弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人近江福雄、同太田和夫、同名和田茂生、同三浦邦俊の上告理由第一点
ないし第三点について
 所論の点に関する原審の認定判断及び審理上の措置は、原判決挙示の証拠関係及
び記録に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論
旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するも
のにすぎず、採用することができない。
 同第四点及び第五点について
 公職選挙法四九条一項、同法施行令五六条一項、二頃によれば、不在者投票は、
不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所において行うものとされ、その場
合、不在者投票管理者は、選挙権を有する者を立ち会わせなければならないものと
されている。立会人は、不在者投票事務の執行を監視する機関であって、不在者投
票管理者は、不在者投票事務を執行するに当たっては、右規定に従い、必ず選挙権
を有する者を一名以上立ち会わせなければならないものである。公職選挙法は、選
挙管理委員会の委員、書記等が不在者投票の立会人となることを禁止していないが、
同法及び同法施行令が、執行機関である不在者投票管理者のほかに監視機関である
立会人を置くこととして選挙の自由と公正を確保しようとしている趣旨にかんがみ
れば、選挙管理委員会の委員、書記等で立会人に選任された者が、不在者投票の立
会いをしつつ、併せて不在者投票事務の補助執行に従事していたため、立会人の監
視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあったときは、その間に
された不在者投票は、実質的には立会人を欠いたものとして、それだけで右公職選
挙法及び同法施行令の規定に違反した違法のものというべきである。そして、右違
法な不在者投票の存在は、当該地方公共団体の長の選挙における当選者と次点者の
各得票数の比較と相まって、選挙の結果に異動を及ぼすおそれのあるものといわな
ければならない。
 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、(1) 昭和
六二年六月二八日に鹿児島県大島郡a村の村長選挙(以下「本件選挙」という。)
が行われ、D及びEの両候補者間で当落が争われた結果、前者が七三七票、後者が
七三五票をそれぞれ得票し、Dが当選人と決定された、(2) 本件選挙において、
告示の日である同月二三日から同月二七日までの間に通常の不在者投票が行われた
が、そのうちa村役場庁舎二階会議室を投票記載場所として行われた不在者投票(
以下「本件不在者投票」という。)は、a村選挙管理委員会の委員長であるFが不
在者投票管理者として執行し、右委員会の委員であるGが選挙人名簿との照合、同
Hが宣誓書に記載された不在者投票事由の有無の審査、同Iが投票用紙、投票用封
筒の交付及び説明等をそれぞれ分担し、不在者投票事務を補助した、(3) 本件不
在者投票においては、右I一名が立会人に選任され、同人は、右期間中に二回右投
票記載場所を離れたほかは、同所において、右Fが不在者投票を許可した選挙人に
対して投票用紙及び投票用封筒を点検の上交付するとともに、投票の方法を説明し、
選挙人が投票の記載を終え投票用紙を投票用封筒に封入した後、右封筒に選挙人の
署名がされているかどうかを確認するという不在者投票事務の補助執行者としての
職務を行いながら、立会人として不在者投票手続に立ち会っていた、(4) 右Iが
右投票記載場所を離れていた間は、右H一名が立会人となったが、同人も、宣誓書
記載の不在者投票事由の有無の審査を行いながら、立会人として不在者投票手続に
立ち会っていた、(5) 本件不在者投票では、初日の二三日に六八名が投票したの
をはじめ、最終日の二七日までに一五八名が投票した、というのである。右事実に
よれば、本件不在者投票において、立会人である右I及び同人の不在中立会人とな
った右Hは、不在者投票の立会いをしつつ、併せて不在者投票事務の補助執行に従
事していたため、立会人の監視機関としての役割を十分に果たすことができない状
態にあったものと認めるほかないから、本件不在者投票の期間中にされた一五八票
の不在者投票は、公職選挙法四九条一項、同法施行令五六条一項、二項の規定に違
反した違法のものというべきである。そして、右一五八票は、本件選挙における当
選人と落選者との得票差二票を上回るから、右の違法は本件選挙の結果に異動を及
ぼすおそれのあるものであり、本件選挙は無効であるといわなければならない。
 右と同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の判例
は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用す
ることができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   内   恒   夫
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    四 ツ 谷       巖
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    橋   元   四 郎 平

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