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平成25年7月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第40515号,同22年(ワ)第12105号,同第17265号
各不正競争行為差止等請求,承継参加申立事件
口頭弁論の終結の日平成24年11月29日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1被告株式会社マジカルカンパニー及び同AⅠは別紙物件目録記載1
の各製品を,被告Mediaforce株式会社は同目録記載2の各製
品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,又は輸入
してはならない。
2被告株式会社マジカルカンパニー及び同AⅠは,原告任天堂株式会社
に対し,連帯して5737万5000円及びこれに対する平成21年1
2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告メディアフォース株式会社,同BⅠ及び同Mediaforce
株式会社は,原告任天堂株式会社に対し,連帯して3825万円及びこ
れに対する平成22年4月25日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
4原告らの被告有限会社シーフォートジャパンに対する請求並びに被
告株式会社マジカルカンパニー,同AⅠ,同メディアフォース株式会社
及び同Mediaforce株式会社に対するその余の請求をいずれ
も棄却する。
5訴訟費用は,原告らに生じた費用の5分の1と被告有限会社シーフォ
ートジャパンに生じた費用を原告らの連帯負担とし,原告らに生じた費
用の5分の2と被告株式会社マジカルカンパニー及び同AⅠに生じた
費用を同被告らの連帯負担とし,原告らに生じたその余の費用と被告メ
ディアフォース株式会社,同BⅠ及び同Mediaforce株式会社
に生じた費用を同被告らの連帯負担とする。
6この判決は,第2項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1被告有限会社シーフォートジャパン,同株式会社マジカルカンパニー及び同
AⅠは別紙物件目録記載1の各製品を,被告メディアフォース株式会社及び同
Mediaforce株式会社は同目録記載2の各製品を譲渡し,引き渡し,
譲渡若しくは引渡しのために展示し,又は輸入してはならない。
2被告有限会社シーフォートジャパン,同株式会社マジカルカンパニー及び同
AⅠは別紙物件目録記載1の各製品を,被告メディアフォース株式会社及び同
Mediaforce株式会社は同目録記載2の各製品を廃棄せよ。
3被告有限会社シーフォートジャパン,同株式会社マジカルカンパニー及び同
AⅠは,原告任天堂株式会社に対し,連帯して5737万5000円及びこれ
に対する平成21年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を
支払え。
4主文第3項と同旨
第2事案の概要
本件は,(1)携帯型ゲーム機で実行されるゲーム等のプログラムが記録され
た記録媒体を販売している原告らが,被告BⅠ(以下「被告BⅠ」という。)
を除く被告らによる別紙物件目録記載の各製品の輸入,販売等が不正競争防止
法(以下「法」という。)2条1項10号に掲げる不正競争に該当するとして,
上記被告らに対し,法3条に基づき,上記各製品の譲渡,輸入等の差止め及び
廃棄を求め,(2)原告任天堂株式会社(以下「原告任天堂」という。)が,上
記被告らによる上記各製品の輸入,販売等が平成23年法律第62号による改
正前の不正競争防止法(以下「旧法」という。)2条1項10号に掲げる不正
競争に該当するとして,被告有限会社シーフォートジャパン(以下「被告シー
フォート」という。),同株式会社マジカルカンパニー(以下「被告マジカル」
という。)及び同AⅠ(以下「被告AⅠ」といい,被告シーフォート及び同マ
ジカルと併せて「被告シーフォートら」という。)に対し,民法709条,会
社法429条1項,民法719条に基づき,損害金●(省略)●円又は●(省略)
●円の一部である5737万5000円及びこれに対する不法行為の後の日で
ある平成21年12月11日(被告マジカルに対する訴状送達の日の翌日)か
ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払,被告メ
ディアフォース株式会社(以下「被告メディア」という。),同BⅠ及び同M
ediaforce株式会社(以下「被告Media」といい,被告メディア
及び同BⅠと併せて「被告メディアら」という。)に対し,民法709条,会
社法429条1項,653条,民法719条に基づき,損害金●(省略)●円又
は●(省略)●円の一部である3825万円及びこれに対する不法行為の後の日
である平成22年4月25日(被告Mediaに対する訴状送達の日)から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払をそれぞれ求
める事案である。
1前提事実(争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実)
(1)当事者
ア原告任天堂は,トランプ類,娯楽用具及びゲームの製造及び販売等を業
とする株式会社であり,その余の原告らは,ソフトウェアの製作及び販売
等を業とする株式会社又は有限会社である。原告日本コロムビア株式会社
は,平成22年1月1日,吸収分割によって平成21年(ワ)第40515
号取下前原告クリエイティヴ・コア株式会社のゲームソフトの製作及び販
売に係る事業を承継し,原告株式会社バーグサラ・ライトウェイトは,平
成22年3月1日,全部事業譲渡によって平成21年(ワ)第40515号
取下前原告株式会社インターチャネルの事業を承継した。
(弁論の全趣旨)
イ被告シーフォートは,平成14年7月12日,旅行並びに観光土産品及
び電機通信機械器具の輸出入及び販売等を業とし,被告AⅠを取締役とし
て設立された有限会社である。
被告マジカルは,平成20年2月13日,インターネットを利用した情
報システム及び通信ネットワークの企画,開発,設計及び運用並びにゲー
ムソフト及び輸入雑貨の販売等を業とし,CⅠを代表取締役として設立さ
れた株式会社であり,平成21年8月28日に,CⅠに代わり,被告AⅠ
が代表取締役に就任した。
(甲220,222の1ないし3)
ウ被告メディアは,平成15年4月10日,コンピュータ部品の開発,輸
出入及び販売等を業とし,代表取締役を被告BⅠとして設立された株式会
社であるが,平成20年5月31日,解散し,同年10月22日,同月1
5日に清算が結了したとして,その旨の登記をした。
被告Mediaは,昭和62年6月18日,商号を「株式会社大豊シス
テム」,飲食店の経営等を業とし,代表取締役をDⅠとして設立された株
式会社であり,平成16年2月1日に「有限会社大豊システム」への組織
変更を経て,平成19年8月17日に商号を「メディアフォース株式会社」
に変更して特例有限会社から通常の株式会社に移行するとともに,被告B
Ⅰが代表取締役に就任し,同年9月26日に商号を「Mediaforc
e株式会社」に変更した。
(甲111の1ないし7)
(2)「ニンテンドーDS」シリーズ及びDSカードの販売
ア原告任天堂は,平成16年12月から携帯型ゲーム機「ニンテンドーD
S」を,平成18年3月から携帯型ゲーム機「ニンテンドーDSLite」
を,平成20年から携帯型ゲーム機「ニンテンドーDSi」を,それぞれ
販売し(以下,上記各ゲーム機を総称して「DS本体」という。),DS
本体で実行されるゲーム等のプログラム(以下「DSプログラム」という。)
が記録されたゲームカード(以下「DSカード」という。)を販売してき
た。
(甲169の1,173,194,195の2及び5)
イ原告任天堂を除く原告らは,原告任天堂のライセンスを受けて,DSカ
ードを販売してきた。
(甲169の1ないし33,171の1ないし15)
(3)DS用マジコンの販売
被告シーフォート及び同マジカルは,別紙物件目録記載1の各DS用マジ
コン(マジックコンピュータの略称)を輸入,販売し,被告メディアは,上
記目録記載2(1)のDS用マジコン(以下「R4」という。)を販売し,被告
Mediaは,上記目録記載2(3)のDS用マジコン(以下「M3さくら」と
いう。)を販売していた(以下,別紙物件目録記載の各DS用マジコンを総
称して「本件DS用マジコン」という。)。
(4)本件DS用マジコンの使用法
DS本体は,DSカードを購入するなどして入手した上で,DSカードを
側面のスロットに挿入し,電源を入れると,ゲーム等をすることができるよ
うになる。
インターネット上のウェブサイトには,DSプログラムが複数アップロー
ドされているところ,これをダウンロードしてDSカードと同じ大きさの記
録媒体に記録した上で,当該記録媒体をDS本体の側面のスロットに挿入し,
電源を入れても,ゲーム等をすることができない。
しかし,インターネット上のウェブサイトには,「ファームウェア」と呼
ばれる本件DS用マジコンを起動させるためのプログラムがアップロードさ
れているところ,これをダウンロードしてmicroSDカード等の本件D
S用マジコンより小さな記録媒体にインストールし,当該記録媒体を本件D
S用マジコンの側面のスロットに挿入し,更にDSカードと同じ大きさの本
件DS用マジコンをDS本体の側面のスロットに挿入し,電源を入れて本件
DS用マジコンを起動させた上で,DSプログラムをダウンロードして当該
記録媒体に記録し,再び,当該記録媒体を本件DS用マジコンの側面のスロ
ットに,本件DS用マジコンをDS本体の側面のスロットに,順次挿入し,
電源を入れると,ゲーム等をすることができるようになる。
(甲1ないし4,5の1及び2,6,8ないし22,45,149)
2争点
(1)差止め及び廃棄の請求について
①法2条1項10号に掲げる不正競争があるか,具体的には,ⅰDS本体
では,営業上用いられている技術的制限手段によりプログラムの実行が制限
されているか,ⅱ本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの実
行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能と
する機能を有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか,ⅲ本件DS用
マジコンに記録されているプログラムが,DS本体におけるプログラムの実
行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能と
する機能以外の機能を併せて有するか,②本件DS用マジコンの譲渡等によ
って原告らの営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれがあるかであ
る。
(2)損害賠償の請求について
①旧法2条1項10号に掲げる不正競争があるか,具体的には,ⅰDS本
体では,営業上用いられている技術的制限手段によりプログラムの実行が制
限されているか,ⅱ本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの
実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能
とする機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか,②本件
DS用マジコンの譲渡によって原告任天堂の営業上の利益が侵害されたか,
③CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠに故意又は過失等があるか,④被告メディ
アが損害賠償債務を負うか,⑤原告任天堂が受けた損害の額である。
3争点についての当事者の主張
(1)差止め及び廃棄の請求について
ア争点①ⅰ(DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段により
プログラムの実行が制限されているか)について
(原告らの主張)
(ア)DSプログラムを含むプログラムは,法2条1項10号,7項にい
う「プログラム」に当たる。そして,同条7項にいう「技術的制限手段」
は,文言上,視聴等機器が特定の反応をする信号をプログラム等と共に
記録媒体に記録する方式等によってプログラムの実行等を制限する手段
であれば足りるし,平成11年法律第33号による改正(以下「平成1
1年改正」という。)は,コンテンツの提供に関与する事業者の利益を
保護するために,プログラムと共に記録される特定の信号と同一の信号
を有することにより複製されたプログラムの実行を可能とするMODチ
ップの譲渡等を規制する目的で行われたことを考慮すれば,視聴等機器
がある信号を受信するとプログラムを実行しないことだけでなく,視聴
等機器がある信号を受信するとプログラムを実行することも,「特定の
反応」に当たる。
(イ)DS本体におけるプログラムの実行についてみると,●(省略)●
そうすると,●(省略)●をプログラムと共にDSカード等の記録媒体
に記録する方式は,いずれも電子的方法によりプログラムの実行を制限
する手段であって,プログラムの実行のために用いられる機器であるD
S本体が特定の反応をする信号をプログラムと共に記録媒体に記録する
ものであるから,技術的制限手段に当たる。
そして,これらの技術的制限手段は,DSカードを購入させるために
用いられている。また,原告任天堂や株式会社ソニー・コンピュータエ
ンタテインメント(以下「ソニー」という。)等の各ゲーム機メーカー
が互換性のないゲーム機をそれぞれ開発して販売している現状におい
て,ゲームソフトの販売を申し入れたソフトウェアの製作販売業者から
ライセンス料を得てDSカードに前記各信号を記録することを許諾する
ことが優越的な地位を濫用したり取引を不当に妨害したりすることには
ならないから,これらの技術的制限手段は,適法な営業に用いられてい
る。そうであるから,これらの技術的制限手段は,営業上用いられてい
るものに当たる。
(ウ)したがって,DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段
によりプログラムの実行が制限されている。
(被告シーフォートらの主張)
(ア)法2条1項10号,7項にいう「プログラム」は,平成11年改正
が,コンテンツを提供する事業者の利益を保護するために,プログラム
と共に記録されるコピープロテクトを解除するMODチップの譲渡等を
規制する目的で行われたことを考慮すれば,実行等が制限されたプログ
ラムを意味し,DSプログラムはこれに当たるが,自主制作されて実行
等が制限されていないプログラムはこれに当たらない。同条1項10号,
7項にいう「プログラム」に自主制作されて実行等が制限されていない
プログラムを含めることは,憲法21条1項に違反する。
仮に法2条1項10号,7項にいう「プログラム」がDSプログラム
を含むプログラムを意味するものであるとしても,同条7項にいう「技
術的制限手段」は,視聴等機器が特定の反応をする信号をプログラムと
共に記録媒体に記録する方式等によりプログラムの実行等を制限するも
のであるし,平成11年改正の目的を考慮すれば,視聴等機器がある信
号を受信したときにプログラムを実行しないことだけが「特定の反応」
に当たる。平成11年改正は,視聴等機器を開発した事業者の利益を保
護するために行われたものでないから,視聴等機器がある信号を受信し
たときにプログラムを実行することは,「特定の反応」に当たらない。
そうすると,DS本体が原告らの主張する各信号を受信してプログラム
を実行することは,特定の反応に当たらず,原告らの主張する各信号を
プログラムと共にDSカード等の記録媒体に記録する方式は,技術的制
限手段に当たらない。
(イ)DS本体におけるプログラムの実行については,知らない。
仮に原告らの主張する各信号をプログラムと共にDSカード等の記録
媒体に記録する方式が技術的制限手段に当たるとしても,この方式は,
パソコンやCDプレイヤー等とは異なり,原告任天堂にライセンス料を
支払わずに自主制作されたプログラムの実行をも制限する手段であり,
最も市場占有率の高い原告任天堂がソフトウェアの製作販売業者に対し
て優越的な地位を濫用したり取引を不当に妨害したりすることに用いら
れているから(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9
項5号ロ,6号ヘ,同号に基づき公正取引委員会が指定した不公正な取
引方法(昭和57年同委員会告示第15号)の15(競争会社に対する
内部干渉)),適法な営業に用いられていない。そうすると,上記方式
は,適法な営業に用いられていないから,営業上用いられているものに
当たらない。
(ウ)したがって,DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段
によりプログラムの実行が制限されているものではない。
(被告メディアらの主張)
(ア)法2条1項10号,7項にいう「プログラム」は,文言上,視聴等
機器が特定の反応をする信号と共に記録媒体に記録される方式等により
実行等が制限されたプログラムに限られるし,平成11年改正がコンテ
ンツを提供する事業者の利益を保護するために行われ,視聴等機器を提
供する事業者の利益を保護するために行われたものでないことを考慮す
れば,ある信号と共に記録媒体に記録されて実行等が制限されたプログ
ラムを意味し,DSプログラムはこれに当たるが,自主制作されて実行
等が制限されていないプログラムはこれに当たらない。
(イ)DS本体におけるプログラムの実行については,知らない。
もっとも,原告らの主張する各信号は,DS本体とDSカードとの間
の通信を確立させるプロトコルにすぎず,DSプログラムを起動させる
信号ではないから,原告らの主張する各信号をプログラムと共に記録媒
体に記録する方式は,技術的制限手段に当たらない。
(ウ)したがって,DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段
によりプログラムの実行が制限されているものではない。
イ争点①ⅱ(本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの実行
を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能
とする機能を有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか)について
(原告らの主張)
(ア)DSプログラムを含むプログラムは,法2条1項10号,7項にい
う「プログラム」に当たるところ,●(省略)●
そうすると,本件DS用マジコンは,いずれも,これらに記録されて
いるプログラムとファームウェアが組み合わされたものにより,●(省
略)●をプログラムと共に記録媒体に記録する方式によって当該プログ
ラムの実行を制限するという効果を妨げており,その結果,DS本体に
おける当該プログラムの実行を可能とする機能を有している。
(イ)M3さくらも,インターネット上のウェブサイトから「公式ファー
ムウェア」と呼ばれるプログラムをダウンロードすることにより,DS
本体におけるDSプログラム以外のプログラムの実行を可能とする機能
を有している。また,M3さくらは,ウェブサイトから「非公式(裏)
ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダウンロードすることにより,
DS本体におけるDSプログラムの実行をも可能とするようになるが,
上記非公式ファームウェアは,M3さくらの発売前から存在し,その存
在が広く知られているから,DSプログラムの実行を可能とする機能も
有しているといえる。
(ウ)したがって,本件DS用マジコンは,いずれもDS本体におけるプ
ログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げる
ことにより可能とする機能を有するプログラムを記録した記録媒体に当
たる。
(被告シーフォートらの主張)
原告らの主張は不知又は争う。
(被告メディアらの主張)
M3さくらは,DS本体における自主制作されて実行等が制限されてい
ないプログラムのみの実行を可能とする機能を有しているが,このプログ
ラムは法2条1項10号,7項にいう「プログラム」に当たらないから,
DS本体におけるプログラムの実行を可能とする機能を有していない。
なお,M3さくらは,違法なウェブサイトから非公式ファームウェアを
ダウンロードすることにより,DS本体におけるDSプログラムの実行を
可能とするようになるが,上記非公式ファームウェアは,M3さくらの発
売から数か月後に被告Mediaとは無関係の第三者によって開発され
たもので,その存在が広く知られていないから,DS本体におけるプログ
ラムの実行を可能とする機能を有しているとはいえない。
ウ争点①ⅲ(本件DS用マジコンに記録されているプログラムが,DS本
体におけるプログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の
効果を妨げることにより可能とする機能以外の機能を併せて有するか)に
ついて
(被告シーフォートらの主張)
DSプログラムは,法2条1項10号,7項にいう「プログラム」に当
たるが,自主制作されて実行等が制限されていないプログラムはこれに当
たらない。本件DS用マジコンに記録されているプログラムは,DS本体
における自主制作されて実行等が制限されていないプログラムの実行も
可能とする機能を併せて有する。
したがって,本件DS用マジコンに記録されているプログラムは,DS
本体におけるプログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段
の効果を妨げることにより可能とする機能以外の機能を併せて有する。
(被告メディアらの主張)
M3さくらは,DS本体におけるDSプログラム以外の動画や音楽の再
生も可能とする機能を併せて有する。
したがって,M3さくらに記録されているプログラムは,DS本体にお
けるプログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を
妨げることにより可能とする機能以外の機能を併せて有する。
(原告らの主張)
自主制作されて実行等が制限されていないプログラムやDSプログラム
以外の動画や音楽も,法2条1項10号,7項にいう「プログラム」に当
たる。
したがって,本件DS用マジコンに記録されているプログラムは,DS
本体におけるプログラムの実行を営業上の技術的制限手段の効果を妨げ
ることにより可能とする機能以外の機能を併せて有するものではない。
エ争点②(本件DS用マジコンの譲渡等によって原告らの営業上の利益が
侵害され,又は侵害されるおそれがあるか)について
(原告らの主張)
被告シーフォートらは別紙物件目録記載1の各DS用マジコンを,被告
メディア及び同Mediaは上記目録記載2の各DS用マジコンを,それ
ぞれ共同して譲渡し,輸入し,又は譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡
しのために展示し,輸入しようとしている。
原告らは,いずれもDSカードを販売しているところ,DSカードを購
入させるために技術的制限手段を用いているのであって,営業上の利益を
有する。しかし,本件DS用マジコンは,上記技術的制限手段の効果を妨
げるから,被告BⅠを除く被告らの本件DS用マジコンの譲渡,輸入等に
より,原告らの営業上の利益が侵害される。
被告メディアは,平成20年10月に清算結了の登記をしたが,インタ
ーネット上のウェブサイト「Asian.net」や「M3FLASH」
を通じて,M3さくら等を販売しており,営業活動を継続している。そし
て,被告メディアは,同Mediaとの間で商号や目的,役員構成,東京
都港区新橋の営業拠点とその電話番号,ファクシミリ番号を同じくした
り,被告Mediaに対して東京都港区新橋の本店を引き継がせたりして
いるのであって,平成19年8月の被告Mediaによる通常の株式会社
への移行は,上記両被告の損害賠償債務等の免脱を目的とした会社制度の
濫用であり,上記両被告は,信義則上,原告らに対して別人格であること
を主張することができない。
(被告シーフォートらの主張)
原告らの主張は否認する。被告シーフォートらは,共同して別紙物件目
録記載1の各DS用マジコンを譲渡も輸入もしたことがないし,被告AⅠ
も,個人で上記各DS用マジコンを譲渡も輸入もしたことがない。現在は
本件DS用マジコンを輸入することができない上,平成23年法律第62
号による改正(以下「平成23年改正」という。)で刑事罰も導入された
から,被告シーフォートらは,本件DS用マジコンを譲渡などする予定は
ない。
(被告メディアらの主張)
原告らの主張は否認又は争う。被告メディアは,平成20年5月に解散
し,同年6月に発売されたM3さくらを譲渡も輸入もしたことがない。被
告Mediaは,R4や別紙物件目録記載2(2)のDS用マジコン(以下
「DSTT」という。)を譲渡も輸入もしたことがないし,平成21年1
0月16日からはM3さくらを譲渡も輸入もしていない。本件DS用マジ
コンは,現在販売されている「ニンテンドーDS」シリーズでは起動しな
い上,平成23年改正で刑事罰も導入されたから,被告メディア及び同M
ediaは,本件DS用マジコンを譲渡などする予定はなく,在庫もない。
インターネット上のウェブサイト「Asian.net」は,被告メデ
ィアの清算を受け,被告Mediaが引き継いだし,ウェブサイト「M3
FLASH」は,被告メディアの清算後の更新はなく,被告メディアは,
営業活動を継続していない。被告メディアと同Mediaは,いずれも小
規模な会社であるために類似点が多いだけであって,別人格である。
(2)損害賠償の請求について
ア争点①ⅰ(DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段により
プログラムの実行が制限されているか)について
この点についての当事者の主張は,前記(1)アと同様であり,旧法と法と
で差異はない。
イ争点①ⅱ(本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの実行
を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能
とする機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか)につ
いて
(原告任天堂の主張)
本件DS用マジコンに記録されているプログラムは,DS本体における
自主制作されて実行等が制限されていないプログラムの実行やDSプロ
グラム以外の動画や音楽の再生も可能とする機能を有するが,自主制作さ
れて実行等が制限されていないプログラムやDSプログラム以外の動画
や音楽も,旧法2条1項10号,7項にいう「プログラム」に当たる。
したがって,本件DS用マジコンは,DS本体におけるプログラムの実
行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可
能とする機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たる。
(被告シーフォートらの主張)
DSプログラムは,旧法2条1項10号,7項にいう「プログラム」に
当たるが,自主制作されて実行等が制限されていないプログラムはこれに
当たらない。本件DS用マジコンに記録されているプログラムは,DS本
体における自主制作されて実行等が制限されていないプログラムの実行
も可能とする機能を併せて有する。
したがって,本件DS用マジコンは,DS本体におけるプログラムの実
行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可
能とする機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たらない。
(被告メディアらの主張)
M3さくらに記録されているプログラムは,DS本体におけるDSプロ
グラム以外の動画や音楽の再生も可能とする機能を併せて有する。
したがって,M3さくらは,DS本体におけるプログラムの実行を営業
上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする
機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たらない。このこと
は,平成23年改正がM3さくらの譲渡等を規制する目的で行われたこと
をみても,明らかである。
ウ争点②(本件DS用マジコンの譲渡によって原告任天堂の営業上の利益
が侵害されたか)について
(原告任天堂の主張)
被告シーフォートらは別紙物件目録記載1の各DS用マジコンを,被告
メディア及び同Mediaは上記目録記載2の各DS用マジコンを,平成
19年1月から平成21年9月までの間,それぞれ共同して譲渡した。
原告任天堂は,DSカードを販売していたところ,DSカードを購入さ
せるために技術的制限手段を用いていたから,営業上の利益を有してい
た。しかし,本件DS用マジコンは,上記技術的制限手段の効果を妨げる
から,被告BⅠを除く被告らの本件DS用マジコンの譲渡により,原告任
天堂の営業上の利益が侵害された。
なお,被告マジカルは,平成20年2月に設立されたが,CⅠが遅くと
も平成18年10月から「マジカル上海」の商号で始めたゲーム用の機器
や部品の通信販売等を業とする営業を譲り受け,インターネット上のウェ
ブサイト「マジカル上海」を継続して使用したから,CⅠによる本件DS
用マジコンの譲渡について,責任を負う。
また,前記(1)エ(原告らの主張)のとおり,被告メディアと同Medi
aは,原告任天堂に対して別人格であることを主張することができない。
(被告シーフォートらの主張)
原告任天堂の主張は否認する。被告シーフォートらは,共同して別紙物
件目録記載1の各DS用マジコンを譲渡したことがないし,被告シーフォ
ートや同AⅠは,上記各DS用マジコンを譲渡したことがない。
また,被告マジカルは,CⅠから営業を譲り受けておらず,ウェブサイ
ト「マジカル上海」を継続して使用しただけでは,設立前のCⅠによる本
件DS用マジコンの譲渡について,責任を負わない。仮に被告マジカルが
CⅠから営業を譲り受けたとしても,被告マジカルの責任は,その発生後
2年以内に原告任天堂が請求又はその予告をしなかったものについては
消滅した。
(被告メディアらの主張)
原告任天堂の主張は否認する。被告メディアは,R4やDSTTを譲渡
していたが,平成20年5月15日に営業を停止した後は譲渡していない
し,同年6月に発売されたM3さくらを譲渡したこともない。被告Med
iaは,R4やDSTTを譲渡したことがない。
エ争点③(CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠに故意又は過失等があるか)に
ついて
(原告任天堂の主張)
テレビや新聞,雑誌,インターネット等の各種メディアは,DS用マジ
コンが譲渡され始めた平成17年4月ころから,DS用マジコンがDS本
体におけるプログラムの実行を制限する手段の効果を妨げてDSプログ
ラムを含むプログラムの実行を可能とすることを紹介していた。このた
め,CⅠ及び被告AⅠは,被告マジカル及び同シーフォートに別紙物件目
録記載1の各DS用マジコンを譲渡させたり,自ら当該各DS用マジコン
を譲渡し,また,被告BⅠは,被告メディア及び同Mediaに同目録記
載2の各DS用マジコンを譲渡させて,本件DS用マジコンがDS本体に
おけるプログラムの実行を制限する手段の効果を妨げてDSプログラム
を含むプログラムの実行を可能とし,これにより,原告任天堂の営業上の
利益が侵害されることを認識していたのであり,本件DS用マジコンを譲
渡してはならず,また,譲渡させてはならなかった。仮に認識していなか
ったとしても,容易にこれを認識することができたのである。
したがって,CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠは,いずれも原告任天堂の
営業上の利益を侵害したことについて故意又は過失があり,また,取締役
又は清算人としてその職務を行うについて悪意又は重大な過失がある。
(被告らの主張)
DS用マジコンは,平成19年1月から原告任天堂がDS用マジコンの
販売業者に対して警告書を多数送付し始めた平成20年春ころまで,普通
に販売されていたし,平成21年2月27日に東京地方裁判所がDS用マ
ジコンの譲渡等を旧法2条1項10号の不正競争行為に当たるとした判
決(平成20年(ワ)第20886号,同第35745号)を言い渡した後
も,違法性について争いがあったから,違法性の認識可能性すらなかった。
このため,CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠは,被告マジカル又は同メディ
ア若しくは同Mediaに本件DS用マジコンを譲渡させても,原告任天
堂の営業上の利益が侵害されることを認識していなかったし,また,認識
することもできなかった。
したがって,CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠは,仮に原告任天堂の営業
上の利益が侵害されたとしても,そのことについて故意も過失もなく,ま
た,取締役又は清算人としてその職務を行うについて悪意も重大な過失も
ない。
オ争点④(被告メディアが損害賠償債務を負うか)について
(被告メディアの主張)
被告メディアは,平成20年10月15日に清算を結了し,同月22日
にその旨の登記をしたから,法人格が消滅し,損害賠償債務は消滅した。
(原告任天堂の主張)
被告メディアは,平成20年春にDS用マジコンの販売業者に対して警
告書が多数送付され始めたことを受けて,原告任天堂に対して損害賠償債
務を負っていることを認識していたところ,同年5月に解散したにもかか
わらず,清算手続において,原告任天堂に対し債権を申し出るべき旨を催
告しなかったから,清算手続は終了していないのであって,法人格が消滅
せず,損害賠償債務が消滅したということはできない。
カ争点⑤(原告任天堂が受けた損害の額)について
(原告任天堂の主張)
(ア)被告BⅠを除く被告らが本件DS用マジコンを譲渡しなければ,ウ
ェブサイト上のDSプログラムがダウンロードされて本件DS用マジコ
ンで実行されず,原告任天堂は,より多くのDSカードを販売すること
ができた。なお,ダウンロードは,パソコンで実行する目的で行われる
こともあるが,パソコンはDS本体よりも利便性や操作性等が圧倒的に
劣るため,無視し得る程度である。また,DS用マジコンは,DSカー
ドを購入せずにDSプログラムを入手する目的で購入されるから,DS
用マジコンを購入して完全なDSプログラムを入手した後になおDSカ
ードを購入する者はなく,DS用マジコンの譲渡によってDSカードの
販売数が増加したり維持されたりすることはない。さらに,原告任天堂
が販売するDSカードは,内容が良いこと等から,中古品の販売割合は,
1,2割程度にすぎない。
原告任天堂におけるDSカード1本当たりの利益の額は,DSカード
の表題別に,●(省略)●円又は●(省略)●円を下らない。
被告BⅠを除いた被告らを含むDS用マジコンの販売業者が本件DS
用マジコンを含むDS用マジコンを譲渡したことにより,ウェブサイト
上のDSプログラムがダウンロードされてDS用マジコンで実行され,
原告任天堂は,DSカードを販売する機会を確定的に失った。DSカー
ドを購入するのは,経済的に豊かな30ないし40歳代の男性が多く,
多数のDSカードを購入する者も少なくないから,ウェブサイトからダ
ウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDSカ
ードに対応するものの数は,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任
天堂が販売することができたDSカードの数に相当する。
インターネット上のウェブサイトには,これまでにダウンロードされ
たDSプログラムの数を対応するDSカードの表題別に確認し得る代表
的なものが10存在するところ,これらのウェブサイトは,その本文等
が外国語で表記されているが,DSカードの表題が日本語のローマ字表
記である上,DSプログラムも日本語のままであるから,専ら日本向け
のものである。そうすると,原告任天堂がDS用マジコンの譲渡によっ
て逸失した利益の額は,DSカードの表題別に,原告任天堂におけるD
Sカード1本当たりの利益の額(●(省略)●円又は●(省略)●円)に,
平成19年1月以降にウェブサイトからダウンロードされた対応するD
Sプログラムの数(合計●(省略)●本)をそれぞれ乗じて得た額となり,
その額は,別紙逸失利益額一覧表記載のとおり,●(省略)●円となる。
DS用マジコンの販売業者は,これまでに,DS用マジコンを販売済
みのDS本体約2700万台の1割に相当する約270万台販売した。
このうち,平成19年1月から平成21年9月までの間に,被告シーフ
ォートらは,別紙物件目録記載1の各DS用マジコンを計33万397
8台,被告メディア及び同Mediaは,上記目録記載2の各DS用マ
ジコンを計6万9695台それぞれ共同して譲渡した。なお,一部の譲
渡台数は,推計したものであるが,本件DS用マジコンは,常に入荷後
すぐに売り切れていたから,年末商戦等の販売時期による調整は不要で
ある。また,被告マジカルは,インターネット上のウェブサイト「マジ
カル上海」及び「マジ.COM」や東京都千代田区外神田の店舗「マジ
カル上海」,インターネットオークション等,多数の販売経路を有する
マジコン販売の最大手であるから,約33万台という譲渡台数は過大で
ない。
したがって,原告任天堂は,逸失利益と8%相当額の弁護士費用とし
て,次の計算式のとおり,被告シーフォートらによる別紙物件目録記載
1の各DS用マジコンの譲渡によって●(省略)●円の損害を,被告メデ
ィア及び同Mediaによる上記目録記載2の各DS用マジコンの譲渡
によって●(省略)●円の損害をそれぞれ被った。
(計算式)●(省略)●円×33万3978台/270万台×1.08
=●(省略)●円
●(省略)●円×6万9695台/270万台×1.08
=●(省略)●円
(イ)仮に原告任天堂が前記(ア)の損害を被ったと認められないとして
も,原告任天堂におけるDSカード1本当たりの利益の平均額は,別紙
逸失利益額一覧表記載のとおり,●(省略)●円を下らない。
そして,DS本体が発売された平成16年12月からDS用マジコン
が爆発的に販売されるようになる直前の平成18年12月までの間にお
いて,平成16年12月から平成17年12月までの間はDS本体が5
70万台,DSカードが1850万本,平成18年1月から同年12月
までの間はDS本体が873万台,DSカードが4670万本,それぞ
れ販売されたから,平成17年におけるDS本体1台当たりのDSカー
ドの年間販売数である年間タイレシオは3.245本((1850万本×12
月/13月)÷(570万台×12月/13月)),平成18年における年間タイレ
シオは3.236本(4670万本÷(570万台+873万台))となり,DS用
マジコンを持たないDS本体の利用者に対し,DS本体1台につき,年
間平均約3.24本((3.245本+3.236本)÷2)のDSカードを販売した
ことになる。テレビゲーム市場は製品価格が安価で不況に強い上,平成
19年から平成21年までの間に「ニンテンドーDS」シリーズの販売
に影響するほどの競合品も現れなかったから,DS用マジコンの譲渡が
なければ,年間タイレシオは,平成19年から平成21年までの間にお
いても,そのまま維持されたはずである。
ところが,平成19年1月から平成21年9月までの間に被告BⅠを
除く被告らが本件DS用マジコンを譲渡したことにより,●(省略)●%
の市場占有率を有する原告任天堂は,DS本体1台について販売するこ
とができたはずのDSカード約●(省略)●本(3.24本×33月/12月×●
(省略)●)を販売することが確定的にできなくなった。実際,年間タイ
レシオは,平成19年が1.996本,平成20年が1.311本,平
成21年が0.947本と激減した。
したがって,原告任天堂は,逸失利益と8%相当額の弁護士費用とし
て,次の計算式のとおり,被告シーフォートらによる別紙物件目録記載
1の各DS用マジコンの譲渡によって●(省略)●円の損害を,被告メデ
ィア及び同Mediaによる上記目録記載2の各DS用マジコンの譲渡
によって●(省略)●円の損害をそれぞれ被った。
(計算式)●(省略)●円×●(省略)●本=●(省略)●円
●(省略)●円×33万3978台×1.08=●(省略)●円
●(省略)●円×6万9695台×1.08=●(省略)●円
(ウ)なお,原告任天堂は,ウェブサイトの開設者に要請し,アップロー
ドされたDSプログラムを削除してもらっているが,すぐに再びアップ
ロードされてしまう上,アップロードをしている者を特定することは不
可能であるから,損害の拡大を防ぐべき注意義務の違反はなく,過失相
殺がされるべきでない。
(被告らの主張)
原告任天堂の主張は否認又は争う。DSプログラムのダウンロードは,
パソコンで実行する目的や購入したDSカードの複製物として保存する
目的やこれらのDSカードを集約する目的で行われることがあるし,DS
用マジコンを購入した後になおDSカードを購入する者は多いから,被告
BⅠを除く被告らが本件DS用マジコンを譲渡しなければ,原告任天堂が
より多くのDSカードを販売することができたということはできない。
ウェブサイト上のDSプログラムは無料であるのに対し,DSカードの
販売価格は約5000円であるから,ダウンロードされたDSプログラム
の数は,DS用マジコンが譲渡されなければ販売することができたDSカ
ードの数よりもずっと多いはずである。
ダウンロードされたDSプログラムの数を表示したウェブサイトは,そ
の数を過大に表示している上,その本文等が外国語で表記されており,D
Sカードの表題が日本語のローマ字表記であったり,DSプログラムが日
本語のままであったりしても,外国人は支障なくこれを実行するから,海
外向けのものである。
(被告シーフォートらの主張)
(ア)DSカードは,新品より安価な中古品も販売されているし,生活必
需品ではないのであって,被告シーフォートらが本件DS用マジコンを
譲渡しなければ,原告任天堂がより多くのDSカードを販売することが
できたということはできない。
被告マジカルは,本件DS用マジコンをせいぜい2000台譲渡した
だけである。原告任天堂が主張する譲渡台数は,推測にすぎない上,年
末商戦等の販売時期による調整が必要である。そして,インターネット
オークションで販売していたのは,CⅠである。
(イ)DSカードを購入するのは,毎月2000円前後の小遣いしかもら
っていない10代の子供が多い上,DS本体の利用者は,毎年平均約1.
2本しかDSカードを購入しないから,ダウンロードされたDSプログ
ラムの数は,DS用マジコンが譲渡されなければ販売することができた
DSカードの数よりもはるかに多いはずである。
(ウ)年間タイレシオは,損害賠償を請求する平成19年から平成21年
までの実際の本数を用いるべきである。平成19年2月以降はソニーの
販売する携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」の普及が
進んだから,平成17年や平成18年の年間タイレシオは,DS用マジ
コンの譲渡がなければ,平成19年から平成21年までの間において,
維持されたとはいえない。
(エ)原告任天堂は,DSプログラムをアップロードしているウェブサイ
トの開設者に対して公衆送信の差止請求訴訟を提起するなどして損害の
拡大を防ぐべき注意義務を負っていたにもかかわらず,その履行を怠り,
損害が拡大したから,大幅な過失相殺がされるべきである。
(被告メディアらの主張)
(ア)DSカードを購入しない者は,DS用マジコンが譲渡されなくても,
購入しないから,被告メディア及び同Mediaが本件DS用マジコン
を譲渡しなければ,原告任天堂がより多くのDSカードを販売すること
ができたということはできない。
また,DS用マジコンが譲渡されることにより,DSカードの販売価
格が高いためにDS本体を購入しなかった者も,DS本体やDSカード
を購入するようになるし,ウェブサイト上にDSプログラムがアップロ
ードされて宣伝効果が生じたり,DSカードを購入する者は,DSプロ
グラムをダウンロードして試用した後でも,なおDSカードを購入した
りするから,DSカードの販売数は,増加するか,少なくとも減少はし
ない。そうであるから,被告メディア及び同Mediaが本件DS用マ
ジコンを譲渡したことにより,原告任天堂がDSカードを販売する機会
を確定的に失ったり,販売することができたはずのDSカードを販売す
ることが確定的にできなくなったりしたとはいえない。
(イ)DSプログラムをダウンロードするためのウェブサイトに表示され
ている数は,実際にDSプログラムをダウンロードするためのリンク先
をクリックした数にすぎない。
被告メディアはR4を8991台とDSTTを1万0820台,被告
MediaはM3さくらを2万8380台,それぞれ譲渡しただけであ
る。
(ウ)年間タイレシオは,ゲーム機を購入した年に最も多くのゲームソフ
トを購入するのが通常であるから,年々減少するのが当然である。むし
ろDS本体1台当たりのDSカードの累積販売数である累積タイレシオ
は,年々増加しているから,被告メディア及び同Mediaが本件DS
用マジコンを譲渡したことにより,販売することができたはずのDSカ
ードを販売することが確定的にできなくなったとはいえない。
また,平成19年から平成21年までの間も,DSカードは販売され
ていたから,平成19年から平成21年までの年間タイレシオを控除す
るべきである。
第3当裁判所の判断
1差止め及び廃棄の請求について
(1)争点①ⅰ(DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段によりプ
ログラムの実行が制限されているか)について
ア証拠(甲1)によれば,次の事実が認められる。
(ア)DS本体は,側面のスロットにDSカードを挿入し,電源を入れる
と,DSカードとの間で通信を確立させる。
●(省略)●
イ前記ア認定の事実に基づき,技術的制限手段の該当性について検討する。
(ア)DS本体による,●(省略)●は,定まった規則に基づく応答であり,
法2条7項にいう「特定の反応」に当たる。また,DSプログラムを含
むプログラムは,電子計算機に対する指令であって,1の結果を得るこ
とができるように組み合わされたもののうち,DS本体が特定の反応を
する●(省略)●と共にDSカードを含む記録媒体に記録される方式によ
り,その実行が制限されるものであるから,法2条1項10号及び7項
にいう「プログラム」に当たる。
被告らは,法2条1項10号及び7項にいう「プログラム」につき,
条文の文言や平成11年改正の目的を考慮すれば,実行等が制限された
プログラムに限られ,実行等が制限されていないプログラムは含まれな
いと主張する。しかしながら,上記「プログラム」は,前記のとおり,
電子計算機に対する指令であって,1の結果を得ることができるように
組み合わされたもののうち,視聴等機器が特定の反応をする信号と共に
記録媒体に記録される方式等により,その実行等が制限されるものであ
れば足り,現に実行等が制限されたものである必要はない。そして,証
拠(甲39,122,128)によれば,平成11年改正は,使用・コ
ピー管理技術を施してプログラム等のコンテンツを提供する事業に関与
する者の利益を保護するために行われたことが認められるから,法2条
1項10号及び7項は,使用・コピー管理技術を施して視聴等機器を提
供する事業者の利益をも保護する目的を有しているのであって,これら
にいう「プログラム」を実行等が制限されたプログラムに限る理由はな
いし,また,証拠(甲38,39,42,43,121,123,12
8,129,乙ハ13,16)によれば,平成11年改正は,特定の信
号が記録媒体に記録されていないことにより実行されないゲーム等のプ
ログラムの実行を可能とするMODチップの譲渡等をも規制する目的で
行われたことが認められるから,上記「プログラム」は,特定の信号が
記録媒体に記録されていないことにより実行されないプログラムをも含
み,上記「プログラム」を特定の信号が記録媒体に記録されていること
等により実行等が制限されたプログラムに限る理由もない。なお,実行
等が制限されていないプログラムを他人の提供する視聴等機器で実行す
ることができるようにする自由を認めることはできないから,上記「プ
ログラム」に実行等が制限されていないプログラムを含めることが憲法
21条1項に違反するということはできない。被告らの上記主張は,採
用することができない。
また,被告シーフォートらは,法2条7項にいう「技術的制限手段」
が,視聴等機器において特定の反応をする信号をプログラムと共に記録
媒体に記録する方式等によりプログラムの実行等を制限するものである
し,平成11年改正の目的を考慮すれば,視聴等機器がある信号を受信
したときにプログラムを実行しないことだけが「特定の反応」に当たる
と主張する。しかしながら,上記「技術的制限手段」は,視聴等機器が
特定の反応をする信号をプログラムと共に記録媒体に記録する方式等に
より,プログラムの実行等を制限するものであるし,平成11年改正が,
使用・コピー管理技術を施して視聴等機器を提供する事業者の利益をも
保護するために,特定の信号が記録媒体に記録されていないことにより
実行されないゲーム等のプログラムの実行を可能とするMODチップの
譲渡等をも規制する目的で行われたことは,前記のとおりであるから,
視聴等機器がある信号を受信したときにプログラムの実行等をしないこ
とだけでなく,視聴等機器がある信号を受信したときにプログラムの実
行等をすることも,「特定の反応」に当たるといえる。被告シーフォート
らの上記主張は,採用することができない。
(イ)したがって,●(省略)●をプログラムと共に記録媒体に記録する方
式は,いずれも電子的方法によりプログラムの実行を制限する手段であ
って,プログラムの実行のために用いられる機器であるDS本体が特定
の反応をする信号をプログラムと共に記録媒体に記録する方式として,
法2条7項にいう「技術的制限手段」に当たる。
被告メディアらは,●(省略)●が,DS本体とDSカードとの間の通
信を確立させるプロトコルにすぎず,DSプログラムを起動させる信号
ではないから,上記各信号をプログラムと共に記録媒体に記録する方式
は,技術的制限手段に当たらないと主張する。しかしながら,前記アの
とおり,上記各信号は,DS本体とDSカードとの間の通信を確立させ
るプロトコルでなく,DS本体にプログラムの実行に向けた●(省略)●
をさせるものである。被告メディアらの上記主張は,採用することがで
きない。
ウ次に,技術的制限手段が営業上用いられていることの該当性について検
討する。
証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,●(省略)●をプログラムと共
に記録媒体に記録する方式(以下「本件技術的制限手段」という。)は,
DSカードを購入させるために用いられていることが認められるから,本
件技術的制限手段は,営業上用いられているものである。
被告シーフォートらは,本件技術的制限手段につき,パソコンやCDプ
レイヤー等とは異なり,原告任天堂にライセンス料を支払わずに自主制作
されたプログラムの実行も制限する手段であり,最も市場占有率の高い原
告任天堂がソフトウェアの製作販売業者に対して優越的な地位を濫用し
たり取引を不当に妨害したりすることに用いられているから,適法な営業
に用いられていないと主張する。しかしながら,原告任天堂が本件技術的
制限手段をソフトウェアの製作販売業者に対して優越的な地位を濫用し
たり取引を不当に妨害したりすることに用いていることを認めるに足り
る証拠はない。被告シーフォートらの上記主張は,採用することができな
い。
エしたがって,DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段によ
りプログラムの実行が制限されていると認められる。
(2)争点①ⅱ(本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの実行を
営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする
機能を有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか)について
ア証拠(甲1,2,45)によれば,次の事実が認められる。
●(省略)●
イ前記ア認定の事実によれば,本件DS用マジコンは,いずれも,これら
に記録されているプログラムとファームウェアが組み合わされたものに
より,プログラムの実行を制限する本件技術的制限手段の効果を妨げるも
のと認められる。
そして,証拠(甲1ないし4,5の1及び2,6,7,31の2,32,
44,45,52,97,98,99の1及び2,101,105,10
6,108ないし110,126の1及び2,127,130,133な
いし138,180ないし182,乙ニ6,8,9の2,12)によれば,
①M3さくらを除く本件DS用マジコンは,インターネット上のウェブサ
イトから「公式ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダウンロードす
るなどの方法により,DS本体におけるDSプログラムを含む特定のプロ
グラムの実行を可能とするようになるところ,上記公式ファームウェア
は,上記各DS用マジコンの発売当初から,ウェブサイトや雑誌で紹介さ
れ,その存在が広く知られていること,②M3さくらは,インターネット
上のウェブサイトから「公式ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダ
ウンロードするなどの方法により,DSプログラム以外の音楽や動画に関
する特定のプログラムの実行を可能とするようになるところ,上記公式フ
ァームウェアは,平成20年5月30日のM3さくらの発売当初から,取
扱説明書やウェブサイト,雑誌で紹介され,その存在が広く知られている
こと,③M3さくらは,インターネット上のウェブサイトから「非公式(X)
ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダウンロードする方法により,
DSプログラムの実行をも可能とするようになるが,上記非公式ファーム
ウェアは,遅くとも上記同日から,存在するとともに,ウェブサイトや雑
誌で紹介され,その存在が広く知られていることが認められる。これらの
事実によれば,本件DS用マジコンは,いずれも,発売当初から,DS本
体におけるDSプログラムを含む特定のプログラムの実行を可能とする
機能を有していると認められる。
ウしたがって,本件DS用マジコンは,いずれもDS本体におけるプログ
ラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げること
により可能とする機能を有するプログラムを記録した記録媒体に当たる
と認められる。
(3)争点①ⅲ(本件DS用マジコンに記録されているプログラムが,DS本体
におけるプログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を
妨げることにより可能とする機能以外の機能を併せて有するか)について
本件DS用マジコンに記録されている●(省略)●がDS本体におけるプロ
グラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることに
より可能とする機能以外の機能を併せて有することを認めるに足りる証拠は
ない。
被告らは,前記各信号がDS本体における自主制作されて実行等が制限さ
れていないプログラムの実行やDSプログラム以外の動画,音楽の再生も可
能とする機能を併せて有すると主張する。しかしながら,証拠(甲3,6,
7,52,乙ニ6,12)によれば,上記の動画や音楽はプログラムである
ことが認められるところ,前記(1)イ(ア)のとおり,自主制作されて実行等が
制限されていないプログラムや上記の動画,音楽も,法2条1項10号及び
7項にいう「プログラム」に含まれるから,これらも,DS本体におけるプ
ログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げること
により可能とする機能を有するものにほかならない。被告らの上記主張は,
採用することができない。
(4)争点②(本件DS用マジコンの譲渡等によって原告らの営業上の利益が侵
害され,又は侵害されるおそれがあるか)について
ア被告シーフォートらについて
(ア)証拠(甲46ないし51,54,56,57及び58の各1及び2,
59,60,61の1及び2,62ないし65,66及び67の各1及
び2,68,69,70の1ないし3,71,72,73及び74の各
1及び2,75,76及び77の各1及び2,79,80の1及び2,
81ないし83,84の1ないし3,85,86の1及び2,87の1
ないし3,88,90,91,92の1及び2,93の1ないし3,9
4の1ないし5,95の1及び2,140,141,142の1及び2,
144の3,145,146の1ないし3,172,177,209,
210及び211の各2,212の1ないし6,213の1ないし4,
214,215,216の1及び2,217ないし219の各2,22
0,221の1ないし9,222の2及び3,223の1ないし12,
224の1ないし3,225,226ないし228,251,乙ハ22,
ニ50,51)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
aCⅠは,遅くとも平成18年9月には「マジカル上海」という商号
でインターネットを利用したゲーム用の機器や部品の通信販売を開始
し,同年10月にはヤマトフィナンシャル株式会社との間で宅配便の
決済契約を締結した。
b平成18年12月ころにR4が発売され,CⅠは,中国からR4を
輸入し,同月26日,「マジカル上海」という名称で開設したウェブ
サイト上で販売したところ,約2時間で完売した。以後,R4を製造
する工場の操業停止等により一時的な品薄になることはあったもの
の,CⅠは,おおむね順調に,中国からR4を1度に100台以上輸
入するなどして,ウェブサイト「マジカル上海」上で販売することを
繰り返した。
cCⅠは,平成20年2月13日,本店所在地を自己及び被告AⅠの
本籍地兼住所地であり,被告シーフォートの本店所在地でもある東京
都北区<以下略>として,被告マジカルを設立し,被告マジカルに自
己の営業を譲渡して,ウェブサイト「マジカル上海」を引き続き使用
させた。
d被告マジカルは,遅くとも平成20年5月2日には,平成19年1
2月ころに発売されたDSTTの販売も開始したが,売れすぎて対応
しきれないほどであった。
もっとも,原告任天堂とDSカードの販売業者らは,平成20年5
月ころから,被告マジカルを含むDS用マジコンの販売業者らに対し,
DS用マジコンの販売等が不正競争に当たるとして,販売の中止等を
求める警告書を発送していた。被告マジカルは,同年7月ころから,
ウェブサイト「マジカル上海」のトップページではDS用マジコンの
販売を終了した旨表示する一方で,「隠し扉」という会員制のページ
ではR4やDSTTの販売を継続した。
e原告任天堂は,平成20年7月29日,DSカードの販売業者54
社と共に,東京地方裁判所に対し,被告らを除くDS用マジコンの販
売業者5社によるDS用マジコンの譲渡の差止め等を求める訴えを提
起し(同年(ワ)第20886号),その旨発表した。
しかし,被告マジカルは,平成20年8月ころから,インターネッ
ト上のフリーマーケットサイト「ムスビー」やオークションサイト「Y
ahoo!オークション」で,出品者名を「進化チーム」等と表示し
てR4やDSTTを多数販売するようになり,ヤマト運輸株式会社だ
けでは発送業務が間に合わなくなったために,同年11月には佐川フ
ィナンシャル株式会社との間でも宅配便の決済契約を締結したり,同
年12月23日には東京都豊島区東池袋のサンシャインシティで即売
会を実施したりした。
f被告マジカルは,平成21年1月から,ウェブサイト「マジカル上
海」やゲーム雑誌の広告上で,近くDS用マジコンの販売を終了する
旨表明していたところ,同年2月27日,東京地方裁判所がDS用マ
ジコンの譲渡の差止め等を命じる判決を言い渡したので(平成20年
(ワ)第20886号,同第35745号),ウェブサイト「マジカル
上海」から「隠し扉」を削除した。
しかし,被告マジカルは,このころから,ウェブサイト「マジカル
上海」に「(株)マジカルカンパニーとは一切関係ございません。」と
記載したり,販売主を被告シーフォートの商号をもじった「株式会社
シーホースジャパン」や「株式会社シーフォードジャパン」と表示し,
販売責任者を被告AⅠの旧姓名を使用した「AⅡ」と表示したりして,
R4やDSTTを販売した。
g被告マジカルは,平成21年3月4日から,ウェブサイト「マジカ
ル上海」やゲーム雑誌で,同月18日に東京都千代田区外神田で店舗
「マジカル上海」を開設する旨告知していたところ,遅くとも同月1
5日には,開店準備中の店舗前で,R4やDSTTのほか,新たに発
売された別紙物件目録記載1(3)のDS用マジコン(以下「R4i」と
いう。)の販売を開始するとともに,同月18日からは,予定どおり
に開店した店舗で,R4やDSTT,R4iの販売を継続した。
hDS用マジコンの販売業者らは,東京地方裁判所がDS用マジコン
の譲渡の差止め等を命じる判決を言い渡した平成21年2月末からし
ばらくの間,DS用マジコンの販売を自粛していたが,同年4月ころ
には,販売を再開し始めた。原告任天堂とDSカードの販売業者らは,
同月以降,被告シーフォートらやCⅠを含むDS用マジコンの販売業
者らに対し,販売の中止等を求める警告書を再び発送するようになっ
た。
被告AⅠは,平成21年5月中旬ころから,ウェブサイト「マジ.
COM」を中国に開設し,代表者を「EⅠ」と表示した上,被告マジ
カルにその顧客へ上記ウェブサイトを紹介してもらいながら,R4や
DSTT,R4iを販売するようになった。被告マジカルは,同年6
月中旬ころからは,店舗の看板に「大人の事情により閉店致しました。」
と記載した紙を掲示しながら,店舗前でR4やDSTT,R4iの販
売をしたり,同年7月17日には,店舗名を「マジカル上海ターボ」
に変更して店舗での販売を再開したり,同年8月28日には代表取締
役を被告AⅠに変更した。
i原告らは,平成21年11月10日,当裁判所に本件訴えを提起し,
その旨発表した。
被告マジカルは,以後,会員向けのメールマガジンやウェブサイト
「マジカル上海」上で,送信者や販売業者を実在しない「株式会社メ
ダパニ」と表示した上,原告任天堂が閲覧していることを前提に,上
記メールマガジンに,「法務部様もうどうせ○。○えられてるな
ら隠し扉作っちゃいました」と記載し,「隠し扉」を復活させてR4
やDSTT,R4iを販売したり,「法務部様おはようございま
す。マジカル上海です。ここのところ頻繁にくるN社からの警告文。
○ジコン売るな…「売るな売るなといわれてはもう店に出せる商品が
ないじゃないですか!!!」←逆ギレこんな状態ですのでマジカル
上海は太く短くを運営方針とし,いつ販売禁止になるかもしれない商
品を,激安価格でさっさと皆様にご提供させていただきたい所存にご
ざいます。」と記載して原告任天堂を挑発したりした。また,被告マ
ジカルは,平成21年11月中旬ころからは,店舗「マジカル上海」
の近くに別の店舗「裏マジカル上海」を開設してR4やDSTT,R
4iを販売し,平成22年5月10日には,本店所在地を被告AⅠの
住所地であり,被告シーフォートの本店所在地である東京都豊島区<
以下略>に変更して,少なくとも平成23年11月までは,R4やD
STT,R4iの販売を継続した。
(イ)前記(ア)認定の事実に基づき検討する。
a被告マジカルは,CⅠから営業を譲り受けてR4やDSTT,R4
iを輸入,譲渡していたものであるが,平成21年8月,CⅠに代わ
って被告AⅠが代表取締役に就任したほか,本店を被告AⅠの住所地
に置いたり,ウェブサイト「マジカル上海」上の販売責任者の表示に
被告AⅠの旧姓を使用したりしていたのであり,また,原告任天堂ら
がDS用マジコンの販売の中止等を求める警告書を発送すると,被告
AⅠがウェブサイト「マジ.COM」を開設してR4やDSTT,R
4iを販売するようになり,被告マジカルがこれに顧客を紹介してい
たのである。そうであるから,被告マジカルと同AⅠとは,共同して
R4やDSTT,R4iを譲渡していたものと認められる。そして,
被告マジカル及び同AⅠが現在もR4やDSTT,R4iを輸入,譲
渡していることは窺えないが,被告マジカル及び同AⅠは,敗訴に備
えてその譲渡等を控えているにすぎないから,今後,共同してR4や
DSTT,R4iを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために
展示し,輸入し,これによって原告らの営業上の利益が侵害されるお
それがあるものといわなければならない。
被告マジカル及び同AⅠは,現在,本件DS用マジコンを輸入する
ことができない上,平成23年改正で刑事罰も導入されたから,本件
DS用マジコンを譲渡などする予定はないと主張する。しかしながら,
被告マジカル及び同AⅠは,本件訴訟で本件DS用マジコンが法2条
1項10号の記録媒体に当たることを争っているのであるから,被告
マジカルや同AⅠに対する差止めの請求を棄却すれば,被告マジカル
や同AⅠが本件DS用マジコンは上記記録媒体に当たらないと主張し
てその譲渡等を再開するおそれがあるのである。被告マジカル及び同
AⅠの上記主張は,採用することができない。
bこれに対し,被告シーフォート自身は,R4やDSTT,R4iを
輸入したり譲渡したりしたことはなく,被告マジカルや同AⅠと共同
してR4やDSTT,R4iを譲渡していたと認めることはできない
(ウェブサイト「マジカル上海」上の販売主の表示に被告シーフォー
トの商号をもじったものが使用されたことはあるが,これは,被告マ
ジカルが行ったものであって,これをもって,被告シーフォートが被
告マジカルと共同してR4やDSTT,R4iを譲渡したということ
はできない。)。そして,被告シーフォートが現在もR4やDSTT,
R4iを譲渡していることは窺えないから,被告シーフォートの行為
によって原告らの営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれが
あるということはできない。
イ被告メディア及び同Mediaについて
(ア)証拠(甲5の2,6,7,31の2,52,54,97,98,9
9及び102の各1及び2,103ないし106,108ないし110,
111の1ないし7,112,114,116,117,118の1及
び2,119,124,125,126の2,127,130,131,
133ないし138,177,180ないし182,183の1ないし
3,186,187,197及び198の各1ないし3,199の5,
202及び203の各2,204の1及び2,205の1ないし3,2
29の1ないし3,236,237,238の1ないし4,239の1
及び2,240,247,249,250,乙ニ29,鑑定の結果)及
び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。
a被告メディアは,コンピュータ部品の卸売や通信販売を主な事業と
し,東京都港区<以下略>の本店事務所を拠点としながら,平成17
年に「M3FLASH」や「Asian.net」という名称で開設
したウェブサイト上で,中国のM3Adapter社が開発したDS
用マジコン「M3-Perfect」やその後継機である「M3DS
Simply」を輸入して販売していた。
被告メディアは,これらのDS用マジコンをDS本体における動画
や音楽等に関する特定のプログラムの実行を可能にするマルチメディ
アプレイヤーであるとうたって販売していたが,これらのDS用マジ
コンはDSプログラムの実行をも可能にするものであって,このこと
は広く知られていた。
b被告メディアは,平成18年4月,ヤマトフィナンシャル株式会社
と佐川フィナンシャル株式会社との間でそれぞれ宅配便の決済契約を
締結した上で,遅くとも平成19年2月7日には,中国からR4を輸
入し,DS用マジコンの販売業者に卸売りをしたり,ウェブサイト「A
sian.net」上で通信販売をしたりしていた。
c被告BⅠは,平成19年に被告メディアに税関の調査が入り,同年
8月12日に被告メディアの本店所在地を自己の住所地である東京都
台東区<以下略>に変更するとともに,同月17日に被告メディアの
取締役であるDⅠが代表者を務める休眠法人であった「有限会社大豊
システム」の商号や目的,本店所在地,役員構成を本店変更前の被告
メディアのそれらと同じものに変更させ,同年9月26日に商号を被
告Mediaの現商号に変更させて,同年10月以降,被告メディア
の事業を被告Mediaに順次譲渡していった。
dM3Adapter社は,平成19年10月中旬,DS用マジコン
「M3DSSimply」の後継機である「M3DSREAL」
を発売し,被告メディア又は同Mediaも,同月18日,販売を開
始した。
DS用マジコン「M3DSREAL」は,インターネット上のウ
ェブサイトから「公式ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダウ
ンロードしても,DSプログラム以外の動画や音楽等に関する特定の
プログラムの実行を可能にするだけであり,被告メディア又は同Me
diaもその旨をうたって販売していたが,ウェブサイトから「非公
式ファームウェア」と呼ばれるプログラムをダウンロードすれば,D
Sプログラムの実行をも可能にするものであった。そして,上記非公
式ファームウェアは,ウェブサイトやゲーム雑誌で紹介され,その存
在が広く知られていた。
e被告Mediaは,遅くとも平成19年12月28日には,DST
Tの販売を開始した。
f被告BⅠは,平成20年2月に被告メディアが追徴課税を受けたこ
とから,同月25日に取引口座を被告メディアのものから被告Med
iaのものに変更するなどして,被告メディアから被告Mediaへ
の事業譲渡をほぼ完了させ,同年1月に被告Mediaの本店所在地
を東京都品川区<以下略>に変更してはいたものの,東京都港区新橋
の旧本店を拠点として使用し続けるとともに,その電話番号やファク
シミリ番号も継続して使用し続けた。
g被告BⅠは,DS用マジコン「M3DSREAL」によってDS
本体が実行するプログラムの画面が見にくく,操作性も悪かったので,
M3Adapter社に対してこれらの問題点を改良した新製品の開
発を依頼していたところ,平成20年2月ころ,新製品がおおむね完
成した。
そこで,被告Mediaは,新製品を「M3さくら」と命名し,平
成20年2月ころからウェブサイト「M3FLASH」や「Asia
n.net」,「M3さくら」という名称で開設したウェブサイト上
等で同年5月に発売する旨宣伝した。M3さくらも,DS用マジコン
「M3DSREAL」と同様に,公式ファームウェアをダウンロー
ドしても,DSプログラム以外の動画や音楽等に関する特定のプログ
ラムの実行を可能にするだけであり,被告Mediaもその旨をうた
っていたが,DSプログラムの実行も可能にする非公式ファームウェ
アの開発が進められ,同年5月16日に発売されたゲーム雑誌には,
非公式ファームウェアの開発が進められ,近く特定のウェブサイト上
で配布される旨が説明されていた。
h被告BⅠは,平成20年5月ころ,原告任天堂とDSカードの販売
業者らがDS用マジコンの販売業者らに対して警告書を発送し始めた
ことを受け,早ければ同月24日には,公式にもDSプログラムの実
行を可能にするR4やDSTTの販売をほぼ終了させ,同月31日に
は,被告メディアを解散し,代表清算人として,清算手続を開始し,
同年10月15日に残余財産949万1637円を株主に分配するこ
とにより清算を結了したとして,同月22日にその旨の登記をした。
被告BⅠは,清算手続において,原告任天堂等に対して債権を申し出
るべき旨を催告しなかった。
i被告Mediaは,平成20年5月30日,M3さくらの販売を開
始した。また,遅くとも同日には,特定のウェブサイト上でDSプロ
グラムの実行をも可能にする非公式ファームウェアの配布が開始さ
れ,以後,ウェブサイトやゲーム雑誌で紹介されて,その存在が広く
知られていった。
平成20年5月31日には,卸先のDS用マジコンの販売業者にお
いて,M3さくらの即売会が実施され,好評を博した。
j被告Mediaは,少なくとも平成21年10月までは,M3さく
らの販売を継続した。
(イ)前記(ア)認定の事実に基づき検討する。
a被告Mediaは,R4やDSTT,M3さくらを輸入,譲渡して
いたものであり,現在はこれらを譲渡していることは窺えないが,敗
訴に備えてその譲渡や輸入を控えているにすぎないから,今後,R4
やDSTT,M3さくらを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しの
ために展示し,輸入し,これによって原告らの営業上の利益が侵害さ
れるおそれがあるものといわなければならない。
被告Mediaは,本件DS用マジコンは現在販売されている「ニ
ンテンドーDS」シリーズで起動しない上,平成23年改正で刑事罰
も導入されたから,本件DS用マジコンを譲渡などする予定はないと
主張する。しかしながら,本件DS用マジコンが現在販売されている
「ニンテンドーDS」シリーズで起動しないことを認めるに足りる証
拠はないし,仮にこれが認められるとしても,現在もDS本体の利用
者が存在することは明らかであるから,本件DS用マジコンに対する
需要はあるというべきである。そして,刑事罰が導入されても,被告
Mediaが本件DS用マジコンの譲渡等を再開するおそれがあるこ
とは,前記ア(イ)aと同様である。被告Mediaの上記主張は,採
用することができない。
bこれに対し,被告メディアは,平成20年5月に解散して同年10
月に清算結了の登記をした上,解散後も事業活動を行っていることを
認めるに足りる証拠はないから,被告メディアの行為によって原告ら
の営業上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれがあるということ
はできない。
原告らは,被告Mediaによる通常の株式会社への移行が被告メ
ディア及び同Mediaの損害賠償債務等の免脱を目的とした会社制
度の濫用であり,上記両被告は,信義則上,原告らに対し別人格であ
ることを主張することができないと主張する。しかしながら,被告メ
ディアによる通常の株式会社への移行が損害賠償債務等の免脱を目的
としたものであるとしても,被告メディアは,解散した上,解散後も
事業活動を行っていたことを認めるに足りる証拠はないのであるか
ら,侵害の差止めに関し,被告メディアが被告Mediaと別異の法
人格であると主張することが信義則に反するということはできない。
原告らの上記主張は,採用することができない。
2損害賠償の請求について
(1)争点①ⅰ(DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段によりプ
ログラムの実行が制限されているか)について
これについて,旧法と法とで差異はなく,前記1(1)で判示したのと同じ理
由で,DS本体では,営業上用いられている技術的制限手段によりプログラ
ムの実行が制限されていると認められる。
(2)争点①ⅱ(本件DS用マジコンが,DS本体におけるプログラムの実行を
営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする
機能のみを有するプログラムを記録した記録媒体に当たるか)について
前記1(2)及び(3)に判示したのと同じ理由で,本件DS用マジコンは,D
S本体におけるプログラムの実行を営業上用いられている技術的制限手段の
効果を妨げることにより可能とする機能のみを有するプログラムを記録した
記録媒体に当たると認められる。
(3)争点②(本件DS用マジコンの譲渡によって原告任天堂の営業上の利益が
侵害されたか)について
ア被告シーフォートらについて
前記1(4)アに判示したところによれば,平成18年12月26日から平
成20年2月12日までは,CⅠが単独でR4を販売し,被告マジカルが
設立された同月13日から同年5月1日までは,被告マジカル及び同AⅠ
が共同してR4を販売し,同月2日から平成21年3月14日までは,被
告マジカル及び同AⅠが共同してR4とDSTTを販売し,同月15日か
ら平成23年11月までは,被告マジカル及び同AⅠが共同してR4とD
STT,R4iを販売したことが認められるから,これによって原告任天
堂の営業上の利益が侵害されたということができるが,この間,被告シー
フォートが単独又は被告マジカル若しくは被告AⅠと共同してR4やD
STT,R4iを譲渡していたと認めることはできないから,被告シーフ
ォートの行為によって原告任天堂の営業上の利益が侵害されたというこ
とはできない。
被告マジカルは,平成20年2月13日に設立されたのであるが,CⅠ
から,インターネットを利用したゲーム用の機器や部品の通信販売の営業
を譲り受け,CⅠが開設したウェブサイト「マジカル上海」を引き続き使
用していたものであるところ,CⅠは,ウェブサイトの「マジカル上海」
との名称を自己の営業を表示するものとして用い,被告マジカルも同様に
これを使用していたのであるから,被告マジカルは,CⅠがしたR4の販
売についても,商法17条1項の類推適用により,責任を負うというべき
である(最高裁平成14年第399号同16年2月20日第二小法廷判
決・民集58巻2号367頁参照)。
被告マジカルは,自己の責任が発生後2年以内に原告任天堂が請求又は
その予告をしなかったものについては消滅したと主張するが,営業を譲り
受けて譲渡人の商号等を引き続き使用する譲受人の責任を2年で消滅さ
せる根拠はない(商法17条3項は,譲渡人の責任が営業を譲渡した日後
2年間を経過した時に消滅することを規定したものである。)。被告マジ
カルの上記主張は,採用することができない。
イ被告メディア及び同Mediaについて
前記1(4)イに判示したところによれば,平成19年2月7日から同年9
月までは,被告メディアが単独でR4を販売し,同年10月から同年12
月27日までは,被告メディア又は同Mediaが単独でR4を販売し,
同月28日から平成20年5月24日までは,被告メディア又は同Med
iaが単独でR4を販売するととともに,被告Mediaが単独でDST
Tを販売し,同月30日から平成21年10月までは,被告Mediaが
単独でM3さくらを販売していたことが認められる。そして,前記1(4)
イ(ア)認定の事実によれば,被告メディアの代表者であった被告BⅠは,
税関や原告らからの追及を免れるために,被告メディアの本店所在地を変
更するとともに,休眠法人であった被告Mediaの商号や目的,本店所
在地,役員構成を本店変更前の被告メディアのそれらと同じものに変更
し,被告メディアの事業を被告Mediaに譲渡して,営業拠点や連絡先
を引き継がせた後に,被告メディアを解散したことが認められるのであっ
て,被告メディアと同Mediaとは,実質が前後同一であり,被告Me
diaによる通常の株式会社への移行と被告メディアの解散は,両被告の
債務の免脱を目的としてされた会社制度の濫用であるから,両被告が,原
告らに対し,別異の法人格であると主張することは信義則に反し許されな
いというべきである(最高裁昭和45年(オ)第658号同48年10月2
6日第二小法廷判決・民集27巻9号1240頁参照)。そうすると,被
告メディア及び同Mediaは,共同して,平成19年2月7日から同年
12月27日まではR4を販売し,同月28日から平成20年5月24日
まではR4とDSTTを販売し,同月30日から平成21年10月までは
M3さくらを販売していたということができる。
(4)争点③(CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠに故意又は過失等があるか)につ
いて
証拠(甲3,4,5の1及び2,6,8ないし23,24の1ないし4,
25ないし30,31の1及び2,32,33の1及び2,34の1ないし
8,35,36,44,126の1及び2,150ないし156,163な
いし167,177,180ないし182,201)によれば,インターネ
ットやゲーム雑誌,テレビ,新聞等は,遅くとも平成19年1月から,DS
用マジコンがDS本体での実行を制限されるDSプログラムの実行を可能と
する機能を有するプログラムを記録した記録媒体であり,このため,DS用
マジコンを用いれば,DSカードを購入しなくても,「ROMサイト」等と
呼ばれるウェブサイトから「コピーゲーム」等と呼ばれるDSプログラムを
ダウンロードするだけで,DSプログラムを無償で入手することができる上
に,DS本体においてゲーム等をすることができるようになること,その結
果,原告任天堂やDSカードの販売業者は,DSカードの売上げが減り,損
害を被っていることを多数紹介し,これらが広く知られていたことが認めら
れる。
前記認定の事実に,CⅠ,被告AⅠ及び同BⅠは,いずれも本件DS用マ
ジコンを販売していた会社の代表者を務めていたこと,原告任天堂とDSカ
ードの販売業者からの警告や提訴に対し,CⅠ及び被告AⅠは,被告マジカ
ルに「隠し扉」という会員制のページ上で販売させたり,「進化チーム」や
「株式会社シーホースジャパン」,「株式会社メダパニ」等の偽名を使用し,
また,店舗名の変更や別の店舗を開設したりして,販売を継続し,メールマ
ガジンには,「いつ販売禁止になるかもしれない商品を,激安価格でさっさ
と皆様にご提供させていただきたい所存にございます。」などと記載して原
告任天堂を挑発していたこと,被告BⅠは,原告らからの追及を免れるため
に,被告メディアを解散したこと,などを併せ考慮すれば,CⅠ及び被告A
Ⅰは,被告マジカルに別紙物件目録記載1の各DS用マジコンを譲渡させた
り,自ら当該各DS用マジコンを譲渡したりすることにより,また,被告B
Ⅰは,被告メディア及び同Mediaに上記目録記載2の各DS用マジコン
を譲渡させることにより,いずれも,本件DS用マジコンがDS本体での実
行を制限されるDSプログラムの実行を可能とし,原告任天堂の営業上の利
益を侵害して損害を与えていることを認識し,かつ認容していたと認められ
る。
被告らは,DS用マジコンが平成20年春ころまで普通に販売されていた
し,違法性について争いがあったから,違法性の認識可能性すらなかったと
主張する。しかしながら,本件DS用マジコンの譲渡が旧法2条1項10号
の不正競争に当たらないという解釈を示す公的見解,有力な学説,裁判例が
あったことはうかがわれない上,平成21年2月27日には,DS用マジコ
ンの譲渡が上記不正競争に当たるとする判決が言い渡されているのである。
そうすると,CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠは,本件DS用マジコンの譲渡
に当たり,それが上記不正競争に当たることを認識することができたという
べきであり,被告らの上記主張は,採用することができない。
したがって,CⅠ並びに被告AⅠ及び同BⅠは,いずれも,本件DS用マ
ジコンの譲渡によって原告任天堂の営業上の利益を侵害したことについて,
故意があり,また,代表取締役又は代表清算人としてその職務を行うについ
て悪意があったと認められる。
(5)争点④(被告メディアが損害賠償債務を負うか)について
被告BⅠは,被告メディア及び同Mediaに本件DS用マジコンを譲渡
させることにより,原告任天堂の営業上の利益を侵害して損害を与えること
を認識していたのであるから,原告任天堂は,会社法499条1項にいう「知
れている債権者」であったところ,被告メディアの代表清算人であった被告
BⅠは,被告メディアの清算手続において,原告任天堂に対してその債権を
申し出るべき旨を催告することなく,約949万円を残余財産として株主に
分配した。
そうすると,被告メディアの清算手続は,いまだ終了せず,清算結了の登
記がされたからといって,被告メディアが法人格を失うことはない。被告メ
ディアは,清算の目的の範囲内において,なお存続しているものであり(会
社法476条),原告任天堂に対する損害賠償債務は消滅しない。
(6)争点⑤(原告任天堂が受けた損害の額)について
アDSプログラムのダウンロード数から推計する方法について
原告任天堂は,DS用マジコンの販売業者がDS用マジコンを譲渡した
ことにより,原告任天堂がDSカードを販売する機会を確定的に失ったと
ころ,多数のDSカードを購入する者も少なくないから,ウェブサイトか
らダウンロードされたDSプログラムのうち,原告任天堂が販売するDS
カードに対応するものの数は,DS用マジコンが譲渡されなければ原告任
天堂が販売することができたDSカードの数に相当すると主張する。
しかしながら,DS用マジコンが譲渡されなければ販売する機会があっ
たDSカードの数は,その後に販売することができるDSカードの数とそ
の後も販売することができないDSカードの数を含んでいるから,DS用
マジコンが譲渡されなければ販売することができたDSカードの数を超
えるものになることは明らかである。しかも,前記(4)認定の事実によれ
ば,「ROMサイト」等と呼ばれるウェブサイトから「コピーゲーム」等
と呼ばれるDSプログラムを無料でダウンロードしてこれを入手するこ
とができるところ,証拠(甲169の1,173)によれば,原告任天堂
が販売するDSカードの販売価格は,おおむね約4600円であることが
認められるから,無料でダウンロードすることができるコピーゲームと約
4600円を支払って購入するDSカードとでは,その容易さに大きな違
いがある。
そうであるから,ウェブサイトからダウンロードされたDSプログラム
のうち,原告任天堂が販売するDSカードに対応するものの数が,DS用
マジコンが譲渡されなければ原告任天堂が販売することができたDSカ
ードの数に相当するということはできない。
原告任天堂の前記主張は,採用することができない。
イ年間タイレシオから推計する方法について
(ア)DSカード1本当たりの利益の額について
証拠(甲169の1,173,鑑定の結果)によれば,原告任天堂に
おけるDSカード1本当たりの利益の額は,別紙逸失利益額一覧表記載
のとおり,12表題が●(省略)●円を下らず,92表題が●(省略)●円
を下らないことが認められるから,その平均額は,次の計算式のとおり,
●(省略)●円を下らない。
(計算式)(●(省略)●円×12表題+●(省略)●円×92表題)÷(12表題
+92表題)
=●(省略)●円(1円未満切捨て)
(イ)DS用マジコンの譲渡がなかった場合の年間タイレシオについて
a証拠(甲177,190の1ないし5,195の4及び5,230
ないし232,233の1ないし4)によれば,①国内におけるDS
本体1台当たりのDSカードの年間販売数を示す年間タイレシオ(D
Sカードの年間販売数÷DS本体の累積販売数)と国内におけるDS
本体1台当たりのDSカードの累積販売数を示す累積タイレシオ(D
Sカードの累積販売数÷DS本体の累積販売数)は,次の表のとおり
(タイレシオは小数点4位以下四捨五入)
であり,年間タイレシオは,平成16年12月から平成17年12月
までが3.246本,平成18年が3.236本とほぼ一定であった
のに対し,平成19年が1.997本,平成20年が1.312本,
平成21年が0.975本と毎年大きく減少していること,②ゲーム
業界は,平成18年以降,拡大し続けていて,平成20年後半に始ま
期間(年号は平成)DSカードDS本体年間タイレシオ累積タイレシオ
16年12月~17年12月1850万本570万台3.246本3.246本
18年1月~12月4670万本
(累計6520万本)
873万台
(累計1443万台)
3.236本4.518本
19年1月~12月4325万本
(累計1億0845万本)
723万台
(累計2166万台)
1.997本5.007本
20年1月~12月3367万本
(累計1億4212万本)
401万台
(累計2567万台)
1.312本5.536本
21年1月~9月2057万本
(累計1億6269万本)
245万台
(累計2812万台)
0.975本5.786本
った不況下においても,単価が他のレジャーに比べて安いこと等から,
むしろ売上げが増加していたこと,③DS用マジコンは,平成17年
4月ころから販売されていたが,R4がその使いやすさゆえに平成1
8年12月ころから爆発的に販売されるようになったこと,④原告任
天堂は,平成19年以降,ゲーム機「Wii」向けのゲームソフトの
製作,販売に注力するようになり,DS本体向けのゲームソフトでヒ
ットする作品が出なかった一方で,平成20年にはソニーの販売する
携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル」向けのゲームソ
フトで,平成21年には原告株式会社スクウェア・エニックスの販売
するDS本体向けのゲームソフトで,それぞれヒットする作品が出た
ことが認められる。
前記認定の事実に,年間タイレシオは漸減していくのが通常である
ことを併せ考慮すると,平成16年12月から平成18年12月まで
の平均年間タイレシオ3.241本は,DS用マジコンの譲渡がなけ
れば,平成19年から平成21年までの間,少なくとも平均2.5本
を限度として維持されたものと認めるのが相当である。
被告シーフォートらは,年間タイレシオは,損害賠償を請求する平
成19年から平成21年までの実際の本数を用いるべきであると主張
する。しかしながら,平成19年から平成21までの実際の年間タイ
レシオは,DS用マジコンの譲渡による影響を受けた数値であるから,
DS用マジコンの譲渡がなかった場合のDSカードの年間販売数を意
味しない。被告シーフォートらの上記主張は,採用することができな
い。
b前記認定の事実によれば,インターネットやゲーム雑誌,テレビ,
新聞等は,遅くとも平成19年1月から,DS用マジコンを用いれば,
DSカードを購入しなくても,無償で,DS本体においてゲーム等を
することができるようになることを多数紹介し,広く知られていた上,
証拠(甲33の1及び2,34の3,150)によれば,DS用マジ
コンを取得した者は,実際にDSカードを購入しなくなったことが認
められるから,これらの事実を総合すれば,DS用マジコンの譲渡に
より,DSカードの販売業者は,販売することができたはずのDSカ
ードを販売することが事実上できなくなったものと認められる(なお,
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会が平成22年9月に実
施したアンケート調査の結果によれば,DS本体とDS用マジコンを
保有している者のうち,DS用マジコンの利用によってDSカードを
購入する頻度が減ったのは約42.6%にとどまっているが(甲19
2),これは,自己に不利益な回答を差し控えたことによるものとい
うべきである。)。
証拠(甲184)によれば,DSカードの国内販売数における原告
任天堂の市場占有率は●(省略)●%であると認められるから,原告任
天堂は,被告マジカル,同AⅠ,同メディア及び同Mediaが平成
19年1月から平成21年9月までに本件DS用マジコンを譲渡した
ことによって,DS本体1台について販売することができたはずのD
Sカード約●(省略)●本(2.5本×33月/12月×●(省略)●)を販売す
ることが事実上できなくなったものと認められる。
被告メディアらは,①DSカードを購入しない者は,DS用マジコ
ンが譲渡されなくても,購入しないし,逆にDS用マジコンが譲渡さ
れれば,購入するようになる,②DSカードを購入する者は,DSプ
ログラムをダウンロードして試用した後でも,DSカードを購入する,
③ウェブサイト上にDSプログラムがアップロードされれば宣伝効果
が生じる,④原告任天堂の累積タイレシオは年々増加しているから,
本件DS用マジコンの譲渡により,原告任天堂が販売することができ
たはずのDSカードを販売することができなくなったとはいえないと
主張する。しかしながら,被告メディアらの主張する①ないし③の事
実を的確に認めるに足りる証拠はない(なお,経済産業研究所のFⅠ
は,DVDの売上げとウェブサイト「YouTube」における再生
数の関係について①ないし③と同様の関係が存在する旨を指摘してい
るが(乙ニ23),DSカードの売上げとDS用マジコンによるDS
プログラムのダウンロード数の関係については妥当しない旨を述べて
いる(甲193)。)。また,④について,累積タイレシオは,年ご
とのDSカードの販売数を示すものではないから,DS用マジコンの
譲渡による影響の有無を直接示すものではない。したがって,被告メ
ディアらの上記主張は,採用することができない。
また,被告メディアらは,平成19年から平成21年までの年間タ
イレシオを控除すべきであると主張する。しかしながら,DS用マジ
コンの譲渡により,DSカードの販売業者は,販売することができた
はずのDSカードを販売することが事実上できなくなったのであるか
ら,実際の年間タイレシオを控除する理由はない。被告メディアらの
上記主張は,採用することができない。
(ウ)本件DS用マジコンの譲渡数について
a被告マジカル,同AⅠ及びCⅠについて
(a)証拠(甲93の1ないし3,209,210及び211の各2,
252,乙ハ19,鑑定の結果)によれば,次の事実が認められる。
ⅰ被告マジカル及び同AⅠは,平成20年8月11日から同年1
1月13日までの95日間,共同して,フリーマーケットサイト
「ムスビー」で,R4を486台,DSTTを228台販売した。
ⅱ被告マジカル及び同AⅠは,共同して,オークションサイト「Y
ahoo!オークション」で,DSTTを平成20年8月18日
から同年10月14日までの58日間,R4を同年8月21日か
ら同年12月17日までの119日間販売した。
1日当たりの販売台数は,フリーマーケットサイト「ムスビー」
での1日当たりの販売台数と同様であった。
ⅲ被告マジカル及び同AⅠは,平成20年12月10日から同月
25日までの16日間,共同して,ウェブサイト「マジカル上海」
上で,R4を1383台,DSTTを1902台販売した。
ⅳ被告マジカル及び同AⅠは,平成21年3月15日以降,共同
して,R4やDSTT,R4iを店舗での販売用とインターネッ
ト上での販売用に半分に分けて販売した。
R4iの1日当たりの販売台数は,R4の1日当たりの販売台
数と同様であった。
(b)前記(a)認定の事実によれば,CⅠ又は被告マジカル及び同AⅠ
は,次の計算式のとおり,①ウェブサイト「マジカル上海」上で,
R4を平成19年1月1日から平成21年9月30日までの100
4日間にわたり8万6783台(うちCⅠのみによる販売は,平成
19年1月1日から平成20年2月12日までの408日間にわた
り3万5266台),DSTTを平成20年5月2日から平成21
年9月30日までの517日間にわたり6万1458台販売し,②
オークションサイト「Yahoo!オークション」で,DSTTを
139台,R4を608台販売し,③店舗で,平成21年3月15
日から同年9月30日までの200日間,R4を1万7287台,
DSTTを2万3775台,R4iを1万7287台販売したと認
められる(なお,原告任天堂は,店舗での販売総数と開店前からの
インターネット上での販売総数が同じであるとしているが(甲20
9),採用し難い。)。
(計算式)1383台÷16日×1004日=8万6783台(マジカル上海,R4)
1383台÷16日×408日=3万5266台(同上。CⅠのみ)
1902台÷16日×517日=6万1458台(マジカル上海,DST
T)
228台÷95日×58日=139台(Yahoo!,DSTT)
486台÷95日×119日=608台(Yahoo!,R4)
1383台÷16日×200日=1万7287台(店舗,R4・R4i)
1902台÷16日×200日=2万3775台(店舗,DSTT)
(小数点未満切捨て)
(c)そうすると,CⅠは,平成19年1月1日から平成20年2月1
2日までにR4を3万5266台販売し,被告マジカル及び同AⅠ
は,次の計算式のとおり,同月13日から平成21年9月30日ま
でにR4を6万9898台,DSTTを8万5600台,R4iを
1万7287台,合計17万2785台販売したものである。
被告シーフォートらは,年末商戦等の販売時期による調整が必要
であると主張する。しかしながら,前記1(4)ア(ア)のとおり,平成
18年12月にはR4が約2時間で完売したり,平成20年5月に
はDSTTが対応しきれないほどに売れすぎたり,同年11月には
R4やDSTTの発送業務が間に合わず,宅配便の契約を増やした
りしていたものである。また,証拠(甲35,182,乙ハ19)
によれば,DS用マジコンは,入荷して店頭に出すとすぐに売り切
れるほどの人気商品であったことが認められるから,販売時期によ
る調整を行うことは相当でない。被告シーフォートらの上記主張は,
採用することができない。
(計算式)R4:(8万6783台-3万5266台)+486台+608台
+1万7287台=6万9898台
DSTT:6万1458台+228台+139台+2万3775台
=8万5600台
合計:6万9898台+8万5600台+1万7287台=17万2785台
b被告メディア及び同Mediaについて
(a)証拠(甲234,235の2,乙ニ27ないし29,44,50,
51,鑑定の結果)によれば,次の事実が認められる。
ⅰ被告メディア及び同Mediaは,共同して,R4を平成19
年4月5日から平成20年3月17日までの348日間にわたり
8991台,DSTTを平成19年12月28日から平成20年
5月19日までの144日間にわたり1万0820台,M3さく
らを平成20年6月1日から平成21年6月18日までの383
日間にわたり2万8590台卸販売した。
ⅱ被告メディア及び同Mediaは,共同して,R4を平成19
年2月7日から同年7月27日までの171日間にわたり650
台,DSTTを平成20年2月8日から同年3月13日までと同
年6月1日から同月3日までの合計38日間にわたり108台,
M3さくらを同月1日から平成21年9月30日までの487日
間にわたり9438台通信販売した。
また,被告メディアと被告Mediaは,R4とDSTTを平
成20年5月1日から同月24日までの24日間にわたり通信販
売した。
(b)前記(a)認定の事実によれば,被告メディア及び同Mediaは,
次の計算式のとおり,①R4を平成19年2月7日から平成20年
5月24日までの473日間にわたり1万2220台,DSTTを
平成19年12月28日から平成20年5月24日までの149日
間にわたり1万1195台,M3さくらを同月30日から平成21
年6月18日までの385日間にわたり2万8739台卸販売し,
②R4を平成19年2月7日から同年7月27日までと平成20年
5月1日から同月24日までの合計195日間にわたり741台,
DSTTを平成20年2月8日から同年3月13日までと同年5月
1日から同月24日まで,同年6月1日から同月3日までの合計6
2日間にわたり176台,M3さくらを同年5月31日から平成2
1年9月30日までの488日間にわたり9457台通信販売した
と認められる。
(計算式)8991台÷348日×473日=1万2220台(卸,R4)
1万0820台÷144日×149日=1万1195台(卸,DSTT)
2万8590台÷383日×385日=2万8739台(卸,M3さくら)
650台÷171日×195日=741台(通信販売,R4)
108台÷38日×62日=176台(通信販売,DSTT)
9438台÷487日×488日=9457台(通信販売,M3さくら)
(小数点未満切捨て)
(c)そうすると,被告メディア及び同Mediaは,次の計算式のと
おり,平成19年2月7日から平成20年5月24日までにR4を
1万2961台,平成19年12月28日から平成20年6月3日
までにDSTTを1万1371台,平成20年5月30日から平成
21年9月30日までにM3さくらを3万8196台,合計6万2
528台販売したものである。
(計算式)R4:1万2220台+741台=1万2961台
DSTT:1万1195台+176台=1万1371台
M3さくら:2万8739台+9457台=3万8196台
合計:1万2961台+1万1371台+3万8196台=6万2528台
(エ)損害額について
したがって,原告任天堂は,逸失利益と8%相当額の弁護士費用とし
て,次の計算式のとおり,CⅠによるR4の譲渡により●(省略)●円の
損害を,被告マジカル及び同AⅠによる別紙物件目録記載1の各DS用
マジコンの譲渡により●(省略)●円の損害を,被告メディア及び同Me
diaによる別紙物件目録記載2の各DS用マジコンの譲渡により●
(省略)●円の損害をそれぞれ受けた。
(計算式)●(省略)●円×●(省略)●本=●(省略)●円
●(省略)●円×3万5266台×1.08=●(省略)●円
●(省略)●円×17万2785台×1.08=●(省略)●円
●(省略)●円×6万2528台×1.08=●(省略)●円
(小数点未満切捨て)
(オ)過失相殺について
証拠(甲53)によれば,原告任天堂は,これまで,いわゆる「コピ
ーゲーム」を蔵置している海外のサーバー管理者やそのアドレスを掲示
しているいわゆる「ROMサイト」の開設者に対して,繰り返しその削
除を要請し,その相当数を削除してもらっているものの,すぐに再びア
ップロードされていることが認められるから,原告任天堂は,損害の拡
大を防止する努力をしているのであり,原告任天堂に格別の過失がある
とはいえない。
3以上によれば,原告らの差止め及び廃棄の請求は,差止めの請求について,
被告マジカル及び同AⅠに対し別紙物件目録記載1の各DS用マジコンの譲
渡,輸入等の差止め,被告Mediaに対し同目録記載2の各DS用マジコン
の譲渡,輸入等の差止めを求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,
廃棄の請求については,被告BⅠを除く被告らが本件DS用マジコンを保有し
ていることを認めるに足りる証拠がないから,理由がない。また,損害賠償の
請求は,被告マジカル及び同AⅠに対し,被告マジカルに対する損害金合計●
(省略)●円と被告AⅠに対する損害金●(省略)●円(うち●(省略)●円の限度
で連帯)の各一部である5737万5000円及びこれに対する不法行為の後
の日であり,被告マジカルに対する訴状送達の日の翌日である平成21年12
月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支
払,被告メディア,同BⅠ及び同Mediaに対し,損害金●(省略)●円の一
部である3825万円及びこれに対する不法行為の後の日であり,被告Med
iaに対する訴状送達の日の翌日である平成22年4月25日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由が
あるが,その余は理由がない。
4よって,原告らの請求を前記の限度で認容し,その余は理由がないからこれ
を棄却し,なお,本件DS用マジコンの譲渡等の差止めに係る仮執行の宣言は,
相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官高野輝久
裁判官三井大有
裁判官志賀勝
(別紙)
当事者目録
京都市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
任天堂株式会社
東京都台東区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社アガツマ・エンタテ
インメント
東京都千代田区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社小学館
大阪市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社カプコン
東京都中央区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社レッド・エンタテイ
ンメント
大阪府吹田市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社SNKプレイモア
東京都港区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社パオン
堺市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ユークス
東京都千代田区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
旧商号株式会社毎日コミュニケ
ーションズ
株式会社マイナビ
東京都練馬区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社アイイーインスティ
テュート
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社タスケ
東京都港区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ハドソン訴訟承継人兼
本人
株式会社コナミデジタルエン
タテインメント
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社アリカ
横浜市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
テクモ株式会社訴訟承継人兼本人
旧商号株式会社光栄
株式会社コーエーテクモゲームス
大阪市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ナウプロダクション
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社サイバーフロント
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
旧商号株式会社マーベラスエン
ターテイメント
株式会社マーベラスAQL
東京都港区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ポケモン
岡山市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ベネッセコーポレー
ション
福岡市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社レベルファイブ
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社バンダイナムコゲームス
東京都飾区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社タカラトミー
東京都中野区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
元気株式会社
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
プラト株式会社
大阪市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
旧商号UbisoftNag
oya株式会社
UbisoftOsaka
株式会社
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ディースリー・パブ
リッシャー
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
有限会社スキップ
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社サクセス
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
ティー・エイチ・キュー・ジ
ャパン株式会社
東京都新宿区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
ロケットカンパニー株式会社
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
ユービーアイソフト株式会社
東京都渋谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社フロム・ソフトウェア
横浜市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
エム・ティー・オー株式会社
東京都杉並区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社スターフィッシュ・
エスディ
東京都千代田区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社フォーウィンズ
長野市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ガスト
東京都新宿区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社タイトーソフト(旧商
号株式会社タイトー)訴訟承継
人兼本人
株式会社スクウェア・エニックス
東京都港区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社スパイク訴訟承継人
株式会社スパイク・チュンソフト
東京都杉並区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社マイルストーン
東京都武蔵野市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社GAE
東京都品川区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ジャレコ
東京都大田区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社セガ
東京都世田谷区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社アトラス訴訟承継人
株式会社インデックス
東京都港区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社ERTAIN
東京都千代田区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社アスキー・メディア
ワークス
横浜市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
アークシステムワークス株式会社
東京都飾区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社カルチャーブレーン
京都市<以下略>
平成21年(ワ)第40515号原告・同22年(ワ)
第12105号原告(以下「原告」という。)
株式会社電遊社
東京都港区<以下略>
平成22年(ワ)第12105号原告・同第172
65号承継参加人(以下「原告」という。)
旧商号コロムビアミュージック
エンタテインメント株式会社
日本コロムビア株式会社
東京都渋谷区<以下略>
平成22年(ワ)第12105号原告・同第172
65号承継参加人(以下「原告」という。)
旧商号株式会社ライトウェイト
株式会社バーグサラ・ライト
ウェイト
上記50名訴訟代理人弁護士
青柳昤子
平井佑希
同訴訟復代理人弁護士粟田英一
東京都豊島区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号被告・同22年(ワ)
第17265号被告(以下「被告」という。)
有限会社シーフォートジャパン
同所
平成21年(ワ)第40515号被告・同22年(ワ)
第17265号被告(以下「被告」という。)
株式会社マジカルカンパニー
同所
平成21年(ワ)第40515号被告・同22年(ワ)
第17265号被告(以下「被告」という。)
AⅠ
上記3名訴訟代理人弁護士
小倉秀夫
東京都台東区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号被告・同22年(ワ)
第17265号被告(以下「被告」という。)
メディアフォース株式会社
東京都台東区<以下略>
平成21年(ワ)第40515号被告・同22年(ワ)
第17265号被告(以下「被告」という。)
BⅠ
東京都品川区<以下略>
平成22年(ワ)第12105号被告(以下「被告」
という。)
Mediaforce株式会社
上記3名訴訟代理人弁護士
小川憲久
山田基司
(別紙)
物件目録
1被告有限会社シーフォートジャパン,同株式会社マジカルカンパニー及び同A
Ⅰについて
(1)R4RevolutionforDS
(2)DSTTforNDS/NDSL
(3)R4iRevolutionforDS
2被告メディアフォース株式会社及び同Mediaforce株式会社について
(1)R4RevolutionforDS
(2)DSTTforNDS/NDSL
(3)M3さくら

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