弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人が,控訴人らに対し平成11年6月1日付けで行った下水道事業受益
者負担金賦課処分決定を取り消す。
3訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の概要は,原判決を次のとおり改め,当審における控訴人らの主張として
2のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第2事案の概要」
に記載のとおりであるから,これを引用する。
⑴原判決4頁17行目から同21行目までを次のとおり改める。
「土地区画整理事業の施行区域については,従前の土地の変動が法律上当然
に予定されているため,公共下水道事業の受益の主体(帰属者)が変動する
可能性があり,換地処分又は少なくとも仮換地の指定が行われるまでは,公
共下水道事業により個々の受益の主体に発生する利益が不確実かつ不特定で
あり,都市計画法第75条第1項に規定する「利益」を受けること及び「利
益の存する限度」のいずれについても不確定であるから,同条項に規定する
「著しく利益を受ける者」は存在し得ず,したがって,本件条例第2条第1
項に規定する「受益者」も存在しない」。
⑵同5頁10行目から同11行目にかけての「本件条例2条」を「都市計画法
第75条第1項及び本件条例第2条」に改める。
2当審における控訴人らの主張
⑴原判決は,土地区画整理事業と下水道事業が同時に進行している区域におけ
る土地の所有者は,仮換地の指定がまだ行われていない場合でも,都市計画法
第75条第1項に規定する「著しく利益を受ける者」及び本件条例第2条第1
項に規定する「受益者」に当たると解しているが,そもそも都市計画法第75
条第1項に規定する受益者に都市計画事業の費用の一部を負担させるには,受
益者の受ける利益が衡平の観点に照らして負担金の徴収を受けることが合理的
と認められる程度に特別なもので,かつ,具体化したものであることが必要で
あるところ,当該土地の存在する公共下水道事業の施行予定区域を受益者負担
金の賦課対象区域とする旨の公告がなされた場合であっても,当該土地が土地
区画整理事業の施行区域内にあり,かつ,まだ換地処分が行われていない場合
は,受益者に負担金を賦課するために必要な都市計画法第75条第1項に規定
する「利益」が生じているとはいえず,まして,仮換地の指定も行われていな
い区域内の土地の所有者を同条項の規定する「著しく利益を受ける者」及び本
件条例第2条第1項に規定する「受益者」に当たると解することはできないか
ら,これと異なる原判決の上記の判断は,当該土地所有者の財産権を不当に侵
害するものであり,誤りである。
⑵上記の原判決のような解釈を採用するためには,少なくとも土地区画整理事
業施行区域内の土地については,財産権保障の見地から後日換地処分が行われ
た場合の清算金等の調整規定が不可欠であるのに,本件条例にはそのような調
整規定が存在しない。したがって,公共下水道事業の施行予定区域内の土地が
土地区画整理事業の施行区域内にある場合の当該土地の所有者は,原則として
換地処分が行われなければ都市計画法第75条第1項に規定する「著しく利益
を受ける者」並びに本件条例第2条第1項及び第2項に規定する「受益者」に
はなり得ず,仮換地の指定が行われた場合に限り,同条第3項の規定により,
例外的に換地処分が行われたものとみなして上記の「受益者」を定めることが
できると解すべきであり,これと異なる原判決の上記解釈は,都市計画法第7
5条第1項に違反し,ひいては憲法第29条に違反するものである。このこと
は,本件土地区画整理組合が,控訴人らに対し,従前地の面積を基準とした負
担金の額と仮換地の面積を基準とした負担金の額との差額を減歩相当分の組合
負担金として交付していることからも明らかである(甲11の1ないし3。)
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。そ
の理由は,原判決を次のとおり改め,当審における控訴人らの主張に対する判断
を次の2のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄中の「第3争点に
対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
「」「,」⑴原判決6頁10行目の以上を前提としてから同14行目の必要があり
「,「」までをしたがって同法第75条第1項に規定する著しく利益を受ける者
とは,衡平の観点に照らして負担金を要求することが合理的と認められる程度
に明らかな特別の利益を受ける特定人をいうと解すべきである」に,同20行。
目の「これらによって」から同23行目の「これら」までを「排水区域内に巨
額な事業費用を投入して上記の事業を施行することにより排水区域内に存在す
,,」る土地の利用価値資産価値を著しく増加させるものでありこのような利益
に,それぞれ改める。
⑵同7頁8行目の「著しく利益を受ける者」を「都市計画法第75条第1項に
規定する「著しく利益を受ける者」及び本件条例第2条第1項に規定する「受
益者」に改める。」
⑶同7頁10行目の「もちろん」から同14行目までを削除する。
⑷同7頁15行目の「原告らは,仮換地の指定がない場合には」を「控訴人ら
は,換地処分又は少なくとも仮換地の指定が行われるまでは」に改める。
⑸同8頁6行目から同11行目までを次のとおり改める。
「そうすると,土地区画整理事業の区域内において公共下水道事業の施行が
行われている場合は,同事業の受益者負担金の額の決定について,いずれか
の段階で従前地基準から仮換地基準に移行するようになることは不可避であ
り,受益者負担金の額を終始単一の基準によって決定することは事実上不可
能というほかない。これに加えて,本件条例第6条は,受益者負担金の額に
ついて,本件条例第8条の賦課対象区域の公告の日現在において受益者が所
有権等の権利を有する公告区域内の土地の面積に単位負担金額を乗じて得た
額とする旨規定していることをも考慮すると(甲3,まだ当該土地について)
換地処分ないし仮換地の指定が行われていない場合であっても,当該土地の
存在する区域を受益者負担金の賦課対象区域とする旨の公告がなされた以上
は,当該公告の日現在の従前地の面積を基準として受益者負担金の額を算定
することを不合理ということはできない」。
⑹同8頁21行目を次のとおり改める。
「したがって,公共下水道事業の施行予定区域内の土地が土地区画整理事業
の区域内にある場合であっても,当該土地が存在する区域を受益者負担金の
賦課対象区域とする旨の公告がなされた以上,たとえ当該土地について換地
処分ないし仮換地の指定が行われていなくとも,当該土地の所有者は,都市
計画法第75条第1項に規定する「著しく利益を受ける者」及び本件条例第
2条第1項に規定する「受益者」に当たると解すべきであるから,控訴人ら
の主張は失当である」。
2当審における控訴人らの主張に対する判断
⑴控訴人らは,当該土地の存在する公共下水道事業の施行予定区域を受益者負
担金の賦課対象区域とする旨の公告がなされた場合であっても,当該土地が土
地区画整理事業の施行区域内にあり,かつ,まだ換地処分が行われていない場
合は,受益者に負担金を賦課するために必要な都市計画法第75条第1項に規
定する「利益」が生じているとはいえず,まして,仮換地の指定も行われてい
ない土地区画整理事業の施行区域内の土地所有者を同条項の規定する「著しく
利益を受ける者」及び本件条例第2条第1項に規定する「受益者」に当たると
解することはできない旨主張するが,公共下水道事業の施行予定区域内に存在
する土地が土地区画整理事業の施行区域内にある場合であっても,公共下水道
事業により巨額な事業費用が投入されて当該事業が施行されることより当該土
地の利用価値,資産価値を著しく増加させることになることは明らかであり,
これによる利益は当該土地の所有者に帰属する特別の利益というべきであるか
ら,当該土地が存在する区域を受益者負担金賦課処分の対象区域とする旨の公
告がなされたことにより当該土地の所有者が上記利益を享受することが確実に
なった以上は,たとえ当該土地について換地処分ないし仮換地の指定が行われ
ていなくとも,当該土地の所有者は都市計画法第75条第1項に規定する「著
しく利益を受ける者」及び本件条例第2条第1項に規定する「受益者」に当た
(。)ると解すべきであることは前記引用に係る原判決の説示前記訂正部分を含む
するとおりである。
したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
⑵控訴人らは,原判決のような解釈を採用するためには,少なくとも土地区画
整理事業施行区域内の土地については,財産権保障の見地から後日換地処分が
行われた場合の清算金等の調整規定が不可欠であるのに,本件条例にはそのよ
うな調整規定が存在しないから,公共下水道事業の施行予定区域内の土地が土
地区画整理事業の施行区域内にある場合の当該土地の所有者は,原則として換
地処分が行われなければ都市計画法第75条第1項に規定する「著しく利益を
受ける者」並びに本件条例第2条第1項及び第2項に規定する「受益者」には
なり得ず,仮換地の指定が行われた場合に限り,同条第3項の規定により,例
外的に換地処分が行われたものとみなして上記の「受益者」を定めることがで
きると解すべきであり,これと異なる原判決の解釈は,都市計画法第75条第
1項に違反し,ひいては憲法第29条に違反する旨主張するが,公共下水道事
,業の施行予定区域内の土地が土地区画整理事業の区域内にある場合であっても
当該土地が存在する区域を受益者負担金の賦課対象区域とする旨の公告がなさ
れた以上,たとえ当該土地について換地処分ないし仮換地の指定が行われてい
なくとも,当該土地の所有者は都市計画法第75条第1項に規定する「著しく
利益を受ける者」及び本件条例第2条第1項に規定する「受益者」に当たると
解すべきであること並びにその場合当該土地の所有者について当該公告の日現
在の従前地の面積を基準として受益者負担金の額を決定することを不合理とい
うことができないことは前記のとおりである。そして,これによれば,本件条
例第2条第2項の規定は,土地区画整理事業の施行に係る土地であっても,換
地処分が行われない限り,原則として従前地に対する所有者を受益者とするこ
ととしており,また,同条第3項の規定は,仮換地の指定が行われた場合に例
外的に換地処分が行われたものとみなして受益者を定めることができることと
したものと解するのが相当であり,これと同旨の原判決の判断は正当として是
認することができる。なお,控訴人らは,本件土地区画整理組合が,控訴人ら
に対し,従前地の面積を基準とした負担金の額と仮換地の面積を基準とした負
担金の額との差額を減歩相当分の組合負担金として交付していることを控訴人
らの上記主張の根拠とするかのようであり,確かに甲11の1ないし3によれ
ば,本件土地区画整理組合が,控訴人らに対し,控訴人らが主張する減歩相当
分の組合負担金を交付した事実を認めることができるが,このことから,原判
決が採用した上記の解釈を誤りとすることはできない。
したがって,憲法第29条違反をいう控訴人らの上記主張は,前提を欠き,
失当というほかなく,採用することができない。
第4以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却
することとし,控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第7条,民事訴訟法第67
条第1項,第61条,第65条第1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第五民事部
裁判長裁判官根本眞
裁判官濵野惺
裁判官竹内努

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