弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人大野康平、同北本修二、同大石一二、同佐々木哲蔵、同仲田隆明、同
浦功、同大野町子、同後藤貞人、同石川寛俊、同三上陸、同竹岡富美男、同横井貞
夫、同中道武美、同梶谷哲夫、同黒田建一、同信岡登紫子、同永嶋靖久、同泉裕二
郎、同森博行、同池田直樹、同福森亮二、同小田幸児の上告理由について
一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 1 上告人らは、昭和五九年六月三日に市立泉佐野市民会館(以下「本件会館」
という。)ホールで「関西新空港反対全国総決起集会」(以下「本件集会」という。)
を開催することを企画し、同年四月二日、上告人A1が、泉佐野市長に対し、市立
泉佐野市民会館条例(昭和三八年泉佐野市条例第二七号。以下「本件条例」という。)
六条に基づき、使用団体名を「E委員会」として、右ホールの使用許可の申請をし
た(以下「本件申請」という。)。
 2 本件会館は、被上告人が泉佐野市民の文化、教養の向上を図り、併せて集会
等の用に供する目的で設置したものであり、南海電鉄泉佐野駅前ターミナルの一角
にあって、付近は、道路を隔てて約二五〇店舗の商店街があり、市内最大の繁華街
を形成している。本件会館ホールの定員は、八一六名(補助席を含めて一〇二八名)
である。
 3 本件申請の許否の専決権者である泉佐野市総務部長は、左記の理由により、
本件集会のための本件会館の使用が、本件会館の使用を許可してはならない事由を
定める本件条例七条のうち一号の「公の秩序をみだすおそれがある場合」及び三号
の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」に該当すると判断し、昭和
五九年四月二三日、泉佐野市長の名で、本件申請を不許可とする処分(以下「本件
不許可処分」という。)をした。
 (一) 本件集会は、E委員会の名義で行うものとされているが、その実体はいわ
ゆるG派(H委員会)が主催するものであり、G派は、本件申請の直後である四月
四日に後記の連続爆破事件を起こすなどした過激な活動組織であり、I連合会等の
各種団体からいわゆる極左暴力集団に対しては本件会館を使用させないようにされ
たい旨の嘆願書や要望書も提出されていた。このような組織に本件会館を使用させ
ることは、本件集会及びその前後のデモ行進などを通じて不測の事態を生ずること
が憂慮され、かつ、その結果、本件会館周辺の住民の平穏な生活が脅かされるおそ
れがあって、公共の福祉に反する。
 (二) 本件申請は、集会参加予定人員を三〇〇名としているが、本件集会は全国
規模の集会であって右予定人員の信用性は疑わしく、本件会館ホールの定員との関
係で問題がある。
 (三) 本件申請をした上告人A1は、後記のとおり昭和五六年に関西新空港の説
明会で混乱を引き起こしており、また、G派は、従来から他の団体と対立抗争中で、
昭和五八年には他の団体の主催する集会に乱入する事件を起こしているという状況
からみて、本件集会にも対立団体が介入するなどして、本件会館のみならずその付
近一帯が大混乱に陥るおそれがある。
 4 本件集会に関連して、上告人らないしG派については、次のような事実があ
った。
 (一)(1) 本件集会の名義人である「E委員会」を構成する六団体は、関西新空
港の建設に反対し、昭和五七年、五八年にも全国的規模の反対集会を大阪市内の扇
町公園で平穏に開催するなどしてきた。
  (2) 右六団体の一つで上告人A1が運営委員である「泉佐野・新空港に反対
する会」は、本件会館小会譲室で過去に何度も講演等を開催してきた。
  (3) 上告人A2が代表者である「E委員会」は、反対集会を昭和五二年ころ
から大阪市内の中之島中央公会堂等で平穏に開催してきた。
 (二)(1) ところが、昭和五九年に至り、関西新空港につきいよいよ新会社が発
足し、同年中にも工事に着手するような情勢になってくると、「E委員会」と密接
な関係があり、本件集会について重要な地位を占めるG派は、関西新空港の建設を
実力で阻止する闘争方針を打ち出し、デモ行進、集会等の合法的活動をするにとど
まらず、例えば、「1」 昭和五九年三月一日、東京の新東京国際空港公団本部ビ
ルに対し、付近の高速道路から火炎放射器様のもので火を噴き付け、「2」 同年
四月四日、大阪市内のM科学技術センター(関西新空港対策室が所在)及び大阪府
庁(N対策部が所在)に対し、時限発火装置による連続爆破や放火をして九人の負
傷者を出すといった違法な実力行使について、自ら犯行声明を出すに至った。G派
は、特に右「2」の事件について、その機関紙『O』において、「この戦闘は一五
年余のたたかいをひきつぐ関西新空港粉砕闘争の本格的第一弾である。同時に三・
一公団本社火炎攻撃、三・二五三里塚闘争の大高揚をひきつぎ、五・二〇―今秋二
期決戦を切り開く巨弾である。」とした上、「四・四戦闘につづき五・二〇へ、そ
して、六・三関西新空港粉砕全国総決起へ進撃しよう。」と記載し、さらに、「肉
迫攻撃を敵中枢に敢行したわが革命軍は、必要ならば百回でも二百回でもゲリラ攻
撃を敢行し、新空港建設計画をズタズタにするであろう。」との決意を表明して、
本件集会がこれらの事件の延長線上にある旨を強調している。
 (2) G派は、本件不許可処分の日の前日である昭和五九年四月二二日、関西新
空港反対闘争の一環として、泉佐野市臨海緑地から泉佐野駅前へのデモ行進を行っ
たが、「四・四ゲリラ闘争万才! 関西新空港実力阻止闘争 G派」などと記載し、
更に本件集会について「六・三大阪現地全国闘争へ!」と記載した横断幕を掲げる
などして、本件集会が右一連の闘争の大きな山場であることを明示し、参加者のほ
ぼ全員がヘルメットにマスクという姿であり、その前後を警察官が警備するという
状況であったため、これに不安を感じてシャッターを閉じる商店もあった。
 (3) 上告人A1は、G派と活動を共にする活動家であり、昭和五六年八月に岸
和田市民会館で関西新空港の説明会が開催された際、壇上を占拠するなどして混乱
を引き起こし、威力業務妨害罪により罰金刑に処せられたことがあった。また、右
(2)のデモ行進の許可申請者兼責任者であり、自身もデモに参加してビラの配布活
動等も行った。
 (三) G派は、従来からいわゆるQ派と内ゲバ殺人事件を起こすなど左翼運動の
主導権をめぐって他のグループと対立抗争を続けてきたが、本件不許可処分のされ
た当時、次のように、他のグループとの対立抗争の緊張を高めていた。
 (1) 昭和五八年七月一日、大阪市内の中之島中央公会堂でいわゆる第四インタ
ーの主催する三里塚闘争関西集会が開催された際、G派が会場に乱入し、多数の負
傷者や逮捕者を出した。
 (2) G派は、同月一八日付けの機関紙『O』において、「すべての第四インタ
ー分子は断罪と報復の対象である。絶対に等価以上の報復をたたきつけてやらなく
てはならない。」と記述し、さらに、昭和五九年四月二日付けの同紙において、一
〇年前にR大学でG派の同志が虐殺された事件の犯人がQ派の者であることを報じ
て「S」の中で「反革命Tをせん滅・一掃せよ!」と記述し、同月二三日付けの同
紙において、「四・四戦闘の勝利は同時に、四―六月の三里塚二期、関西新空港闘
争の大爆発の巨大な条件となっている。」とした上、「間断なき戦闘と戦略的エス
カレーションの原則にのっとりSをさらに発展させよ。この全過程を同時に脱落派、
第四インター、U派など、メンシェビキ、解党主義的腐敗分子、反革命との戦いで
断固として主導権を堅持して戦い抜かなければならない。」と記述している。
 5 上告人らは、本件会館の使用が許可されなかったため、会場を泉佐野市h町
の海浜に変更して本件集会を開催したところ、G派の機関紙によれば二六〇〇名が
結集したと報じられ、少なくとも約一〇〇〇名の参加があった。
二 原審は、右一の事実関係に基づき、次のように説示して、本件不許可処分が適
法であるとした。(1) G派は、単に本件集会の一参加団体ないし支援団体という
にとどまらず、本件集会の主体を成すか、そうでないとしても、本件集会の動向を
左右し得る有力な団体として重要な地位を占めるものであった。(2) 本件集会が
開催された場合、G派と対立する団体がこれに介入するなどして、本件会館の内外
に混乱が生ずることも多分に考えられる状況であった。(3) このような状況の下
において、泉佐野市総務部長が、本件集会が開催されたならば、少なからぬ混乱が
生じ、その結果、一般市民の生命、身体、財産に対する安全を侵害するおそれがあ
る、すなわち公共の安全に対する明白かつ現在の危険があると判断し、本件条例七
条一号の「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとしたことに責めるべき
点はない。(4) また、本件集会の参加人員は、本件会館の定員をはるかに超える
可能性が高かったから、本件条例七条三号の「その他会館の管理上支障があると認
められる場合」にも当たる。
三 所論は、本件条例七条一号及び三号は、憲法二一条一項に違反し、無効であり、
また、本件不許可処分は、同項の保障する集会の自由を侵害し、同条二項前段の禁
止する検閲に当たり、地方自治法二四四条に違反すると主張するので、以下この点
について判断する。
 1 被上告人の設置した本件会館は、地方自治法二四四条にいう公の施設に当た
るから、被上告人は、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んで
はならず(同条二項)、また、住民の利用について不当な差別的取扱いをしてはな
らない(同条三項)。本件条例は、同法二四四条の二第一項に基づき、公の施設で
ある本件会館の設置及び管理について定めるものであり、本件条例七条の各号は、
その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると
解される。
 そして、地方自治法二四四条にいう普通地方公共団体の公の施設として、本件会
館のように集会の用に供する施設が設けられている場合、住民は、その施設の設置
目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当
な理由なくその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限に
つながるおそれが生ずることになる。したがって、本件条例七条一号及び三号を解
釈適用するに当たっては、本件会館の使用を拒否することによって憲法の保障する
集会の自由を実質的に否定することにならないかどうかを検討すべきである。
 2 このような観点からすると、集会の用に供される公共施設の管理者は、当該
公共施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公共施設として
の使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって、これらの
点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否
し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用さ
せることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険があ
る場合に限られるものというべきであり、このような場合には、その危険を回避し、
防止するために、その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受
けることがあるといわなければならない。そして、右の制限が必要かつ合理的なも
のとして肯認されるかどうかは、基本的には、基本的人権としての集会の自由の重
要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の
内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。本件条
例七条による本件会館の使用の規制は、このような較量によって必要かつ合理的な
ものとして肯認される限りは、集会の自由を不当に侵害するものではなく、また、
検閲に当たるものではなく、したがって、憲法二一条に違反するものではない。
 以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和二七年(オ)一
一五〇号同二八年一二月二三日判決・民集七巻一三号一五六一頁、最高裁昭和五七
年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日判決・民集三八巻一二号一三〇八頁、
最高裁昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日判決・民集四〇巻四号八七
二頁、最高裁昭和六一年(行ツ)第一一号平成四年七月一日判決・民集四六巻五号
四三七頁)の趣旨に徴して明らかである。
 そして、このような較量をするに当たっては、集会の自由の制約は、基本的人権
のうち精神的自由を制約するものであるから、経済的自由の制約における以上に厳
格な基準の下にされなければならない(最高裁昭和四三年(行ツ)第一二〇号同五
〇年四月三〇日大法廷判決・民集二九巻四号五七二頁参照)。
 3 本件条例七条一号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の
使用を許可してはならない事由として規定しているが、同号は、広義の表現を採っ
ているとはいえ、右のような趣旨からして、本件会館における集会の自由を保障す
ることの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体
又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要
性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度として
は、前記各大法廷判決の趣旨によれば、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるとい
うだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必
要であると解するのが相当である(最高裁昭和二六年(あ)第三一八八号同二九年
一一月二四日大法廷判決・刑集八巻一一号一八六六頁参照)。そう解する限り、こ
のような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ
合理的なものとして、憲法二一条に違反するものではなく、また、地方自治法二四
四条に違反するものでもないというべきである。
 そして、右事由の存在を肯認することができるのは、そのような事態の発生が許
可権者の主観により予測されるだけではなく、客観的な事実に照らして具体的に明
らかに予測される場合でなければならないことはいうまでもない。
 なお、右の理由で本件条例七条一号に該当する事由があるとされる場合には、当
然に同条三号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」にも該当する
ものと解するのが相当である。
四 以上を前提として、本件不許可処分の適否を検討する。
 1 前記一の4の事実によれば、本件不許可処分のあった昭和五九年四月二三日
の時点においては、本件集会の実質上の主催者と目されるG派は、関西新空港建設
工事の着手を控えて、これを激しい実力行使によって阻止する闘争方針を採ってお
り、現に同年三月、四月には、東京、大阪において、空港関係機関に対して爆破事
件を起こして負傷者を出すなどし、六月三日に予定される本件集会をこれらの事件
に引き続く関西新空港建設反対運動の山場としていたものであって、さらに、対立
する他のグループとの対立緊張も一層増大していた。このような状況の下において
は、それ以前において前記一の4(一)のように上告人らによる関西新空港建設反対
のための集会が平穏に行われたこともあったことを考慮しても、右時点において本
件集会が本件会館で開かれたならば、対立する他のグループがこれを阻止し、妨害
するために本件会館に押しかけ、本件集会の主催者側も自らこれに積極的に対抗す
ることにより、本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使
を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、グループの構成員だけでなく、
本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事
態を生ずることが、客観的事実によって具体的に明らかに予見されたということが
できる。
 2 もとより、普通地方公共団体が公の施設の使用の許否を決するに当たり、集
会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として、使用を許可せず、あ
るいは不当に差別的に取り扱うことは許されない。しかしながら、本件において被
上告人が上告人らに本件会館の使用を許可しなかったのが、上告人らの唱道する関
西新空港建設反対という集会目的のためであると認める余地のないことは、前記一
の4(一)(2)のとおり、被上告人が、過去に何度も、上告人A1が運営委員である
「泉佐野・新空港に反対する会」に対し、講演等のために本件会館小会議室を使用
することを許可してきたことからも明らかである。また、本件集会が開かれること
によって前示のような暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生ずる明らかな
差し迫った危険が予見される以上、本件会館の管理責任を負う被上告人がそのよう
な事態を回避し、防止するための措置を採ることはやむを得ないところであって、
本件不許可処分が本件会館の利用について上告人らを不当に差別的に取り扱ったも
のであるということはできない。それは、上告人らの言論の内容や団体の性格その
ものによる差別ではなく、本件集会の実質上の主催者と目されるG派が当時激しい
実力行使を繰り返し、対立する他のグループと抗争していたことから、その山場で
あるとされる本件集会には右の危険が伴うと認められることによる必要かつ合理的
な制限であるということができる。
 3 また、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催
者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとし
て紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法二一
条の趣旨に反するところである。しかしながら、本件集会の実質上の主催者と目さ
れるG派は、関西新空港建設反対運動の主導権をめぐって他のグループと過激な対
立抗争を続けており、他のグループの集会を攻撃して妨害し、更には人身に危害を
加える事件も引き起こしていたのであって、これに対し他のグループから報復、襲
撃を受ける危険があったことは前示のとおりであり、これを被上告人が警察に依頼
するなどしてあるかじめ防止することは不可能に近かったといわなければならず、
平穏な集会を行おうとしている者に対して一方的に実力による妨害がされる場合と
同一に論ずることはできないのである。
 4 このように、本件不許可処分は、本件集会の目的やその実質上の主催者と目
されるG派という団体の性格そのものを理由とするものではなく、また、被上告人
の主観的な判断による蓋然的な危険発生のおそれを理由とするものでもなく、G派
が、本件不許可処分のあった当時、関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を
繰り返し、対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実
からみて、本件集会が本件会館で開かれたならば、本件会館内又はその付近の路上
等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結
果、グループの構成員だけでなく、本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、
身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、具体的に明らかに予見され
ることを理由とするものと認められる。
 したがって、本件不許可処分が憲法二一条、地方自治法二四四条に違反するとい
うことはできない。
五 以上のとおりであるから、原審の判断は正当として是認することができ、その
余の点を含め論旨はいずれも採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官園部逸夫の補
足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官園部逸夫の補足意見は、次のとおりである。
一 一般に、公の施設は、本来住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供す
るための施設(地方自治法二四四条一項)であるから、住民による利用は原則とし
て自由に行われるべきものであり、「正当な理由」がない限り利用を拒むことはで
きない(同条二項)。右の規定は、いずれも、住民の利用に関するものであるが、
公の施設は、多くの場合、当該地方公共団体の住民に限らず広く一般の利用にも開
放されているという実情があり、右の規定の趣旨は、一般の利用者にも適用される
ものと解される。他方、公の施設は、地方公共団体の住民の公共用財産であるから、
右財産の管理権者である地方公共団体の行政庁は、公の施設の使用について、住民・
滞在者の利益(公益)を維持する必要があるか、あるいは、施設の保全上支障があ
ると判断される場合には、公物管理の見地から、施設使用の条件につき十分な調整
を図るとともに、最終的には、使用の不承認、承認の取消し、使用の停止を含む施
設管理権の適正な行使に努めるべきである。
 右の見地に立って本件をみると、会館の管理権者である市長(本件の場合、専決
機関としての総務部長)が、本件不許可処分に当たって、「その他会館の管理上支
障があると認められる場合」という要件を定めた本件条例七条三号を適用したこと
については、法廷意見の挙示する原審の確定した事実関係の下では、総務部長の判
断が不適切であったとはいえず、また、本件会館の使用に関する調整を行うことが
期待できる状況でなかったことも認められる以上、右判断に裁量権の行使を誤った
違法はないというべきである。
二 ところで、公の施設の利用を拒否できる「正当な理由」は、さきに述べた公の
施設の一般的な性格から見て、専ら施設管理の観点から定めるべきものであること
はいうまでもない。しかし、本件会館のような集会の用に供することを主な目的と
する施設の管理規程については、その他の施設と異なり、単なる施設管理権の枠内
では処理することができない問題が生ずる。
 本件条例は、会館が自ら実施する各種事業のほか、所定の集会に会館を供するこ
と(同五条各号)、会館の使用については、市長の許可を要すること(同六条)、
使用を不許可としなければならない要件(同七条各号)を定めている。右の要件の
一つとして、七条一号(以下「本件規定」という。)に「公の秩序をみだすおそれ
がある場合」という要件があるが、これは、いわゆる行政法上の不確定な法概念で
あるから、平等原則、比例原則等解釈上適用すべき条理があるとはいえ、総務部長
に対し、右要件の解釈適用についてかなり広範な行政裁量を認めるものといわなけ
ればならない。しかも、右の要件を適用して会館の使用の不許可処分をすることが、
会館における集会を事実上禁止することになる場合は、たとい施設管理権の行使に
由来するものであっても、実質的には、公の秩序維持を理由とする集会の禁止(い
わゆる警察上の命令)と同じ効果をもたらす可能性がある。この種の会館の使用が、
集会の自由ひいては表現の自由の保障に密接にかかわる可能性のある状況の下にお
いて、右要件により、広範な要件裁量の余地が認められ、かつ、本件条例のように
右要件に当たると判断した場合は不許可処分をすることが義務付けられている場合
は、条例の運用が、右の諸自由に対する公権力による恣意的な規制に至るおそれが
ないとはいえない。したがって、右要件の設定あるいは右要件の解釈については、
憲法の定める集会の自由ひいては表現の自由の保障にかんがみ、特に周到な配慮が
必要とされるのである。
 本件条例は、公物管理条例であって、会館に関する公物管理権の行使について定
めるのを本来の目的とするものであるから、公の施設の管理に関連するものであっ
ても、地方公共の秩序の維持及び住民・滞在者の安全の保持のための規制に及ぶ場
合は(地方自治法二条三項一号)、公物警察権行使のための組織・権限及び手続に
関する法令(条例を含む。)に基づく適正な規制によるべきである。右の観点から
すれば、本件条例七条一号は、「正当な理由」による公の施設利用拒否を規定する
地方自治法二四四条二項の委任の範囲を超える疑いがないとはいえない(注)。
 (注) 現に、自治省は、公の施設及び管理に関するモデル条例の中に置くこと
のできる規定として、「公益の維持管理上の必要及び施設保全に支障があると認め
られるときは、使用を承認しないことができる。」という例を示しており、本件規
定のような明らかに警察許可に類する規制は認めていない。
三 私の見解は、以上のようなものであるところ、法廷意見の三は、本件規定につ
いて、極めて限定的な解釈を施している。私は右のような限定解釈により、本件規
定を適用する局面が今後厳重に制限されることになるものと理解した上で、法廷意
見の判断に与するものである。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    大   野   正   男
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信

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