弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主    文
    原判決中「当審における未決勾留日数中九〇日を原判決の刑に算入する。」
との部分を破棄する。
    その余の部分に対する本件各上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、第一審判決判示第一の覚せい剤及び覚せい剤原料の使
用の事実について、起訴前である平成一〇年一〇月二〇日、勾留状の執行を受け、
その後第一、二審を通じて勾留を継続されていたものであるが、その間、第一審は、
平成一一年九月一六日、被告人を懲役二年一〇月に処する旨の判決を言い渡し、こ
れに対し、被告人が同月二九日控訴を申し立てたところ、原審は、平成一二年二月
二三日、右控訴を棄却するとともに、「当審における未決勾留日数中九〇日を原判
決の刑に算入する。」との判決を言い渡したことが明らかである。また、記録によ
れば、被告人は、平成一〇年一〇月一五日大阪地方裁判所において、覚せい剤取締
法違反の罪により懲役二年四月に処せられ、同判決は同月三〇日確定し、同日から
右刑の執行を開始され、原判決の言渡し当時はいまだ右刑の執行中であったことが
認められる。
 そうすると、被告人に対する本件の原審の未決勾留の全期間が右刑の執行と重複
することが明らかであり、原判決中原審における未決勾留日数を本刑に算入した部
分は、刑法二一条の適用について、所論引用の判例(最高裁昭和二九年(あ)第三
八九号同三二年一二月二五日大法廷判決・刑集一一巻一四号三三七七頁、最高裁昭
和五五年(あ)第四〇九号同年七月一八日第二小法廷判決・裁判集刑事二一八号二
六三頁、最高裁平成六年(あ)第五九二号同年一一月二五日第二小法廷判決・裁判
集刑事二六四号二六三頁)と相反する判断をしたものといわなければならず、論旨
は理由がある。
 なお、原判決中その余の部分に対する検察官の上告は、上告趣意として何らの主
張がなく、したがって、その理由がないことに帰する。
 弁護人谷直樹及び被告人本人の各上告趣意について
 所論は、いずれも、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主
張であり、適法な上告理由に当たらない。
 よって、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条ただし書により、原
判決中「当審における未決勾留日数中九〇日を原判決の刑に算入する。」との部分
を破棄し、原判決中その余の部分に対する各上告は、同法四一四条、三九六条によ
り棄却し、当審における訴訟費用は、同法一八一条一項ただし書を適用して被告人
に負担させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官佐渡賢一 公判出席
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 遠藤光男 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出
峻郎 裁判官 町田 顯)

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