弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 1審被告亀山市長の控訴に基づき,原判決三ないし五項を次のとおり変更す
る。
 1審原告の1審被告亀山市長に対する予備的請求をいずれも棄却する。
2 1審原告の控訴を棄却する。
3 控訴費用は,第1,第2とも1審原告の負担とする。
       事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 1審原告
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)被控訴人亀山市は,1審原告に対し,256万1786円及び内金205万
0286円に対する平成11年3月11日から,内金51万1500円に対する同
月15日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(1)ア(主位的請求)
 1審被告亀山市長が,1審原告に対してした原判決別紙物件目録記載の建物(以
下「本件建物」という。)に対する平成10年,平成11年度及び平成12年度固
定資産税及び都市計画税賦課決定がいずれも無効であることを確認する。
イ(予備的請求)
 1審被告亀山市長が,1審原告に対してした本件建物に対する平成11年度及び
平成12年度固定資産税及び都市計画税賦課決定いずれも取り消す。
(4)1審被告亀山市長の控訴を棄却する。
(5)訴訟費用は,第1,2審とも1審被告亀山市長及び被控訴人亀山市の負担と
する。
(6)(2)につき仮執行宣言
2 1審被告亀山市長
主文と同旨
3 被控訴人亀山市
主文2,3項と同旨
第2 事案の概要等
1 本件は,1審被告亀山市長が本件建物に対し固定資産税及び都市計画税の課税
処分をしたことについて,その所有者であり農業協同組合である1審原告が,本件
建物は地方税法348条4項所定の「倉庫」に該当するので非課税として扱うべき
であるから,同課税処分は当然無効であるとして,被控訴人亀山市に対し,不当利
得返還請求権に基づき平成6年度から平成10年度分として徴収された金員の返還
を請求するとともに,1審被告亀山市長に対し,主位的に平成10年度ないし平成
12年度の課税処分について無効であることの確認を,予備的に平成11年度及び
平成12年度の課税処分についてその取消しを求めた事案の控訴審である。
2 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下に当審主張を付
加するほか,原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の各該当欄に記載の
とおりであるから,これを引用する。
3 1審原告の当審主張
(1)育苗施設とは,本件建物のみ
を指すものではなく,本件建物内のプラント及び育苗ハウスを含む,育苗事業に利
用される有形無形の有機的総合体を指すものであり,本件建物につき「育苗施設」
か「倉庫」かという問題提起をするのは論理的ではない。
(2)本件建物が,広くて間仕切りのない建物であるのは,6万箱の苗箱をはじ
め,水槽,台車その他の物品を恒久的に収納保管しておくスペースが必要であった
からである。これらの物品の保管スペースを除外すると,現在の約5分の1のスペ
ースで足りる。本件建物は,これらの収納スペースを,費用及び作業の効率もあっ
て,プラントと合一したものである。しかも,そのプラントとしての稼動期間は1
年のうち約1か月に過ぎない。プラントであっても,全く稼動の余地がない約11
か月間は,収納保管されるほかにありようがなく,その期間は,本件建物全体が倉
庫として機能している。
4 1審被告亀山市長および被控訴人亀山市の当審主張
(1)原判決は,本件建物が一体として育苗施設として利用されていることを看過
している。
ア 本件建物の2階部分には,ベルトコンベア,受け皿をセットして1階に降下さ
せる装置,土供給装置と運ばれる土を貯えておく機械が存する。
イ 本件建物の1階部分の土置き場バケットコンベアを使って,土供給装置に土を
入れ,2階部分から土が供給される。
ウ 育苗作業では,2階にある受け皿をベルトコンベアで移動させ,受け皿を降ろ
す装置を使って1階へ降下させ,1階ではベルトコンベアを使って移動させ,土の
供給,採取,覆土という作業が流れ作業によって行われる。
(2)本件建物には,育苗の機能構造,その作業用品の保管の機能構造とが備わっ
ているが,その主たる機能構造は育苗であって,その機能を補助するために作業用
品の保管がなされているに過ぎない。
第3 当裁判所の判決
1 本件建物の構造・利用状況についての認定事実は,原判決「事実及び理由」の
第三(当裁判所の判断)の一の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
2 証拠(乙1ないし16)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)1審原告は,本件建物を建築にするに当たり,被控訴人亀山市に対し,先進
的農業生産総合推進対策事業の採択を要望し,被控訴人亀山市は,三重県知事に対
し,平成4年度先進的農業生産総合推進対策事業承認申請を行い,平成4年12月
15日,同知事から実施計画の承認を受けた。
(2)1審原告は,本件建物,プラントおよび育苗ハウス等から成る水稲共同育苗
施設を設置するものとして,平成5年3月10日,1審被告亀山市長に対し,地域
農業生産システム確立基幹施設整備事業補助金の交付を申請し,同月25日,同補
助金の交付決定を受け,同年4月27日及び同年12月27日に上記補助金合計9
018万9000円の交付を受けた。
(3)また,1審原告は,平成5年3月16日,本件建物の主要用途を育苗作業棟
として,建築確認申請をし,同年4月16日,三重県北勢県民局鈴鹿土木事務所の
建築確認を受けた。
3 ところで,地方税法348条4項の「倉庫」とは,当該農業協同組合の行う業
務に関連して特に設けられた物品の恒久的な貯蔵庫をいい,臨時的に倉庫として使
用する建物及び単なる物置程度のものは含まれないと解される。
 これを本件についてみるに,上記認定事実(引用にかかる原判決の認定事実を含
む。)によれば,本件建物の主要な用途は育苗作業場であり,同作業の殆どは1階
部分においてなされるものではあるが,2階部分にも苗箱(受け皿)を1階部分に
搬送するベルトコンベアが設置され,これに乗せられた苗箱は,自動的に播種プラ
ントに搬送され,土入れ,散水,播種等が行われるものであって,2階部分のベル
トコンベアは1階部分と一体となって。育苗作業プラントの一部として利用されて
いる。たしかに,2階の床面積の相当部分は,苗箱の保管場所として使用されてい
るけれども,育苗作業時においては,2階部分に保管された苗箱は,ベルトコンベ
アによって1階に搬送されるために待機している状態にあるということができる。
そうすると,本件建物は,1階部分はもちろん,2階部分の苗箱の保管場所も含め
て,一体として育苗作業に使用される育苗施設であるというべきであり,2階部分
の苗箱の保管場所には,物品を保管するという倉庫的な役割を兼ねてはいるもの
の,その役割は育苗施設としての機能から見れば副次的なものであって,これを含
めて育苗施設に該当するということに支障はないというべきである。
 したがって,本件建物は,地方税法348条4項「倉庫」には該当しないものと
解するのが相当である。
 たしかに,本件建物において育苗作業が行われる期間は1年のうちでわずか1か
月ほどであり,その余の期間中,1階及び2階のプラント並びに2階部分の苗箱
は,ただ本件建物内に保管されている
だけであって,本件建物はその間あたかも倉庫のように使用されているものではあ
るが,本件建物の主たる用途は前記のように育苗作業場であって,その用途に利用
する期間の長短は本質的な問題ではないというべきである。
 また,2階の相当部分が苗箱の保管場所として利用されていることも,前記のと
おり,苗箱の保管は育苗施設としての機能から見れば副次的なものというべきであ
るから,前期認定を左右しない。
 なお,1審原告は,本件建物につき「育苗施設」か「倉庫」かという問題提起を
するのは論理的ではない旨主張するが,本件建物が育苗施設であると認められれ
ば,前記の「倉庫」の意義に照らすと,本件建物は「倉庫」に該当しないものとい
うことができる。
 よって,1審原告の主張は採用できない。
4 以上によれば,1審被告亀山市長が1審原告に対してした本件建物に対する平
成10年度,平成11年度及び平成12年度固定資産税及び都市計画税賦課決定
は,違法であるとは認められず,無効であるともいえない。
第4 結論
 よって,1審議原告の本訴請求はいずれも失当として棄却すべきであるから,1
審被告亀山市長の控訴に基づき,これと異なる原判決主文三ないし五項を変更し,
1審原告の控訴はこれを棄却し,訴訟費用は第1,2審とも1審原告に負担させる
こととして,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第3部
裁判長裁判官 福田晧一
裁判官 内田計一
裁判官 倉田慎也

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛