弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

            主     文
       原判決を破棄する。
      本件を札幌高等裁判所に差し戻す。
            理     由
 上告代理人山根喬,同丸尾正美の上告受理申立て理由について
 1 本件は,鉄骨造陸屋根3階建店舗(昭和51年12月建築。以下「本件建物」
という。)を所有していたBが,伊達市長によって決定され固定資産課税台帳に登
録された本件建物の平成9年度の価格を不服として上告人に対して審査の申出をし
たところ,上告人からこれを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受
けたため,その相続人である被上告人が本件決定の取消しを求める事案である。
 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成10年自治省
告示第87号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)は,家屋の評価に
ついて,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分
に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数を評点1点当たりの価額
に乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとし(評価基準第2章第1節一)
,各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに家屋の損
耗の状況による減点を行って付設し(具体的には,再建築費評点数に後記(3)の減
点補正率を乗じて求める。同章第3節一),家屋の状況に応じ必要があるものにつ
いては,更に家屋の需給事情による減点を行うものとする旨を定める(同章第1節
二)。
 (2) 評価基準は,非木造家屋をその実態に応じて構造,程度,規模等の別に区
分し,それぞれの区分ごとに標準とすべき家屋を選定し,標準家屋の再建築費評点
数に比準してこれと同一の区分に属する家屋の再建築費評点数を付設する方法(い
わゆる総合比準評価の方法)を定める(評価基準第2章第3節二の二)。伊達市長
は,総合比準評価の方法に従い,具体的には,標準家屋の基準年度における再建築
費評点数の前基準年度における再建築費評点数に対する上昇率を求め,当該標準家
屋と同一の区分に属する家屋については,当該家屋の前基準年度における再建築費
評点数に当該上昇率を乗じて再建築費評点数を求める方法によって,本件建物の再
建築費評点数を4715万2107点と付設した。
 (3) 評価基準は,非木造家屋の損耗の状況による減点補正率を非木造家屋経年
減点補正率基準表(評価基準別表第13)によって求めるものとしている(評価基
準第2章第3節三)。同表は,通常の維持管理を行うものとした場合において,そ
の年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎とし,非木造家屋の構造区分に従って
,経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。)を定めたもの
である(同節三1(1))。そして,同表の3は,鉄骨造り(骨格材の肉厚が4㎜を
超えるもの)の店舗及び病院用建物について,毎年2%ずつ減価して40年経過後
の残価率が20%であるという定額法に基づき,経過年数21年の経年減点補正率
を0.58と定めている。
 (4) 評価基準は,平成9年度の家屋の評価における評点1点当たりの価額を,
自治大臣が別に指示する金額を基礎として市町村長が定めるものとしている(評価
基準第2章第4節一)。そして,自治大臣が別に指示する金額は,通達により,1
円に「物価水準による補正率」と「設計管理費等による補正率」とを相乗した率を
乗じて得た額とされ,非木造家屋については,全市町村を通じ,「物価水準による
補正率」が1.00,「設計管理費等による補正率」が1.10とされている。
 (5) 伊達市長は,評価基準に従い,本件建物の再建築費評点数4715万21
07点に経年減点補正率0.58及び評点1点当たりの価額1.1円を乗じ,平成
9年度の本件建物の価格を3008万3044円と決定した。
 (6) 被上告人は,原審において,本件建物の平成9年1月1日時点の鑑定評価
額を1895万円とする不動産鑑定士F作成の鑑定評価書(以下「F鑑定書」とい
う。)を提出した。その内容は,本件建物の概況,建築時期,構造等の調査に基づ
き,① 再調達原価を5082万8000円(1㎡当たり12万8000円)とし
,② 本件建物の築後年数を19年,経済的残存耐用年数を20年,同耐用年数経
過時の残価率を0とする定額法による減価として,前記再調達原価に残価率39分
の20を乗じて2606万6000円を算出し,③ これに0.75(観察減価2
5%)を乗じて1955万円を算出し,④ 補修費60万円を控除するというもの
である。
3 原審は,次のとおり判断して,本件決定を取り消すべきものとした。
 (1) 評価基準は,固定資産税の課税標準の基礎となるべき価格の適正を手続的
に担保するために,その算定手続,方法を規定するものであるから,これに従って
決定された価格は,特段の反証のない限り,地方税法349条1項所定の固定資産
の価格である適正な時価と認めることができる。
 (2) 本件においては,F鑑定書に添付された地図及び写真に照らしても,その
評価の前提となる事実の確定,計算過程等に問題があるとは認められないから,F
鑑定書に基づいて本件建物の適正な時価を認定するのが相当である。F鑑定書の観
察減価又は補修費の控除が,定額法による減価と重複しているものとみる余地があ
るとしても,本件建物の平成9年1月1日時点の適正な時価は2606万円程度を
超えるものではない。したがって,伊達市長の決定した価格である3008万30
44円は適正な時価を超えるから,本件決定は,審査手続の適法性について判断す
るまでもなく,違法である。
 4 しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理
由は,次のとおりである。
 (1) 【要旨】伊達市長は,本件建物について評価基準に定める総合比準評価の
方法に従って再建築費評点数を算出したところ,この評価の方法は,再建築費の算
定方法として一般的な合理性があるということができる。また,評点1点当たりの
価額1.1円は,家屋の資材費,労務費等の工事原価に含まれない設計監理費,一
般管理費等負担額を反映するものとして,一般的な合理性に欠けるところはない。
そして,鉄骨造り(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)の店舗及び病院用建物につ
いて評価基準が定める経年減点補正率は,この種の家屋について通常の維持管理が
された場合の減価の手法として一般的な合理性を肯定することができる。
そうすると,伊達市長が本件建物について評価基準に従って決定した前記価格は,
評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない
特別の事情又は評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情の存し
ない限り,その適正な時価であると推認するのが相当である。
 (2) F鑑定書が採用した評価方法は,評価基準が定める家屋の評価方法と同様
,再建築費に相当する再調達原価を基準として減価を行うものであるが,原審は,
F鑑定書の算定した本件建物の1㎡当たりの再調達原価及び残価率を相当とする根
拠を具体的に明らかにしていないため,原審の前記説示から直ちに上記特別の事情
があるということはできない。そして,原審は,上記特別の事情について他に首肯
するに足りる認定説示をすることなく,本件建物の適正な時価が2606万円程度
を超えるものではないと判断したものであり,その判断には,判決に影響を及ぼす
ことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,
原判決は破棄を免れない。そして,本件決定の適否について更に審理を尽くさせる
ため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 福田 博 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷
 玄 裁判官 滝井繁男)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛