弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年(行ケ)第10167号 審決取消(商標)請求事件
(旧事件番号 東京高裁平成17年(行ケ)第121号)
口頭弁論終結日 平成17年5月19日
          判           決
   
       原      告   X
       訴訟代理人弁理士   高田修治
       被      告   穴川殖産株式会社
訴訟代理人弁護士   岡村久道
       同          中道秀樹
同          川内康雄
同          南石知哉
同          湯原伸一
同          尾形信一
主           文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
 特許庁が取消2004-30149号事件について平成17年2月9日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は,被告の有する後記商標について,原告が,その指定役務中「娯楽施
設の提供」につき商標法50条1項に基づき商標登録の取消しの審判を請求したと
ころ,特許庁が同請求を不成立とする審決をしたことから,原告が同審決の取消し
を求めた事案である。
第3当事者の主張
1 請求の原因
(1) 特許庁における手続の経緯
 被告は,「SANCTUARY」の欧文字を横書きしてなり,指定役務を
第41類「植物の供覧,動物の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企
画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽
の演奏,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自
動車競争の企画・運営又は開催,運動施設の提供,娯楽施設の提供,スキンダイビ
ング用具の貸与」とする登録第4029201号商標(平成6年8月19日登録出
願,平成9年7月18日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であ
る。
 原告は,平成16年2月2日,本件商標について,前述した指定役務中の
「娯楽施設の提供」につき,商標法50条1項に基づく商標登録の取消しを求める
審判請求をした。
 特許庁は,上記審判請求を取消2004-30149号事件として審理し
た上,平成17年2月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決を
し,その審決謄本は同17年2月21日原告に送達された。
(2) 審決の内容
 審決の詳細は,別添審決謄本写し記載のとおりである。
(3) 審決の取消事由
 しかしながら,審決は,以下に述べるとおり,本件商標が「娯楽施設の提
供」に属する「遊園地の提供」に使用されていると誤って認定判断したから,違法
として取り消されるべきである。
 なお,本件商標である「SANCTUARY」とその片仮名文字である
「サンクチュアリ」とが社会通念上同一の商標であることは認める。
ア 本件パンフレット(審判乙1,本訴甲6)について
 審決は,「被請求人が提出した「KOA(ケーオーエー)伊勢志摩キャ
ンプグランド」のパンフレット(判決注・本件パンフレット)は,「キャンプ場施
設」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」及び「子供用プール」等について記載
されているものであり,表紙の上部には前記施設名称あるいはこれらの施設を提供
する役務の出所表示として「KOA(ケーオーエー)伊勢志摩キャンプグランド」
の文字及びその下部に「サンクチュアリ」の片仮名文字が記載されている」(審決
6頁下から第2段落)と説示して,本件商標が,「キャンプ場施設」のみならず,
「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」及び「子供用プール」等の施設を提供する役
務についても出所表示として記載されていると認定するが,誤りである。
(ア) そもそも,登録商標が指定役務について使用されているか否かは,
登録商標が指定役務について自他役務の識別標識として機能しているか否か,出所
表示機能を発揮しているか否かによって決すべきである。
 本件パンフレットの1枚目を見ると,まず,最上段には,「KOA伊
勢志摩」の大きな文字が同書体・同大で横書きに表示されており,その右側に続け
て,同書体ではあるが,やや小さい文字で「キャンプグランド」と横書きに表示さ
れている。そして,本件商標の片仮名文字である「サンクチュアリ」(以下「本件
使用商標」という。)は,上記「KOA伊勢志摩」の表示の直下の部分に,「O」
の文字の左端から「勢」の文字の右端までにわたって,上記「キャンプグランド」
の表示とほぼ同じ書体ではあるが,それよりもかなり小さな片仮名文字で「サンク
チュアリ」と横書きされて表示されているものである。さらに,当該「サンクチュ
アリ」の表示の直下には,それとほぼ同じ大きさの文字により,「志摩スペイン
村」,「温泉「ひまわりの湯」」,「子供用プール」,「レンタルカヌー」,「ミ
ニゴルフ」,「海水浴場」の文字が,左斜め下から右斜め上方に傾斜した状態で並
列的に表示されている。
 このように,本件パンフレットにおいて,本件使用商標である「サン
クチュアリ」の表示は,「KOA伊勢志摩キャンプグランド」の表示と極めて近接
した位置関係にあり,このような表示態様からすれば,本件使用商標は,専ら「キ
ャンプグランド(キャンプ場)の提供」についての出所表示として使用されている
ものと見るのが自然である。
(イ) これに対し審決は,上記のとおり,本件使用商標が,「キャンプ場
施設」のみならず,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」及び「子供用プール」等
の施設を提供する役務についても出所表示として記載されていると認定する。
 確かに,本件パンフレットには,「サンクチュアリ」の表示の直下
に,「志摩スペイン村」,「温泉「ひまわりの湯」」,「子供用プール」,「レン
タルカヌー」,「ミニゴルフ」,「海水浴場」の文字が表示されているが,このう
ち,「志摩スペイン村」は「KOA伊勢志摩キャンプグランド」から3kmも離れ
た場所にある経営主体の全く異なる遊園地であり,「ひまわりの湯」は「志摩スペ
イン村」の中にある温泉施設であることから,被告から本件商標の使用許諾を受け
た有限会社Aがこれらの施設について「サンクチュアリ」の表示を出所表示として使
用することはあり得ない。そして,そうとすれば,選択的に,「レンタルカヌ
ー」,「ミニゴルフ」,「子供用プール」等についてのみ,本件使用標章である
「サンクチュアリ」が出所表示として使用されていると見ることは,極めて不自然
というべきである。
(ウ) ところで,本件パンフレットの1枚目の左下部分には,料金表が紙
面の約4分の1のスペースをとって掲載されているが,その記載内容は,テントサ
イト,RVサイト,キャンピングキャビン,ガーデンキャビン,トレーラーホーム
等の宿泊施設の料金,支払方法等に関するものである。また,1枚目の右側中段に
は,「ガーデンキャビン」と称する宿泊施設を紹介する写真,図面及び説明文が上
記料金表の約3分の1のスペースをとって掲載され,さらに,2枚目の右上部分に
は,「キャンピングキャビン」,「トレーラーホーム」と称する宿泊施設を紹介す
る写真,図面及び説明文が紙面の約4分の1のスペースをとって掲載されている。
これらの記載によれば,本件パンフレットが,「宿泊施設の提供」に属する「キャ
ンプ場の提供」についての広告であることは明らかである。
 他方,本件パンフレットの1枚目の右側中段には,上記「ガーデンキ
ャビン」に関する記載の直下に,「ENJOY!」と題して,極めて小さい文字
で,レンタルサイクル,レンタルカヌー,プール,プレイグランド,ミニゴルフ,
バスケットゴール,自然観察・バードウォッチング,クッキングパーティー,農業
体験・カキ養殖体験と表示され,その右側に家族でカヌーに乗っている写真が掲載
されている。しかし,これらの表示は,その位置,大きさ及び内容からみて,専ら
キャンプ場利用者を楽しませるためのアウトドアスポーツ施設やイベント等の紹介
と解するのが妥当である。
イ 本件施設(本件パンフレットに係る施設)について
 審決は,甲6~10及び12(審判乙1~5及び7)に基づき,「本件
施設は,「遊覧・娯楽のために各種の乗り物や設備を備えた施設」であり,キャン
プ施設を伴う「遊園地」あるいはキャンプ場と「遊園地」を併設した施設と認めら
れるものであり,通常使用権者による本件施設の役務の提供は,「娯楽施設の提
供」に属する「遊園地の提供」に属すべき役務とみるのが相当である」(審決7頁
下から第2段落)と認定判断したが,以下に述べるとおり,誤りである。
(ア) 上記アで述べたとおり,本件パンフレットにおいて,本件使用商標
は,「キャンプグランド(キャンプ場)の提供」についての出所表示として使用さ
れているものと見るのが自然であり,また,本件パンフレットは,「宿泊施設の提
供」に属する「キャンプ場の提供」についての広告であることが明らかである。
(イ) また,KOAのDirectory(甲7,審判乙2。以下「甲7
パンフレット」という。)には,「KOAキャンプグランドはアメリカ・カナダ・
メキシコ・日本の約500ヶ所で,世界の国々のキャンパーに親しまれています」
(2頁左下),「KOAのお得なキャンプ場利用割引カードに新しい特典が増え
て,さらに内容が充実しました」(同頁右上)などと記載されているように,「キ
ャンプ場」,「キャンプグランド」との記載は多数見受けられるが,「遊園地」で
あることを示す記載は全く見当たらない。
(ウ) ところで,審決は,被告提出に係る写真撮影報告書(甲12,審判
乙7。以下「甲12報告書」という。)に基づき,「これらの施設には,キャンプ
施設料金とは別に使用料が設定されていることが認められ,日帰り料金も設定され
ている」(審決7頁下から第4段落)と認定した上,この点を上記認定を導く根拠
の一つとしている。
 しかしながら,甲12報告書の2枚目に添付された図面は,作成者も
作成時期も明らかでないものであり,同3枚目以下の写真及びその説明文も,被告
の同族会社である有限会社Aのマネージャーが作成したものであって,そもそも,甲
12報告書の信用性は疑わしいから,これを根拠とする審決の認定は失当である。
 加えて,甲12報告書の2枚目の図面左下に表示された料金表には,
顕著な起こし文字で「Water Park」との表題が付され,同4枚目の写真
③にも,「Waterpark」と明確に表示されたウォーターパーク受付看板が
写っていることからすれば,審決の上記説示にいう「これらの施設」の出所識別標
識としては,「Water Park」の表示が専ら使用され,「サンクチュア
リ」の表示は使用されていないというべきである。
(エ) また審決は,「「穴川殖産株式会社の履歴事項全部証明書」・・・
の目的の欄には,7「ヨットハーバー,遊園地・・・の経営」と記載されている」
(審決7頁下から第3段落)として,被告の履歴事項全部事項証明書(甲9,審判
乙4。以下「甲9証明書」という。)の記載を上記認定の根拠の一つとしている
が,本件施設を運営しているのは有限会社Aであるから,被告に係る甲9証明書の記
載は上記認定の根拠には当たらない。また,有限会社Aの履歴事項全部証明書(甲
8,審判乙3)の目的の欄に「遊園地の経営」が記載されていたとしても,そのこ
とが,実際に遊園地の経営を行っていることの証明となるものでもない。
(オ) 以上によれば,本件施設は,「キャンプ場の提供」のための施設で
あって,「子供用プール」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」,「レンタルサ
イクル」,「プレイグランド」,「バスケットゴール」等の施設は,専らキャンプ
場利用者を楽しませるためのアウトドアスポーツ施設にすぎず,「遊園地の提供」
という役務に該当しないことは明らかである。
2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)及び(2)の各事実は認めるが,同(3)は争う。
3 被告の反論
 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 原告の主張は,要するに,本件パンフレットにおいて,本件使用商標は専ら
「キャンプ場の提供」について使用されたものであり,「子供用プール」,「レン
タルカヌー」,「ミニゴルフ」,「レンタルサイクル」等の各種乗り物や施設の提
供,すなわち「遊園地の提供」ないし「娯楽施設の提供」に使用されたものではな
いというものである。
 しかしながら,本件施設は,キャンプ施設のみならず,「子供用プー
ル」,「ミニゴルフ」,「ファンサイクル用コース」,「プレイグランド」,「カ
ヌーによる施設内散策」等の各種乗り物や施設の提供を行うものであり,審決が認
定するとおり,「キャンプ施設を伴う「遊園地」あるいはキャンプ場と「遊園地」
を併設した施設」(審決7頁下から第2段落)に該当する。このことは,本件施設
におけるキャンプ施設と「子供用プール」等の上記娯楽施設との位置関係(甲12
報告書)からも明らかである。
 そして,本件パンフレットは,上記のような特性を有する本件施設の広告
であるから,そこで表示された本件使用商標が,「遊園地の提供」に使用されたも
のであることは明らかである。
(2) なお,原告は,「子供用プール」等の娯楽施設について,専らキャンプ場利
用者を楽しませるためのアウトドアスポーツ施設にすぎない旨主張する。
 しかし,上記娯楽施設については,キャンプ施設料金とは別に使用料が設
定されているし,日帰り料金も設定されているのであるから,原告の主張は失当と
いうべきである。また,そもそも,上記娯楽施設がキャンプ場利用者を楽しませる
という目的を有していたとしても,それによって,娯楽施設であるとの性質を失う
ものでもない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実
は,いずれも当事者間に争いがない。
 また,審決の認定判断中,本件使用商標「サンクチュアリ」が本件商標「S
ANCTUARY」と社会通念上同一の商標と認められることも原告が自認すると
ころである。
2 原告主張の取消事由の有無
(1) 本件パンフレットに関する主張について
 審決は,本件パンフレットについて,「被請求人が提出した「KOA(ケ
ーオーエー)伊勢志摩キャンプグランド」のパンフレット・・・は,「キャンプ場
施設」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」及び「子供用プール」等について記
載されているものであり,表紙の上部には前記施設名称あるいはこれらの施設を提
供する役務の出所表示として「KOA(ケーオーエー)伊勢志摩キャンプグラン
ド」の文字及びその下部に「サンクチュアリ」の片仮名文字が記載されている」
(審決6頁下から第2段落)と認定した。
 これに対し原告は,本件使用商標「サンクチュアリ」と「KOA伊勢志摩
キャンプグランド」の表示とが極めて近接した位置関係にあること等からすれば,
本件パンフレットにおいて,本件使用商標は,専ら「キャンプグランド」(キャン
プ場)の提供についての出所表示として使用されているものと見るのが自然である
として,審決の上記認定中,本件使用商標が,「キャンプ場施設」のみならず,
「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」及び「子供用プール」等の施設を提供する役
務についても出所表示として記載されていると認定した点は誤りである旨主張す
る。
ア そこで検討すると,本件パンフレットの1枚目は別紙(一)のとおりであ
り,これには,下記の記載がある。

(ア) 1枚目の左上隅には,「KOA/KAMPGROUND」との記載を含む標章
が表示されている。
(イ) 上記(ア)の標章のすぐ右側に当たる1枚目の最上段には,「KOA
伊勢志摩キャンプグランド」の大きな文字がゴチック体で横書きに表示されてい
る。なお,このうち,「キャンプグランド」の部分は,「KOA伊勢志摩」との部
分よりも,やや小さい文字で表示されている。
 本件使用商標すなわち「サンクチュアリ」の表示は,上記「KOA伊
勢志摩キャンプグランド」の表示の直下,「O」の文字から「勢」の文字の右端ま
でにかけての部分に,上記「キャンプグランド」の表示よりも更に小さなゴチック
体様の文字で「サンクチュアリ」と横書きして表示されている。
(ウ) さらに,当該「サンクチュアリ」の表示の直下には,それとほぼ同
じ大きさの丸ゴチック体様の文字により,「志摩スペイン村」,「温泉「ひまわり
の湯」」,「子供用プール」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」,「海水浴
場」の文字が,右肩上がりの傾斜した状態で並列的に表示されている。
(エ) 上記(イ)及び(ウ)の各表示の下には,一部が上記(ウ)の表示と重な
るようにして,本件施設内の状況と見られる写真2枚が大きく掲載されている。そ
のうち,左側のものにはプールの情景が写っており,右側のものにはコテージ様の
建物等が写っている。
(オ) 1枚目の中段左側には,本件施設の説明文と見られる文章が掲げら
れ,「場内の池は,野鳥やメダカ・トンボなど自然の宝庫。カヌーで観察しながら
の散策も出来ます。子供用のプール・ミニゴルフ・ファンサイクル用コースなどの
施設の充実はもちろん,クラフトやクッキングパーティーやビンゴパーティーなど
のイベントも盛りだくさん。場内で1日中楽しめます」との記載がある。
(カ) 1枚目の右側中段には,「ENJOY!」との表題の下に,「レン
タルサイクル,レンタルカヌー,プール,プレイグランド,ミニゴルフ,バスケッ
トゴール,自然観察・バードウォッチング,クッキングパーティー,農業体験・カ
キ養殖体験」と表示され,その右側にカヌーに乗って興じる光景を写した写真が掲
載されている。
イ 上記各記載によれば,本件パンフレットは,「KOA伊勢志摩キャンプ
グランド」という名称の施設(本件施設)について広告するものであり,本件使用
商標「サンクチュアリ」は,本件パンフレットにおいて,本件施設の副次的な名称
として,「KOA伊勢志摩キャンプグランド」の表示と並列的に使用されているも
のと認めるのが相当である。
 なお,上記アの(ウ)~(カ)の各表示ないし写真によれば,本件施設は,
「子供用のプール・ミニゴルフ・ファンサイクル用コースなどの施設」あるいは
「レンタルサイクル,レンタルカヌー,プール,プレイグランド,ミニゴルフ,バ
スケットゴール,自然観察・バードウォッチング,クッキングパーティー,農業体
験・カキ養殖体験」といった施設又はイベントを提供するものであると理解され
る。そうすると,本件使用商標が「娯楽施設の提供」の役務にも使用されていたこ
とは,本件パンフレットの記載のみによっても,一応推認することができるという
べきであるが,この点については,更に後記(2)において検討することとする。
ウ これに対し原告は,①上記ア(ウ)の表示に関し,「志摩スペイン村」は
「KOA伊勢志摩キャンプグランド」から3kmも離れた場所にある経営主体の全
く異なる遊園地であり,「ひまわりの湯」は「志摩スペイン村」の中にある温泉施
設であることから,有限会社Aがこれらの施設について「サンクチュアリ」の表示を
出所表示として使用することはあり得ず,そうとすれば,選択的に,「レンタルカ
ヌー」,「ミニゴルフ」,「子供用プール」等についてのみ,「サンクチュアリ」
が出所表示として使用されていると見ることは,極めて不自然というべきである,
②本件パンフレットにおいて,宿泊施設の料金表や宿泊施設を紹介する写真,図面
及び説明文が紙面の大きな部分をとって掲載されていることからすれば,本件パン
フレットが,「宿泊施設の提供」に属する「キャンプ場の提供」についての広告で
あることは明らかである等と主張する。
 しかしながら,本件パンフレットの記載から,本件施設は,「子供用の
プール・ミニゴルフ・ファンサイクル用コースなどの施設」あるいは「レンタルサ
イクル,レンタルカヌー,プール,プレイグランド,ミニゴルフ,バスケットゴー
ル,自然観察・バードウォッチング,クッキングパーティー,農業体験・カキ養殖
体験」といった施設又はイベントを提供するものであると理解されることは,上記
イのとおりである。そして,原告主張のとおり,「志摩スペイン村」及び「ひまわ
りの湯」が本件施設に含まれるものでないとしても,上記の理解が不自然であると
までいうことはできないから,原告の上記①の主張は採用の限りでない。
 また,本件パンフレットにおいて,料金表その他の宿泊施設関係の記載
が紙面の大きな部分を占めていることは原告主張のとおりであるが,そのことによ
って直ちに,本件施設が,専ら「宿泊施設の提供」のみを行うものであって,「娯
楽施設の提供」を行わないものであるということになるわけではないし,他方,本
件パンフレットに各種の娯楽施設や娯楽のためのサービスについての記載があるこ
とは上記のとおりであるから,原告の上記②の主張も採用の限りではない。
エ 以上のとおり,本件パンフレットに関する審決の上記認定には格別誤り
とすべき点は認められない。
(2) 本件施設に関する主張について
 審決は,本件施設について,「本件施設は,「遊覧・娯楽のために各種の
乗り物や設備を備えた施設」であり,キャンプ施設を伴う「遊園地」あるいはキャ
ンプ場と「遊園地」を併設した施設と認められるものであり,通常使用権者による
本件施設の役務の提供は,「娯楽施設の提供」に属する「遊園地の提供」に属すべ
き役務とみるのが相当である」(審決7頁下から第2段落)と認定判断した。
 これに対し原告は,本件施設は,「キャンプ場の提供」のための施設であ
って,「子供用プール」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」,「レンタルサイ
クル」,「プレイグランド」,「バスケットゴール」等の施設は,専らキャンプ場
利用者を楽しませるためのアウトドアスポーツ施設にすぎず,「遊園地の提供」と
いう役務に該当しないなどとして,審決の上記認定判断は誤りである旨主張する。
ア そこで検討すると,証拠(甲6,7,12)及び弁論の全趣旨によれ
ば,次の事実を認めることができる。
(ア) 本件施設は,三重県(編注:以下省略)に所在し,有限会社Aが運営
している。
(イ) 本件施設内には,テントサイト,RVサイト,キャンピングキャビ
ン,ガーデンキャビン,トレーラーキャビンと称される宿泊用の施設が設けられて
いるほか,子供用プール,ファンサイクル用のコース,ミニゴルフのコース,滑り
台やバスケットゴールの設置されたプレイグランド等の娯楽施設が設置され,さら
に,レンタルカヌーやレンタルサイクルといった娯楽のためのサービスも提供され
ている。
(ウ) 上記子供用プール,ファンサイクル,ミニゴルフ,レンタルカヌー
等については,宿泊施設の利用料とは別に使用料が設定されている。
(エ) 本件施設においては,「デイキャンプ」と称する日帰り利用者のた
めの利用料金も設定されている。
イ 上記アの認定事実によれば,本件施設は,キャンプ施設に各種の娯楽施
設が併設され,娯楽のためのサービスが提供される施設であって,社会通念上,宿
泊施設としての性質のみならず,「遊園地」としての性質をも兼ね備えたものであ
ると認めるのが相当である。
 なお,原告は,被告提出に係る甲12報告書には信用性がない旨主張す
る。しかし,甲12報告書所収の図面及び写真に格別不自然な点は見当たらない
上,本件パンフレットの記載内容とも符合していることからすれば,甲12報告書
の信用性は十分に認められるというべきであり,原告の主張は採用することができ
ない。
ウ 原告は,①本件パンフレットにおいて,本件使用商標は,「キャンプグ
ランド(キャンプ場)の提供」についての出所表示として使用されているものと見
るのが自然であり,また,本件パンフレットは,「宿泊施設の提供」に属する「キ
ャンプ場の提供」についての広告であることが明らかである,②甲7パンフレット
には,「キャンプ場」,「キャンプグランド」との記載は多数見受けられるが,
「遊園地」であることを示す記載は全く見当たらないなどとして,審決の上記認定
は誤りである旨主張する。
 しかしながら,原告の上記①の主張については,本件パンフレットの記
載から原告主張のように断定することができないことは上記(1)において検討したと
おりである。
 また,甲7パンフレットに「遊園地」との記載が見当たらないとして
も,上記アの認定事実に照らせば,本件施設は,キャンプ施設に各種の娯楽施設が
併設された施設であると認めるのが相当であるから,原告の上記②の主張も採用の
限りではない。
エ さらに原告は,本件施設は,「キャンプ場の提供」のための施設であっ
て,「子供用プール」,「レンタルカヌー」,「ミニゴルフ」,「レンタルサイク
ル」,「プレイグランド」,「バスケットゴール」等の施設は,専らキャンプ場利
用者を楽しませるためのアウトドアスポーツ施設にすぎず,「遊園地の提供」とい
う役務に該当しないと主張する。
 しかしながら,本件施設において日帰り利用者のための料金が設定され
ていることは,上記ア(エ)のとおりであって,本件施設内の娯楽施設がそうした日
帰り利用者によっても利用されるものであることは明らかであるから,原告の上記
主張は失当というほかはない。
(3) 小括
 そうすると,本件パンフレットにおいて,「遊園地」としての性質をも兼
ね備えた本件施設の副次的な名称として本件使用商標を表示することは,「娯楽施
設の提供」の役務についての本件商標の使用に該当するというべきであるから,原
告のその余の主張について検討するまでもなく,審決の上記認定判断に誤りはな
く,原告の取消事由の主張には理由がない。
3 結語
 以上のとおりであるから,原告主張の取消事由には理由がない。
 よって,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとして,主文のとお
り判決する。
知的財産高等裁判所第2部
         裁判長裁判官 中野哲弘
    裁判官 大鷹一郎
裁判官早田尚貴は転補につき署名押印することができない。
 裁判長裁判官 中野哲弘
(別紙)
別紙(一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛