弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
特許庁が、昭和四十七年十二月七日、同庁昭和四一年審判第九、二八一号事件及び
同庁同年審判第九、二八二号事件(併合)についてした審決は、取り消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
 原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求
は、棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。
第二 請求の原因
原告は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯
 原告は、昭和四十二年一月四日、被告を被請求人として、被告が商標権者である
別紙記載のとおりの登録第六三四、一七三号商標及び登録第六二六、一二〇号商標
(以下「本件登録商標」という。)について、登録無効の審判を請求し、昭和四一
年審判第九、二八一号事件及び同年審判第九、二八二号事件(併合)として審理さ
れたが、昭和四十七年十二月七日、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審
決があり、その謄本は、昭和四十八年四月十九日、原告に送達された。
二 本件審決理由の要点
 本件登録商標中、登録六三四、一七三号商標は、「MERRYWOOD」の文字
を一連に横書してなり、商標法施行令第一条別表第十三類手動利器を指定商品と
し、昭和三十七年十月二十三日商標登録出願、昭和三十九年一月十六日登録がされ
たもの及び登録第六二六、一二〇号商標は、「MERRYWOOD」の文字を一連
に横書してなり、商標法施行令第一条別表第十九類フオーク、スプーンを指定商品
とし、昭和三十七年十月二十三日商標登録出願、昭和三十八年十月八日登録がされ
たものであり、また、請求人(原告)が引用する(一)登録第四九五、五六四号商
標は、「WOOD」の文字を横書してり、旧商標法(大正十年法律第九十九号をい
う。以下同じ。)第五条、同法施行規則(大正十年農商務省令第三十六号をいう。
以下同じ。)第十五条第八類利器及び尖刃器を指定商品とし、昭和三十一年一月二
十八日商標登録出願、昭和三十二年二月二日登録がされたもの、(二)登録五九
八、三九四号商標は、「WOOD」の文字を横書してなり、商標法施行令第一条別
表第十三類手動利器及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、前
記(一)の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月十五日商標登録出願、昭
和三十七年十月二月登録がされたもの、(三)登録第四七五、九九七号商標は、
「LUCKY WOOD」及び「ラツキーウツド」の文字を上下二段に横書してな
り、旧商標法第五条、同法施行規則第十五条第八類利器及び尖刃器を指定商品と
し、登録第四五六、〇九四号商標と連合の商標として昭和三十年二月二十八日商標
登録出願、昭和三十一年一月二十八日登録がされたもの、(四)登録第四九七、九
八七号商標は、(LUCKY WOOD」の文字を横書してなり、旧商標法第五
条、同法施行規則第十五条第十九類農工器具を指定商品とし、昭和三十一年三月十
五日商標登録出願、昭和三十二年三月十一日登録がされたもの、(五)登録第五六
二、四九九号商標は、左方部には円輪郭内に帯状円輪部を残して中央部を円形黒色
地とし、その中に森林記号三個を白抜に表し、その外部円輪郭と中央円形黒色部と
の間の帯状円輪部に「LUCKY WOOD BRAND」の文字(上半部弧状
に)及び「TABLE-WARES」の文字(下半部弧状に)を円輪状に収めた図
形を配し、それに接してその右方には棒線を介して「LUCKY」及び「WOO
D」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第五条、同法施行規則第十五条第
八類利器及び尖刃器を指定商品とし、登録第四四一、六四六号商標ほか二件の登録
商標と連合の商標として、昭和三十四年十月十三日商標登録出願、昭和三十五年十
二月十五日登録がされたもの、(六)登録第六二四、二九九号商標は、前記(五)
の商標と同様の構成をもつてなり、商標法施行令第一条別表第十三類手動利器、手
動工具及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、登録第四四五、
五三三号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月五日商標登
録出願、昭和三十八年九月十日登録がされたもの、(七)登録第六二四、三〇〇号
商標は、円輪郭の内側に帯状円輪部を残して中央部を円形黒色地とし、それに三個
の森林記号を白抜に表し、その外側線輪郭との間の帯状円輪郭には上半部に「LU
CKY WOOD BRAND」の文字を、下半部には「TABLE-WARE
S」の文字を円輪状に収めてなり、商標法施行令第一条別表第十三類手動利器、手
動工具及び金具(他の類に属するものを除く。)を指定商品とし、登録第四四五、
五三三号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十五年七月十五日商標
登録出願、昭和三十八年九月十日登録がされたもの、(八)登録第六九七、三八二
号商標は、矩形輪郭内上部に、更に上下二段部に分けた矩形枠を設け、その上段枠
内にはデザートナイフの図形を収め、その右方上部に「18-8STAINLES
S」の文字を附記し、その下段枠内には右方に棒線を介して「DESSERT」及
び「KNIFE」の文字を上下二段に横書し、これに接して右方に小形黒地の円内
に「6」の文字を白抜に表し、これらの下部左方外側輪郭内には、前記(五)の商
標と同様の記号的図形及び文字を配してなり、商標法施行令第一条別表第十三類ス
テンレス製洋食ナイフを指定商品とし、登録第四五六、〇九四号商標ほか六件の登
録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年二月
二日登録がされたもの、(九)登録第六九七、三八三号商標は、前記(八)の商標
中洋食ナイフの図形の右方上部に記された文字に代わつて「18CR-STAIN
LESS」と記されているほか、他の文字図形において全く同様の構成をもつてな
り、商標法施行令第一条別表第十三類ステンレス製洋食ナイフを指定商品とし、登
録第四五六、〇九四号商標ほか六件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十
月九日商標登録出願、昭和四十一年二月二日登録がされたもの、(十)登録第四四
〇、七九九号商標は、「ウツド」及び「WOOD」の文字を上下二段に横書してな
り、旧商標法第五条、同法施行規則第十五条第七類他類に属しない金属製品を指定
商品とし、昭和二十八年五月十一日商標登録出願、昭和二十九年二月二十四日登録
がされたもの、(十一)登録第六一〇、八七四号商標は、「WOOD」の文字を横
書してなり、商標法施行令第一条別表第十九類なべ類、湯沸かし類、国旗、うち
わ、せんす、ちようちん、あんどん、石油ランプ、灯芯、ほや、ろうそく立て、湯
たんぽ、あんか、かいろ、かいろ灰、火ばし、五徳、十能、火消しつぼ、はえ取り
紙、はえたたき、ねずみ取り器、植木ばち、金魚ばち、洋服ブラシ、紙製手ふき及
び脱臭器を指定商品とし、前記(十)の登録商標と連合の商標として昭和三十五年
七月五日商標登録出願、昭和三十八年五月七日登録がされたもの、(十二)登録第
四四五、五三三号商標は、筆記体風の「Lucky&Wood」及び「ラツキーエ
ンドウツド」の文字を上下二段に横書してなり、旧商標法第五条、同法施行規則第
十五条第七類他類に属しない金属製品を指定商品として昭和二十八年六月三十日商
標登録出願、昭和二十九年五月二十八日登録がされたもの、(十三)登録第四七
五、九九六号商標は、「LUCKY WOOD」及び「ラツキーウツド」の文字を
上下二段に横書してなり、旧商標法第五条、同法施行規則第十五条第七類他類に属
しない金属製品を指定商品とし、前記(十二)の登録商標と連合の商標として昭和
三十年二月二十八日商標登録出願、昭和三十一年一月二十八日登録がされたもの、
(十四)登録第五六二、四九八号商標は、前記(五)の商標と同様の構成をもつて
なり、旧商標法第五条、同法施行規則第十五条第七類他類に属しない金属製品を指
定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか二件の登録商標と連合の商標として
昭和三十四年十月十三日商標登録出願、昭和三十五年十二月十五日登録がされたも
の、(十五)登録第六一六、〇八六号商標は、前記(七)の商標と同一の構成をも
つてなり、商標法施行令第一条別表第十九類なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し
台、調理台、食器類、パン入れ、つぼ、たる、菓子かん、茶かん、調理用具、その
他の台所用品、清掃または洗たく用具、標札、ネームプレート、湯たんぽ、あん
か、かいろ灰、火ばし、五徳、十能、火消しつぼ、植木ばち、金魚ばち、はしご、
きやたつ、郵便受け、買物かご、帽子掛けかぎ、貯金箱、小鳥かご、便器、裁縫用
具及び浴そう類を指定商品とし、登録第四五六、一九八号商標ほか六件の登録商標
と連合の商標として昭和三十五年七月九日商標登録出願、昭和三十八年六月五日登
録がされたもの、(十六)登録第七二四、九九五号商標は、前記(八)の商標中、
洋食用ナイフの図形に代わつて洋食用スプーンの図形を収め、「KNIFE」の文
字に代わつて「SPOON」の文字を記したほか、それと同様の構成をもつてな
り、商標法施行令第一条別表第十九類ステンレス製デザートスプーンを指定商品と
し、登録第四四二、四一五号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十
八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年十一月十六日登録がされたもの、(十
七)登録第七二四、九九六号商標は、前記(十六)の商標中、洋食用スプーンの図
形に代わつて洋食用フオークの図形を収め、「SPOON」の文字に代わつて「F
ORK」の文字を記したほか、それと同様の構成をもつてなり、商標法施行令第一
条別表第十九類ステンレス製デザートフオークを指定商品とし、登録第四四二、四
一五号商標ほか七件の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録
出願、昭和四十一年十一月十六日登録がされたもの、(十八)登録第七二四、九九
七号商標は、前記(十七)の商標中、洋食用フオークに代わつてフルーツ用フオー
クの図形を収め、「DESSERT」の文字に代わつて「FRUIT」の文字を記
したほか、それと同様の構成をもつてなり、商標法施行令第一条別表第十九類ステ
ンレス製フルーツフオークを指定商品とし、登録第四四二、四一五号商標ほか七件
の登録商標と連合の商標として昭和三十八年十月九日商標登録出願、昭和四十一年
十一月十六日登録がされたものである。
 請求人(原告)は、登録無効の審決を求める理由として、「本件登録商標の「M
ERRYWOOD」における「MERRY」も「WOOD」も、前者が、楽しいと
いう意味の形容詞であり、後者が、木、木材、森及び林という観念の名詞であつ
て、ともに人口にかいしやされている言葉であるから、本件登録商標は、「MER
RY」と「WOOD」とに分析することもできる商標である。したがつて、本件登
録商標と請求人(原告)の有する前記(一)から(十八)の商標の「LUCKYW
OOD」又は「WOOD」に酷似しているといわなければならない。特に、これら
請求人(原告)の商標は、洋食器(ナイフ、スプーン及びフオーク)の業界におい
て、「LUCKY WOOD」の名で本国は勿論諸外国においても広く知られてい
るものであるが、この請求人(原告)の商標の「LUCKY WOOD」と本件登
録商標の「MERRYWOOD」とは、前者の「LUCKY」が幸運なという意味
であるに対し、後者の「MERRY」が楽しいとか愉快なという意味であり、とも
に、明るく、楽しい、幸せな感じを表す言葉として共通性をもつているから、この
ような、明るく、楽しい幸せな感じを代表するような「LUCKY」と「MERR
Y」という、外国人の間で特に好んで使われる二つの形容詞を考えるとき、そし
て、これらの両語がいずれも「WOOD」という同一の名詞と結合しているもので
あることを考えるとき、「LUCKY WOOD」と「MERRYWOOD」と
は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、酷似のものである。このことは、北
日本洋食器株式会社が、MERRY/WOODなる商標を被請求人(被告)の許諾
を得たと称して飲食用に使用していることに徴しても、明らかである。ところで、
「MERRYWOOD」なる登録商標を、被請求人(被告)がもつていることが判
明したのは、この商標を表示した飲食用ナイフ、スプーン及びフオークがオースト
ラリア市に大量に出廻つていること、そのデザインも請求人(原告)の専有するそ
れに酷似している旨バイヤーからの書翰によるものであり、この事実に徴しても、
本件登録商標は、請求人(原告)の有する「LUCKY WOOD」を十分意識し
て、不正な競争を行おうとする意図にでたものであることが明らかである。したが
つて、本件登録商標は、商標法第四条第一項第十一号に該当し、同法第四十六条に
よりその登録を無効とすべきものである。」旨主張した。
 これに対し、被請求人(被告)は、
「請求人(原告)は、一見明瞭な一連不可分の構成になる本件登録商標の「MER
RYWOOD」を、無理に「MERRY」と「WOOD」とに分析して議論を展開
しているが、これは本件登録商標を請求人(原告)の専有する引用登録商標に接近
させようとして不自然な類否判断をしているものである。このこと(両者が類似し
ないこと)は、前記(一)の商標と(二)の商標(又は前記(十)の商標と(十
一)の商標)の「WOOD」は、互いに連合する商標であるが、前記(三)の商標
(又は前記(四)の商標)の「LUCKY WOOD」とは連合していないと同時
に、前記(三)の商標(又は前記(四)の商標)に関しての連合は、登録第四五
六、〇九四号商標、前記(六)から(九)及び前記(十六)から(十八)の商標
(又は前記(六)及び(七)の商標)となつていることからみても明白である。ま
た、登録第二三〇、一七一号商標(又は登録第五〇〇、八四八号商標)の「LUC
KY」に対し、登録第二五二、五四五号商標(又は登録第六〇九、六四八号商標)
の「MERRY」が単独の登録例として現存すること及び「LUCKY」の既登録
商標に対し、「LUCKY WOOD」の商標が単独の商標として登録されている
ことは、「LUCKY WOOD」の商標を一連の造語的商標とみるを妥当とする
と同時に、本件登録商標の「MERRYWOOD」も当然一連にした造語的商標と
みるのが妥当である。したがつて、本件登録商標の「MERRYWOOD」と引用
登録商標の「LUCKY WOOD」とは、外観上全く相違するとともに、称呼及
び観念上も非類似のものであることは極めて明白である。被請求人(被告)が出荷
販売するオーストラリア市の有限会社ニユーフイツロイ貿易社は、本件登録商標と
同一構成よりなる「MERRYWOOD」の商標権を濠州連邦において専有するも
のであり、本件登録商標が同国において請求人(原告)の商品と誤認、混同を生ず
るいわれはないから、被請求人(被告)が不正競争の目的をもつて本件登録商標を
使用しているとの請求人(原告)の主張は、言語道断である。」旨答えた。
 よつて、按ずるに、本件登録商標は、前記のとおり「MERRYWOOD」の文
字を横書してなるものであるが、その「MERRY」の文字と「WOOD」の文字
とは表現態様上引用登録商標の「LUCKY」と「WOOD」又は「ラツキー」と
「ウツド」における(両者の間に約一字分程度の間隔があるもの、棒線を介して上
下二段に記したもの及び「&」又は「アンド」の文字を介して横書したもの等)と
は異なり、同大一連に記されているばかりでなく、その「MERRY」と「WOO
D」との間には、語義においても「たのしい森」として結合すべき密接な関係があ
るとともに、語呂においても「メリーウツド」とよどみなく称呼され、これを分離
して称呼及び観念すべき特別の事情もないから、本件登録商標は、この両者を結合
一体のものとして「メリーウツド」と称呼及び観念(楽しい森)されるものという
を自然とする。これに対し、引用登録商標は前記のような構成の態様上「ラツキー
ウツド」又は「ウツド」の称呼及び観念(幸福の森又は森)を生ずるものとするを
自然とするから、本件登録商標と引用登録商標とは、外観においては勿論のこと、
称呼及び観念においても相紛れるおそれのない非類似の商標というを相当とする。
この点について請求人(原告)は、本件登録商標における「MERRYWOOD」
と、引用登録商標における「LUCKY WOOD」とにおいて、その「MERR
Y」も「LUCKY」も、ともに、明るく、楽しい、幸せな感じを表す言葉として
外国人の間では特に好んで使われる二つの形容詞であり、しかも両者がいずれも
「WOOD」と同一の名詞と結合しているものであることを考え併せるとき、「L
UCKY WOOD」と「MERRYWOOD」とは酷似のものである旨主張する
が、その「MERRYWOOD」と「LUCKY WOOD」において、前者の
「MERRY」と、後者の「LUCKY」とは、ともに一般に親しまれ、確然と区
別された称呼及び観念を有する語であるから、これが、「WOOD」なる共通の語
と結合したとしても、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに
相紛れるおそれのない非類似の商標というを相当とする。したがつて、この点に依
拠してする請求人(原告)の主張は、採用することができない。
 したがつて、本件登録商標は、商標法第四条第一項第十一号に該当するものと
し、その登録を無効とすべき限りでない。
三 本件審決を取り消すべき事由
 本件登録商標及び引用商標のそれぞれの構成及び指定商品並びに登録出願及び登
録の各年月日が、いずれも本件審決認定のとおりであることは認めるが、本件審決
は、原告が主張した本件登録商標の登録を無効とする事由についての判断を誤つた
結果、右登録は無効とすべきものではないとした点において、判断を誤つた違法が
あり、取り消されるべきものである。すなわち、
(一)本件登録商標を構成する文字のうち、「MERRY」は、英語で「楽しい」
という意味の形容詞であり、「WOOD」は、英語で、「森、木材」という観念の
名詞であり、日本においても、ともに人口にかいしやされている言葉であるから、
本件登録商標は、「MERRY」と「WOOD」とに分析することができ、「ウツ
ド」の称呼、「森、木材」の観念も生ずるところ、引用商標からも同様の称呼、観
念を生ずるから、両商標は類似する。
(二)本件登録商標の一部を構成する「MERRY」は、英語で、「楽しい、陽気
な、愉快な、おもしろい、快活な、浮かれる」という意味であり、引用商標の一部
を構成する「LUCKY」は、英語で、「幸運な、えんぎのよい、めでたい」とい
う意味で、いずれも、明るく、良い意味の言葉であり、外国人が好んで使い、日本
においても人口にかいしやされており、このようにかなり共通性をもつた言葉が、
いずれも「WOOD」という共通の言葉に結合していることからみて、両商標は称
呼、観念上類似するものというべきである。
(三)本件登録商標と引用商標とは、英文字を対比すれば、それぞれ前後二つに分
かれる文字の前半が、前者は「MERRY」であるに対し、後者は「LUCKY」
である点で違いはあるが、(1)本件登録商標は、その指定商品であるスプーン、
フオーク及びナイフにおいて、これらの柄の裏面や刀面というごく狭い場所に、小
さく、浅く刻印されていること、(2)両商標の前後二つに分かれる文字の後半の
「WOOD」を共通にしていること、及び(3)「MERRY」も「LUCKY」
もアルフアベツト五文字からなり、最後がいずれも「Y」であること等からみて、
両商標は外観上類似するというべきである。
 本件審決は、本件登録商標の「MERRY」の文字と「WOOD」の文字とは、
表現態様上、引用商標の「LUCKY」と「WOOD」又は「ラツキー」と「ウツ
ド」において両者の間に約一字分程度の間隔がある等とは異なり、同大一連に記さ
れている旨述べるが、このような商標構成上の表現の違いは問題にならないことで
ある。本件登録商標は、「MERRY」と「WOOD」の単語からなる言葉であ
り、一つの単語からなる特定の意味のある言葉ではない。本件審決は、「MERR
Y」と「WOOD」との間には、語義においても「たのしい森」として結合すべき
密接な関係がある旨述べているが、「たのしい森」とは言語学上、その意味は不明
であるし、辞典にも単語として存在しないから、本件審決認定のように、結合すべ
き密接な関係があるとはいえない。更に、本件審決は、語呂において「メリーウツ
ド」とよどみなく称呼され、二つの単語を結合一体のものとして「メリーウツド」
と称呼、観念(たのしい森)されるものというを自然とする旨述べるが、本件登録
商標の構成は、一つの意味をもつた言葉ではなく、「MERRY」と「WOOD」
の二つの単語の結合からなるものであるから、前記のような認定ないし判断は、実
に不自然なことである。
第三 被告の答弁
 被告訴訟代理人は、請求の原因に対する答弁として、次のとおり述べた。
 原告の主張事実中、特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点並びに本
件登録商標及び引用商標のそれぞれの構成及び指定商品並びに登録出願及び登録の
年月日がいずれも原告主張のとおりであることは認めるが、その余は争う。本件審
決の認定、判断は正当であり、原告主張の違法の点はない。原告の主張は、一見明
瞭な一連不可分の構成になる本件登録商標を、「MERRY」と「WOOD」に無
理に分析することを前提とするもので、不自然な類否判断である。本件登録商標
は、一連とした造語的商標であり、引用商標とは構成音全体の語感が異なるから、
称呼及び観念上非類似というべきである。本件登録商標の指定商品であるナイフに
刻印された商標は、明確であり、なお、マークとして、「MERRYWOOD」の
頭文字である「M・W」を楕円形の円線内に配置して刻印してあり、引用商標にお
いては、マークとして、樹木三本を円形の円線内に配置して刻印しており、両商標
の、指定商品についての相違は明瞭である。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要点、本件登録商標
及び引用商標のそれぞれの構成、指定商品並びに登録出願及び登録の年月日がいず
れも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがない。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 本件審決は、本件登録商標は、結合一体のものとして「メリーウツド」と称
呼、観念(楽しい森)される、という前提に立つて、引用商標は、「ラツキーウツ
ド」又は「ウツド」の称呼観念(幸福の森又は森)を生ずるから、両者相紛れるお
それのない非類似の商標であると判断したが、この判断は誤りであること、以下に
説示するとおりである。すなわち、
 前記当事者間に争いのない事実によれば、本件登録商標は、別紙記載のとおり、
これを構成する文字は、M・E・R・R・Y・W・O・O・Dの各欧文字が、同一
書体、同一の大きさ及び同一の間隔で、一連かつ一体に横書してなるものであるこ
とを認めることができるが、前記欧文字からなる本件登録商標を機械的に発音する
場合でも、我が国における欧語、特に英語の普及の度合いからみて、本件登録商標
を構成する文字の前半部分に当たる「MERRY」は、英語で、「陽気な」あるい
は「楽しい」の意味を有する単語であり、後半部分に当たる「WOOD」は、英語
で、「森」の意味を有する単語であり、本件登録商標はこの二つの単語からなるも
のであるから、これを「MERRY」と「WOOD」とに分けることもできるもの
であることを、一般世人において容易に理解するものと認めるのが相当であり、し
かして、本件登録商標を、「メリーウツド」と結合体のものとしてのみ理解される
べきものであるとする特段の事情の認むべき証拠のない本件においては、本件登録
商標は、「メリーウツド」(陽気な森あるいは楽しい森)のほか、「ウツド」
(森)の称呼、観念を生ずるとみるを相当とする。
 本件審決は、引用商標からは、その構成の態様上、「ラツキーウツド」(幸福の
森)又は「ウツド」(森)の称呼、観念を生ずるとしながら、本件登録商標は、
「MERRY」と「WOOD」を結合一体のものとして、「メリーウツド」と称
呼、観念されるものというを自然とするとするが、なぜそれが自然とするかの理由
は全く明確でない。(あるいは、引用商標において、「LUCKY」と「WOO
D」との間に一字分程度の間隔があることを捕えて、右のような判断に及んだもの
かとも推測されるが、称呼、観念に関する限り、一字分程度の間隔があるかないか
を問題にするのは混乱といわざるをえない。けだし、「LUCKY」も「WOO
D」も比較的短い英文字であり、しかも、前者が形容詞であることもあつて、一般
にはこれに接した場合、一字分程度の間隔の有無にかかわらず、一連に、あるいは
各別に、称呼し、又は観念するを通例とすると認められるからである。)
 叙上のとおり、本件登録商標からは、「メリーウツド」と称呼、観念(楽しい
森)されるものであり、「ウツド」の称呼、観念を生ずるものではないとした本件
審決の認定ないし判断は誤りであり、引用商標が「ラツキーウツド」の称呼、観念
(幸福の森)のほか「ウツド」の称呼、観念(森)を生ずるものであることは被告
も認めて争わないところであるから、本件登録商標と引用商標とは、いずれも前記
「ウツド」の称呼、観念を生ずる点において、互いに類似するものというべく、し
たがつて、両者が称呼及び観念においても類似しないとした本件審決は、その判断
を誤つたものというほかはない。
(むすび)
三 以上説示したとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件
審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものということができる。よつ
て、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条及び
民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 三宅正雄 中川哲男 秋吉稔弘)
別紙
<11853-001>

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なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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