弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中判示第一及び第二の事実に関する部分を破棄する。
     右事実につき被告人を免訴する。
     原判決中判示第三の事実に関する部分に対する上告を棄却する。
         理    由
 弁護人鍜治利一、同山村利宰平の上告趣意は、憲法違反をいう部分もあるけれど
も、その実質は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らな
い。
 しかし、職権で調査をするに、原判決は同一の婦女に関する労働基準法(以下労
基法という)六条、一一八条の罪と職業安定法(以下職安法という)六三条二号の
罪とは、刑法五四条一項前段の一個の行為にして二個の罪名に触れる場合に当るも
のと解すべきではないとの見解に基き、これと反対の見解の下に、原判示第一、第
二の罪につき免訴、第三の罪につき有罪を言渡した第一審判決を全部破棄したもの
である。けれども、労基法六条の規定は「何人も法律に基いて許される場合の外、
業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」というのであり、職安法六
三条二号の規定は「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介
労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」は、これ
を所定の懲役又は罰金に処するというのであつて、両者はその構成要件の中核をな
す他人の就業への介入という部分において重り合うものであるから、一個の行為で
あつて両者に該当する場合のあり得ることを否定することはできない。そうして、
これを本件について見ると、原判示第一、第二の各所為はいずれも、被告人が法定
の除外事由なくして、業として同一の婦女を、公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫
婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫をさせることを業としている者に、接客婦と
して就業を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たというので
ある。従つてそれが労基法六条、一一八条及び職安法六三条二号に該当することは
明白であるが、その所為は、これを社会的事実として観察するときは、一個の行為
と認められるのであつて、刑法五四条一項前段の解釈としても、一個の行為にして
労基法違反と職安法違反との二個の罪名に触れる場合に当るものと認めるのが相当
である。次に記録によれば、被告人は第一審判決判示の如く、昭和二八年一一月三
〇日発布同年一二月二二日確定の略式命令により職安法六三条二号の罪につき有罪
として処断されたのであるが、その略式命令認定の所為中(一)及び(三)の所為
については、その都度紹介手数料として金員を受領し利得をしたものであり、かつ
その所為を反覆継続の意思を以て業としてしたものと認められるから、その所為は、
原判示第一及び第二の所為について先に説明したと同じ理由によつて、一個の行為
であつて同時に職安法六三条二号の罪と労基法六条、一一八条の罪とに該当するも
のと認めるのが相当である。そうして右の労基法違反の罪と原判示第一及び第二の
労基法違反の罪とは一個の集合犯(営業犯)として単一の犯罪を構成するものと認
められるから、この一個の労基法違反の罪を媒介として前記略式命令認定の(一)
及び(三)の職安法違反の罪と原判示第一、第二の各職安法違反の罪ともまた一罪
の関係に立ち、従つて右略式命令の既判力は原判示第一、第二の事実全部に及ぶも
のといわなければならない。然らば、労基法六条、一一八条の罪と職安法六三条二
号の罪とが刑法五四条一項前段の一所為数法の関係に立つことを否定する見解に基
き、第一審判決を破棄し、原判示第一及び第二の事実につき有罪の言渡をした原判
決には法令の解釈適用を誤つた違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが
明らかであつて、原判決中この部分はこれを破棄しなければ著しく正義に反すると
認めなければならない。
 よつて、原判決中判示第一及び第二の事実につき有罪の言渡をした部分につき刑
訴四一一条一号、四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条一号を適用して、
これを破棄し、右事実につき被告人を免訴し、原判決中判示第三の事実に関する部
分は、前記略式命令確定後の犯罪にかかわるものであつて、右免訴の部分と可分の
独立した裁判であり、この部分については同四一一条を適用すべきものとは認めら
れないから、これに対する上告は同四一四条、三九六条により棄却することとし裁
判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 神山欣治公判出席
  昭和三三年五月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛