弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人伊藤俊郎の上告理由について。
 (1) まず論旨は原判決は昭和二六年六月頃控訴人(上告人)、訴外D、被控
訴銀行(被上告銀行)E支店員F、Gの四名間に、本件契約が成立した当時におけ
る右Dの被上告銀行に対する債務の額を確定していない点において審理不尽、理由
不備の違法があると主張する。
 しかし当時における右債務額については上告人の被上告銀行に対する債務は少く
とも七九、二〇〇円を下らない残元金並にこれに対する利息債務が存在していたこ
とは原審の認定するところでありその認定は右の限度で充分であると思料される。
この点に関し、原判決には所論の如き審理不尽、理由不備は存せず、論旨は採るを
得ない。
 (2) 次に論旨は原判決は控訴人(上告人)は判示の如き本件工場自体に特別
の価値を認めて二〇、○○○円をもつて買うという特別の事情はなく、もつぱらそ
の代金として、二〇、○○○円を訴外Dのために被控訴(被上告)銀行に支払い、
それによつて本件居宅の抵当権の抹消を得るというだけのために二〇、○○○円の
高価で買い受けることにしたものであることを認定しながら、他方被上告銀行側と
しては、抵当権を抹消すべき建物は本件工場のみであると考えていたものと認めざ
るを得ないと認定しているけれども、これは前記控訴人(上告人)側に関する認定
と比照するときは矛盾していることであつて、被上告銀行としてはほとんど無価値
な建物(本件工場)の上の抵当権を抹消して貰うために建物の価値(原判決は本件
工場の昭和二六年六月当時の価格を三、三〇〇円と認定している)をはるかに上廻
る代償即ち右二〇、○○○円を支払うことの取引の通念に反することは充分に認識
していたものと認むべきであつて、右原判決の認定は著しく経験則に違反している
と主張する。
 しかし、上告人(控訴人)が前記二〇、○○○円を被上告銀行に支払うことによ
つて、本件工場のみでなく本件居宅についても、抵当権を抹消し得られると確信し
ていたことは原判決認定のとおりであるが、他方被上告銀行としても、原判決認定
の如く、訴外Dに対し金七九、二〇〇円を下らない債権を有しており、これを右二
〇、○○○円の弁済だけで、当時四五、○○○円の価格を有した本件居宅、及び三、
三〇〇円の価格を有した本件工場(二棟)の双方の抵当権を抹消するということは
通常の取引上考えられないことであるから、この点に関する原判決の認定はこれを
是認できないことはない。この点の認定に関し、原判決には所論の如き経験則違反
はなく、論旨は原審の適法になした証拠の取捨判断または事実の認定を非難するに
帰し、採るを得ない。
 (3) 更に論旨は原判決が被上告銀行につき悪意の受益者(民法七〇四条)た
ることの証拠がないと認めたことを非難する。
 しかしここに悪意の受益者とは原判決もいつているように、法律上の原因のない
ことを知りながら利得した者をいうのであつて、これを本件についてみれば、昭和
二六年六月頃関係者の間に、本件契約が成立した際、及びその後被上告銀行が右契
約が法律行為の要素に関する錯誤により無効であること即ち、前記二〇、○○○円
の支払いによつて抵当権が抹消される物件は上告人の考えと被上告銀行の考えとに
喰い違いがあるということを知つて、本件の一四、○○○円を受領したことをいう
ことになるが、原判決の認定した各事実証拠によつても、被上告銀行がこのような
事実を知つていたことは認められないから、原判決が、「これを認めるに足る証拠
がない」として、右悪意の事実を否定しても、採証法則に違反するものということ
はできない。
 この点の論旨は結局原審の適法になした証拠の取捨判断、または事実の認定を非
難するに帰し、論旨は採るを得ない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊

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