弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意第一点について。
 所論は単なる法令違反、その他刑訴四一一条所定の事由を主張するものであつて、
適法な上告理由に当らない。なお、政府の免許を受けないで酒類を製造した以上、
たとえ、その酒類を自己等の飲用に供するために製造したもので、販売、利得の目
的がなかつたとしても、無免許酒類製造罪を構成するものであつて(昭和二八年(
あ)第三七二一号、昭和三〇年七月二九日第二小法廷判決、判例集九巻九号一九七
二頁参照)、所論旧酒税法(昭和二八年法律第六号による改正前の酒税法)一六条
但書は右の如き場合にまで拡張して適用さるべきものではない。また、記録に徴す
れば、変味酒、腐敗酒に所論の如く加工を施行した事実が認められないわけではな
いが、右加工も無免許酒類製造の一過程としてなされたものである事実が肯認でき
る本件においては、右の如き加工の事実があつたからといつて、その刑責を免れ得
るものではない。
 同第二点について。
 しかし、被告人は控訴趣意においては、事実誤認を主張しているのであつて、法
令違反を主張していないのであるから、右事実誤認の主張についてだけ判断を下し
ている原判決を以て、判断の遺脱があるということはできない。従つて、所論違憲
の主張はその前提たる事実を欠き、採用することができない。
 同第三点について。
 記録についてみると、第一審における各証人尋問に際しては、被告人及び弁護人
共十分に反対尋問の機会が与えられており、現に反対尋問をなしていることは、各
尋問調書の記載によつて明瞭であり、第一審第八回公判において、被告人及び弁護
人共に弁論と最終陳述をなして結審し、第九回公判において被告人、弁護人共に同
公判に出頭し、判決の宣告を受けているのであつて、その間、第一審裁判所乃至裁
判長の措置につき何等争うことなく、公判の審理が進行終結したものであること、
明瞭であつて、被告人の権利を所論の如く不当に制限した違法な措置は認められな
いから、所論違憲の主張はその前提を欠き、適法な上告理由に当らない。
 同第四点について。
 記録についてみるに、A、Bの所論供述が、強要による任意性のないものである
との事実は認められず、却つて任意になされたものであることが明らかであるから、
所論違憲の主張はその前提を欠き、適法な上告理由に当らない。
 同第五点について。
 所論は判例違反をいうけれども、所論判例は本件に適切でないから、適法な上告
理由に当らない。
 同第六点について。
 第一については、所論は単なる事実誤認、証拠の取捨判断に対する非難であつて
(Aの供述が任意になされたものであることは、前示第四点の部分で説明したとお
り、任意性が認められるものである)適法な上告理由に当らない。
 第二乃至第六については、所論は単なる事実誤認、、法令違反及び証拠の取捨判
断に対する非難であつて、いづれも適法な上告理由に当らない。
 第七点について。
 所論は単なる量刑不当の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 弁護人伊藤清、同大城豊の上告趣意第一点について。
 所論は単なる事実誤認、法令違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 同第二点について。
 所論は原判示に副わない事実を前提とする法令違反の主張であつて(なお所論自
家用の飲料に供するための製造は政府の免許を受けることを要しないとの主張につ
いては、前記被告本人の上告趣意第一点について判示したとおりである)適法な上
告理由に当らない。
 同第三点乃至第九点について。
 所論は単なる事実誤認、証拠の取捨判断に対する非難及び量刑不当の主張であつ
て(第八点において審理不尽の違法を主張するが、記録上かゝる違法は認められな
い)適法な上告理由に当らない。
 同第一〇点について。
 所論は法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由に当らな
い。なお記録を見るに、原審の審判が公判中心主義、口頭弁論主義を基調とする刑
訴法の精神を没却したという所論の事実は肯認できないから、所論違法の主張は理
由がない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三三年五月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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