弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1被告は,原告に対し,2050万円及びこれに対する平成18年5月29日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,5分の4を原告の負担とし,5分の1を被告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,9996万2005円及びこれに対する平成18年5月2
9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1請求原因(原告の主張)の骨子
本件は,原告(女性,当時32歳)が,平成18年5月29日の深夜0時50分
ころ,酒に酔ってA京都線a駅南口付近の被告(摂津市)の管理する市道(摂津市
道ab線。以下「本件市道」という。)を歩いていたところ,体のバランスを失っ
て高さ約50の柵(以下「本件柵」という。)を越えて約3m下にある道路cm
(摂津市道ac1号線。以下「本件側道」という。)に転落し,頸髄損傷の傷害を
負い,四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)の後遺障害を生じたとして,被告に対し,
国家賠償法2条1項(道路の管理の瑕疵による公共団体の損害賠償責任)に基づき,
9996万2005円の損害賠償及びこれに対する事故日である平成18年5月2
9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事
案である。
原告の主張する本件市道の管理の瑕疵は,本件市道路面と本件側道路面との間に
最大約3mもの高低差があるにもかかわらず,歩行者の転落防止のために充分な高
さの防護柵を設置せず,本件市道路面から柵面の上端までの高さが約50しかcm
cない本件柵を漫然と放置したというものである。原告は,本件柵の高さが約50
しかないことが道路の管理の瑕疵にあたる根拠として,「防護柵設置基準」(昭m
和47年12月1日建設省道路局長通達)に基づく事務連絡等の通知あるいは「防
護柵設置要綱・資料集」(昭和61年7月社団法人B協会作成)により,昭和47
年,遅くとも昭和61年当時には,高さ110の転落防止柵の設置が要請されcm
ていたと主張する。
原告の請求する損害額は,傷害に伴う損害860万4578円(①治療費3(1)
15万2570円,②休業損害210万4008円,③入院雑費34万8000円,
④慰謝料300万円),後遺障害に伴う損害8513万6568円(⑤逸失利(2)
益4513万6568円,⑥慰謝料4000万円)の合計9344万1146円か
ら健康保険からの既払額277万9141円を控除した損害額9096万2005
円と弁護士費用900万円の合計額である。
2前提事実
本件事故の発生並びに本件市道と本件側道の高低差及び本件柵の構造(1)
a駅南口,本件市道,本件側道及び本件柵の位置関係は,別紙1(図面1)のと
おりであり,本件市道路面と本件側道路面との高低差及び本件柵の構造は,別紙2
ないし4(図面2ないし4)のとおりである。本件柵は,本件市道のa駅南口と東
口との間の部分に,本件市道と最大約3mの高低差がある本件側道との間に設置さ
れた転落防止用の柵である。本件柵は,昭和42年10月以前から設置され(乙2,
乙18の1・2),上柵の本件市道路面からの高さは,約50である。現場付cm
近の状況は,昼間は別紙5(甲2の1∼17)のとおりであり,夜間は別紙6(乙
3の1∼7)のとおりである(ただし,本件当時の夜間の明るさが,この写真のと
おりかどうかは争いがある。)。
原告は,平成18年5月29日の深夜午前1時09分,本件側道の別紙7の写真
及び図面(乙8)の×印付近で酔って倒れているのを通行人に発見され,午前1時
30分,救急隊員により救助され(乙7),午前1時36分,C病院に搬送され,
入院した(乙9,10。以下原告が本件市道付近で傷害を負った事故を「本件事
故」という。)。本件事故現場付近において,本件市道路面と本件側道路面の高低
差が約3mあり,本件側道には4.6%の勾配がある(乙17)。原告は,当時,
酒に酔っており,事故原因の記憶がない(原告本人)。
原告の傷害及び治療経過並びに後遺障害(2)
C病院での診察で,原告は,頸髄損傷(第5頸椎脱臼骨折,第6頸椎以下の完全
麻痺)の傷害が認められた。原告は,同日午前4時18分,D大学附属E病院に転
院し,同病院での診察で,原告は,第4頸椎から第7頸椎までの骨折と第6頸椎以
下の頸髄損傷と診断され,第4頸椎から第7頸椎までの前方固定術,第5・第6頸
椎の切除及び自家骨移植の手術を受け(乙11∼14),同日から平成19年1月
16日に入院リハビリ加療を受けるために兵庫県立F病院に転入院(甲4)するま
で入院治療(転入院前日まで232日間)を受けた。
原告は,平成18年10月16日,D大学附属E病院のG医師により,身体障害
者診断書・意見書(甲5)の作成を受けた。G医師の診断によれば,原告は,頸髄
損傷を原因とする四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)の障害により,起立位・座位の
保持不能,歩行不能,両下肢体幹の自動運動不能及び膀胱・直腸障害の症状があり,
この障害の固定または確定の時期は,平成18年9月29日と推定され,現在リハ
ビリ中であるが,四肢麻痺の回復は期待できない。
3被告の主張の骨子及び争点
本件事故態様について(1)
原告が,本件市道から本件柵を越えて本件側道に転落した事実は知らない。原告
が本件市道から転落したという根拠は弱く,むしろ,本件事故は,本件市道からの
転落ではなく,本件側道で単に転倒しただけのものである可能性も決して低くない。
本件市道の安全性及び管理の瑕疵について(2)
a駅は昭和3年に開設されたが,本件柵の設置時期は明らかでなく,記録は残っ
ていないが,本件柵は,a駅開設の際にA電鉄株式会社の費用で設置されたものと
推測され,その後,被告が管理するようになったものである。本件柵の高さが低い
ことが本件市道の管理の瑕疵にあたる根拠として原告が主張する通達や要綱などは,
既存の防護柵である本件柵について適用されるものではない。
そして,本件市道及び本件柵の構造,本件事故現場付近の明るさ・交通状況等の
場所的環境や利用状況に照らして危険な状況になかったこと,財政的・予算的制約
があることを考慮すれば,本件市道は,一般の歩行者が通常の注意を払って通行す
る限り何ら危険は認められず,通常有すべき安全性を有しており,被告の管理に瑕
疵はない。
損害及び過失相殺について(3)
原告は,兵庫県立F病院に転院した平成19年1月16日を症状固定日としてい
る。しかし,平成18年10月16日付身体障害者診断書・意見書(甲5)によれ
ば,原告の障害固定または障害確定日は平成18年9月29日とされている。原告
の症状固定日を平成18年9月29日とすると,以後の治療費,休業損害,入院雑
費は認められず,傷害による慰謝料は,それまでの入院期間124日間(約4か
月)から223万円程度とみるべきである。
原告は,後遺障害に伴う慰謝料について4000万円と主張するが,原告の後遺
障害等級(自賠責後遺障害等級別表第1の1級1号)に応じた慰謝料2800万円
が相当である。
原告は,歩行者として進路周辺の安全を十分に確認しながら進行すべき注意義務
を負っていたにもかかわらず,飲酒の影響により上記注意義務を怠った結果,本件
事故に至ったのであるから,この点において原告には重大な過失がある。よって,
相当程度の過失相殺がなされるべきである。
4原告の主張
本件事故態様について(1)
原告は,本件市道から,本件柵を越えて,本件側道上に転落したことにより受傷
したものであり,本件事故発生に至る経過は以下のとおりである。
本件事故発生当時,原告自宅の最寄駅はA京都線d駅であった。原告は,前日の
5月28日(日曜日),午後4時30分頃から,友人とA神戸線e駅前の居酒屋で
飲食をし,午後7時ごろまでに中ジョッキの生ビールを約3杯飲んだ。午後7時過
ぎから午後11時30分頃まで,e駅前のスナックで飲食し,中ジョッキの生ビー
ルを約5杯飲んだ。午後11時30分頃,原告は帰宅の途につき,本来であれば,
e駅からf駅まで戻り,そこで京都線に乗り換えてd駅で下車する予定であったが,
車内で居眠りをし,終点のg駅まで行ってしまった。そこで,g駅で京都線に乗り
換えたが,再度車内で居眠りをし,d駅を乗り越してしまい,終点のa駅で下車を
することになった。原告がa駅に到着した時刻は,当時の時刻表に照らせば,5月
29日午前0時42分頃であったと考えられる。
そして,5月29日午前0時50分頃,a駅南口付近の別紙図面1の■地点にお
いて,体が本件柵を越え,本件市道から,約3m下にある本件側道の別紙図面2の
●地点付近に転落したものである。
本件事故が転落事故であることは,原告の負傷状況及び直接原告を診察した医師
の所見から明らかである。原告が転落した事実を目撃した者は判明しておらず,原
告自身にも転落時の記憶がない。したがって,客観的な負傷状況が最も重要な手が
かりとなる。
第1に,原告の頭頂部に皮下血腫が認められた。被告は,本件側道における転倒
事故の可能性がある旨主張するが,いかに酔っていたとしても,転倒であれば,頭
頂部ではなく,前額部,側頭部あるいは後頭部に何らかの損傷が生じるところ,本
件ではそれらが全くないのである。
第2に,頸椎部の骨折等の重大な損傷が認められる。すなわち,診療録には,C
5脱臼骨折(乙10,11),C5,6の破壊(乙12,1枚目),C4からC7
までの骨折とC6以下の頸髄損傷(乙13),C5骨折(乙14,1枚目),C3,
4椎弓骨折,C5,6椎体骨折,C3∼C7椎弓骨折,C5/6脊髄腔の高度狭窄
(乙14,5丁表)との記載がある。
第3に,原告は手術前に一旦丸坊主にし,頭頂部以外の部分は比較的早期に髪の
毛が生えてきたが,頭頂部のみ,なかなか髪の毛が生えてこなかった。さらに,頭
頂部の骨は平らになっていた。これは,頭頂部に極めて強い衝撃が加わったことを
裏付ける(M調書10頁)。
そして,原告の主治医(H)は,頭頂部に血腫が認められ,かつ,頸椎部に重大
な損傷があったことを踏まえ,「頸椎骨折について,おそらく3mくらいの高さよ
り頭部より落下したのではないか。その結果C4からC7まで骨折,その骨により
頸髄を圧迫損傷した。」という判断を示したのである(乙12の平成18年6月3
0日欄)。
そして,擁壁の真下付近は土になっており,比較的柔らかい部分に真っ逆さまに
転落したことにより偶然にも頭蓋骨骨折を免れた蓋然性が高く,頭蓋骨骨折が認め
られなくても,上記のとおり,頭頂部に皮下血腫があり,頸椎部に重大な損傷(C
4∼C7の骨折とC6以下の頸髄損傷)があり,また現実に原告には四肢麻痺とい
う重篤な後遺障害が残っていることに鑑みれば,原告が本件市道から本件側道に転
落した事実は動かないと見るべきである。
本件市道の管理の瑕疵について(2)
本件市道における被告の管理の瑕疵は,本件市道路面と本件側道路面との間に最
大約3mもの高低差があったにもかかわらず,歩行者の転落防止のために充分な高
さの防護策を設置せず,上段の柵の上端で本件市道路面から約50しかない本cm
件柵を漫然と放置していた点にある。
昭和31年5月に社団法人B協会が作成した「鋼道路橋設計示方書」において歩
行者用高欄の高さにつき「路面より90を標準とする。」と示されている(甲cm
16)。
「池田市開発指導要綱細則」(甲14,10頁)は,「防護柵設置基準」(昭和
47年12月1日道企発第68号建設省道路局長通達,以下「昭和47年通達」と
いう。)を引用して歩行者の転落防止のための防護柵の高さは110とされてcm
いる,したがって,昭和47年通達ないしこれに基づく通知により,昭和47年当
時において,転落防止柵の高さは110を基準とすべきであると規範が定めらcm
れたと推認される。
さらに,昭和61年になって,110を基準とするとの規範は,より明確にcm
なった。すなわち,「防護柵設置要綱・資料集」(昭和61年7月社団法人B協会
作成,甲17)には,歩行者自転車用防護柵について,転落防止柵の高さ(路面か
ら柵面の上端までの高さ)は,110を標準とすることが記載され,「アルミcm
ニウム合金製高欄・車両用防護柵設置基準変遷表」(甲16)には,この年に基準
が大きく改正され,昭和61年7月以前に設置された高欄は,補修・改修が必要と
なる可能性があると記載されている。110という高さは,日本人男子の平均cm
身長,身体の重心高さ及びその分散等を考慮して決定されたものである。
しかるに,昭和47年から起算すれば34年間,昭和61年から起算しても20
年間にわたり,50しかない本件柵が放置されていた。しかも,被告の主張にcm
よれば,遅くとも平成3年6月までに2か所の補修工事がされているが,その際に
も,110への全面改修がなされていないのである。cm
被告は,本件事故の発生が予測不可能であったとし,財政的制約等も主張する。
しかし,本件柵がa駅という人通りが多い(駅の乗降客がいる)場所に設置されて
いることが決定的に重要である。すなわち,事故現場が人里離れた辺鄙な場所であ
れば,日常的なパトロールではカバーできず,市民からの要望でもない限り,転落
の可能性は予見できない事態は考えられよう。しかし,本件事故現場は,何と言っ
てもa駅南口を出てすぐの場所である。被告にとって,駅付近は人通りも多く,様
々な施策の対象になる地域であり(現にa駅前は本件市道整備計画が存在する),
パトロールも頻繁になされていたはずである。そして,パトロールをしていれば,
本件柵の高さが50しかないことは一目瞭然である。また,本件柵の外見上のcm
構造,特に本件柵の高さからして側道への転落の危険性があること,側道へ転落す
れば頭部の重大な損傷により人の死にも至りうることも一目瞭然である。したがっ
て,被告は,仮に市民からの改善要望がなかったとしても,市民からの要望の有無
にかかわらず,本件柵の危険性,本件柵からの転落の危険性は予見できたし,予見
すべきであった。被告は,予算上の制約を主張するが,本件柵の設置場所はa駅南
口付近であり,費用対効果を考えてもなお優先して補修工事がなされるべき場所で
ある,また,本件柵を110に改修するにつき,膨大な予算が必要とされるわcm
けではない。
損害(3)
ア治療費315万2570円
原告は,身体障害者に認定された後もしばらくD大学附属E病院において入院治
療していたが,兵庫県立F病院に転院したのが平成19年1月16日であるため,
同日を症状固定日と考え,それまでに要した治療費を損害として計上した。
イ休業損害210万4008円
原告は,平成15年4月ないし7月から継続的に,①株式会社Pでジーンズショ
ップの店員,②株式会社IでAg駅構内の喫茶店の店員,③有限会社Jでgにある
居酒屋の店員,の3つのアルバイトをかけ持ちしていた。そして,3つのアルバイ
ト収入の本件事故前3か月間の月平均給与(平成18年2月から4月の総支給額を
合算して3で除した額)を合算すると27万2092円となる。
この合算額の1日あたりの額(上記額を30で除した額)を算出すると9069
円になるので,本件事故日である平成18年5月29日から前記症状固定日の前日
である平成19年1月15日までの232日分として計算した。
ウ入院雑費34万8000円
1日あたり1500円で232日分である。
エ傷害慰謝料300万円
頸髄損傷という重傷で約8か月間入院を余儀なくされたことを慰謝するには,上
記額を下回らない。
オ傷害に伴う損害(小計)860万4578円
カ後遺障害による逸失利益4513万6568円
原告の後遺障害は,四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)であり,右手の手首が少し
動かせる(指は動かせない)ことを除き,肩から下は全く自動運動ができない。直
立及び歩行は不可能で,電動車椅子でなければ移動ができず,また,背中に支えが
なければ座位を保持することも不可能である。車椅子からベッドに移動する場合は,
専用のリフターを利用し,かつ,第三者の介護が必要である。ベッドに寝ていても
寝返りをうつことができず,床ずれを避けるために,定期的に第三者の介護により
寝返りをさせてもらわなければならない。また,膀胱・直腸障害により感覚が麻痺
していることから,排泄も自力ではできず,第三者の介護が必要である。なお,右
手首がわずかに動くことから,専用の補助具を利用して,スプーンで食事をするこ
と,ゆっくりと字を書くことは可能である(スプーンもペンも握ることはできず,
手首の運動を通じて動作を行う。)。以上のとおり,原告には,日常生活のほぼす
べての場面において,第三者による介護が必要不可欠である。このような障害によ
り,原告は,既に,平成18年11月6日,身体障害者福祉法の1級の認定を受け
ている。そして,これらの障害は,自賠責の後遺障害等級に当てはめれば,「神経
系統(または精神)に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」として,別表第
一の1級1号に該当する。
原告の年収は,平成18年賃金センサス・産業計・企業規模計・女子・高卒(原
告の最終学歴は兵庫県立h高校である。)・年齢別(原告は,症状固定日である平
成19年1月16日当時32歳であった。)を基礎とするのが相当である。これに
よれば,原告の年収は次のとおり算出される。
21万3200円×12か月+19万8200円=275万6600円
67歳まで就労可能であったとして,原告の逸失利益は,次のとおり算出される。
275万6600円(原告の年収)×100%(自賠責後遺障害等級別表第一の
1級1号に対応した労働能力喪失率)×16.374(32歳の就労可能期間であ
る35年間のライプニッツ係数)=4513万6568円
キ後遺障害慰謝料4000万円
上記のとおり,原告には,自賠責後遺障害等級別表第一の1級1号に該当する重
大な後遺障害が残り,若年であるにもかかわらず,今後就労は全く不可能で,かつ,
第三者の介護を受けながら生活を送っていかなければならない。この点についての
原告の不安及び苦痛は計り知れない。原告は,現在は,兵庫県立F病院併設のKセ
ンターでリハビリ訓練中であるが,同センターも平成21年8月頃には退所しなけ
ればならない予定である。そして,原告の後遺障害に照らして,存命中は,常時,
第三者の介護が必要である。両親が健在なうちは両親による介護が期待できるが,
その後は原告が残される蓋然性が高い。また,今後両親自身が高齢化して体力の低
下が予想されるため,いずれ職業的な介護者が必要になる可能性は高い。このよう
な事情に鑑みれば,本来的には介護費用の請求もできる事案であると考えられるが,
原告の平均余命に至るまでの介護費用の額の算定については,多少不確定要素があ
ることは否定できない。
したがって,本訴においては,介護費用という独立した項目での損害の算定は行
わなかったが,その代わりに慰謝料の額の算定において,将来にわたり介護費用が
必要となる点も考慮されるべきである。この点をも考慮すれば,後遺障害に対する
慰謝料の額は4000万円を下ることはない。
ク後遺障害に伴う損害(小計)8513万6568円
ケ損害合計(オとクの合計)9374万1146円
コ既払金277万9141円
原告は,アの治療費を一旦自己負担により支払ったが,後日,L健康保険組合よ
り,高額療養費,高額療養付加金,一部負担還元金,傷病手当金として上記額が原
告に支払われた。
サ既払金控除後の損害額9096万2005円
シ弁護士費用900万円
ス請求額9996万2005円
5被告の主張
本件事故態様について(1)
原告は,本件市道から本件側道へ転落して受傷したと主張するが,原告が本件側
道上で単に転倒した可能性も決して低くないというべきである。救急活動にあたっ
た救急隊員も,原告の受傷原因を転落ではなく転倒と判断している。救急隊員の記
憶に基づき,救急隊到着時に原告が転倒していた地点から本件柵の上柵までの高さ
は3m40であり,仮に,本件事故が転落によるものであれば,原告は,3mcm
40の高さから転落したことになる。柵の高さ(50)を引いて原告の身長cmcm
(160)を加えると,原告の頭部から本件側道までの高低差は4m50にcmcm
及ぶため,原告は,4m50の高さからアスファルト路面に頭部から転落したcm
ということになる。
この点,D大学附属E病院救命センターの搬送直後の診療録(乙14)によると,
原告の病名は「頸椎損傷」「頭頂,上下顎挫傷」「両膝擦過傷」であり,その他,
右手及び顔面にも擦過傷が認められる程度である。しかし,4m50もの高さcm
からアスファルト路面に頭部から落下したことに照らせば,例えば頭蓋骨骨折等の
他の外傷があってしかるべきである。他方,アルコール摂取によって反射神経等が
著しく低下した状態であれば,平地での転倒であっても,本件のような頸椎損傷に
至る事態は十分生じうるため,原告の負傷状況が転落によってしか生じ得ないと断
定することはできない。
本件市道の管理の瑕疵について(2)
本件市道における被告の管理の瑕疵の有無は,当該営造物の構造,用法,場所的
環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断されるべきとこ
ろ,以下のとおり,本件市道及び本件柵は,当該営造物につき通常有すべき安全性
に欠けるところはなく,被告の管理に瑕疵はなかったというべきである。
本件柵の設置時期は明らかではなく,記録は残っていないが,本件柵は,昭和3
年にa駅が開設された際に,A電鉄の費用で設置されたものと推測される。遅くと
も昭和42年10月以前には設置され,一部補修された部分は認められるものの,
補修部分を除く他の大部分は補修の必要性もなく,同時期の状況のまま現在に至っ
ている。そして,40年以上にわたり転落事故が生じておらず,その転落防止機能
に不足はなかった。
営造物が「通常有すべき安全性」とは,およそ生じ得るあらゆる危険を前提とし
て,それら全てを防止できるほどの高度の安全性である必要はなく,通常生じると
予想される範囲の危険を前提として,それらを防止できる程度の安全性をいう。損
害賠償の基本理念は損害の公平な分担にあり,営造物の利用者は,当該営造物及び
自身の状況に応じて,それぞれ相応の注意を払って自らの危険を回避すべき義務を
負うからである。原告は,本件事故当日,午後4時半から午後11時半まで約7時
間にもわたり,生ビール中ジョッキ約8杯を飲んだというのであり,本件事故当時,
相当な酩酊状態にあったと推定される。このことは,原告が,二度にわたって車内
で居眠りをして電車を乗り過ごし,a駅でようやく下車したことからも明らかであ
る。また,原告は,タクシーに乗車しようとしていたにもかかわらず,改札口付近
の案内表示を見逃してタクシー乗り場のない南口から外に出ている。このような酩
酊状態にあった原告の注意力が著しく低く,原告の本件事故当時の行動が通常予測
される範囲の危険を超えていたことは明らかである。a駅は,A京都線の最終電車
の終着駅であるから,飲酒の上車内で居眠りして目的駅を乗り過ごし,a駅で下車
する乗客は原告以外にも少なからず存在するにもかかわらず,本件市道において,
これまでに同様の転落事故が一度も生じていないことも,原告の常識的な範囲を超
えた酩酊状態を裏付けるものである。本件市道は,一般の通行者が通常の注意を払
って通行する限り,何ら危険は認められないから,通常有すべき安全性を有してお
り,被告に管理の瑕疵はない。
昭和47年通達ないし同時期の事務連絡等により歩行者用の転落防止用防護柵の
高さの基準が110とされた事実はなく,本件柵が上記高さに達しないことをcm
もって,被告の管理瑕疵を根拠づけることはできない。また,「防護柵設置要綱・
資料集」で定められた110という高さが,当時の日本人男子の平均体格等かcm
らみて合理的な高さとして定められたことは争わないが,上記高さは必ず遵守すべ
き基準ではなく,参考とされるべき標準値として定められたものである。
これらの通達や要綱は,従前に設置された基準や標準を満たさない既存の防護柵
の存在を許容しないものでは決してない。したがって,これらの通達や要綱が発せ
られたとしても,その適用対象はあくまで新たに設置されたり改築されたりする防
護柵であり,既存の防護柵については,破損等によってその機能を果たせなくなる
等の事情がない限り,新たな通達や要綱に適合する防護柵に改修すべき義務が生ず
るわけではない。この点は,昭和47年通達が,7−2「維持修繕」の項目におい
て「防護柵が事故及び災害によって変形または破損した場合等,その機能を十分に
果たせなくなった場合にはただちに復旧しなければならない。なお,この場合従来
の形式の防護柵はできるだけ本要綱にそったものと取りかえることが望ましい。」
と言及するに止めていることからも明らかである。
本件市道における歩行者の交通量は相当数に上っているにもかかわらず,本件事
故以前には,転落事故の報告や本件柵を高くしてほしいとの市民からの要望はなか
ったこと,本件市道の通行車両は,本件柵寄りではなく本件市道の中央寄りを走行
する傾向にあり,このため歩行者も本件柵の間際を通行する必然性はなく,ふつう
に歩行していれば転落の危険を感じる状況では決してないこと,加えて,本件市道
付近の夜間照明は十分明るく,通常の視力及び通常の注意力を有する歩行者であれ
ば,本件柵の外側に段差が存在することは容易に視認できること等の事実に照らせ
ば,本件柵は,歩行者及び車両が通常の注意義務を尽くして通行する場合に予想さ
れる危険に対しては十分に対応しているといえ,通常有すべき安全性を確保したも
のと評価されるべきである。
以上より,本件事故発生の予見可能性については,当然,本件事故現場付近にお
ける転落事故の履歴や市民からの危険性の指摘の有無が深く関連するところ,これ
らが全くなかったことに加え,本件市道及び本件柵が場所的環境や利用状況に照ら
して危険な状況になかった以上,被告に予見可能性はなかったものである。
地方公共団体たる被告には,財政的・予算的制約が存在するため,新たな通達や
要綱が発せられ,その基準を充たさないからといって,その都度,いまだ十分に機
能が果たせている施設・設備についてまで改修義務を課されることになれば,不相
当な財政的支出を強いられ,現実的ではない。このような財政的・予算的制約に鑑
みても,本件事故以前において転落防止機能を十分に果たせていた本件柵について,
被告に管理の瑕疵があったとはいえない。
損害額について(3)
ア治療費
原告の症状固定日は,平成18年10月16日付身体障害者診断書・意見書(甲
5)に従って,平成18年9月29日とみるべきである。同日までの治療費の合計
額は,平成18年9月30日までの支払額の合計228万3250円(甲7の1∼
6)に止まる。
イ休業損害及び入院雑費
上記のとおり,原告の症状固定日は,平成18年9月29日とみるべきであり,
休業損害及び入院雑費についても,本件事故日から同日までの124日間に限り認
められるべきである。
ウ傷害慰謝料
原告の症状固定までの入院期間124日間(約4か月)に対する慰謝料は223
万円程度とみるべきである。
エ後遺障害慰謝料
原告は後遺障害に伴う慰謝料について4000万円と主張するが,原告の後遺障
害等級に応じた慰謝料額は,2800万円が相当である。原告は将来の介護費用の
必要性を主張するが,慰謝料を4000万円まで増額すべき理由にはならない。
オ過失相殺
原告は,本件事故前,約7時間にわたって飲酒していた。いかに酒に強い体質と
はいえ,a駅に到着するまでに二度も降車駅を乗り過ごしていること,これまでに
2,3回乗り過ごしで利用したことのあるa駅のタクシー乗場がどこにあるか分か
らなかったこと,救急隊員が到着した際にもアルコール臭が強かったこと等の事実
に鑑みれば,本件事故当時の原告は,相当の酩酊状態にあったか,少なくともアル
コール摂取の影響によって注意力及び運動能力が相当程度低下した状態だったこと
は明らかである。
したがって,仮に,本件事故が転落事故であったとした場合でも,原告は,歩行
者として進路周辺の安全を十分確認しながら進行すべき注意義務を負っていたにも
かかわらず,飲酒の影響により上記注意義務を怠った結果,本件事故に至ったので
あるから,この点において,原告には重大な過失があるというべきであり,相当程
度の過失相殺がなされるべきである。
第3裁判所の判断
1判断の大要
本件事故の態様について(1)
原告は,酒に酔って本件市道を歩いていて誤って本件柵に膝を打ち,バランスを
失って本件市道から高さが50しかない本件柵を越えて転落し,約3m下の本cm
件側道に頭から真っ逆さまに落ちたものと認める。
本件市道の管理の瑕疵について(2)
昭和3年のa駅開設当初に設置された本件柵は,高さが50しかなく,駅前cm
にある市道の歩行者転落防止用の防護柵として通常想定される駅前の多様な歩行者
の転落の危険性を十分に防止するに足りるものではない。その後の通達等により,
安全性を考慮して,新たに設置する歩行者転落防止用の防護柵の高さの標準を11
0とすることが示され,一方で柵が老朽化し壊れた部分の応急修理も繰り返さcm
れていたのに,本件柵は長期間そのまま放置された。したがって,安全性を欠いて
いることが明らかになっているのに長期間本件柵を放置したことは,本件市道の管
理の瑕疵があったといえる。
過失相殺について(3)
原告が,本件事故当時,相当深く酒に酔っており,一方で,夜でも本件市道と本
件側道の落差を歩行者が容易に認識できる明るさがあったことやこれまで転落事故
の記録がないことなどの本件市道の管理の瑕疵の程度を勘案すると,原告の過失と
して8割の過失相殺を行うことが相当である。
損害額について(4)
高さが50しかないため歩行者転落防止柵としての安全性を欠いた本件柵をcm
長期間放置した被告(摂津市)の本件市道の管理の瑕疵により,酒に酔って歩いて
いた原告が誤って本件柵を越えて3m下の本件側道に頭から転落し,頸髄損傷の傷
害を負って四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)の後遺障害を負った。したがって,被
告は,国家賠償法2条1項により,本件事故により原告が蒙った損害2050万円
(8割を過失相殺した後の損害額1870万円と弁護士費用180万円の合計額)
を賠償する義務がある。
2認定事実
前記前提事実並びに証拠(甲18,19,乙16,23,26,証人M,同N,
同O,原告本人及び後記各証拠)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
本件柵の設置及び管理の状況(1)
本件柵は,第2の2のとおり,a駅南口と東口との間の本件市道に,本件市(1)
道との高低差が約3mある本件側道との間に設置された転落防止用の柵である。本
件市道と本件側道は,アスファルト舗装されている。
本件市道と本件側道は,いずれも昭和3年7月に摂津市の前身である味舌村の村
道として道路認定されている。昭和3年1月にa駅が開設され,a駅開設に合わせ
て駅前付近一帯の区画整理がされ,本件市道は,その区画整理によって開設された
ものである。したがって,昭和3年頃,a駅の開業に合わせ,本件市道が開設され
るとともに線路の下をくぐるために本件側道が開設され,本件市道と本件側道との
間に約3mの高低差が生じたことから,転落防止のために本件柵が設置されたもの
と推認される(乙18の1・2,乙23)。
本件柵は,老朽化したコンクリート製の柵であり,本件事故前(平成3年6月以
前)に2か所の柵(別紙8の写真の①及び②の部分)が欠落して金属製の柵を代わ
りに設置して補修されていたほか,本件事故後の平成18年10月にも1か所の上
柵(同③の部分)が欠落して同様に補修された(平成20年2月18日付け被告第
2準備書面)。
本件柵付近の本件市道は,a駅の南口と東口の間にあって,駅前にはコンビニエ
ンスストアなどの商店もあり,昼夜を問わず,歩行者,自転車,自動車の通行が多
い(別紙5の写真,弁論の全趣旨)。本件市道は,終電が終わった後の深夜でも,
駅のホームや駅前駐車場の照明により,比較的明るく照らされており,普通に本件
市道を歩いていれば,本件柵を見落とすことはあり得ず,本件柵を越えると転落の
危険があることに気付かないはずがない程度の明るさが保たれている(別紙6の写
真,乙22,23,O証人)。摂津市には,本件市道から本件柵を越えて本件側道
に転落した事故の記録は,本件事故以前にはなかった(O証人)。
本件事故の発生及び原告の負傷(2)
本件事故前日の平成18年5月28日(日曜日),原告は,午後4時半から午後
7時まで居酒屋で飲食して生ビールを中ジョッキ約3杯飲み,その後午後11時3
0分頃までスナックで飲食して生ビールを中ジョッキ約5杯飲んだ。その後,原告
は,A神戸線e駅から電車に乗り,自宅の最寄駅であるA京都線d駅に向かったが,
乗換予定のf駅を居眠りして乗り過ごし,終点のg駅で気がつき京都線に乗り換え
たが,再び居眠りして降車予定のd駅を乗り過ごし,平成18年5月29日深夜午
前0時42分頃(終電の到着時刻),終着駅のa駅で気がつき,乗越運賃を精算し
て下車した。(乙10,原告本人)
原告は,平成18年5月29日午前1時09分頃,本件側道上の別紙7の×地点
付近に倒れて顔面と指先から出血しているのを通行人により発見され,午前1時1
5分頃,摂津市消防署のNら救急隊員により救助された(乙7)。救助された時,
原告は,アルコール臭が強く,呼びかけると容易に開眼する程度の意識状態であり
(N証人),便失禁があり歩行不能の状態で,頭頂部,唇の周りの右側,右手親指
に擦過創があった。本件事故当時,原告が発見された場所付近の本件側道が本件市
道に接する部分の側溝には,土がたまり,本件事故直後に直径15∼20くらcm
いの丸いくぼみができていた(証人M,弁論の全趣旨)。
救急車で搬送されたC病院のS医師は,原告を診察し,頭頂部の皮下出血(皮下
血腫となっていた。)と左膝の打撲痕及び第6頸椎以下の完全麻痺を認め,X線と
CT検査で第5頸椎脱臼骨折を認めた。原告は,脊髄損傷について手術が必要であ
ると診断され,同日中に,D大学附属E病院(以下「E病院」という。)に転送さ
れた。(乙9∼11)
原告は,平成18年5月29日午前4時18分にE病院に搬入された際の診察に
より,頸椎損傷,頭頂・上下顎挫傷,右手親指・両膝擦過傷,頭頂部の皮下血腫が
認められ,CT,ORI検査により第4頸椎から第7頸椎までの椎弓骨折,第5,
第6頸椎の椎体骨折,第5・第6頸椎間の脊髄腔の高度狭窄,第6頸椎以下の頸髄
損傷が認められた(乙13,14)。
原告は,平成18年5月29日,E病院で第4頸椎から第7頸椎までの頸椎前方
固定術及び第5,第6頸椎の切除及び骨移植の手術を受け,以後,平成19年1月
16日に兵庫県立F病院(以下「F病院」という。)に転院するまでE病院に入院
した(乙12)。
E病院のH医師は,平成18年8月1日,リハビリを目的としてF病院を紹介し
たが(乙13),気管切開がある状態であったため転院できなかった(乙12の平
成18年8月8日の記録)。原告は,平成18年10月16日,頸髄損傷による四
肢・体幹機能障害(四肢麻痺)により,起立位・座位の保持不能,歩行不能,両下
肢体幹の自動運動不能で四肢麻痺の回復は期待できず,その障害の固定又は確定の
日は平成18年9月29日であると診断された(甲5の1頁)。上記診断当時,原
告は,肩から下の運動障害・感覚障害があり,スプーン・自助具を使って半介助で
食事をすることができるほかは,四肢及び体幹の自動運動をすることが全くできな
い状態であった(甲5の2頁)。
しかし,原告は,上記診断後もF病院に転院するまでの間,E病院において,平
成18年9月18日全身清拭中に受けたやけどの処置のため,平成18年11月8
日に植皮術を受けたほか,平成19年1月2日までたびたび尿路感染の治療を受け
ている。
3本件事故の態様について
上記認定事実によれば,①原告は,直前7時間にわたってビール中ジョッキ8杯
ほど飲んで酒に酔った状態で,本件市道から約3mの高低差がある本件側道上で頭
頂部に皮下血腫を生ずる状態で発見され,その付近には側溝にたまった土に丸いく
ぼみができていたこと,②原告は,本件事故により,第4頸椎から第7頸椎までの
4つの頸椎椎弓骨折をしたほか,第5,第6頸椎は骨移植を要するほどの椎体骨折
をしているが,他方で,頭頂部の皮下血腫のほかは,右手親指,両膝,口の周りの
擦過傷しかなく,頸椎のみに,しかも多数の頸椎に大きな損傷を受けていること,
以上の事実が認められる。
上記事実によれば,原告は,本件側道の土がたまっている部分に頭頂部から真っ
逆さまに衝突したものと認められるのであり,その原因は,いかに本件側道に4.
6%の勾配があるとはいえ本件側道上で転倒したものとは到底考えられず,酒に酔
って本件市道を歩いていて誤って本件柵に膝を打ち,バランスを失って本件市道か
ら本件柵を越えて転落し,約3m下の本件側道に頭から真っ逆さまに落ちたものと
認めるのが相当である。
原告を救助した救急隊員であるN証人は,事故原因を転倒と判断した旨証言する。
その根拠は,①飲酒した歩行者が下り坂で転倒して受傷するケースが非常に多いこ
と,②転落事故の場合には,四肢の骨折が生じるケースが多いこと,③原告が本件
市道から本件側道上に転落したのだとすれば,経験上は,頭蓋骨の骨折や,頸椎が
脳に突き刺さるなどの傷害を負うケースも考えられることである。しかし,N証人
は,原告のけがの内容や本件側道上の土のくぼみをも考慮して判断しているもので
はなく,転倒事故において,実際に,原告が本件で負ったような傷害が発生した事
例を経験したというものでもない。むしろ,経験した転落事故の事例に基づく一般
的な推論に過ぎないと評価されるものであり,原告が本件市道から本件側道に転落
したとする前記認定を左右するものではない。
また,Q大学大学院医学系研究科法医学教室准教授であるR医師の意見書(乙2
4,乙25)も,以下の検討のとおり上記認定を左右しない。
R医師の意見書の概要は,次のとおりである。頸髄損傷は,一般には,プールで
の飛び込みにおいてよく見られ,多くは,飛び込み時にプールの底で頭頂部を強打
することにより,頸椎の屈曲が強制される結果,頸椎の脱臼骨折を起こすことによ
り生じるとされている。この場合,脱臼骨折は,第5頸椎に生じることが多いとさ
れる。通常,3m上方の道路から転落した場合,立位の状態で転倒すると考えられ
るから,3mに身長を加えた4.5mの高さを頭部が移動することになる。このよ
うにして頭部がアスファルト面に衝突した場合には,通常であれば,頭蓋骨骨折,
脳挫傷,急性硬膜下血腫を生じることが確実であり,仮に,足から落ちたとしても,
着地を誤り,かなりの確率で手足を骨折するものと思われる。そのような外力が頸
部だけで吸収できるとは到底思われない。本件において,原告は,最終的に意識清
明となり,頭部にダメージを受けたとは考えにくい。また,第5頸椎に脱臼骨折を
生じ,頭頂部に打撲による皮下血腫を生じていたという。そして,原告が,事故発
生前に,生ビールを中ジョッキで約8杯摂取していたことからすれば,事故当時の
原告の血中アルコール濃度は,少なくとも1.5/以上であったと考えられmgml
る。上記のとおり,3m上方から転落した場合には,原告が負ったような程度の受
傷で済むとは考えられない一方で,原告の受傷は,プールでの飛び込みにより生じ
るものと類似していること,原告が事故当時酩酊状態にあったと考えられることか
らすれば,原告は,酩酊状態で,顎を引いた頸部を屈曲した状態で転倒し,頭頂部
を強打した際に,第5頸椎の脱臼を生じ,その結果,頸髄損傷を生じたと考えるの
が適当と思われる。
R意見書は,上記のとおり原告がアスファルト面に衝突したことを前提としてお
り,上記認定のとおり側溝に土がたまった所に衝突した事実を前提としない。判断
の前提が本件の事実関係と異なる。また,頸椎に第5頸椎の脱臼骨折のみを生じた
ことを前提としているが,本件では,前記認定のとおり,第4頸椎から第7頸椎ま
で多くの頸椎に重い損傷を受け,特に第5,第6頸椎は,椎体骨折で骨移植を要す
るほどの損傷を受けているのであって,頸椎の損傷の大きさについての検討がされ
ていない。更に,プールでの飛び込みと坂道での転倒の類似を指摘するが,プール
での飛び込みでは飛び込む面とプールの底との高さの差が1m程度はあるが,本件
側道は,坂道とはいえ4.6%の勾配しかないから,身長1.6mの原告が前のめ
りに転倒しても,道の高低差は,0.07m(1.6m×4.6%)しかない。仮
に頭頂部から頭を打ったとしても,本件側道の坂道で転んだだけでプールに飛び込
んで底に頭を打つ時ほど強い力が頭頂部に加わるとは考え難い。それなのに,R医
師は,法医学者として上記見解を示しながら,プールの飛び込みからの連想のみで
論旨を展開し,坂道で転んで本件のような頸椎の傷害を生じた事例を一つたりとも
具体的に示しておらず,学問的な見解として評価できるものとは到底いえない。
原告の両膝や右手に擦過傷が認められることからは,原告が転倒した可能性を推認
できないではないが,両膝や右手から地面に転倒したのであるとすれば,なおさら,
頭頂部が,頸椎骨折に至るほどの重大な外力を受けるとは考えにくい。
むしろ,本件柵の高さが50で,ちょうど原告の膝のあたりに位置し,原告cm
が両膝に擦過傷があり左膝に打撲痕が認められたことからすると,原告は,本件市
道に立ったままの状態で,身長と道路の高低差で約4.6m(被告の主張によれば
4.5m)の高さからいきなり頭が落ちたのではなく,原告が本件柵に膝を打って
前のめりになり,体の重心が本件柵を越えたところから頭の落下が始まったと考え
られるから,原告の頭部が本件側道に衝突した時に受けた外力は,4.5mの高さ
から直線的に落下した場合よりも少なかったと考えられる。そして,本件側道上の
土がたまった部分に落ちたことも考え合わせれば,原告が頭蓋骨骨折の傷害を負わ
なかったことをもって転落の事実を否定することはできない。
4本件市道の管理の瑕疵について
前記認定のとおり,本件市道は,街灯のほかに,a駅のホームに設置された照明
等によっても照らされていることから,歩行者は,夜でも本件市道と本件側道の落
差を容易に認識することができる明るさがあったと考えられる。しかし,本件市道
は,a駅の東口と南口の間に設置され,周りに商店もあって人通りも多く,約5.
8メートルの幅員を有するものの自動車も通るため歩行者が本件柵の近くを歩くこ
とも十分に考えられる。そして,その中には,終電の終着駅であるa駅で酒に酔っ
て降りた地理不案内の乗降客もあることは当然に予想される。そして,本件柵は,
本来歩行者や自動車が転落しないようにする目的で,前記認定のとおり昭和3年頃
に駅前が区画整理されたときに設置されたと考えられるのである。
それなのに,本件柵の上柵の高さは,約50しかなく,これは標準的な身長cm
の歩行者の膝の高さにあたる。そうすると,万一,歩行者がバランスをくずして本
件柵に膝を打ったときは,ただちに体の重心が柵を越え,しかも柵に膝を払われて
しまうため足を踏ん張ることができなくなり,体を曲げ重心を戻して転落を避ける
ことも不可能になるのである。
そこで,このような転落防止の観点から,「防護柵の設置基準」を定める建設省
昭和47年12月1日道企発第68号道路局長通達(昭和47年通達,昭和48年
4月1日から適用,乙15)は,「歩行者自転車等の炉外への転落を防ぐために必
要な区間に設置する歩道用防護柵(種別P)」について,上端の標準の高さを70
∼80と定め,これを都道府県知事を通じて市町村に周知徹底することを通達cm
している(通達2−1,2−2−3,3−3−3)。ただし,昭和47年通達は,
従来の形式の防護柵は,事故及び災害によって変形または破損して復旧する場合で
も,「できるだけ本要綱にそったものと取りかえることがのぞましい」と定めるに
すぎず(7−2の1項),高さが通達の定める標準に満たない歩道用防護柵を通達
の標準に沿ったものと取りかえることを通達したものではない。なお,原告は,
「池田市開発指導要綱細則」(甲14)が昭和47年通達を引用していることを根
拠として,昭和47年通達に基づく事務連絡等の通知により,歩行者の転落防止用
の防護柵の高さが110と定められたと主張するが,上記通達の記述及び甲1cm
6号証に図示された防護柵設置基準の変遷表に照らしても,全く根拠がないもので
あり,池田市の要綱細則の記載は,単なる誤記と認められる。
さらに,「防護柵設置要綱・資料集」(昭和61年7月社団法人B協会作成,甲
17)は,歩行者自転車用防護柵について,転落防止柵の高さ(路面から柵面の上
端までの高さ)は,110を標準とすることが記載された。110という高cmcm
さは,日本人男子の平均身長,身体の重心高さ及びその分散等を考慮して決定され
たものである。昭和47年通達を改定した「防護柵の設置基準」を定めた建設省平
成10年11月5日道環発第29号道路局長通達(甲3)は,昭和61年に「防護
柵設置要綱・資料集」が定めた標準を取り入れ,歩行者等の転落防止を目的として
設置する柵の路面から柵面の上端までの高さは110を標準とすることを定めcm
た(通達3−2の3)。しかし,この通達で改定された「防護柵の設置基準」(1)
は平成11年4月1日以降に設置されるものに適用されるものにすぎない(通達前
文)。
本件柵は,前記のとおり昭和3年頃に3mの高低差がある本件側道への歩行者の
転落防止の目的でa駅前の本件市道に設置されたにもかかわらず,設置当初から約
50の高さにすぎず,昭和47年通達で定められた高さ70以上という標準cmcm
すら20も下回る状態で34年を経ており,昭和61年7月の「防護柵設置要cm
綱・資料集」で合理的な根拠に基づき110という標準が示されてからでもこcm
れを60も下回る高さのまま約20年が経過していた。その間,本件柵は,柵cm
のコンクリート自体が崩壊しつつあるほど老朽化しており,既に本件事故の15年
前である平成3年までに,別紙8の①②の場所で2か所にわたりコンクリート製の
柵が欠落して応急修理がされるほど,老朽化した柵を弥縫策(一時的にとりつくろ
う策)で文字通り取り繕ってきたのである。
そして,原告は酒に酔って誤って転落したものの,本件市道がa駅前の夜でも人
通りの多い場所にあることからすれば,深夜帰宅途中で地理不案内な者が,仕事に
疲れたり酒に酔ったりして通るなど,多様な市民が通行することが当然に想定され
るのであり,本件市道は,そうした多様な市民が安心して歩行するに足りるa駅前
にふさわしい安全性を備えているべきものと考えられる。原告は,本件事故当時,
相当程度酒に酔っていたと考えられるが,2度にわたり電車を乗り換え,乗越運賃
の精算を行い,階段を降りてa駅を出ていることからすれば,前後不覚の状態にま
で陥っていたとは考えられず,原告の行動が,通常予測される危険の範囲を超えて
いたとまでいうことはできない。原告のように相当程度酒に酔った者も,本件市道
を歩行することは想定されていたというべきである。
以上の事実によれば,「防護柵の設置基準」や「防護柵設置要綱・資料集」など
の通達等の基準ないし標準が,昭和3年に設置された本件柵の直接適用されないと
しても,本件柵は,設置された時期からして,もっぱら歩行者の転落を防止するこ
とを目的として設置され,被告もその目的で本件柵を管理してきたにもかかわらず,
歩行者の転落防止の観点での安全性を有しないことが通達等により客観的に示され,
しかもその間に本件柵が老朽化して2度も柵が壊れているのに応急修理の弥縫策を
講ずるばかりで長期間放置され,駅前という人通りの多い場所には本来あってはな
らないはずの歩行者転落の危険性が生じていたものと認められる。
すなわち,本件柵は,a駅前にある本件市道に設置された歩行者転落防止用の防
護柵としては,本件市道において通常想定される多様な歩行者の本件側道へ転落の
危険性を十分に防止するに足りるものではなく,本件市道は,通常有すべき安全性
を欠いていたものというべきである。そして,上記のとおり本件市道がa駅前にあ
り,本件柵がたびたび壊れるほど老朽化しているのに,通達等に定める安全性基準
を満たさないことが示されてからも長期間こわれた柵を応急修理で繕ってきたこと
を考えれば,本件柵について市民からの改善要望がなく,現にこれまで転落事故が
起こった記録がないことや,財政的・予算的な制約があることによって,このよう
な危険性を放置したことが正当化されるものでもない。
そして,原告は,酒に酔っていたとはいうものの,本件柵が通達等に定める安全
性の基準である110の高さに改修されていさえすれば,バランスを崩して本cm
件柵にぶつかったとしても体勢を立て直すことが可能で,本件市道から本件柵を越
えて本件側道に転落することはなかったと考えられるから,歩行者転落防止用の防
護柵としての安全性を欠いていることが明らかになっているのに長期間本件柵を放
置したという本件市道の管理の瑕疵により本件事故に遭い,頸髄損傷の傷害を負い,
四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)の後遺障害を負ったものと認められる。
5損害について
治療費315万2570円(請求同額)(1)
前記認定事実によれば,四肢・体幹機能障害(四肢麻痺)の後遺障害は,平成1
8年9月29日に固定し回復不能になったと認められるが,原告は,その後もE病
院からF病院にリハビリのために転院した平成19年1月16日まで,E病院にお
いて,やけどや尿路感染など頸髄損傷の治療に併発した傷病の治療を継続して受け
ていたと認められるから,E病院を退院するまでの治療費を損害として認める(甲
7の1∼11)。
休業損害112万4556円(請求額210万4008円)(2)
原告は,本件事故前,1日あたり9069円の収入を得ていた(甲8∼甲10。
枝番を含む。)。本件事故が発生した平成18年5月29日から後遺障害の症状固
定日である平成18年9月29日までの124日間に発生した休業損害は,906
9円×124日=112万4556円となる。
入院雑費34万8000円(請求同額)(3)
に述べた理由により,本件事故日からE病院退院の前日までの232日間に(1)
ついて1日1500円の入院雑費を損害と認める。
傷害慰謝料300万円(請求同額)(4)
傷害の治療のための入院期間は,上記に述べた理由によりE病院退院までの(1)
約8か月間とみるのが相当である。頸髄損傷という重傷を負い,約8か月間入院を
余儀なくされた精神的苦痛に対する慰謝料は,300万円が相当である。
傷害に伴う損害(小計)762万5126円(5)
後遺障害による逸失利益4865万8616円(6)
(請求額4513万6568円)
前記認定事実によれば,原告は,頸髄損傷の後遺障害として四肢・体幹機能障害
(四肢麻痺)があり,これは神経系統の機能に著しい障害を残し,常に介護を要す
るものに相当し(自動車損害賠償保障法施行令別表第1第1級1号参照),労働能
力を100%喪失したものと認められる(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び
自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告
示第1号)別表I参照)。
原告は,症状固定時32歳の高卒女子であり,本件事故により就労可能期間であ
る67歳までの35年間の収入を全く得られなくなった。35年という長期の逸失
利益の算定は全年齢の平均給与によるのが相当である。したがって,逸失利益の算
定基礎とする収入は,平成18年賃金センサス・産業計・企業規模計・女子・高卒
の全年齢の年間給与額297万1700円となる(21万1300円×12+43
万6100円,甲11)。
よって,後遺障害による逸失利益は,次のとおり4865万8616円となる。
297万1700円×100%(労働能力喪失率)×16.374(原告が67
歳になるまでの35年間に対応するライプニッツ係数)=4865万8616円
後遺障害慰謝料4000万円(請求同額)(7)
原告が本件事故により負った後遺障害は,前述のとおり,頸髄損傷による四肢麻
痺という重大なものであって,原告は,日常生活のほとんどの動作を自力で行うこ
とはできず,常に介護を要する状態である。本件事故当時32歳であった原告にと
って,酒に酔って自らの不注意で招いた事故とはいえ(この点は後記のとおり過失
相殺により十分に考慮する。),本件事故により生涯にわたり介護を要する重大な
後遺障害を負ったことに対する精神的苦痛は,両親の介護を現に受け,将来公的扶
助による介護を受けられる可能性があることを考慮したとしても,非常に大きいも
のと認められる。
そして,自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済
金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)においては,原告の
後遺障害に相当する自動車損害賠償保障法施行令別表第1第1級1号の後遺障害の
慰謝料は,1600万円とされ,介護を要しない後遺障害で最も重い同別表第2第
1級1号の後遺障害の慰謝料1100万円を500万円(45%強)上回っている。
原告が介護費用の損害を請求せず,また現に介護にあたっている両親が固有の慰謝
料の請求をしていないことも考慮すれば,本件においては,後遺障害による原告の
精神的苦痛に対する慰謝料の額は,4000万円とするのが相当である。
後遺障害に伴う損害(小計)8865万8616円(8)
損害合計(との合計)9628万3742円(9)(5)(8)
健康保険の保険給付金(既払金)277万9141円(10)
原告は,L健康保険組合から,の治療費のうち277万9141円につき,(1)
高額療養費,高額療養付加金,一部負担還元金,傷病手当金として保険給付金の支
給を受けた(甲13の1から5)。
既払金控除後の損害額9350万4601円(11)
の健康保険の保険給付金は,過失相殺前に控除するのが相当である。(10)
過失相殺後の損害額1870万円(12)
前記認定事実によれば,本件事故当時の原告の具体的な酒酔いの程度を直接に裏
付ける証拠はないとはいえ,原告は,本件事故前,約7時間にわたってビールを中
ジョッキで約8杯飲んでいた。自力で電車を降り,乗越運賃を精算している点で,
およそ路上を歩行することが許容されないほどの酒酔い状態にあったとは認められ
ないが,飲酒量や事故態様に照らせば,原告は,本件事故当時,相当深く酒に酔っ
ていたと考えるのが相当である。また,本件柵は,安全性を欠いているものではあ
ったが,本件柵から歩行者が転落した事故の記録はない。a駅は,A京都線の最終
電車の終着駅であって,酒に酔って本件市道を夜間に歩行する者もこれまで多くあ
ったはずであるのに本件事故に類する転落事故が発生していないことからも,原告
の酩酊の程度はかなり高かったものと推認せざるを得ない。
したがって,原告の上記過失の大きさと前記認定の本件市道の管理の瑕疵の程度
を勘案し,被告が原告に賠償すべき損害額を算定するにあたっては,8割の過失相
殺を行うのが相当である。したがって,過失相殺後の損害額は,の損害額の2(11)
割(1000円未満切捨)に相当する1870万円とすべきである。
弁護士費用180万円(13)
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用の損害は,180万円と認める。
損害合計(との合計)2050万円(14)(12)(13)
6結論
以上によれば,高さが50しかないため歩行者転落防止柵としての安全性をcm
欠いた本件柵を長期間放置したという被告(摂津市)の本件市道の管理の瑕疵によ
り,本件市道を酒に酔って歩いていた原告が,誤って本件柵を越えて3m下の本件
側道に頭から転落し,これにより頸髄損傷の傷害を負って四肢・体幹機能障害(四
肢麻痺)の後遺障害を負ったのであるから,被告は,国家賠償法2条1項により,
本件事故により原告が蒙った損害2050万円(8割を過失相殺した後の損害額1
870万円と弁護士費用180万円の合計額)及びこれに対する本件事故の日であ
る平成18年5月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金を支払う義務がある。
よって,原告の請求を上記理由がある限度で認容し,その余の請求を棄却するこ
ととし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第13民事部
小林久起裁判長裁判官
府内覚裁判官
脇田未菜子裁判官

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