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平成15年(ネ)第3488号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁
判所平成14年(ワ)第7456号)
判    決
      控訴人(1審原告)     A(以下「原告A」という。)
控訴人(1審原告)     ミスミ株式会社(以下「原告ミスミ株
式会社」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士   石 井 義 人
同             濱 田 佳 志
原告ら補佐人弁理士     杉 本 勝 徳
被控訴人(1審被告)    日本コパツク株式会社(以下「被告」
という。)
訴訟代理人弁護士      増 田 利 昭
主    文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨等
 1 原判決を取り消す。
 2 被告は、原判決別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各物件を製造、販
売してはならない。
3 被告は、その本店及び営業所内に存する前項の各物件を廃棄せよ。
4 被告は、
(1) 原告Aに対し、3750万円、
(2) 原告ミスミ株式会社に対し、2000万円
及び上記各金員に対する平成14年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支
払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 5 訴訟費用は、1、2審とも被告の負担とする。
6 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 本件は、被告による原判決別紙イ号物件目録及びロ号物件目録記載の各物件
の製造販売の行為が、後記特許権又は専用実施権を侵害するとして、その特許権者
である原告Aから専用実施権の設定を受けた原告ミスミ株式会社において、被告に
対し、特許法100条1項及び2項に基づき、被告による上記各物件の製造販売の
差止めと廃棄を請求するとともに、原告らにおいて、被告に対し、民法709条、
特許法102条1項に基づき、損害賠償を請求した事案である。
 原審は、原告らの請求は、明白な無効事由(特許法29条2項違反)の存す
る特許権又は専用実施権に基づく請求であって、権利濫用として許されないとし
て、いずれも棄却したので、これを不服として原告らが控訴を提起した。
2 本件の基本的事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、10頁24行目
末尾の次に改行の上、次のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第
2 事案の概要」(2頁12行目~10頁24行目)に記載のとおりであるから、
これを引用する。
「7 当審における原告の付加主張とこれに対する被告の反論
(原告の付加主張)
(1) 「クリップ片2aの上端縁10が、屈曲板バネ4の折り返し部を越える位
置まで延長して形成されており、上端縁10の下方部が屈曲板バネ4の折り返し部
近傍のバネ部分を被う」構成は、引用刊行物1の考案の特徴とする部分ではないた
め、同刊行物中に全く言及がなく、意識もされていない。このような構成をもっ
て、刊行物に記載されている事項又は記載されているに等しい事項ということはで
きない。
(2) 仮に、引用刊行物1に前項記載のような構成が示されているとしても、同
刊行物中の本文及び図面中には、クリップを構成するバネの破損時における破損し
たバネの飛散を防止する飛散防止部についての記載は全くない。
(3) 本件発明の要点は、クリップ片に飛散防止部を設けつつ、受け止め部に対
面する飛散防止部の先端部分に空間を形成した構成とすることで、クリップ片にU
字形パネルを挿入し得る空間を設け、飛散防止部の形成が容易な構成をとりつつ、
金型形成をも容易にする点にあるのであり、このような本件発明の本質からする
と、飛散防止効果の点のみから、本件発明を容易に想到し得たとすることはできな
い。
(4) 以上(1)ないし(3)の点からすれば、少なくとも、本件特許が無効であるこ
とが明らかであるとはいえない。
(被告の反論)
(1) 原告の付加主張(1)について
 引用刊行物1の第2図には、「クリップ片2aの上端縁10が、屈曲板バ
ネ4の折り返し部を越える位置まで延長して形成されている」構成が図示されてお
り、第3図には、「上端緑10の下方部が屈曲板バネ4の折り返し部近傍のバネ部分
を被う」構成が図示されている。のみならず、原告自身も、無効審判手続(無効2
002-35531号事件)において、引用刊行物1の考案の構成について、「③ 
該掛合部が掛合する受け止め部(バネ受け8)と、クリップ片2aの上端縁10の
下端をバネの折り返し部側近傍に位置させると共に」と記載しているところである
(乙17の3頁20~21行目)。
 刊行物に記載されているか否かは、刊行物に客観的な構成が示されてい
るか否かであり、その構成が刊行物記載の考案の特徴的な部分であるかとか、作成
者の意識に関わる問題ではない。
(2) 原告の付加主張(2)について
 「飛散防止部」という用語を使うか否かにかかわらず、それに該当する構
成が引用刊行物1(第2図及び第3図)に記載されていることは、上述したところか
ら、客観的に明らかである。
(3) 原告の付加主張(3)について
 飛散防止効果の点のみでなく、これと金型の摺動方向に直交する方向で
重なり合わないように、受け止め部に対面した飛散防止部をそのまま延長した部分
に空間を設ける点等を組み合わせることによって、本件発明は、容易に想到し得た
ものというべきである。
 また、原告は、「受け止め部に対面する飛散防止部の先端側部分に空間
を形成した構成とすることで、クリップ片にU字形バネを挿入し得る空間を設け、飛
散防止部の形成が容易な構成をとりつつ、」と主張するが、そのような点は、本件
明細書から全くうかがうことはできないから、かかる点を本件発明の本質であると
する原告の主張は失当である。
  (4) 原告の付加主張(4)について
 争う。」
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も、本件特許権には明白な無効事由(特許法29条2項違反)があ
り、これに基づき原告らが被告に対して権利行使をすることは、権利の濫用として
許されないものと判断する。
 その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決「事実及び理由」中
の「第3 争点4(明白な無効理由その1-進歩性欠如)に対する当裁判所の判
断」(10頁25行目~17頁24行目)に記載のとおりであるから、これを引用
する。
1 11頁22行目の「所定の」を「記載の」と改め、17頁2行目の「乙5」
の次に「添付の甲2」を加える。
2 17頁24行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「(5) 当審における原告の付加主張について
ア 原告の付加主張(1)、(2)について
 引用刊行物1の第2図及び第3図には、「クリップ片2aの上端縁10
が、屈曲板バネ4の折り返し部を越える位置まで延長して形成されている」構成及
び「上端緑10の下方部が屈曲板バネ4の折り返し部近傍のバネ部分を被う」構成が
明瞭に図示されている。刊行物に記載されているというためには、当業者において
刊行物からその構成を把握し得る程度に記載がなされていれば足りるから、上記の
ように、その構成が客観的に把握し得る程度に図示がなされている以上、原告主張
のように、引用刊行物1にその記載がないということはできない。
 また、原告は、仮に引用刊行物1に上記の構成が示されているとして
も、飛散防止部に係る記載はないとも主張しているが、本件発明にいう「飛散防止
部」とは、破損したバネの飛散防止の機能を有する部分を指すものと解されるとこ
ろ、引用刊行物1に示された上記構成から、破損したバネが延長して形成されたク
リップ片2aの上端縁10の下端部付近に当たって、その飛散が防止されることは
明らかであるから、当該部分は上記と同様の機能を有するものというべきであり、
「飛散防止部」という用語等の記載の有無にかかわりなく、引用刊行物1にも「飛
散防止部」に相当する部分が示されているものというべきである。したがって、こ
の点の原告の主張も採用することができない(なお、飛散防止に係る課題の示唆等
の点については、引用に係る原判決16頁22行目から17頁12行目までに記載
のとおりである。)。
イ 原告の付加主張(3)について
 本件発明の要点について、原告が、「受け止め部に対面する飛散防止
部の先端側部分に空間を形成した構成とすることで、クリップ片にU字形バネを挿入
し得る空間を設け、飛散防止部の形成が容易な構成をとりつつ、」とする点が採用
できないことは、原判決15頁17行目から16頁21行目までに記載のとおりで
ある。
 また、既にみたとおり、引用刊行物1に示された各構成と周知技術等
を組み合わせることによって、飛散防止部の点を含む本件発明の全構成が、当業者
に容易に想到し得るものである。
  ウ 原告の付加主張(4)について
 以上のとおり、付加主張(1)ないし(3)の点等から、本件特許が無効で
あることが明らかでないとすることはできない。」
第4 結論
 以上の次第で、原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく、いずれ
も理由がないから、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由
がない。
 よって、主文のとおり判決する。
   (平成16年1月14日口頭弁論終結)
  大阪高等裁判所第8民事部
   裁判長裁判官  竹  原  俊  一
              
              
         裁判官  小  野  洋  一
              
         裁判官  黒  野  功  久

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