弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人松岡泰洪の上告趣意のうち、憲法三六条違反をいう点は、現行の死刑制度
が憲法三六条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和二二年(
れ)第一一九号同二三年三月一二日大法廷判決・刑集二巻三号一九一頁)とすると
ころであるから、理由がない。憲法三九条違反をいう点は、原判決は、第一審判決
判示第二の各事実に関する量刑に当たり、同判示第一の事実を実質的に処罰する趣
旨でこれを右量刑の資料としたものではないことが判文上明らかであるから、前提
を欠き、その余は、憲法三一条違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令
違反、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
 また、所論にかんがみ記録を調査しても、同法四一一条を適用すべきものとは認
められない(本件は、強盗致傷、強盗強姦の前科を有する被告人が、別の強姦致傷
の罪による刑の執行を受ける前後の約七年の間に、四回にわたり、帰宅途中の女性
を言葉巧みに自分の運転する自動車に同乗させ、強盗や強姦行為に及んだ上、うち
二名を殺害するなどしたという強盗強姦、強盗殺人、死体遺棄、強盗強姦未遂、強
盗未遂の事案である。まず、第一審判決判示第一の強盗強姦、強盗殺人の犯行は、
被告人が、昭和五八年八月一六日、強盗強姦を企て、クラフトナイフや荷造り用ビ
ニールひもを用意するなどした上、バスを待っていた女性(当時一八歳)を言葉巧
みに自車に同乗させ、人気のない場所に止めた車中で、右クラフトナイフを突き付
け、右ビニールひもで両手首を後ろ手に緊縛するなどして強姦し、犯行の発覚を恐
れて、同女の殺害を決意し、右ビニールひもを同女の首に巻き付け執ように絞め付
けて殺害し、その所持金品を強取したというものである。その後、被告人は、昭和
五九年一一月二日、同様の手口の強姦致傷事件を起こし、懲役四年六月の刑に処せ
られて服役したが、昭和六三年一〇月に仮出獄した約三箇月半後の平成元年二月六
日、同判示第二の一の強盗強姦、強盗殺人、死体遺棄の犯行に及んだ。右犯行は、
被告人が、強盗強姦を企て、大型カッターナイフや組ひもを用意するなどした上、
勤め帰りの女性(当時二四歳)を言葉巧みに自車に同乗させ、人気のない場所に止
めた車中で、右カッターナイフを突き付け、右組ひもで両手首を後ろ手に緊縛する
などして強姦し、犯行の発覚を恐れて、同女の殺害を決意し、右組ひもで同女の首
を絞め付けて殺害し、その所持金品を強取した上、その死体を道路下に投げ捨てて
遺棄したというものである。さらに、被告人は、その約一年七箇月ないし約一年八
箇月後に、同様の手口の同判示第二の二の強盗強姦未遂、第二の三の強盗未遂の各
犯行を相次いで行った。本件各犯行は、いずれも動機に酌量の余地はなく、殊に若
い女性二名を強姦した上殺害した右第一及び第二の一の各犯行は、結果が極めて重
大である上、犯行の態様が冷酷、非道で、遺族の被害感情も非常に厳しく、社会的
影響も重大である。本件は、前記強姦致傷の罪により被告人を懲役四年六月に処し
た確定裁判が介在するため、右第一の犯行と第二の各犯行とを各別に処断すべき事
案であるが、その量刑判断に当たっては、それらの犯行が前記のような経緯で行わ
れたことが十分考慮されるべきである。以上の諸事情に照らすと、被告人が反省し
ていることなど被告人のために酌むべき諸事情を十分考慮しても、被告人の罪責は
誠に重く、被告人を右第一の犯行に係る罪につき無期懲役刑に処するとともに右第
二の各犯行に係る罪につき死刑に処した第一審判決の科刑を原判決が維持したのは、
やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。)。
 よって、同法四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとお
り判決する。
 検察官倉田靖司 公判出席
(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)

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