弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人D同E弁護人坂本英雄の上告趣意第一点被告人E弁護人鍛治利一の上告趣
意第二点について。
 刑訴三七九条は前二条の場合を除き訴訟手続に法令の違反があつても、その違反
が判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に限り控訴の理由となる旨を定めて
いる。そして法令違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるか否かは裁判所が
諸般の点を考慮して決すべき問題である。されば原判決が所論に摘示のごとく第一
審判決には証拠能力を欠く所論供述調書の記載を証拠とした違法の存することを認
めながら、その挙示する他の証拠を検討して判決に影響を及ぼさないものと判示し
たことは当裁判所においても首肯しうるところであるから、(昭和二五年(あ)第
二四九〇号同二六年七月二六日当法廷判決参照)原判決はこの点において違法がな
いばかりでなく論旨はいずれも刑訴四〇五条三号にあたらない。
 弁護人坂本英雄の上告趣意第二点同鍛治利一の同第一点、被告人A同B同C弁護
人古屋福丘の上告趣意第一点について。
 しかし、原判決の説示は要するに第一審公判における事態の推移から見て、検察
官は第一審第二回公判期日にした所論各証人の取調請求は第五回公判期日に至つて
その必要がなくなつたので暗黙のうちにこの請求を抛棄したものと解すべきもので
あつて原審がこれにつき何等の決定をしなかつたことは相当というべきであるとい
うのである。されば所論に引用の当裁判所の判例は本件とその事実関係を異にする
ものであり従つて原判決は当裁判所の判例と異なる判断を示したものではないから、
論旨いずれも刑訴四〇五条二号にあたらない。
 弁護人坂本英雄の上告趣意第三点について。
 論旨は第一審判決の刑訴三〇一条違反の主張であつて明らかに刑訴四〇五条に定
める上告の理由にあたらない。そして第一審裁判所は押収目録、領置調書、差押調
書及び押収品等の証拠調を第二回公判期日において為し、第一審相被告人等の供述
調書、各参考人の供述調書、始末書等の証拠調をその後第五回公判期日において、
行つていることは記録上明らかであるから第一審の訴訟手続には所論の違法はない
から刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。
 弁護人鍛治利一の上告趣意第三点について。
 原判決は「所論の第二回供述調書は第一回の取調の後被告人(D)を同警察署の
宿直室に休ませ同日即ち一月二三日午前九時頃同人を起し昼頃より取調を行ひその
結果作成されたことは明らかである」と判示しているし、論旨もこの判示事実を容
認していて、別に同被告人に強制、拷問、脅迫等が加えられたとは主張していない
のであるから、原判決が同被告人の供述を任意になされたものでないとは認められ
ない旨を判示したのは首肯しうるところである。されば所論同人の供述調書を証拠
に採用した第一審判決並びにこれを是認した原判決をとらえて憲法及び刑訴法の所
論各規定(論旨に憲法三七条二項とあるは憲法三八条二項の誤記と認む)に違反す
るとの論旨はその前提を欠き刑訴四〇五条一号にあたらない。
 同第四点について。
 論旨は名を憲法三一条違反に藉りその実単なる刑訴法違反の主張に帰し、刑訴四
〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして仮りに所論のように第一審におけ
る所論供述調書の証拠調が違法であるとしても、その違法は原判決に影響を及ぼす
こと明らかなものとは認められないのであるから、刑訴四一一条を適用すべきもの
とも認められない。
 同第五点について。
 論旨は結局事実誤認と量刑不当の各主張に帰し、刑訴四〇五条に定める上告の理
由にあたらないし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。
 同第六点について。
 共同審理を受けている共同被告人の供述は単独では完全な証拠能力をもたないが、
互に他の共同被告人の供述を補強しうるものであることは所論に援用する当裁判所
の判例(昭和二三年(れ)第七七号同二四年五月一八日判決判例集三巻六号七三四
頁)の示すとおりである。ところで第一審判決は被告人Eの司法警察員及び検察官
に対する供述調書中の各供述記載(自白)とこれを補強する証拠として役立つ共同
被告人D、同A、同F等の検察官に対する各供述調書中の供述記載を証拠として被
告人Eの判示事実の認定をしていることは原判文上明らかである。されば原判決は
憲法三八条三項に違反すとの論旨は原判決の証拠説明にそわない事実を前提とする
ものであつて、論旨はその前提を欠き刑訴四〇五条に定める上告適法の理由にあた
らない。また、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 弁護人古屋福丘の上告趣意第二点について。
 論旨前段は所論の各供述調書中の供述が任意になされたものでないことの疑があ
るか否かについて原審のした判断を争うことに帰し、同後段は第一審判決が被告人
Dの司法警察員に対する第二回第三回供述調書を証拠としたのは刑訴三二一条に違
反するというに帰しいずれも単なる訴訟法違反の主張であつて刑訴四〇五条に定め
る上告の理由にあたらない。そして論旨前段の各供述調書についてした原審の判断
はあやまつているとは認められない。次に論旨後段の各供述調書中犯罪事実に関す
る部分の記載については被告人A同B同Cにおいてこれを証拠とすることに同意を
していないし、右各供述調書はいずれも刑訴三二一条三項に定める要件を備えてい
ないこと記録上明らかであるから、被告人A以下二名についての判示事実認定の証
拠とすることはできない筋合である。されば第一審判決が所論の各調書を被告人A
以下二名についての判示事実認定の証拠としたのは違法たるを免れないのではある
が、所論の各供述調書を除きその他の第一審判決挙示の証拠だけでも被告人A以下
二名についての判示事実の認定を肯認しうるのであるから、右の違法は第一審判決
に影響を及ぼすこと明らかな法令の違反ではない。されば論旨前段、後段のいずれ
も刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 同第三点について。
 第一審判決は被告人A同B岡Cの検察官及び司法警察員に対する供述調書中の各
供述記載のみでなく、その他の共同被告人等の検察官及び司法警察官に対する各供
述調書の各供述記載をも証拠として被告人A以下二名の判示事実を認定しているこ
と判文上明らかであるから、第一審判決には右被告人等の各自白のみを証拠として
各判示事実を認定した違法は存しない。論旨はそれ故その前提を欠き刑訴四〇五条
に定める上告の理由にあたらないし同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 同第四点について。
 論旨は、第一審判決は審判の請求を受けた事件について判決をしない違法がある
というにあつて、単なる訴訟法違反の主張に帰し明らかに刑訴四〇五条に定める上
告の理由にあたらない。そして第一起訴状は第一審相被告人G、被告人D同Eに対
するものであつて、訴因罰条に関する部分は被告人A、同B、同Cには何等の関係
がないし、第二起訴状(前記三名を除くその余の各被告人等に対するもの)の訴因
については第一審第八回公判期日において適法に変更されていること記録(六〇一
丁)上明らかであつて(この訴因の変更により罰条とのくいちがいが生ずるわけで
あるがこのくいちがいは被告人側の防禦に実質的な不利益を来すものではないから、
公訴提起の効力には影響はない)この変更された訴因にあたる事実を認定した第一
審判決には所論の違法は存しないから刑訴四一一条を適用すべきものとも認められ
ない。
 同第五点について。
 論旨は第一審公判廷において被告人D、同Eの供述調書について適法の証拠調が
なされていないというのであつて単なる訴訟法違反の主張に帰し刑訴四〇五条に定
める上告の理由にあたらないし、この点に関する原審の判断にはあやまりは認めら
れないので刑訴四一一条を適用すべきものとも思われない。
 よつて刑訴四〇八条に従ひ全裁判官の一致で主文のとおり判決する。
  昭和二六年一〇月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    眞   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛