が上方に動き、
e突状体(4a)が鉤状部(5b)と舌片(5c)と脱落防止部(5d)で形成される空間
部(5e)に遊嵌されて、舌片(5c)と脱落防止部(5d)により空間部(5e)の出口が狭めら
れ、開き戸(92)が遊び分だけ移動可能に維持し、
f 開き戸のロック解除の際は、開き戸(92)を閉じることによって、突状
体(4a)が鉤状部(5b)と脱落防止部(5d)との間隙を通過して空間部(5e)より脱落し、
アーム(4)の突状体(4a)が下降することによってロックが解除される
g 開き戸の地震ロック装置(1)
2 イ号装置の作用
地震が発生すると、装置本体(2)の傾斜底面に載置されていた球(3)が、装
置本体壁面で制約されつつも、不定方向に移動して傾斜底面を登り、アーム後
端(4b)を押す。
すると、アーム(4)が突出ピン(4c)を中心に回動することにより、突状
体(4a)が安定位置から上方に移動する。
これにより、突状体(4a)が鉤状部(5b)と舌片(5c)と脱落防止部(5d)で形成
される空間部(5e)に遊嵌される。
このとき、舌片(5c)と脱落防止部(5d)により空間部(5e)の出口が狭めら
れ、開き戸(92)が遊び分だけ移動可能に維持されるところ、舌片(5c)は突状体(4a)
が空間部(5e)から脱落するのを防止する働きをする。
なお、球(3)は、前後方向だけでなく、装置本体壁面で制約されつつも、ど
のような方向にも移動可能であるが、アーム後端(4b)が装置本体(2)の内側幅一杯の
幅を有するため、球(3)がどのような移動経路をとっても、球(3)がアーム後端(4b)
を押すことが可能となっている。
また、アーム(4)及び突状体(4a)は、終始装置本体(2)外にあり、「装置本
体内に収納された係止手段」は存在せず、球(3)は、アーム(4)とは別体である。
ロックを解除する際は、開き戸(92)を閉じることによって、突状体(4a)が
鉤状部(5b)と脱落防止部(5d)との間隙を通過して空間部(5e)より脱落し、アーム(4)
の突状体(4a)が下降することによってロックが解除される。
(別紙) 被告主張ロ号装置構成目録
1 ロ号装置の構成
a家具、吊り戸棚等の本体(91)内に固定され、内部に凸段部と凹段部が形
成され、該凸段部に形成された球(3)が通常時に位置する箇所に断面逆円錐形状の凹
部を設けた装置本体(2)の、
b 突出ピン(4c)が一体に形成され、安定位置から上方に動き可能な突状
体(4a)を有するアーム(4)が、
c開き戸(92)の鉤状部(5b)に、
d地震時に装置本体(2)内で不定方向に移動して凹溝部2aに落ち込む球(3)
に傾斜面からなる後端部(4b)を押されたアーム(4)の突状体(4a)が上方に動き、
e突状体(4a)が鉤状部(5b)と舌片(5c)と脱落防止部(5d)で形成される空間
部(5e)に遊嵌されて、舌片(5c)と脱落防止部(5d)により空間部(5e)の出口が狭めら
れるとともに、開き戸が閉止位置に戻ろうとする動きによってアーム(4)が押し戻さ
れ、アーム(4)に装置本体(2)の蓋に設けられた当接部の抵抗が働くまでの距離の範
囲内で移動可能になっており、開き戸(92)が遊び分及び突出ピン(4c)の移動分だけ
移動可能に維持し、
f開き戸のロック解除の際は、アーム(4)に装置本体(2)の蓋に設けられた
当接部の抵抗が働くまでアーム(4)を移動させるよう開き戸を閉じ、アーム(4)に装
置本体(2)の蓋に設けられた当接部の抵抗が働くことによって、突状体(4a)が鉤状
部(5b)と脱落防止部(5d)との間隙を通過して空間部(5e)より脱落し、アーム(4)の突
状体(4a)が下降することによってロックが解除される
g 開き戸の地震ロック装置(1)
2 ロ号装置の作用
地震が発生すると、装置本体(2)内の凸段部に形成された断面逆円錐形状の
凹部に載置されていた球(3)が、該凹部から離脱し、装置本体壁面で制約されつつ
も、不定方向に移動して、凹溝部へ落ち込み、傾斜面からなるアーム後端(4b)を押
す。
すると、突出ピン(4c)が装置本体(2)に設けられたピン受面上を摺動し、ピ
ン受面前端部に至るとともに、アーム(4)が突出ピン(4c)を中心に回動することによ
り、突状体(4a)が安定位置から上方に移動する。
これにより、突状体(4a)が鉤状部(5b)と舌片(5c)と脱落防止部(5d)で形成
される空間部(5e)に遊嵌される。
このとき、舌片(5c)と脱落防止部(5d)により空間部(5e)の出口が狭めら
れ、開き戸(92)が遊び分の範囲で移動可能に維持されるところ、舌片(5c)は突状
体(4a)が空間部(5e)から脱落するのを防止する働きをする。
その後、地震のゆれにより、開き戸が閉じる方向に動き、この動きに伴っ
てアーム(4)が押し戻され、突状体(4a)が空間部(5e)に遊嵌されたままの状態で、ア
ーム(4)がピン受面前端部から後部へピン受面上を摺動する。
このとき、アーム(4)が装置本体(2)の蓋に設けられた当接部に当接し、ア
ーム(4)に装置本体(2)の蓋に設けられた当接部の抵抗が働くまでアーム(4)が移動す
る。
さらに、地震のゆれが続くことにより、アーム(4)がピン受面上の摺動を繰
り返すが、アーム(4)がピン受面上を摺動する範囲内で、開き戸(92)が遊び分及び突
出ピン(4c)の移動分だけ移動可能に維持される。
なお、球(3)は装置本体(2)内の凸段部に形成された断面逆円錐形状の凹部
から離脱した後は、前後方向だけでなく、装置本体壁面で制約されつつも、どのよ
うな方向にも移動可能であるが、アーム後端(4b)が装置本体(2)の内側幅一杯の幅を
有するため、球(3)がどのような移動経路をとっても、球(3)がアーム後端(4b)を押
すことが可能となっている。
また、アーム(4)及び突状体(4a)は、終始装置本体(2)外にあり、「装置本
体内に収納された係止手段」は存在せず、球(3)は、アーム(4)とは別体である。
ロックを解除する際は、開き戸(92)を閉じることによって、アーム(4)が押
し戻され、突状体(4a)が空間部(5e)に遊嵌されたままの状態で、アーム(4)がピン受
面前端部から後部へピン受面上を摺動し、アーム(4)に装置本体(2)の蓋に設けられ
た当接部の抵抗が働くことによって、突状体(4a)が鉤状部(5b)と脱落防止部(5d)と
の間隙を通過して空間部(5e)より脱落し、アーム(4)の突状体(4a)が下降することに
よってロックが解除される。
なお、ロックを解除する際、アーム後端(4b)が球(3)を地震前の位置すなわ
ち装置本体(2)内の凹部に押し戻す。

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