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平成19年11月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成18年(行ケ)第10284号審決取消請求事件
平成19年11月6日口頭弁論終結
判決
原告有限会社マス構造企画
訴訟代理人弁理士松尾憲一郎,中嶋裕昭,工藤修一,西山忠克
被告小川建材工業株式会社
訴訟代理人弁理士江崎光史,荒垣恒輝,鍛冶澤實
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2005−80009号事件について平成18年5月15日に
した審決中「特許第3329737号の請求項1,5,6についての特許を,
無効とする」との部分を取り消す。。
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「擁壁用ブロック及び同ブロックを使用した擁壁の構
築方法」とする特許第3329737号(平成10年7月31日出願(国内優
先権主張平成10年2月23日平成14年7月19日設定登録以下本),。「
件特許」という)の特許の特許権者である。。
被告は,平成17年1月18日,本件特許(請求項は全部で8項である)。
のうち,請求項1,4,5及び6に係る発明の特許に対し,無効審判請求をし
た。特許庁は,上記審判請求を無効2005−80009号事件として審理し
た結果,原告が平成17年4月14日付け訂正請求書によってした訂正請求を
認めた上で,同年8月17日「特許第3329737号の請求項1,5及び,
6に係る発明についての特許を無効とする。特許第3329737号の請求項
4に係る発明についての審判請求は成り立たない」との審決をし,同月29。
日,審決の謄本が原告に送達された。
原告は,平成17年9月27日,上記審決に対して審決取消しの訴えを提起
するとともに,同年12月26日,本件特許についての訂正審判請求をしたた
め,知的財産高等裁判所は,平成18年1月23日,特許法181条2項に基
づき,上記審決を取り消す決定をし,事件を審判官に差し戻した。
差戻し後,原告は,平成18年2月13日,訂正請求書を提出して訂正請求
をし,特許庁は,この訂正を認めた上で,同年5月15日「特許第3329,
737号の請求項1,5及び6に係る発明についての特許を無効とする。特許
第3329737号の請求項4に係る発明についての審判請求は成り立たな
い」との審決をし,同月25日,審決の謄本が原告に送達された。。
なお,原告は,本件訴えを提起した後の平成18年6月23日,訂正審判請
求をしたが,その後,これを取り下げた。
2特許請求の範囲
平成18年2月13日付け訂正請求書(甲第13号証。以下,同日付け訂正
明細書を「本件明細書」という)による訂正後の本件特許の請求項1,5及。
び6に係る発明は,次のとおりである(以下,審決と同様に,請求項1に係。
る発明を「本件発明1,請求項5に係る発明を「本件発明5A,請求項6」」
に係る発明を「本件発明6A」といい,これら全部を「本件発明」という。な
お,請求項5及び6は,請求項1を引用しているところ,これを独立形式に直
して以下に記載する。また「弾積み」とあるのは「段積み」と改める),,。
()本件発明11
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置さ
せて,同上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士
を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面よりも上方に位置させて,同下端部の下方位置に,前後方向に隣接す
る鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して,段積みした
擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に,
上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣
接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成したことを特徴
とする擁壁用ブロック。
()本件発明5A2
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置さ
せて,同上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士
を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面よりも上方に位置させて,同下端部の下方位置に,前後方向に隣接す
る鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して,段積みした
擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に,
上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣
接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成し,
鉄筋挿通孔は,上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし,同中間
部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となしたことを特徴とする擁壁用ブロ
ック。
()本件発明6A3
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも下方に位置さ
せて,同上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士
を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面よりも上方に位置させて,同下端部の下方位置に,前後方向に隣接す
る鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成して,段積みした
擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた際に,
上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣
接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構成し,
前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれよりも後方位置まで
,。底版を延設して三辺固定版構造となしたことを特徴とする擁壁用ブロック
3審決の理由
別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件発明1及び本件発明5A
は,財団法人土木研究センター「民間開発建設技術の技術審査・証明事業認定
規程に基づく土木系材料技術・技術審査証明報告書(技審証第0904号)構
造用プレキャストコンクリートブロック積み上げ式擁壁「ゴールコン(平」」
成9年6月発行(甲第1号証。以下,審決と同様に「刊行物1」という))。
の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件
,(。発明6Aは刊行物1の記載及び特開平8−218401号公報甲第3号証
以下,審決と同様に「刊行物3」という)に基づいて,当業者が容易に発明。
をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受
けることができないとするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,刊行物1により以下の「刊行物1−1発
明」及び「刊行物1−5A発明」をそれぞれを認定し,本件発明と上記各発明
との一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1)刊行物1−1発明の内容
,,前面壁と同前面壁の後面より後方へ突出状に形成した控え部とを具備し
控え部には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え部に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え部の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え部の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置さ
せて,同上端面の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士
を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面と同じ高さに位置させて,同下端面の下方位置に,前後方向に隣接す
る鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロッ

(2)刊行物1−5A発明の内容
,,前面壁と同前面壁の後面より後方へ突出状に形成した控え部とを具備し
控え部には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え部に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え部の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え部の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置さ
せて,同上端面の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士
を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面と同じ高さに位置させて,同下端面の下方位置に,前後方向に隣接す
る鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し,
鉄筋挿通孔は,上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし,同中間
部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロック。
(3)本件発明1と刊行物1−1発明との一致点及び相違点
(ア)一致点
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁の上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端
部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部の下方位置に,前
後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し
た擁壁用ブロックである点
(イ)相違点
本件発明1は,前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面よりも
下方に位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置さ
せて,段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して
硬化させた際に,上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充填
・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく構
成したのに対し,刊行物1−1発明は,前後仕切壁の上端部を上側節状部形
成用凹部の下面と同じ高さに位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部の上
面と同じ高さに位置させたものであって,上側連通空間および下側連通空間
にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化
材が一体化されるか否かについては不明である点(以下,審決と同様に「相
違点1」という)。
(4)本件発明5Aと刊行物1−5A発明との一致点及び相違点
(ア)一致点
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁の上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端
部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部の下方位置に,前
後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成
し,
鉄筋挿通孔は,上端開口部より中間部へ向けて漸次縮径状となし,同中間
部より下端開口部へ向けて漸次拡径状となした擁壁用ブロックである点
(イ)相違点
本件発明5Aは,前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面より
も下方に位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置
させて,段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填し
て硬化させた際に,上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充
填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく
構成したのに対し,刊行物1−5A発明は,前後仕切壁の上端部を上側節状
部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部
の上面と同じ高さに位置させたものであって,上側連通空間および下側連通
空間にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・
硬化材が一体化されるか否かについては不明である点(以下,審決と同様に
「相違点4」という)。
(5)本件発明6Aと刊行物1−1発明との一致点及び相違点
(ア)一致点
前壁と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控
え壁には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成した擁壁用ブロックにおい
て,
控え壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を
,,形成し同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し
控え壁の上面に下方へ凹状の上側節状部形成用凹部を形成する一方,同控
え壁の下面に上方へ凸状の下側節状部形成用凹部を形成して,これら上・下
側節状部形成用凹部同士を鉄筋挿通孔を介して連通させると共に,段積みし
た上段に位置する擁壁用ブロックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置す
る擁壁用ブロックの上側節状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部
形成空間を形成すべく構成し,
前後仕切壁の上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端
部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部の下方位置に,前
後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成し
た擁壁用ブロックである点
(イ)相違点
本件発明6Aは,前後仕切壁の上端部を上側節状部形成用凹部の下面より
も下方に位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部の上面よりも上方に位置
させて,段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填し
て硬化させた際に,上側連通空間および下側連通空間にも充填・硬化材が充
填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材と一体化されるべく
構成したのに対し,刊行物1−1発明は,前後仕切壁の上端部を上側節状部
形成用凹部の下面と同じ高さに位置させ,下端部を下側節状部形成用凹部の
上面と同じ高さに位置させたものであって,上側連通空間および下側連通空
間にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬
化材が一体化されるか否かについては不明である点以下審決と同様に相(,「
違点5」という)。
本件発明6Aは「前壁の下端部より控え壁の後端同等位置若しくはそれ,
よりも後方位置まで底版を延設して,三辺固定版構造となした」のに対し,
刊行物1−1発明はそのような構成を有さない点(以下,審決と同様に「相
違点6」という)。
第3審決取消事由の要点
審決は,本件発明1と刊行物1−1発明との一致点の認定を誤り,相違点を
看過し(取消事由1,相違点1についての判断を誤った(取消事由2)もの)
であり,また,本件発明5A及び6Aについても同様に相違点4ないし6につ
いての判断を誤り(取消事由3,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼ)
すことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1取消事由1(一致点認定の誤り,相違点の看過)
審決は,本件発明1と刊行物1−1発明との一致点として「・・・前後,
仕切壁の上端部の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を
連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部の下方位置に,前後方向に隣
接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側連通空間を形成した擁壁用ブロ
ック」を認定しているが,図15と刊行物1の160(4)頁の最上部に位。
置する図面とを対比して見れば,本件発明1では,仕切壁11(図面中央の縦
),,型の仕切壁の上端が一段低く形成され上側連通空間11aがあるのに対し
刊行物1−1発明では,この一段低い上側連通空間が全く存在していないとい
う明白な差異がある。したがって,審決は,上記の相違点を看過し,刊行物1
−1発明には「上側連通空間」が存在しないのに,これがあると認定し,こ,
の点を本件発明1と刊行物1−1発明との一致点として認定している(下側連
通空間についても同じ。)
被告は,審決では「上側連通空間」を節状部形成空間と上側連通空間で形,
成した連通空間と想定して判断していると解されると主張するが,被告の主張
は「上側連通空間=節状部形成空間+上側連通空間」などという奇妙な公式,
を想定したものである。
被告は,上側連通空間や下側連通空間も節状部形成空間も隣接する鉄筋挿通
孔を空間的に連通するものである点で軌を一にしていると主張する。
しかし,本件発明1は,仕切壁を低くして連通させることに技術的意義を求
,,,,めたものでありだからこそまず鉄筋挿通孔同士が強固に連通され次いで
節状部が鉄筋挿通孔と一体となってせん断抵抗力を発揮し,全体的に強固な積
みブロック擁壁が形成されるのである。仮に,鉄筋挿通孔を上下の節状部形成
空間を介して連通させただけでは,各鉄筋挿通孔中の硬化材の連結強度は何も
発生しない。
2取消事由2(相違点1判断の誤り)
審決は「前後仕切壁の上端部の高さについては,上側連通空間が存在でき,
るように,控え壁の上面より低い適当な位置とされれば,所期の目的を充分に
果たすものといえるものであって,…本件発明1の相違点1に係る構成は,当
業者が必要に応じてなし得る程度の設計事項にすぎない」と判断した。。
しかし,審決は,前後仕切壁の上端部が控え壁の上面より低い位置にありさ
,,えすれば硬化材を流入させた際前後仕切壁の前後空間の鉄筋挿通孔も連通し
かつ,節状部形成空間での節状部も形成されるとの短絡的な発想に由来してお
り「まず上下側連通空間によって前後の鉄筋挿通孔を連通状態にして各挿通,
孔の強度を上げること,そしてその上方の節状部形成空間での節状部の形成に
よりブロックの継ぎ目のせん断抵抗力を上げる」という,本件発明1の所期の
目的を無視している。その結果,相違点1に係る構成の容易想到性の判断を誤
ったものである。
3取消事由3(相違点4ないし6判断の誤り)
相違点4ないし6についての審決の判断には,上記の取消事由と同様の判断
の誤りがある。
第4被告の反論の骨子
審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1取消事由1(一致点認定の誤り,相違点の看過)について
審決は「上側連通空間」を節状部形成空間と上側連通空間で形成した連通,
空間と想定して判断していると解される。
「上側連通空間」とは,請求項の記載によると「仕切壁の上部を切り込み,
節状部形成用凹部に続いて形成した更なる凹部」から形成された空間であると
解され,その用語どおりに解すれば,上側節状部形成用凹部と「この仕切壁の
更なる凹部」とを含めて,ブロックの上側を連通する空間を形成するものであ
る。同じく「下側連通空間」とは,請求項の記載から見ると「仕切壁の下,,
部を切り込み節状部形成用凹部に続いて形成した更なる凹部」から形成された
空間であり,その用語のとおりに解すれば,下側節状部形成用凹部と「この仕
切壁の更なる凹部」とを含めて,ブロックの下側を連通する空間を形成するも
のである。そして,原告も認めているように「節状部形成空間は,隣接する,
鉄筋挿通孔を空間的に連通するもの」である。
「上側連通空間」や「下側連通空間」は,ブロックの上側及び下側を連通す
る空間を形成するもの,言い換えると,隣接する鉄筋挿通孔を空間的に連通す
るものである。したがって「上側連通空間」や「下側連通空間」も節状部形,
成空間も隣接する鉄筋挿通孔を空間的に連通するものである点で軌を一にして
いるから,審決が節状部形成空間と上側連通空間で形成した連通空間を「上側
連通空間」といっても,その技術的内容が変わるものではなく,何ら差し支え
ないものと解され,一致点の認定に誤りはない。
2取消事由2(相違点1判断の誤り)について
上側連通空間及び下側連通空間は,仕切壁の上部および下部を僅かに切り込
んだ更なる凹部を成す空間であるから,段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通
孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた状態における作用効果は,節状部形
成空間において段積みした擁壁用ブロックの鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充
填して硬化させて,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔中の充填・硬化材を一体化
する作用効果から,当業者ならば極めて普通に想起できる程度であって,原告
の主張は的を得ないものである。
3取消事由3(相違点4ないし6判断の誤り)について
上記のとおり,取消事由1及び2に理由がない以上,相違点4ないし6につ
いての審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(一致点認定の誤り,相違点の看過)について
(1)本件明細書には,図6とともに「上・下側節状部形成用凹部「上・下,」,
側連通空間」及び本件発明1の実施例について次の記載がある。
(ア)「すなわち,本発明に係る擁壁用ブロックは,基本的構造として,前壁
と,同前壁の後面より後方へ突出状に形成した控え壁とを具備し,控え壁
。」(【】)には上下方向に貫通する鉄筋挿通孔を形成している段落0020
(イ)「そして,かかる擁壁用ブロックは,控え壁の上面に下方へ凹状の上側
節状部形成用凹部を形成する一方,同控え壁の下面に上方へ凸状の下側節
状部形成用凹部を形成して,これら上・下側節状部形成用凹部同士を鉄筋
挿通孔を介して連通させると共に,段積みした上段に位置する擁壁用ブロ
ックの下側節状部形成用凹部と,下段に位置する擁壁用ブロックの上側節
状部形成用凹部とが,上下方向に符合して節状部形成空間を形成すべく構
成している(段落【0021)。」】
(ウ)「このようにして,節状部形成空間内に鉄筋挿通孔中を通してコンクリ
ートやモルタル等の充填・硬化材を充填して硬化させることにより,上下
方向に隣接する擁壁用ブロック同士の間に節状部を成形することができ,
同節状部が各擁壁用ブロック同士の接続面間に作用する水平せん断力に対
して強い抵抗力を発揮し,通常の現場打ち擁壁と同程度の強い抵抗のある
擁壁を構築することができる(段落【0022)。」】
(エ)「そして,本発明にかかる擁壁用ブロックは,特徴的構造として,控え
壁に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成
し,同鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形成し,
前後仕切壁は,上端面を控え壁の上面よりも下方に位置させて,同上端面
の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上
側連通空間を形成すると共に,下端面を控え壁の下面よりも上方に位置さ
せて,同下端面の下方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同
士を連通する下側連通空間を形成している(段落【0024)。」】
(オ)「このようにして,鉄筋挿通孔中に充填・硬化材を充填して硬化させた
際には,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上端部同士及び下端部同士を連
通する上・下側連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されて,隣接す
る鉄筋挿通孔も一体化させることができる(段落【0025)。」】
(カ)「従って,硬化した充填・硬化材を,上向き及び下向きに滑動させよう
,。」(【】)とする力に対して強力に抵抗させることができる段落0026
(キ)「図15は,第2実施例としての中型の擁壁用ブロックの断面側面A2
図であり,同擁壁用ブロックは,控え壁2に,前後方向に伸延し,かA2
つ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空間を形成し,同鉄筋挿通空間内1010
に前後仕切壁を設けて,前後方向に二個の鉄筋挿通孔3,3を形成し11
ている(段落【0078)。」】
(ク)「そして,前後仕切壁は,上端部を上側節状部形成用凹部4の下1111a
面よりも下方に位置させて,同上端部の直上方位置に,前後方向4a11a
に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士を連通する上側連通空間を12
形成すると共に,下端部を下側節状部形成用凹部5の上面よりも11c5a
上方に位置させて,同下端部の直下方位置に,前後方向に隣接する鉄11c
,。」筋挿通孔33の下端部同士を連通する下側連通空間を形成している13
(段落【0079)】
(ケ)「このようにして,鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化材Cを充填して硬
化させた際には,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士及び
下端部同士を連通する上・下側連通空間内にも充填・硬化材Cが充12,13
填・硬化されて,隣接する鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化された充填・
硬化材Cと一体化させることができる(段落【0080)。」】
(コ)「従って,鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化した充填・硬化材Cを,上
向き及び下向きに滑動させようとする力に対して,強力に抵抗させること
ができる(段落【0081)。」】
(2)上記ア及びイのとおり「上・下側節状部形成用凹部」は,控え壁の上・,
下面に,段積みされて符合する上・下側節状部形成用凹部同士により,節状
部形成空間を形成すべく構成されるもので,上記ウのとおり,節状部形成空
間内に鉄筋挿通孔中を通して充填・硬化材を充填して硬化させることによ
り,上下方向に隣接する擁壁用ブロック同士の間に,各擁壁用ブロック同士
の接続面間に作用する水平せん断力に対して強い抵抗力を発揮する節状部を
成形することが記載されている。
また本件明細書には本件発明1に係る実施の形態ではないものの上,,,「
・下側連通空間」は,前後仕切壁の上下端面をそれぞれ控え壁の上面よりも
下方,控え壁の下面よりも上方に位置させて,前後方向に隣接する鉄筋挿通
孔の上下端部同士を連通する上・下側連通空間を形成し(上記エ,上・下)
側連通空間内にも充填・硬化材が充填・硬化されることにより,隣接する鉄
筋挿通孔も一体化させることができ,硬化した充填・硬化材を,上向き及び
下向きに滑動させようとする力に対して,強力に抵抗させることができるこ
とが記載されている(上記オ,カ。そして,本件発明1の実施例として,)
前後仕切壁の上・下端部,を,それぞれ上側節状部形成用凹部41111a11c
の下面よりも下方,下側節状部形成用凹部5の上面よりも上方に位置4a5a
させて,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔3,3の上端部同士または下端部同
士を連通する上・下側連通空間,を形成し(上記キ,ク,上・下側連1213)
通空間,内にも充填・硬化材Cが充填・硬化されることにより,隣接1213
する鉄筋挿通孔3,3中に充填・硬化された充填・硬化材Cを,上向き及び
下向きに滑動させようとする力に対して,強力に抵抗させるように,一体化
させることが記載されている(上記ケ,コ。)
以上によれば,本件発明1に係る擁壁用ブロック同士の段積み部には,上
・下側節状部形成用凹部によって形成される節状部形成空間,鉄筋挿通孔及
び前後仕切壁の上・下方に上・下側連通空間がそれぞれ形成され,これらの
三つの連通する空間が鉄筋挿通孔を通して充填される充填・硬化材により一
体的に硬化されるものであると認めることができる。
(3)刊行物1の160(4)頁,161(5)頁には,次の記載がある。
「」「」,(ア)N1500タイプ及びN2000タイプのそれぞれについて
「基本型(A型」及び「端部調整型(1(B型」の平面図,正面図及)))
び両者に共通する縦断面図が掲載されている。
(イ)控え部に,前後方向に伸延し,かつ,上下方向に貫通する鉄筋挿通空
間を形成し,鉄筋挿通空間内に前後仕切壁を設けて複数の鉄筋挿通孔を形
成すること。
(ウ)控え部の上面に下方へ凹状の上側凹部を形成する一方,控え部の下面
に上方へ凸状の下側凹部を形成すること。
(エ)前後仕切壁は,前後仕切壁の上端部を控え部の上面より低く上側凹部
の下面と同じ高さに位置させ,下端部を控え部の下面より高く下側凹部の
上面と同じ高さに位置させること。
(4)上記ア,イ及びウの各記載によれば,刊行物1−1発明において,擁壁用
ブロックを上下方向に符合させた場合に,段積みした上段に位置する擁壁用
ブロックの下側凹部とその下段に位置する擁壁用ブロックの上側凹部とは,
鉄筋挿通孔の周辺に鉄筋挿通孔と連通した空間を形成するから,下側凹部と
上側凹部はそれぞれ上側節状部形成用凹部,下側節状部形成用凹部と呼ぶこ
とができ,これらによって形成される空間は上・下側節状部形成空間と呼ぶ
ことができることは,審決が認定したとおりである。
また,上記エの記載によれば,刊行物1−1発明において,前後仕切壁の
上端部を上側節状部形成用凹部の下面と同じ高さに位置させることにより,
同上端面の上方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔同士を連通する空間
を形成するとともに,その下端部を下側節状部形成用凹部の上面と同じ高さ
に位置させることにより,同下端面の下方位置に,前後方向に隣接する鉄筋
挿通孔同士を連通する空間を形成するものであるから,これらの空間は本件
発明1の上・下側連通空間と呼ぶことができる。
以上によれば,刊行物1−1発明に係る擁壁用ブロック同士の段積み部に
は,鉄筋挿通孔に連通する上・下側節状部形成用凹部によって節状部形成空
間が形成されるとともに,前後仕切壁の上・下方にそれぞれ前後方向に隣接
する鉄筋挿通孔を連通する上・下側連通空間がそれぞれ形成され,節状部形
成空間と上・下側連通空間は鉄筋挿通孔に連通しているものと認めることが
できる。
(5)原告は,刊行物1の160(4)頁,161(5)頁に掲載された縦断面
図を見れば,刊行物1には「上・下側連通空間」が存在せず,前後仕切壁,
の上下空間を「上・下側節状部形成用凹部」及び「上・下側連通空間」とし
て二重に評価することが不当であると主張する。
しかし,前項に説示したとおり,審決が刊行物1−1発明の上・下側連通
空間と認定した空間は,二つの鉄筋挿通孔の間に設けられた前後仕切壁の上
・下方空間であり,これが鉄筋挿通孔でないことは明らかであるし,また,
節状部形成空間でないことも明らかなところであり,これは何ら重複する関
係にはないのであるから,このような見解に立つ審決の認定判断は正当であ
り,原告,被告の主張は,いずれも審決が認定した節状部形成空間,鉄筋挿
通孔及び上・下側連通空間の関係を正解しないものであって,失当である。
(6)以上のとおり,本件発明1の「上・下側節状部形成用凹部」及び「上・下
側連通空間」と刊行物1−1発明の「上・下側節状部形成用凹部」及び「上
・下側連通空間」とは,技術的意義を同じくするものであり,両発明の一致
点として「・・・前後仕切壁の上端部の上方位置に,前後方向に隣接する,
鉄筋挿通孔の上端部同士を連通する上側連通空間を形成すると共に,下端部
の下方位置に,前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の下端部同士を連通する下側
連通空間を形成した擁壁用ブロック」を認定した審決に誤りはない。。
したがって,審決に一致点認定の誤り,相違点を看過した誤りは認められ
ない。
2取消事由2(相違点1判断の誤り)について
(1)原告は,審決が「まず上下側連通空間によって前後の鉄筋挿通孔を連通状
態にして各挿通孔の強度を上げること,そしてその上方の節状部形成空間で
の節状部の形成によりブロックの継ぎ目のせん断抵抗力を上げる」という本
件発明1の所期の目的を無視していると主張する。
しかし,原告の主張する節状部の形成によるブロック継ぎ目のせん断抵抗
力の向上は,既に取消事由1について判断したとおり,本件発明1と刊行物
1−1発明とで何ら差異がないことは明らかである。
そこで,進んで,上・下側連通空間の作用効果について検討する。
前記1()のとおり,本件発明1において,前後仕切壁の上・下空間は,4
前後方向に隣接する鉄筋挿通孔の上・下端部同士を連通する「上・下側連通
空間」であり,この「上・下側連通空間」は,前後方向に隣接する鉄筋挿通
孔の上・下端部同士を連通することにより,鉄筋挿通孔に充填される充填・
硬化材が上・下側連通空間にも充填・硬化され,鉄筋挿通孔中に充填・硬化
した充填・硬化材を上向き及び下向きに滑動させようとする力に対して,強
力に抵抗させるという効果を奏することを目的としているものと認められ
111る。そして,本件発明1の実施例(前記1()キ∼コ)では,前後仕切壁
の上・下端部,をそれぞれ上側節状部形成用凹部4の下面よりも11a11c4a
下方,下側節状部形成用凹部5の上面よりも上方に位置させている。ま5a
た,本件発明1では,その特許請求の範囲には,前後仕切壁の上・下端部の
高さと上・下側節状部形成用凹部の下・上面の高さとの関係について,相対
的な位置関係が規定されているに止まり,それ以上の規定はされていない。
これに対し,前項に説示したとおり,刊行物1−1発明においても,前後
仕切壁の上・下側に上・下側連通空間が存在するものであるが,前後仕切壁
の上・下端が上・下側節状部形成用凹部の上・下面の高さと同一である点に
おいて本件発明1と相違するものである。しかし,刊行物1−1発明におい
ても,上・下側連通空間に充填・硬化材が充填されることにより隣接する鉄
筋挿通孔中の充填・硬化材との一体化が図られ得るものであるところ,本件
発明1の前後仕切壁の上・下端部の高さと上・下側節状部形成用凹部の上・
下面の高さとの位置関係は相対的に規定されているにすぎないのであるか
ら,上・下側連通空間に充填・硬化された充填・硬化材の縦断面積は程度の
差異にすぎず,鉄筋挿通孔中の充填・硬化材を上向き及び下向きに滑動させ
ようとする力に抵抗するとする本件発明1の上・下側連通空間が奏する作用
効果は,刊行物1−1発明のそれに比して格別顕著であるとまでは認め難い
ものといわざるを得ない。以上のとおりであるから,審決の判断に原告主張
の誤りはない。
(2)以上のとおり,審決がした相違点1の判断に誤りはなく,取消事由2は理
由がない。
3取消事由3(相違点4ないし6判断の誤り)について
上記のとおり,取消事由1及び2に理由がない以上,相違点4ないし6につ
いての審決の判断に誤りはない。
4結論
以上に検討したところによれば,審決取消事由にはいずれも理由がなく,審
決を取り消すべきその他の誤りは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田中信義
裁判官
古閑裕二
裁判官
浅井憲

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