弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤義彌の上告趣意第一点及び第二点について。
 所論は、いずれも原判決に憲法解釈の誤りがあると主張するが、結局原審の刑訴
法の解釈を争うに帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。そして記録を調べ
てみると、第一審は、所論第一点のAの検察官の面前における供述調書を証拠とす
るに先立ち、右Aを被告人在廷の第三回公判期日において証人として尋問し、被告
人及び弁護人に同証人を審問する機会を十分に与えていることが認められ、この点
に基く原審の判示は正当であり、また所論のいう刑訴三二一条一項二号但書にいわ
ゆる特信情況の判断は、事実審の裁量に属すること当裁判所のくりかえし判示(例
えば昭和二六年(あ)第一一一一号同二六年一一月一五日第一小法廷判決集五巻一
二号二、三九三頁)するところである。次に所論第二点の所在不明者であるB作成
の答申書を証拠に採用したことが、憲法三七条二項に違反しないことは、証人の供
述は、被告人に審問の機会を与えなければ、常に証拠に供し得ないものではなく、
例外のある趣旨であるとする当裁判所大法廷判例(昭和二三年(れ)第一六七号同
二三年七月一九日判決、集二巻八号九五二頁。同年(れ)第八三三号同二四年五月
一八日判決、集三巻六号七八九頁)の趣旨に徴し明らかである。また所論のBが所
在不明であつたことは、記録に存する検事の捜査指揮書及び警察署長の捜査報告書
(記録一三七丁)に徴し明らかであつて、このうな場合刑訴三二一条一項三号によ
り証拠となし得ることは、当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第二三五七号同二七
年四月九日大法廷判決、集六巻四号五八四頁。昭和二六年(あ)第二二二四号同二
八年四月一六日第一小法廷、集七巻四号八六五頁)の同条同項二号に掲げる、供述
者が供述することができないときの事由は、これと同様またはそれ以上の事由の存
する場合をも含むとする趣意に徴し明らかである。
 同第三点及び第四点について。
 所論第三点は単なる事実誤認の主張にすぎず、同第四点は、量刑不当を主張する
に止まり、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年一月二九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己

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