弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 上告人弁護人早稲田逸郎の上告趣意第一点について。
 所論は、次の第二点に対する論旨が採用されない場合の予備的論旨と観られるが、
単なる訴訟法違背の主張に過ぎない。なお所論が、第一審判決は引用にかかる昭和
二四年一一月七日の福岡高等裁判所の判決に反するとの主張を含むとしても、同判
決は「窃盗罪の判決においては財物であることを示すに足る盗品の品目数量を判示
すれば十分であつて更にその価額即ち評価額をも記載することを必要とするもので
はない」と判示しているのであるから、第一審判決には判例違反の廉なく判例違反
の主張は成り立たない。所論は上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 所論は単なる訴訟法違反の主張に過ぎず、上告適法の理由とならない。(本件控
訴趣意は犯罪事実及び証拠を争わず専ら刑の執行猶予を望んで量刑不当を主張した
のに対し、原審は事実誤認の有無の点でなく、第一審判決主文中没収の言渡につい
て職権で調査した結果、没収の言渡に理由不備の違法ありとし「原判決を破棄し但
し刑訴法四〇〇条但書により直ちに判決をすることができるものと認め更に本件に
ついて判決をする」とし「原審認定の事実を法律に照らすと被告人の原判示所為は
各刑法二三五条六〇条」に該当する云云と擬律したものであるが、かように控訴審
において事実の確定に影響を及ぼさない事由によつて第一審判決を破棄して自判す
る場合には第一審判決の確定した事実に対し直ちに法令を適用することは正当であ
ること当裁判所の判例とするところである。昭和二七年(あ)第四一七号、同二八
年一一月一〇日第三小法廷判決、同二七年(あ)第五二六一号、同二九年二月九日
同法廷判決、同二七年(あ)第六三一六号、同二九年四月一三日同法廷判決、同二
七年(あ)第六九〇七号、同二九年五月一一日同法廷決定参照)。
 同第三点について。
 所論は法令違背の主張に過ぎず又原審で主張されずその判断を経ていないところ
であるから上告適法の理由とならない。(本件のように罰金等臨時措置法施行後に
犯罪がなされた場合には同法を適用したことを判決中法律適用の部に掲げることを
要しないとすること当裁判所屡次の判例である。)
 なお記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同法四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見
で主文のとおり決定する。
  昭和三〇年一〇月一八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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