弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人岸本静雄の上告趣意は、憲法三八条三項違反をいう点もあるが、原判決は
所論三〇〇万円の受供与の事実を認めた証拠として、被告人の自供調書のほか、A、
Bの各検察官に対する供述調書(謄本)を掲げており、右各証拠を検討すれば、被
告人の自白のみで有罪としたものでないことが明らかであるから、所論はその前提
を欠き、その余の論旨は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、いずれも上
告適法な理由とならない。(なお記録に徴するも被告人およびBの検察官に対する
各供述調書の供述の任意性については次に示すとおりである。)
 弁護人遊田多聞の上告趣意第一点および同高橋禎一の上告趣意第一点は、憲法三
八条一、二項違反をいう点もあるが、記録に徴するも、所論各供述調書の供述に任
意性を疑うべき点は見出されないとした原審の判断はこれを是認し得る(なお原判
決が証拠としたBの検察官に対する供述は「一〇月であつたということ、その程度
なら申してもよいが、上旬、中旬、下旬のいずれとも申上げる訳にはいかない、兎
も角一〇月中の或る日の夜八時四五分東京発急行安芸号一等車指定席に乗つて、朝
一一時前後頃笠岡市に着き、下車後父の乗用車トヨペツトに乗つたが、それから先
は何処へ行つたか申上げる訳にはいかない」との旨の供述だけであり、右供述が同
人の自由な意思に基き任意になされたものであることは右供述自体に徴し明らかで
ある)から所論は、その前提を欠き、その余は事実誤認、単なる法令違反の主張で
あつて、上告適法な理由とならない。
 弁護人遊田多聞の上告趣意第二点は、公職選挙法一二九条および二三九条一号の
各規定は、憲法三一条に違反し、同九八条一項によつて無効であると主張するが、
公職選挙法における選挙運動の意義が所論の如く不明確であるとはいえないし、同
一二九条はこの選挙運動を一定の期間においてのみなすことを許し、同二三九条は
これに違反した者を処罰することにしているのであるから、右各法条には罪の構成
要件が規定されていないとかまたは不明確であるとかいうことはできない(昭和三
八年(あ)第九八四号同年一〇月二二日第三小法廷決定、刑集一七巻九号一七五五
頁参照)、従つて右所論違憲の主張は、その前提を欠き、適法な上告理由とならな
い。
 弁護人高橋禎一の上告趣意第二点は事実誤認、同第三点は量刑不当の主張であつ
て、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四一年四月二一日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   田       誠
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    松   田   二   郎

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