弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成28年2月22日宣告
平成27年(わ)第344号殺人被告事件
主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,幼少時から重度の精神発達遅滞や自閉的傾向を有する次男のA(昭和
47年4月17日生)と同居し,食事を始めとする生活全般を世話するなどしてA
の介護を担っていた。Aは,その障害からくるこだわりの強さやコミュニケーショ
ンの困難さといった特性を抱え,パニック状態になるとAの父親であり被告人の夫
であるBや被告人に体当たりして体をつねったり物を壊したりするなど,その介護
の負担は重いものがあった。被告人は,Aを作業所に通わせていたものの,自宅で
の介護にBが協力的でなく,近年,被告人自身の体力も衰えてきている中,我が子
の世話は自分がするほかないとの想いを持つ一方,Aとの生活をいつまで続けるこ
とができるか不安を抱いていた。
このような状況の下,被告人は,平成27年2月5日午後5時頃から同日午後5
時30分頃までの間に,広島県尾道市a町b番地当時の被告人方において,仮眠中
のA(当時42歳)の姿を見て突発的かつ衝動的に同人を殺害しようと決意し,同
人の両手首と両足首をそれぞれビニールひもで縛り,その口にガムテープを貼った
上,殺意をもって,同人の頸部にロープを二重に巻き付けて強く引っ張ってその頸
部を絞め,よって,その頃,同所において,同人を絞頸による窒息により死亡させ
て殺害した。
【証拠の標目】省略
【法令の適用】
[罰条]刑法199条
[刑種の選択]有期懲役刑を選択
[酌量減軽]刑法66条,71条,68条3号
[未決勾留日数の算入]刑法21条
[訴訟費用の不負担]刑訴法181条1項ただし書
【量刑の理由】
まず,本件犯行の動機について検討するに,本件犯行当日の被害者は落ち着いて
おりパニックに陥って被告人を煩わせるようなことはなく,被告人が本件犯行当日
に追いつめられていたような具体的な状況はなかったといえ,さらに,被告人自身
は被害者を殺害した後に自殺を考えた旨供述していることを考えると,判示のとお
り,被告人が,被害者の介護の負担を自己の義務と捉えて一人で背負い込み被害者
と共に生活を続けることに対する不安を抱える中,突発的かつ衝動的に殺意を生じ
たものであり,正に魔が差して本件犯行に及んだと評価する以上に,その動機を解
明することは難しい。検察官が主張する,被告人が被害者に由来する様々な悩みや
負担等から解放されたいという身勝手な動機であるとも,弁護人が主張する,被害
者と共にこの世を去ろうという動機であるとも,いずれとも認定できない。被告人
が担っていた介護の負担は重いものの,被害者が通う作業所等の協力を得ながら被
告人としてできる範囲の介護をしていたことを考えると,被告人が周囲の者に積極
的に相談するなどすべきであったというのも酷であり,同情すべき判示記載の経緯
を考慮すると,被告人が殺害を決意した点に強い非難を加えることはできない。
(被害者の父親である被告人の夫らが被告人に対する厳しい処罰を求めていないこ
とは経緯に同情すべき点があることの現れといえる。)
しかしながら,本件犯行の態様は,判示のとおりであって,絞頸自体が残虐な手
段であるとはいえないものの,仮眠中の被害者が抵抗しても確実に殺害を遂げられ
るようビニールひもで手足を縛るなどした上,頸部にロープを二重に巻き付け,被
害者の顔面がどす黒くなるまでロープを引っ張って被害者の頸部を絞めたことに照
らすと,被告人が強い殺意に基づいて非情な手段で犯行に及んだといえ,その犯情
は重い。
以上の犯情事実からすると,ひも・ロープ類のみを用いた家族関係を動機とする
同種事案の量刑の傾向に照らし,本件は酌量減軽が施されるような比較的軽い部類
に属するものの,執行猶予が付されるほど軽い事案であるとはいえず,実刑を免れ
ない。
そこで,被告人が本件犯行直後に自殺未遂に及ぶなどして後悔し反省しているこ
とを更に被告人に有利に考慮し,被告人に対しては,酌量減軽の上,主文の刑を科
するのが相当である。
(検察官郷政宏,同安谷玲,弁護人佐藤邦男〔主任〕,同半澤茜各出席)
(求刑懲役5年)
平成28年3月10日
広島地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官丹羽芳徳
裁判官三芳純平
裁判官髙橋安紀子

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