弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
特許庁が、昭和四七年三月二二日、同庁昭和四〇年審判第五二〇四号事件について
した審決は取消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
 原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、被告指定代理人は「原告の請求を棄
却する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求めた。
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
 原告は、昭和三九年六月一日特許庁に対し、別紙記載のように「ミルクドーナ
ツ」の片仮名文字を角ゴシツク体で左横書きにしてできている商標(以下「本願商
標」という。)について、第三〇類菓子、パンを指定商品として商標登録出願を
し、後に指定商品をドーナツと補正したが、拒絶査定を受けた。そこで、原告は、
昭和四〇年八月九日、審判の請求をし、同年審判第五二〇四号事件として審理され
たが、同四七年三月二二日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、
その謄本は、同年五月一〇日原告に送達された。
二 審決理由の要点
 本願商標は角ゴシツク体で「ミルクドーナツ」の片仮名文字を左横書きして成
り、第三〇類「菓子、パン」を指定商品として、昭和三九年六月一日登録出願がな
されたものであるが、請求人(出願人)は昭和四〇年五月一四日付手続補正書を提
出し、指定商品を「ドーナツ」と補正したものである。
 牛乳(ミルク)は脂肪、蛋白質、ビタミン等に富む栄養食品として、飲料に供さ
れるばかりでなく洋菓子等の主要な材料の一つとして広く用いられている。
 そして、ミルクキヤラメル、ミルクチヨコレート、ミルクブレツド等牛乳(ミル
ク)が多量に混入され、風味が増加されていることを表現するためミルクの文字が
普通に使用されていることも顕著な事実である。また、ドーナツは小麦粉に牛乳
(ミルク)、バター等を混ぜ合わせて、環形、円形にまるめて油で揚げ砂糖をまぶ
した洋菓子の普通名称であるばかりでなく、「ドーナツ」の製法の紹介においても
「ミルクドーナツ」の用例をもつて使用されている事実がある。
 したがつて、「ミルクドーナツ」の文字を書して成る本願商標が商品ドーナツに
使用された場合において、取引者需要者は前記の事実よりして、后半部の「ドーナ
ツ」の文字は商品の普通名称を表示したものと、前半部の「ミルク」の文字はその
材料中牛乳(ミルク)が多量に配合されて、風味が増加されていることを表現する
にすぎない文字と容易に理解し把握するに止まり、自他商品の識別機能を果たす文
字とは認識し得ないものと判断するのが、この種商品の取引の経験則に照らし相当
である。
 してみれば、本願商標は指定商品およびその品質を普通に用いられる方法をもつ
て、表示した標章のみから成る商標と認めざるを得ないから、たとえその指定商品
が「ドーナツ」と補正されたとしても、本願商標は商標法第三条第一項第三号に該
当し、その登録を拒絶すべきものである。
 なお、請求人(出願人)は、本願商標を昭和二三年以降商品ドーナツに継続使用
して、これが各デパート特選売場および鉄道弘済会を通じ全国的に取引者需要者の
間に認識されるに至つたものであるから、商標法第三条第二項の規定に該当し充分
登録要件を具有するに至つたものである旨主張する。しかしながら、提出に係る証
拠を検討しても、甲第一号証から同第二九号証までは商品宣伝用に使用したものと
は認められるが、本願商標とはその態様を異にするばかりでなく、本願商標の指定
商品「ドーナツ」の品質を具体的に表わした商品の普通名称を表示するものと認め
られるし、また甲第三一号証から同第三七号証までは件外【A】の特許権、実用新
案権の公報であり、これをもつて本願商標が広く需要者に認識されたことを立証す
る資料とは認められない。その他の証拠を総合的に判断するも、未だこの程度の証
左を以てしては取引者および需要者の間に広く認識され周知されるに至つたものと
は認め難く、かつ前記した理由の存する以上、請求人の主張は採用できない。
三 本件審決を取消すべき事由
 本件審決の理由のうち、本願商標の構成および指定商品が審決認定のとおりであ
ること、ミルク(牛乳)が広く洋菓子の材料として用いられていること、ドーナツ
は小麦粉にミルク、バター等を混ぜ合せて油で揚げ砂糖をまぶした洋菓子の普通名
称であることは争わない。しかし、審決は、次の点において違法であり取消される
べきである。
(一) 審決は、本願商標におけるミルクの文字の表わす意味を誤認した結果、本
願商標は、指定商品およびその品質を普通に用いられる方法をもつて表示した標章
のみからなる商標である旨認定したものであつて違法である。
 すなわち、前記ミルクの文字をもつて、当該商品に牛乳が多量に混入されている
ことを表現するものであるとする見解は、一般世人の認識に反して事実を誤認する
ものである。けだし、一般世人の日常の用語の中で、ミルクの文字は、或る商品に
牛乳が混入されていることを表わす意味において、または、或る商品の固有の名称
(即ち商標)の構成部分として用いられることはあつても、その物に牛乳が多量に
混入されていることを表わす意味において使用されることはない。このことは、ミ
ルクキヤラメル、ミルクチヨコレート、ミルクブレツド等の如く、ミルクの文字を
結合してなる商品の名称におけるミルクの文字についても同様であると解される。
 よつて、ミルクの文字の表わす意味について、本願商品の指定商品ドーナツに牛
乳が多量に混入され風味が増加されていることを表現するものであるとした審決の
認定は、事実を誤認するものというべきである。もつとも、審決は、ミルクの文字
は風味が増加されていることをも表現する旨説示する。しかし、ここにいう風味の
増加とは、単に牛乳の混入による牛乳それ自体がもつている風味の追加だけを意味
するものではなく、その多量の混入によつて当該商品の全体としての風味に少なか
らぬ影響を及ぼしていることをも意味するものと解すべきである。したがつて、何
れにしても、審決はミルクの文字によつて牛乳が多量に混入されていることを意味
するとするものであるから、その認定は誤りというべきである。
 また、商品ドーナツの製造には、小麦粉、砂糖、鶏卵、コンスターチ、ネリラー
ドまたは、バター、ベーキングパウダー、塩、香油、油および粉砂糖等、多種類に
亘る材料が用いられる。そして、これらの各材料は当該商品に対して、それぞれ特
有の風味を付与しているものであるから、これらの常用材料の一つだけをもつて、
商品の風味または品質および材料を規定することはできず、ひいて一般的には、こ
の材料を表わすタマゴ、バター、ミルク等の、いづれか一つだけの文字をもつて、
商品の品質または材料を表示することはできないものというべきである。
 したがつて、審決が本願商標をもつて指定商品およびその品質を普通に用いられ
る方法をもつて表示した標章のみからなる商標である旨認定したのは違法である。
(二) 審決は、本願商標の結合商標としての不可分一体性を看過し、本願商標を
その前半部と後半部に分けて把握、理解しようとする違法を犯したものである。
 本願商標は、ミルクとドーナツの各文字を結合した結合商標であり、その構成の
態様において、また、その称呼の与える語調において一体不可分的に結合されてい
るものである。そして、ミルクドーナツなる本願商標は、指定商品の取引界には存
在しないため、取引者、需要者は、この商標より格別の印象を受けるとともに、こ
れを使用した商品を直ちに他人の業務に係る同種の商品と区別することができ、よ
つて、本願商標は、自他商品の識別力を具有するに至るものである。
 商標法においても、本願商標の如く、複数の語の結合よりなる構成を有する商標
については、その識別力の有無の認定に当り、結合商標としての観点からする観
察、判断を要求しているものと解される。けだし、同法第三条第一項において、第
一号および第三号から第五号までの各規定のほか、第六号の規定を設けたのは、当
該商標が複数の語の結合よりなるものである場合においては、その結合商標として
の観点からする観察、判断をも要求する趣旨に出るものと解されるからである。と
ころが、本件審決においては、本願商標について、単にその分離的観察、判断をし
ているだけで、結合商標としての観点からの判断をしていない。これは、前記法条
を正解しないものであり、これによつて、審理不尽、事実誤認の違法を犯すに至つ
たものである。
(三) 審決は、本願商標がいまだ取引者および需要者の間に広く認識され、周知
されるに至つたものとは認め難い旨認定したが、この認定は、事実を誤認した違法
がある。
 本願商標は、原告会社の代表取締役社長【A】がドーナツを主力とする洋菓子製
造販売の個人営業をしていた昭和二三年頃ドーナツの製造、販売に当り、その商標
として創作使用し、昭和二五年八月原告会社を設立してからは、原告会社において
現在に至るまで専用使用してきた。その間、昭和三〇年頃には本願商標を付したド
ーナツの売上高は、年間七五〇〇万円に達し、本願商標は、その頃には東京都、神
奈川県を中心として既に著名商標となつた。その後も、本願商標を付したドーナツ
は数々の賞を受け、それと共に本願商標の名声を一そう不抜のものとした。また、
この声価につれて需要も上昇の一途を辿つたので、需要者の要望に応えて東京駅の
名店街その他東京都内の各デパートおよび湘南地方の各デパートなどのいわゆる特
選売場に販売店を設け購買を便利にした。また、鉄道弘済会でもこのドーナツを鉄
道直売の責任をもつて各駅の売店をつうじて販売した。一方、これと対応してラジ
オ、テレビ、新聞、東京駅構内、新宿メトロ街のウインドー、その他の媒体をつう
じて宣伝広告につとめた。その結果、本願商標は、昭和三九年頃には東京を中心に
全国的に著名となり、ミルクドーナツといえば当社を直感し、ニシキベーカリーと
聞けばミルクドーナツの商標を直感する程著名となり、さらに、引続きこの商標を
専用し盛大に使用してその著名度を高めているものである。その後、新宿の京王デ
パート、上野動物園、東急各店を加え、昭和四一年度までの総売上高一五億八五〇
〇万円に昭和四二年~四六年度の約一一億一〇〇〇万円を加えると昭和四六年度迄
の総売上高は二六億九五〇〇万円にのぼる。ドーナツについて本願商標と同一又は
類似の商標を使用するものは他に全くなく、したがつて、他の商品と紛れることは
なく、事実また取りちがえられた事例は全期間を通じ皆無である。
 以上のように、本願商標は、原告会社により商品ドーナツについて長年に亘り広
く盛大に独占して継続使用された結果、原告会社の製造販売に係るドーナツの商標
としてよく認識され、出願時には既に著名商標となり、さらに、引続きその著名度
を高めているものであつて、需要者、取引者および関係者に原告の商標として通用
しており、他人の同一業務に係る商品との間の識別性を多分に具有しているもので
ある。
第三 被告の答弁
一 原告主張の請求原因事実のうち、特許庁における手続の経緯、本願商標の構
成、本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは認めるが、本件審決を違
法とする事由は争う。
二 取消事由(一)について
 原告、はミルクの文字をもつて牛乳が多量に混入されていることを表わす意味に
使用されることはない旨主張する。しかし、ミルクの文字が使用されているミルク
キヤラメル、ミルクチヨコレートについて考えれば、ミルクの文字は、牛乳が全く
混入されていないかまたはごく少量しか混入されていないキヤラメル、チヨコレー
ト、すなわち、牛乳の風味を主とせず他の材料の風味を主とするキヤラメル、チヨ
コレートと、特に牛乳を相当量すなわち主材料として用いているキヤラメル、チヨ
コレートを区別明瞭にし、それによつて、ミルクの風味が付加されて独特の味が形
成されている菓子であることを理解させる表現であるというべきである。
 そうだとすれば、ミルクキヤラメル、ミルクチヨコレート、ミルクブレツド等牛
乳(ミルク)が多量に混入され、風味が増加されていることを表現するためにミル
クの文字が普通に使用されていることも顕著な事実であるとした審決の認定は、正
当というべきである。
三 取消事由(二)について
 ミルクは一般に牛乳または牛乳入りのものであることを表わす日本語化した外国
語の片仮名による表現であり、ドーナツは、日本語化した一種の洋菓子の名称を表
わす外国語の片仮名による表現である。してみれば、本願商標ミルクドーナツの文
字をもつて、単にドーナツを表現したものではなく、牛乳入りのドーナツを表現し
たものとした審決の判断は正当である。元来、当該商品の普通名称あるいは品質等
を表現する識別力に欠ける文字をどのように羅列しても、それによつて識別力が生
ずるようなことはありえないところである。
四 取消事由(三)について
 本願商標が原告主張のように永年使用され宣伝広告されて著名になつたかどうか
は知らない。
 本願商標は、読み易い片仮名文字を用い、きわめてわかり易い表現をもつて、使
用する商品が牛乳入りのドーナツであることを容易に理解せしめるものである。そ
のため、たとえそれが現実に商品の包装等に表示して使用されたとしても、取引
者、需要者をして、単に内容物たる商品が牛乳入りのドーナツであることを認識さ
せる表示にとどまるものであるから、一般に市販されている牛乳入りのドーナツに
対して、本願商標を付することにより、これと区別されて特定の出所に係る牛乳入
りのドーナツを表示する商標としての識別機能が生ずるものとはいえない。
 それ故、提出された証拠をもつてしても、なお、本願商標が永年使用された結
果、原告の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者間に広く認識され
るに至つたものと認めなかつた審決にはなんらの違法はない。
第四 証拠(省略)
       理   由
一 原告主張の請求原因事実のうち、特許庁における手続の経緯、本願商標の構
成、本件審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがな
い。そこで、原告主張の取消事由の有無について検討する。
二 まず、取消事由(一)、(二)についてみると、
 原告は本願商標がミルクとドーナツの各文字を結合した結合商標ではあるが両者
は一体不可分的に結合されているので結合商標としての観点から識別力の有無を判
断すべきであつて、審決のように単に分離的観察にとどまるべきではないと主張す
る。
 しかしながら、本願商標のうちドーナツの文字は指定商品の名称そのものであつ
て、自他商品の出所を識別する機能を有していない。かような場合には、その他の
文字すなわちミルクの文字をみて識別力を有するかどうかを判断せざるを得ないの
であつて、本件審決が本願商標を「ドーナツ」の文字と「ミルク」の文字とにわけ
て観察したことになんら誤りはない。
 さて、ミルクという文字は、牛乳または練乳を意味する言葉であるが、それがチ
ヨコレート、キヤラメルなどの菓子と結合して用いられる場合には、牛乳を材料と
して混入した菓子を表現するものとして用いられることはいうまでもない。そし
て、チヨコレート、キヤラメルなどの菓子には、ミルクがその材料の一として用い
られていることが通常であるから、特にミルクチヨコレート、ミルクキヤラメルと
表現された場合には、その材料のうちの一つであるミルクを表示することによつ
て、普通の品よりもミルクを材料として多量に使用し、ミルクの風味を利かした菓
子であることを表現するものとみるのが相当である。ドーナツは、小麦粉にミル
ク、バター等を混ぜ合せて油で揚げ、砂糖をまぶした洋菓子であることは、原告の
自認するところである。してみれば、「ミルクドーナツ」はその材料にミルクが多
量に使用されその風味を増加したドーナツを表現した文字であると理解されるので
あつて、この文字を商品ドーナツの商標として使用するときは、商品ドーナツの品
質を表示したものということができる。
 そして、本願商標は「ミルクドーナツ」の片仮名文字を角ゴシツク体で左横書き
にしたものであるから、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものという
ことができる。
 本件審決が本願商標は、指定商品およびその品質を普通に用いられる方法をもつ
て表示した標章のみからなる商標であるとしたのはこれと同趣旨であると考えら
れ、これを違法であるとする原告の(一)、(二)の主張は理由がない。
三 そこで取消事由(三)について判断すると、
 成立に争いない甲第三号証、同第四号証の一から一〇まで、同第五号証から第九
号証まで(第五号証および第六号証は、いずれも原本の存在についても争いがな
い。)、同第一六号証の二、三、同第一八号証および第一九号証の各一、二、同第
五八号証の二、同第五九号証および第六〇号証、同第八三号証の一、二、同第八六
号証の一から三まで、同第八七号証から第九〇号証まで、同第一〇一号証、同第一
三〇号証、同第一〇四号証および第一〇五号証の各一、二、同第一〇六号証から第
一一三号証まで、弁論の全趣旨により原告会社のドーナツ宣伝風影を撮影した写真
であることが明らかな甲第一一六号証の一から一一まで、暑中見舞はがきであるこ
とが明らかな甲第一一七号証に、証人【B】の証言および原告代表者尋問の結果を
総合すれば、以下の事実を認めることができる。
 原告会社代表者【A】は、昭和二三年東京都内で洋菓子製造をはじめ、昭和二五
年頃に原告会社を創立して以来その代表者としてドーナツの製造販売を中心に営業
を拡張してきた。原告会社の製造するドーナツは、その当初から袋か箱に入れ、こ
れに【A】の発案にかかる本願商標を付して販売し、その売上高は、昭和三〇年度
においては七五〇〇万円であり、以来その売上は毎年上昇し、昭和四七年度上半期
までの売上合計額は二四億九二〇〇万円に達した。そして、その製造したドーナツ
は同業者間においても品質優秀なものとして広く知られるに至つた。その間、原告
会社に、川崎駅前ビル店、東京駅名店街店、京橋店、日本橋高島屋店、上野店、伊
勢丹店、京王百貨店、有楽町フードセンター店、渋谷東光ストアー店、横浜高島屋
店などその店舗を拡張し、本願商標を付した原告会社の商品ドーナツをこれらの店
舗や上野、新宿を中心とした東京都内および近辺各駅の鉄道弘済会、上野動物園な
どの各売店で販売してきた。
 その間原告会社は、本願商標を付した商品ドーナツの宣伝方法として、昭和三三
年一〇月から同三五年六月まで継続して東京放送(TBS)のテレビ番組に毎週月
水金の三日間午後六時五分より一〇分まで放映の漫画劇場に本願商標を表示したコ
マーシヤルフイルムを放映した。また、昭和三三年から同三四年にかけて産経時事
新聞、産経新聞に本願商標を表示して原告会社の商品ドーナツの宣伝広告を行い、
その頃、ラジオ東京(JOKR)のラジオ番組に毎週一日一回本願商標を盛り込ん
だコマーシヤル番組を放送するなど、テレビ、新聞、ラジオを通じて継続的に相当
長期間にわたつて宣伝広告を行つたほか、次のような方法により、本願商標が取引
者及び一般需要者間に広く知れ渡るよう努力を重ねてきた。
 すなわち、宣伝ポスター、広告板による方法としては、原告会社は、昭和三三年
から同四六年一〇月にかけて継続して東京駅構内八重洲口丸ノ内口通路途中のウイ
ンド広告に、本願商標を表示した原告会社の商品ドーナツに関する広告を展示した
ほか、おそくとも昭和三九年頃より正月、お盆を中心に毎年一回から三回まで鉄道
弘済会売店の宣伝ポスターの一部として、本願商標を付した原告会社の商品ドーナ
ツの広告を国電山手線、同京浜東北線、同中央線の各車輛に掲示するなどした。
 また、その他次のような方法による宣伝広告も行われた。すなわち、原告会社
は、その代表者【A】の考案にかかるドーナツ自動製造機を使用して、昭和二九年
頃から昭和四三年頃まで東京駅名店街内において本願商標を使用した原告会社製品
ドーナツの製造実演販売を行つたほか、昭和三九年頃から同四八年頃までは伊勢丹
店においても同様な製造実演販売を行つた。また、本願商標を表示した原告会社製
ドーナツの引換券を作り、これを昭和三三年一二月頃原告会社川崎店において約三
万枚、同三四年五月頃京橋店、東京駅名店街店、日本橋高島屋店、上野店、伊勢丹
店、有楽町フードセンター店、渋谷東光ストアー店において各約二万枚づつ、同三
五年三月頃横浜高島屋店において約二万枚を顧客に配布し広告宣伝につとめるとと
もに、これによつて、昭和三三年頃から同三六年頃までの間に都内外の顧客を対象
に顧客名簿を作成し、この名簿を利用してさらに本願商標の広告宣伝につとめた。
また昭和三三年から同三六年にかけては、原告会社は、本願商標の記載されたぬり
絵の台紙を一般顧客に配布し、このぬり絵作品を募集し、応募作品の審査表彰を行
つた。また、昭和三三年から同三五年まで、ミスユニバース、ミスワールド日本代
表者選出大会が行われるに当つて主催者の産経新聞社とスポンサー契約を結び、サ
イン会を開催して顧客を集め、ミスユニバース、ミスワールド日本代表に選ばれた
者の写真を印刷し、原告会社の商品ドーナツの広告に本願商標を付した暑中見舞用
ハガキを顧客に配布するなどの方法をとつた。
 その他、昭和三三年頃には、原告会社は顧客に対して本願商標を付した原告会社
の商品ドーナツの広告を兼ねた漫画入りクーポン券を多数配布するなどした。
 当時市場には他に本願商標と同じ標章を使用した商品は存在しなかつた事情もあ
つて、以上述べたように、原告会社の製造するドーナツの業界における好評判と原
告会社の多種多様な手段を用いた宣伝広告の結果、おそくとも本件審決がなされた
昭和四七年三月頃までには、本願商標は特定の業者が製造するドーナツを示すもの
として、東京都を中心に全国にわたつて取引者および一般需要者間に広く認識され
るに至つた。
四 してみれば、これと異なる認定の本件審決は事実を誤認するものであつて違法
であるといわざるを得ない。
 よつて本件審決の取消を求める原告の本訴請求は正当であるから認容し、行政事
件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 古関敏正 瀧川叡一 宇野栄一郎)
別紙
<11851-001>

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