弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由について。
 論旨(中段「第一、二審判決文中不服の点」とする(二)の点)は、被上告人(
原告、被控訴人)が昭和三一年九月二九日訴外Dから本件宅地を買い受けたとの被
上告人主張事実は上告人の認めなかつたところであるのに、第一、二審判決におい
て、上告人(被告、控訴人)がこれを認めた旨事実摘示をなしこれに基いて判断し
たのは失当であると主張する。記録に徴すると、なるほど第一審口頭弁論で上告人
は被上告人が本件宅地につき所有権取得登記をしたことだけは認めたが、その所有
権取得を争つたのに、第一審判決が上告人は「四、の事実は認める」、すなわち、
被上告人の右所有権取得をも認めると述べた旨不正確な事実摘示をしたところ、第
二審口頭弁論では第一審口頭弁論の結果が陳述されたことが認められるので、これ
によれば、上告人は被上告人の右所有権取得を争つたことが明らかであるから、原
判決が当事者の事実上の主張を第一審判決記載のとおりと摘示したのは誤りであり、
また判決理由において「昭和三一年九月二九日被控訴人が本件土地をDから買受け
たことは当事者間に争のないところ」と判示したのは争ある事実を証拠によらない
で認定した違法があるものといわねばならない。けれども、第一審判決は右争いあ
る事実につき、「成立に争ない甲第一号証と証人E、同Fの各証言を総合すれば原
告は判示日時Dから本件宅地を判示代金で買い受けたことが認められる」旨証拠に
よる事実認定をしているのであり、原審では、右Dから被上告人への本件土地売買
の成立に関する前示甲一号証およびE、Fの各証言についても援用認否がなされ、
攻撃防禦を経ていること記録上明らかである。このような関係において、原審は、
右争ある事実を争ないものと判示したとはいえ、結局第一審が証拠によつて認定し
た事実と同一の事実を確定しこれを判決の基礎とした訳であるから、原判決の右違
法は判決に影響を及ぼさないものといわねばならない。
 してみれば、所論は、「判決ニ影響ヲ及ボスコト明ナル法令ノ違背アルコトヲ理
由トスル」ものとはいい難く、採用することができない。
 その余の論旨は、証拠の取捨判断、事実認定の非難または独自の見解による原判
決の判断の非難にすぎず、すべて上告適法の理由とならない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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