弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     被告人A、同Bの当審における未決勾留日数中各百日をいずれも本刑に
算入する。
     当審における訴訟費用(国選弁護人飯田信一に支給した分)は被告人C
の負担とする。
         理    由
 被告人Cの弁護人飯田信一、被告人Aの弁護人角田俊次郎、同西川金矢、被告人
Bの弁護人馬場照男及び被告人Cの各控訴の趣意は、それぞれ記録編綴の控訴趣意
書記載のとおりであるから茲にこれを引用する。
 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
 一、 角田弁護人の論旨第一点について
 原判決は被告人Aに関する判示第三の犯罪事実(別表第三犯罪表)中その7・8
の譲渡年月日を昭和二八年四月二〇日頃と認定判示していることは所論のとおりで
ある。そして右に対する引用証拠を調べてみると、この点の該当証拠としてのDの
検察官に対する昭和二八年六月七日付供述調書謄本には「四月中旬」とあり、また
Eの検察官に対する同年五月二二日付(昭和二七年五月二二日とあるのは昭和二八
年の誤記と認む)検察官に対する供述調書謄本には「四月一七・八日頃」とあり、
更にFの検察官に対する供述調書には「四月下旬頃」とあつて他に「四月二〇日
頃」と記載のある証拠は見当らないことも所論のとおりである。しかし「四月中
旬」と記載のある証拠に基づいて「四月二〇日頃」と認定判示しても必ずしも所論
のように事実誤認等の違法があるということはできないのみならず、仮りに誤認が
あり右のいずれかの証拠に従つてその日時を確定すべきものとしても、本件の適用
法令である昭和二八年法律第一四号改正麻薬取締法は所論も指摘するように昭和二
八年四月一日から施行されたのであるから、右の誤認は結局判決に影響を及ぼさな
いものというべく、従つて論旨は理由がない。
 二、 馬場弁護人の論旨第二、三点について
 しかし、原判決挙示の証拠によると、被告人BはGから所論原判示第四の(ロ)
の(3)の麻薬を判示のように代金二万一千巴(一袋七千円の割合)で買受けた後
更にこれを一袋につき金三百円の利益を得て他に売却していることが認められる
し、その他前示の証拠に徴するときは、この分についても営利の目的があつたと認
めるに十分であつて所論のような事実の誤認は認められない。又同第四の(ロ)の
(2)の譲渡の相手方は氏名不詳の外国人船員であるため取調べが為されていない
けれども、これに対しては被告人の自白の外に原判決の挙示するように多数の証拠
(情況証拠)がその補強証拠となつているものであつてこれにより、右の自白の真
実性は十分保障し得られるところである。
 従つて右は何等所論のように自白だけで断罪したものではない。論旨はいずれも
理由がない。
 三、 被告人Cの論旨中営利目的の点に関する事実誤認の主張について
 しかし、原判決挙示の証拠によれば被告人の判示所為はいずれも利益を得る目的
即ち営利の目的を以てしたものであることを認めるに十分であつて、記録を調査す
るも右の認定に誤があるとは認められない。論旨は理由がない。
 四、 西川弁護人の論旨第一点、角田弁護人の同第二点、馬場弁護人の同第一点
及び被告人Cの論旨中常習の点に関する事実誤認の論旨について
 各論旨はいずれも本件行為は常習としてしたものではないと主張する。しかし反
覆して麻薬取締法第一二条第一項(旧法第四条第三号)の違反行為をする人格傾向
のあるものは同法第六七条(旧法第五七条の四)の麻薬常習者に当るものと解すべ
く、その反覆は単一意思の発動に基ずくものであると個々の意思に出たものである
とを問わないし、及必ずしもこれを以て営業とし或は同種の前科を有することも必
要としない。そして反覆累行された判示所為自体の罪質、態様、回数、数量等によ
りその常習性を認定しても敢て妨げないと<要旨>ころである。そして本件は、被告
人等三名は共謀の上営利の目的で原判示第一記載のように四回に亘り麻薬
(粉末)合計約一二七五瓦を製造した外、営利の目的で被告人Cは同第二の(ロ)
記載のように四回に亘り麻薬合計約二一〇瓦を譲渡又譲受け、被告人Aは同第三記
載のように八回に亘り麻薬合計約四一〇瓦を譲渡し、被告人Bは同第四記載のよう
に六回に亘り麻薬合計約二六五瓦を譲渡又は譲受けた外麻薬約四二五瓦を隠匿所持
していたものであつて、被告人A及びBは前科はないけれども(被告人Cは麻薬犯
罪の前科二犯がある)反覆累行された右判示所為自体の罪質、態様、回数、数量等
からもその常習性は肯認し得られるところであるのみならず、更にこれと原判決の
掲げる常習の点の認定証拠とを併せ考察すれば右は一層明白なところであるから、
原判決が本件を常習としてした者と認め、被告人Aに対しては同法第六七条、同
C・Bの両名に対しては旧法第五七条の四を各適用処断したのは相当であつて所論
のような事実誤認ないし実験則又は採証法則違反、法令適用の誤等はない。論旨は
いずれも理由がない。
 五、 飯田弁護人の論旨、角田弁護人の論旨第三点西川弁護人の論旨第二点、馬
場弁護人の論旨第四点及び被吉人Cの論旨中量刑不当の主張について
 記録に現われた事実により諸般の情状を精査し所論を検討するに、麻薬の害毒の
恐るべきことについては今更いうまでもないところであるが、本件は被告人等が巨
利を得んとして判示のように莫大の量に上る麻薬を密造し、且つ麻薬の密売買をし
たものであつて、その製造及び取引数量の多量に上つている点並びにその規模の大
なる点等において犯情極めて重いものがあるといわねばならないのである。本件は
所論の被告人に有利な事情を参酌しても原判決の科刑はいずれも相当であつて不当
に重過ぎるものとは認められない。論旨はいずれも理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三九六条第一八一条第一項刑法第二一条に各従い主文のとお
り判決する。
 (裁判長判事 柳田躬則 判事 尾坂貞治 判事 石見勝四)

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