弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
【認定事実】
(犯行に至る経緯)
 被告人は,生来病弱で,就労して自活していくことが困難であったことから,平
成5年ころから,東京都町田市内や神奈川県相模原市内のアパートで長女Aと同居
し,同女の収入を頼りに生活していたところ,平成14年ころ,両足が攣って全身
に激痛が走る原因不明の病気にかかり,激しい肉体的苦痛を伴う深刻な症状に苦し
められることになった上,平成15年夏ころには,呼吸がおかしくなる症状も出
て,心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症)と診断されるなどの出来事が重なり,同年8月こ
ろから,足が攣って全身に激痛が走ったときなどに,長女Aに対し,「もう,こん
な身体いらんわぁ,死にたい。」などと度々洩らすようになった。一方,長女A
も,平成12年10月ころ,重度の椎間板ヘルニアを発症し,酷い腰痛に苦しめら
れるようになったが,被
告人から上記のような愚痴を度々聞かされているうちに,自分の腰痛の苦しさもあ
って,生きていくのが辛くなり,早く楽になりたいという思いから自殺を考えるよ
うになり,平成15年9月ころ,それまで勤めていた職場を突然に退職し,平成1
6年1月ころ,インターネットで多量の睡眠薬を購入するなどの行動に出た。被告
人は,長女Aが多量の睡眠薬を購入したことを知り,また,同女から「(購入した
睡眠薬の)半分はお母さんのだからね。」と言われたことで,同女が自分と一緒に
自殺するつもりであることを知ったが,自らも激しい肉体的苦痛を伴う深刻な病気
に苦しめられていたこともあって,同女を翻意させる気になれなかったばかりか,
かえって,長女Aと一緒に逝けるという安堵感とともに,同女と一緒に自殺する決
意を固めてしまった
。こうして,被告人と長女Aとは,ともに心中する決意を固め,以後,身の回りの
荷物の整理を進め,同年6月中旬ころ,リサイクルショップに家財道具一式を売却
した上で,それまで居住していたアパートを引き払った。以後,両名は,ホテルを
転々とした末に,予め二人の死に場所と決めてあった山梨県の青木ヶ原樹海に至っ
た。
(犯罪事実)
 被告人は,平成16年7月9日ころ,山梨県南都留郡ab番地c売店北西方約2
00メートルの青木ヶ原樹海内において,長女A(当時40歳)の承諾を得て,殺
意をもって,所携のナップサックの紐を同女の頸部に巻き付けて強く締め付けるな
どし,よって,そのころ,同所において,同女を窒息死させて殺害した。
【法令の適用】
 被告人の判示所為は刑法202条後段に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択
し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項
を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用につ
いては,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないことと
する。
【量刑の理由】
 本件は,判示のとおりの経緯で,被告人が長女とともに心中を企て,長女の承諾
を得た上で同女を殺害し,その直後,自らも自殺しようとしたが被告人のみが生き
残ったという事案である。
 病気の影響で気力,体力が衰えているときに,理性的な判断をすることは相当に
困難であることを思うと,判示の経緯の中で被告人が被害者とともに心中する決意
を固めてしまった心情にはまことに惻隠の情を禁じ得ないものがあり,本件の殺人
については,被害者自身が相当に強い決意で心中の覚悟を固めていたことに疑いの
余地はないけれども,いかなる事情があったにせよ,人一人の命を奪った被告人の
責任は重いといわなければならず,同種事犯の再発を防止するためにも,被告人に
対しては,厳しい処罰態度で臨む必要がある。
 しかしながら,他方で,被告人が苦労して慈しみ育ててきた我が子を道連れにし
て自殺しようとまで思い詰めた心情には同情するべきものが多分に認められ,そこ
に利欲的な動機は一切認められないし,被害者を殺害する前後の状況からは,母親
として被害者を思う気持ちが如実にうかがわれること,被告人は,我が手で娘の命
を奪ってしまったことの罪深さに自らも苦しんでおり,本件を真摯に反省し,被害
者の冥福を心から祈っていること,被告人の実弟が遠方より被告人のために情状証
人として出廷し,社会復帰後の被告人を引き取り,被告人の更生を支えていく旨を
述べていること,その他,被告人には前科前歴がないことなど,被告人のために斟
酌するべき事情も認められる。
 そこで,これらの被告人に有利,不利な一切の事情を総合し,主文の刑を定め
て,その刑の執行を猶予し,社会生活を送る中で被害者の冥福を祈る機会を与える
こととした。
(出席した検察官佐藤方生,国選弁護人堀内寿人)
(検察官の求刑 懲役3年)
平成16年10月26日
甲府地方裁判所刑事部
裁判官   柴  田    誠

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