弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 頭書両事件の原判決をいずれも取消す。
     二 右両事件を新潟地方裁判所高田支部に差戻す。
         事    実
 控訴人は「主文と同旨」の判決を、被控訴人らは「控訴棄却」の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は次のとおり付加するほか各原判決の事
実欄に記載されているとおりであるから、これをここに引用する。
 一 被控訴人らにおいて、被控訴人会社は昭和五三年一〇月三日その取締役会に
おいて昭和五三年(ネ)第二、〇三五号事件につきAを、同年(ネ)第二、〇三六
号事件につきBを、それぞれ被控訴人会社の代表者と定めた、と述べ、控訴人は右
主張事実を認めた。
 二 (立証省略)
         理    由
 控訴人が現に被控訴人会社の取締役であり、また被控訴人会社がその資本の額が
一億円以下の株式会社であることは本件弁論の全趣旨から明らかであり、株式会社
の監査等に関する商法の特例に関する法律第二四条にいう取締役が会社に対して提
起する訴とは、取締役たる資格において提起する訴であるとしからざる訴であるを
問わず、およそ会社の取締役が当該会社を相手方とするすべての訴をいうものと解
すべきであるから、本件両事件における各訴はいずれも同条にいう訴に該当するも
のというべきところ、右各訴提起当時未だ被控訴人会社に同条による会社代表者が
定められていなかつた(このことは本件弁論の全趣旨から明らかである)のに、い
ずれも被控訴人会社の代表取締役Bを被告を代表すべき者として提起した右各訴は
いずれもこの点に瑕疵のあるものである。
 <要旨>なお、昭和五三年(ネ)第二、〇三五号事件(原審、同年(ワ)第二三
号)は、商法第二五七条による取締役解任の訴に関するもので、この訴は少
数株主が不正行為等をなした取締役に対し、その資格を剥奪する効果をもつ裁判を
求める形成の訴と解すべきところ、この訴訟の被告適格については、その裁判の効
果を直接受ける紛争の一方当事者たる当該取締役、及び右裁判につき法律上直接の
利害関係を有する右取締役の属する会社のいずれにもこれを認めるのが相当であ
る。そして、この両者のうちいずれか一方のみに対する裁判が当然他方に対しても
効力を有するとする根拠に乏しく、また、この訴訟の目的は両者につき合一にのみ
確定すべき場合であるから、右訴訟は右両者を共同被告とすることを要するものと
解するのが相当である。したがつて、右事件につき被控訴人会社に対する関係にお
いて訴を却下すべき事由かあるときは、右の訴は全て却下されるのが相当である。
 しかしながら、前記の瑕疵は民訴法第五八条、第五六条により特別代理人の選任
を得る方法により補正することのできる欠缺であるから、同法第五三条により期間
を定めてその補正を命じ、控訴人においてこれに応じないときに初めて訴却下の判
決をなすべきであり、この手続を経ることなく右瑕疵を理由として直ちに本件各訴
を却下する旨の判決をすることは許されない。(なお、本件弁論の全趣旨による
と、右各訴の提起後の昭和五三年一〇月三日に、前記第二、〇三五号(原審、前記
第二三号)事件の訴についてAが、前記第二、〇三六号(原審、前記第三〇号)事
件の訴についてBが、それぞれ被控訴人会社を代表すべき者として選任されている
ことが認められるから、原審においてこれらの者を右各訴につきそれぞれ被告会社
代表者とし改めて手続を進めれば足りる。)
 したがつて、右手続をとらず漫然と控訴人の本件各訴を却下した原判決は失当で
あつて、取消を免れず、本件控訴は理由がある。
 よつて、民訴法第三八六条、第三八八条に従い、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 外山四郎 判事 海老塚和衛 判事 鬼頭季郎)

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