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平成30年1月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
本訴:平成28年(ワ)第18032号特許を受ける権利帰属確認請求事件
反訴:平成29年(ワ)第32123号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成29年12月8日
判決5
本訴原告兼反訴被告(以下「原告」という。)

同訴訟代理人弁護士河瀬季
本訴被告兼反訴原告(以下「被告」という。)
デ・ファクト・スタンダード合同会社
同訴訟代理人弁護士拾井美香
主文
1原告の本訴請求をいずれも棄却する。15
2被告の反訴請求を棄却する。
3訴訟費用は,本訴反訴ともに,これを2分し,その1を原告の負担とし,そ
の余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求20
1本訴請求
⑴別紙1発明目録記載の発明について,原告が特許を受ける権利を有することを
確認する。
⑵被告は,原告に対し,21万6000円及びこれに対する平成28年5月30
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。25
2反訴請求
原告は,被告に対し,81万5136円及びこれに対する平成29年9月29日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,原告が被告に対し,本訴請求として,被告がした特許出願(特願20155
-227937号。以下「本件出願」という。)がいわゆる冒認出願に当たると主張し
て,原告が別紙1発明目録記載の発明(本件出願の願書に添付した特許請求の範囲記
載の各発明。以下,これらをまとめて,「本件発明」という。)について特許を受ける
権利を有することの確認を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償金21万60
00円(本訴請求の訴訟提起に係る弁護士費用相当額)及びこれに対する平成28年10
5月30日(不法行為後の日であり,委任契約締結の日)から支払済みまでの民法所
定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているのに対し,被告が原告に対し,
反訴請求として,原告が本件発明が未完成のまま研究開発に関する業務を中止したと
して,不法行為又は債務不履行(選択的併合の関係にある。)に基づく損害賠償金81
万5136円(研究開発資金32万2000円,先行技術調査費用3万2400円,15
特許出願費用38万6736円及び弁護士費用相当額7万4000円の合計額)及び
これに対する平成29年9月29日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民
法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる事実。なお,書証番号は,特記しない限り枝番の記載を省略する。)20
⑴被告は,企業に対する事業戦略,技術戦略に関わる経営コンサルティング業務
等を目的とする合同会社である。B(以下「B」という。)は,その代表社員である。
⑵原告は,本件発明に関する研究開発を行っていた者であり,本件発明の発明者
である(ただし,被告との契約内容及び本件発明の完成時期については争いがある。)。
⑶被告は,平成27年11月20日,本件出願(特願2015-227937号)25
をした。同出願において,発明者はB及び原告,出願人は被告とされている。(甲1
9,乙32)
⑷原告は,平成27年12月24日,本件発明とほぼ同一の発明について,特許
出願(特願2015-250864号)をした。また,アール・エフ・アーキテクチ
ャ株式会社(以下「RF社」という。)は,平成28年12月15日,原告がした上記
特許出願に基づく優先権を主張し,本件発明のうち請求項1ないし11の発明とほぼ5
同一の発明について,発明者を原告として,特許協力条約に基づく国際出願(PCT
/JP2016/087454)を行ったところ,同出願の指定国には我が国が含ま
れている。(甲3,24,35)
3争点
⑴被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利を承継したか(争点1。10
本訴請求関係)
ア被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利の譲渡を受けたか(争点
1⑴)
イ被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利を雇用契約に基づき予
約承継したか(争点1⑵)15
⑵被告による本件出願が不法行為を構成するか(争点2。本訴請求関係)
⑶原告の行為が債務不履行又は不法行為を構成するか(争点3。反訴請求関係)
4争点に対する当事者の主張
⑴争点1(被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利を承継したか)
について20
ア争点1⑴(被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利の譲渡を受け
たか)について
【被告の主張】
原告は,当初から本件発明について被告が特許出願することを承諾の上で研究開発
を行っており,被告はそれに対して資金提供を行ってきた。そして,原告は,本件出25
願の際,出願に係る事務を担当していたみなとみらい特許事務所(以下「本件特許事
務所」という。)から,出願人を被告とする願書及び添付書類(明細書,特許請求の範
囲,要約書及び図面の案(以下「願書案」という。)の確認を求められたところ,それ
を了承して出願の指示を行った。したがって,被告は原告から本件発明についての特
許を受ける権利の譲渡を受け,本件出願を行ったものである。
【原告の主張】5
原告が本件発明に関する研究開発を行うに当たり,被告を出願人として特許出願を
行うとの前提はなく,被告から資金提供も受けていない。原告と被告との間の権利関
係は,事後的に協議する予定であった。原告は,本件出願の際,願書案を確認して出
願の指示を行ったが,特許法に関して疎く,技術的な側面から明細書の詳細の確認を
行ったのみであり,出願人等に関する部分は詳しく見ていない。したがって,原告は10
被告に対して,本件発明についての特許を受ける権利を譲渡しておらず,原告が特許
を受ける権利を有している。
イ争点1⑵(被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利を雇用契約に
基づき予約承継したか)について
【被告の主張】15
原告と被告との間では平成27年6月頃に雇用契約が締結されたところ,同契約に
係る雇用契約書(乙31)の付則において,従業員等及び役員等は,従業員等ないし
役員等にあった期間とそれ以降の期間に,自身の発明について発明に至った時,特許
を受ける権利を会社に譲渡する旨定められている。そして,本件発明が完成したのは
平成27年10月下旬又は同年11月上旬であるから,被告は,上記規定に基づいて,20
原告から本件発明についての特許を受ける権利を予約承継したものである。
【原告の主張】
本件発明に関する原告と被告との間の契約関係は,一種の業務提携契約であり,雇
用契約ではない。被告が指摘する雇用契約書(乙31)は偽造又は変造されたもので
あるから,原告と被告との間で同契約書付則に規定された予約承継規定は適用されな25
い。
また,仮に,原告につき上記予約承継規定が適用され得るとしても,本件発明は雇
用契約が締結されたとする平成27年6月頃以前である同年初頭に既に完成してい
たから,上記予約承継規定によっても特許を受ける権利は予約承継されない。
⑵争点2(被告による本件出願が不法行為を構成するか)について
【原告の主張】5
本件発明について特許を受ける権利は,発明者である原告に帰属する(争点1につ
いて主張したとおり,被告は原告から特許を受ける権利を承継していない。)ところ,
被告は,あえて本件出願をしたのであるから,被告の行為には違法性があり,また,
被告には故意又は過失がある。
原告は,被告による上記冒認出願により,本訴の提起を余儀なくされ,本訴請求の10
訴訟提起に係る弁護士費用相当額21万6000円の損害を被った。
したがって,原告は,被告に対し,不法行為による損害賠償金21万6000円及
びこれに対する平成28年5月30日(不法行為後の日であり,委任契約締結の日)
から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
【被告の主張】15
原告の主張は,争う。
本件発明について特許を受ける権利は,被告に帰属する(争点1について主張した
とおり,被告は原告から特許を受ける権利を承継した。)から,被告による本件出願
は,原告に対する不法行為を構成しない。
⑶争点3(原告の行為が債務不履行又は不法行為を構成するか)について20
【被告の主張】
原告と被告は,平成27年6月頃,原告が被告の最高技術責任者(CTO)として
本件発明について研究開発を進め,本件発明を完成させる旨の契約(以下「本件研究
開発契約」という。)を締結した。被告はそれについて資金提供を行い,本件出願に関
し,先行技術調査費用や出願費用も負担した。しかるに,原告は,何ら正当な理由な25
く本件発明が未完成のまま上記研究開発に関する業務を中止した。これは,本件研究
開発契約の債務不履行に当たる。
また,原告は,願書案など本件出願に係る書類(以下「出願書類等」という。)を流
用して,本件発明について自己又はRF社名義で特許出願を行っているのであるから,
自己又はRF社名義で特許出願を行うために被告を欺罔して研究開発資金や特許出
願費用を被告に負担させた上,それを流用して特許出願を行ったものであって,上記5
研究開発費用,先行技術調査結果及び出願書類等の詐取として不法行為を構成する。
したがって,被告は,原告に対し,債務不履行又は不法行為による損害賠償金81
万5136円(研究開発資金32万2000円,先行技術調査費用3万2400円,
特許出願費用38万6736円及び弁護士費用相当額7万4000円の合計額)及び
これに対する平成29年9月29日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法10
所定年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
【原告の主張】
被告の主張は,否認し又は争う。
そもそも,本件発明は平成27年6月頃以前である同年初頭に既に完成していた。
また,原告と被告は,本件発明を前提とした事業化について,原告が本件発明に関す15
る技術のノウハウや役務を提供し,被告が費用等を提供するという一種の業務提携契
約を締結していた。したがって,原告と被告において,本件発明について研究開発を
進め,本件発明を完成させる旨の契約(本件研究開発契約)は締結されていないので
あり,同契約を前提とする債務不履行は成立せず,詐欺の不法行為も成立しない。
第3当裁判所の判断20
1認定事実
前記前提事実,証拠(後掲各証拠のほか,甲3,36,乙42,原告本人及び被
告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる(ただし,甲
3,36,乙42,原告本人及び被告代表者については,下記認定に反する部分を
除く。)。25
⑴被告の代表社員であるBは,かねてから技術者を探していたところ,平成27
年6月15日,原告と知り合った(甲20)。
⑵原告は,そのころから平成27年9月30日頃までの間,被告の業務としてバ
ッテリー長寿命化システム開発に関する業務を行った(甲21,27ないし30)。
⑶原告は従前から本件発明について研究してきたところ,その研究開発を進める
資金がない状態であった。原告は,当初,本件発明について軍事用としての研究開発5
を考えていたが,遅くとも平成27年9月ころには,原告と被告は,本件発明につい
て携帯電話端末等の民生用の技術として協力して研究開発を進めていく旨合意し,そ
の研究成果を特許出願するとともに,NEDO(国際研究開発法人新エネルギー・産
業技術総合開発機構)の公募に応募し,補助金を受給できるように業務を遂行するこ
ととした。10
原告は,同月中旬ころから本件発明を携帯電話端末等に利用するための基板の試作
等の研究開発を進め,被告はそれについて必要な資金提供を行った(乙1)。
⑷平成27年10月中旬ころ,被告は,本件発明について特許出願するべく,被
告の費用で本件特許事務所に対して先行技術調査を依頼した(乙2)。
同事務所での先行技術調査の結果,障害となる先行技術は発見されなかったため,15
被告は,同事務所に出願書類等の作成を依頼した。出願書類等の作成に当たっては,
原告は,被告の担当者として,同事務所との対応に当たった。(乙3ないし7)
原告は,同年11月16日,同事務所からBに送付されてきた明細書案について,
内容を確認した上でコメントを同事務所に送付するようにBに依頼した(乙12)。
同月18日,同事務所からBに本件出願についての願書案(出願人が被告とされて20
いるもの)及び質問事項が送付されて来たため,Bはこれを原告に転送し,確認を求
めた(乙13)。これに対し,原告は,内容を確認するとともに,同事務所からの質問
に対して回答した(乙14)。その後も,原告は,同事務所からの質問についても回答
したり,願書案について確認をするなどした。(乙15ないし20。原告の申出に係る
書証である甲19も作成途中の願書案である(明細書【0118】参照)。)。25
同月20日,同事務所からB及び原告に対して願書案の最終版が送付されたところ,
Bが飛行機に搭乗中であって確認できなかったため,原告がそれを確認し,出願を依
頼した(乙21ないし24)。
⑸被告は,平成27年11月20日,本件発明に係る特許出願(本件出願)をし
た。同出願において,発明者はB及び原告,出願人は被告とされており,同出願に必
要な費用等は被告が負担した。(乙32,41)5
⑹被告は,平成27年10月21日,本件発明に係る事業について,NEDOの
公募に応募し,原告とBはそのための作業を行い,同年12月ころから,NEDOの
担当者との面談が開始された(甲9,10,11)。
原告は,同年11月26日,Bに対し,他社に対する業務を優先するため,本件発
明に係る事業に時間を割くことができない旨や技術内容は全て被告に帰属する旨を10
述べた。Bは,原告に対してNEDOとの面談に同席を求めるなどして,NEDOの
審査についての協力を求めたが,原告は,NEDOから補助金を得た上での事業の展
開は成功が見込めないなどとしてそれに消極的姿勢を示し,むしろ,他の研究所から
小さい仕事を受け,そこの技術者との信頼関係を築いた後に本件発明についての共同
開発を提案すべきではないかとの意見を述べた。それに対し,Bは,NEDOの審査15
が進んでいることから,事業内容を変更できない旨伝えたが,原告はこれに協力せず,
結局,被告はNEDOへの応募を断念した。(乙25ないし30,35)
⑺原告は,平成27年12月24日,本件発明とほぼ同一の発明について,特許
出願(特願2015-250864号)をした。また,RF社は,平成28年12月
15日,原告がした上記特許出願に基づく優先権を主張し,本件発明のうち請求項120
ないし11の発明とほぼ同一の発明について,発明者を原告として,特許協力条約に
基づく国際出願(PCT/JP2016/087454)を行ったところ,同出願の
指定国には我が国が含まれている。(甲24,35)
2争点1(被告は原告から本件発明についての特許を受ける権利を承継したか)
及び争点2(被告による本件出願が不法行為を構成するか)について25
⑴前記認定のとおり,本件発明については,原告が従前から研究してきたものの,
自身にはその研究開発を進めていく資金がなかったため,Bの提案により,被告の資
金提供の下で研究開発を行ったものであり,そのなかで本件出願に至っていること,
本件出願の費用も被告が負担したこと,本件出願に当たっては,当初から出願人が被
告とされており,原告は,被告の担当者としてその願書案を何度も確認してコメント
を送付したり,本件特許事務所からの質問に回答していること,本件特許事務所から5
の最終の願書案の確認依頼についても,原告がBに代わって確認し,出願を依頼した
ことなどが認められる。
このような本件出願に係る出願経過からすると,遅くとも本件出願時までには,被
告は原告から黙示的に本件発明について我が国で特許を受ける権利の譲渡を受け,本
件出願を行ったと認められる。10
⑵これに対し,原告は,原告と被告との間の権利関係は,事後的に協議する予定
であった旨主張するが,上記の出願経過からすれば,原告が被告に対して本件発明に
ついての特許を受ける権利を譲渡したことは優に認められ,他方,事後的に協議する
予定であったとする原告と被告との間の合意をうかがわせる証拠は見当たらないか
ら,原告の主張は採用できない。また,原告は,特許法に関して疎く,技術的な側面15
から明細書の詳細の確認を行ったのみであり,出願人等に関する部分は詳しく見てい
ない旨主張するが,出願人が誰かは特許法について特段の知識がなくとも容易に理解
できる事柄であるから,およそ採用の限りではない。
⑶したがって,前記説示のとおり,被告は原告から本件発明についての特許を受
ける権利の譲渡を受け,本件出願を行ったと認められるのであるから,本訴請求のう20
ち,原告が特許を受ける権利を有することの確認請求は理由がない。また,被告によ
る本件出願行為が不法行為を構成することもないから,本訴請求のうち,不法行為に
基づく損害賠償請求も理由がない。よって,原告の本訴請求はいずれも理由がないこ
ととなる。
3争点3(原告の行為が債務不履行又は不法行為を構成するか)について25
⑴前記認定のとおり,原告と被告は,遅くとも平成27年9月ころには,本件発
明について協力して研究開発を進めていく旨合意し,その研究成果を特許出願すると
ともに,NEDOの公募に応募し,補助金を受給できるように業務を遂行することを
合意したものと認められる。しかしながら,その合意内容からは当事者双方が負うべ
き法的義務の内容はおよそ明確とは言い難いから,結局のところ,当事者双方は,互
いに協力関係を維持している限度において,上記合意の趣旨に従った協力をすべき義5
務を負うにとどまるというべきである。そして,特許出願については,特許を受ける
権利が原告から被告に譲渡された上で本件出願に至っており,上記合意に沿った一定
の成果が得られたものといえる。他方,NEDOへの応募については結果として断念
することとなったものであるが,前記認定のとおり,同応募については当初から原告
において消極的姿勢が示されていたものであるから,このように当事者間において協10
力関係が維持できなくなった場合においてまで,原告において上記合意に拘束されて
NEDOへの応募に協力すべき義務があったとは認められない。よって,原告がNE
DOへの応募について消極的姿勢をとったことでNEDOへの応募を断念すること
になり,本件発明に係る研究開発が中途で終了したことが債務不履行を構成するとは
いえない。15
これに対し,被告は,原告が本件発明について研究開発を進め,本件発明を完成さ
せる旨の契約を締結したと主張するが,本件発明の完成といってもその程度や段階が
様々あるのであるから,いかなる程度までに研究開発を行えば本件発明が完成するこ
とになるのか不明というほかなく,また,一般に発明が完成するか否かは研究開発を
行ってみなければ分からない事柄であるから,研究開発に当たって被告が主張するよ20
うな本件発明を完成させる法的義務を原告が負っていたとは認め難いというべきで
ある(なお,乙35には,原告が自腹で開発を完了させる旨述べている記載がある〔な
お,同記載につき「開発とは,携帯電話・基地局の模擬装置が2016年6月までに
完成していることを指します」との注釈はあるが,本件発明との関係は明らかでな
い。〕が,この記載だけから原告が本件発明を完成させる法的義務を負うとは認めら25
れない。)。
⑵また,前記認定のとおり,本件発明に係る特許を受ける権利が原告から被告に
譲渡された上で本件出願に至っていることからすれば,本件出願に必要とされたと被
告が主張する研究開発費用,先行技術調査結果や出願書類等を原告が詐取したと評価
できないことは明らかであって,被告主張の不法行為が成立する余地はない。
⑶したがって,被告の原告に対する債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償請5
求はいずれも理由がない。
第4結論
以上によれば,原告の本訴請求及び被告の反訴請求は,その余の点を判断するまで
もなく,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
嶋末和秀15
裁判官
伊藤清隆20
裁判官
天野研司25
(別紙1)
発明目録
発明の名称位相同期回路,RFフロントエンド回路,無線送受信回路,携帯
型無線通信端末装置5
整理番号P00643
出願番号特願2015-227937
特許請求の範囲別紙2「特許請求の範囲」のとおり
(別紙2)
特許請求の範囲
【請求項1】
発振器の出力信号の周波数と,予め定められた目標周波数との誤差を補正する位5
相同期回路であって,
前記出力信号のアナログ-デジタル変換を行うADCと,
基準周波数信号を出力する基準周波数出力手段と,
アナログ-デジタル変換された前記出力信号と,前記基準周波数信号の入力を受
け,前記出力信号の周波数と前記目標周波数との誤差を算出する誤差周波数検出手10
段と,
前記誤差に基づいて,誤差補正用信号を生成する補正用信号生成手段と,
前記周波数補正信号のデジタル-アナログ変換を行うDACと,
前記出力信号とデジタル-アナログ変換された前記誤差補正用信号との乗算を行
う乗算器と,を備えることを特徴とする,位相同期回路。15
【請求項2】
前記出力信号として,SAW発振器の出力信号を用いることを特徴とする,請求
項1に記載の位相同期回路。
【請求項3】
アンテナによって受信した受信信号のベースバンド入力信号への変換及びベース20
バンド出力信号の前記アンテナによって送信する送信信号への変換を行うRFフロ
ントエンド回路であって,
ローカル発振器と,
前記ローカル発振器の出力信号の位相同期を行う位相同期回路と,
前記受信信号と前記位相同期回路の出力信号とを乗算し,前記ベースバンド入力25
信号を出力する第1の乗算器と,
前記ベースバンド出力信号と前記位相同期回路の出力信号とを乗算し,前記送信
信号を出力する第2の乗算器と,を備え,
前記位相同期回路が,
前記ローカル発振器の出力信号のアナログ-デジタル変換を行うADCと,
基準周波数信号を出力する基準周波数出力手段と,5
アナログ-デジタル変換された前記ローカル発振器の出力信号と前記基準周波
数信号の入力を受け,前記ローカル発振器の出力信号の周波数と予め定められた目
標周波数との誤差を算出する誤差周波数検出手段と,
前記誤差に基づいて,周波数補正信号を生成する補正用信号生成手段と,
前記周波数補正信号のデジタル-アナログ変換を行うDACと,10
前記ローカル発振器の出力信号とデジタル-アナログ変換された前記周波数補
正信号との乗算を行う乗算器と,を有することを特徴とする,RFフロントエンド
回路。
【請求項4】
前記ローカル発振器がSAW発振器であることを特徴とする,請求項3に記載の15
RFフロントエンド回路。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のRFフロントエンド回路を備えることを特徴とす
る,携帯型無線通信端末装置。
【請求項6】20
アンテナによって受信した受信信号の入力データへの変換及び出力データの前記
アンテナから送信する送信信号への変換を行う無線送受信回路であって,
ローカル発振器と,
前記ローカル発振器の出力信号のアナログ-デジタル変換を行う第1のADCと,
基準周波数信号を出力する基準周波数出力手段と,25
アナログ-デジタル変換された前記ローカル発振器の出力信号と前記基準周波数
信号との入力を受け,前記ローカル発振器の出力信号の周波数と予め定められた目
標周波数との誤差を算出する誤差周波数検出手段と,
前記誤差に基づいて,誤差補正用信号を生成する補正用信号生成手段と,
前記ローカル発振器の出力信号と前記受信信号との乗算を行い,ベースバンド入5
力信号を生成する第1の乗算器と,
前記ベースバンド入力信号のアナログ-デジタル変換を行う第2のADCと,
アナログ-デジタル変換された前記ベースバンド入力信号と前記誤差補正用信号
を乗算する第2の乗算器と,
前記第2の乗算器の出力信号の復調を行い,前記出力データを出力する復調手段10
と,
前記出力データの変調を行う変調手段と,
前記変調手段の出力信号と前記誤差補正用信号を乗算し,ベースバンド出力信号
を出力する第3の乗算器と,
前記ベースバンド出力信号のデジタル-アナログ変換を行うDACと,15
デジタル-アナログ変換された前記ベースバンド出力信号と前記ローカル発振器
の出力信号との乗算を行い,送信信号を生成する第4の乗算器と,を備えることを
特徴とする,無線送受信回路。
【請求項7】
前記ローカル発振器がSAW発振器であることを特徴とする,請求項6に記載の20
無線送受信回路。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の無線送受信回路を備えることを特徴とする,携帯
型無線通信端末装置。
【請求項9】25
第1のアンテナによって受信する第1の受信信号と第2のアンテナによって受信
する第2の受信信号の入力データへの変換,及び出力データの前記第1のアンテナ
から送信する第1の送信信号と前記第2のアンテナから送信する第2の送信信号へ
の変換を行う無線送受信回路であって,
ローカル発振器と,5
前記ローカル発振器の出力信号のアナログ-デジタル変換を行う第1のADCと,
基準周波数信号を出力する基準周波数出力手段と,
アナログ-デジタル変換された前記ローカル発振器の出力信号と前記基準周波数
信号との入力を受け,前記ローカル発振器の出力信号の周波数と予め定められた目
標周波数との誤差を算出する誤差周波数検出手段と,10
前記誤差に基づいて,誤差補正用信号を生成する補正用信号生成手段と,
前記ローカル発振器の出力信号と前記第1の受信信号との乗算を行い,第1のベ
ースバンド入力信号を生成する第1の乗算器と,
前記ローカル発振器の出力信号と前記第2の受信信号との乗算を行い,第2のベ
ースバンド入力信号を生成する第2の乗算器と,15
前記第1のベースバンド入力信号のアナログ-デジタル変換を行う第2のADC
と,
前記第2のベースバンド入力信号のアナログ-デジタル変換を行う第3のADC
と,
アナログ-デジタル変換された前記第1のベースバンド入力信号と前記誤差補正20
用信号を乗算する第3の乗算器と,
アナログ-デジタル変換された前記第2のベースバンド入力信号と前記誤差補正
用信号を乗算する第4の乗算器と,
前記第3の乗算器の出力信号の復調を行い,前記第1の復調済データを出力する
第1の復調手段と,25
前記第4の乗算器の出力信号の復調を行い,前記第2の復調済データを出力する
第2の復調手段と,
前記第1の復調済データと前記第2の復調済データとを統合し,前記出力データ
を生成するデータ統合手段と,
前記出力データを第1の変調対象データと第2の変調対象データとに分割するデ5
ータ分割手段と,
前記第1の変調対象データの変調を行う第1の変調手段と,
前記第2の変調対象データの変調を行う第2の変調手段と,
前記第1の変調手段の出力信号と前記誤差補正用信号を乗算し,第1のベースバ
ンド出力信号を出力する第5の乗算器と,10
前記第2の変調手段の出力信号と前記誤差補正用信号を乗算し,第2のベースバ
ンド出力信号を出力する第6の乗算器と,
前記第1のベースバンド出力信号のデジタル-アナログ変換を行う第1のDAC
と,
前記第2のベースバンド出力信号のデジタル-アナログ変換を行う第2のDAC15
と,
デジタル-アナログ変換された前記第1のベースバンド出力信号と前記ローカル
発振器の出力信号との乗算を行い,前記第1の送信信号を生成する第7の乗算器と,
デジタル-アナログ変換された前記第2のベースバンド出力信号と前記ローカル
発振器の出力信号との乗算を行い,前記第2の送信信号を生成する第8の乗算器と,20
を備えることを特徴とする,無線送受信回路。
【請求項10】
前記ローカル発振器がSAW発振器であることを特徴とする,請求項9に記載の
無線送受信回路。
【請求項11】25
請求項9又は請求項10に記載の無線送受信回路を備えることを特徴とする,携
帯型無線通信端末装置。
【請求項12】
発振器の出力信号の周波数と予め定められた目標周波数との誤差を補正する周波
数安定化方法であって,5
前記出力信号のアナログ-デジタル変換を行うステップと,
アナログ-デジタル変換された前記出力信号の周波数と基準周波数とを比較し,
前記誤差を算出するステップと,
前記誤差の補正を行う誤差補正用信号を生成するステップと,
前記誤差補正用信号のデジタル-アナログ変換を行うステップと,10
前記出力信号とデジタル-アナログ変換された前記周波数補正信号とを乗算する
ステップと,を備えることを特徴とする,周波数安定化方法。
【請求項13】
アンテナによって受信した受信信号の入力データへの変換を行う無線受信信号の
復調方法であって,15
前記受信信号とローカル発振器の出力信号の乗算を行い,ベースバンド入力信号
を生成するステップと,
前記ベースバンド入力信号のアナログ-デジタル変換を行うステップと,
前記ローカル発振器の出力信号のアナログ-デジタル変換を行うステップと,
アナログ-デジタル変換された前記ローカル発振器の出力信号より,前記ローカ20
ル発振器の出力信号の周波数と,予め定められた目標周波数との誤差を算出するス
テップと,
前記誤差に基づいて,誤差補正用信号を生成するステップと
アナログ-デジタル変換された前記ベースバンド入力信号と前記誤差補正用信号
の乗算を行うステップと,25
前記ベースバンド入力信号と前記誤差補正用信号の乗算によって得られた信号の
復調を行い,前記入力データを出力するステップと,を備えることを特徴とする,
無線受信信号の復調方法。
【請求項14】
出力データのアンテナから送信する送信信号への変換を行う無線送信信号の変調5
方法であって,
ローカル発振器の出力信号のアナログ-デジタル変換を行うステップと,
アナログ-デジタル変換された前記ローカル発振器の出力信号より,前記ローカ
ル発振器の出力信号の周波数と,予め定められた目標周波数との誤差を算出するス
テップと,10
前記誤差に基づいて,誤差補正用信号を生成するステップと
前記出力データの変調を行うステップと,
前記出力データの変調によって得られた信号と前記誤差補正用信号の乗算を行い,
前記ベースバンド出力信号を出力するステップと,
前記ベースバンド出力信号のデジタル-アナログ変換を行うステップと,15
デジタル-アナログ変換された前記ベースバンド出力信号と前記ローカル発振器
の出力信号との乗算を行い,前記送信信号を生成するステップと,を備えることを
特徴とする,無線送信信号の変調方法。

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