弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴人が当審で追加的に変更した訴えのうち、「被控訴人加茂市は、学校法人
加茂暁星学園に対し、四年制大学建設事業に関し、加茂市の公金を寄付する旨の決
定(議決)をしてはならない。」との訴え及び「被控訴人加茂市長は、同市長がし
た学校法人加茂暁星学園への平成四年度分寄付金九七九〇万円を支出する旨の決定
を取り消す。」との訴えをいずれも却下し、「被控訴人加茂市長は、平成四年度分
寄付金九七九〇万円を支出する旨の決定後、学校法人加茂暁星学園に対し、加茂市
の公金の支出の承諾をしてはならない。」との請求を棄却する。
三 控訴人の学校法人加茂暁星学園に対する訴訟参加の申立てを却下する。
四 控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
(当審における参加の申立て)
学校法人加茂暁星学園に対する訴訟参加の申立てを許可する。
(本案の申立て)
1 原判決を取り消す。
2 原判決中、被控訴人加茂市に対する本訴請求をいずれも新潟地方裁判所に差し
戻す。
3 被控訴人加茂市長に対する本訴請求中、同市長が、平成四年三月二四日、学校
法人加茂暁星学園との間で締結した別紙物件目録記載一の(一)ないし(八)の土
地についての無償譲渡契約及び同年六月三〇日、同学園との間で締結した別紙物件
目録記載二の(一)及び(二)の土地についての無償譲渡契約をいずれも取り消す
旨を求める部分及び同市長が平成四年七月三〇日同学園の四年制大学建設事業に関
して行った建設事業費寄付金五八〇〇万円についての支出命令を取り消す旨を求め
る部分をいずれも新潟地方裁判所に差し戻す。
4 被控訴人加茂市収入役に対する本訴請求中、同収入役が平成四年七月三〇日、
学校法人加茂暁星学園の四年制大学建設事業に関して行った建設事業費寄付金五八
〇〇万円についての支出行為を取り消す旨を求める部分を新潟地方裁判所に差し戻
す。
5 被控訴人加茂市は、学校法人加茂暁星学園に対し、四年制大学建設事業に関
し、加茂市の公金を寄付する旨の決定(議決)をしてはならない。
6 被控訴人加茂市長がした学校法人加茂暁星学園への平成四年度分寄付金九七九
〇万円を支出する旨の決定を取り消す。
7 被控訴人加茂市長は、前項の決定後、学校法人加茂暁星学園に対し、加茂市の
公金の支出の承諾をしてはならない。
8 被控訴人加茂市収入役は、一審口頭弁論終結時以降、学校法人加茂暁星学園の
四年制大学建設事業に関し、同学園に向けて公金を支出してはならない。
9 訴訟費用は、第一、二審を通じ、いずれも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
主文と同旨
第二 当事者の主張
当事者の主張は、原判決「第二 当事者の主張」(原判決四丁裏一〇行目から同一
四丁表八行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
なお、控訴人は、控訴人が当審で陳述した別紙控訴状、準備書面(一)ないし
(三)、控訴状補正書及び準備書面(五)に記載されるとおり種々主張するが、そ
の趣旨は原審で主張した違法事由と同一であると解せられる。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 当裁判所も、控訴人の当審における訴えの追加的変更部分を除いた本訴請求に
関し、
1 控訴人の被控訴人加茂市に対する本訴請求中、加茂市議会の既にした各議決を
取り消す旨の裁判を求める部分
2 被控訴人加茂市長に対する本訴請求中、同市長が学校法人加茂暁星学園との間
でした別紙物件目録各記載の土地についての各無償譲渡契約を取り消す旨の裁判を
求める部分
3 同市長が平成四年七月三〇日、同学園の四年制大学建設事業に関して行った建
設事業費寄付金五八〇〇万円についての支出命令を取り消す旨の裁判を求める部分
4 同市長は、同学園との間で、同学園の四年制大学建設事業に関し、被控訴人加
茂市が同学園に建設事業費寄付金を交付する旨の寄付金契約を締結してはならない
との訴えのうち、既に締結された平成四年度分九七九〇万円の寄付金契約の締結の
差止めの裁判を求める部分
5 被控訴人加茂市収入役に対する本訴請求中、同収入役が平成四年七月三〇日、
同学園の四年制大学建設事業に関して行った建設事業費寄付金五八〇〇万円につい
ての支出行為を取り消す旨の裁判を求める部分
の各訴えはいずれも却下すべきものであり、
6 同市長に対し、平成四年度分寄付金九七九〇万円を支出する旨の決定後、同学
園に対する加茂市の公金の支出を決定してはならない旨の裁判を求める部分
7 同収入役に対し、本件一審口頭弁論終結時以降、同学園の四年制大学建設事業
に関して同学園に対する公金の支出をしてはならない旨の裁判を求める部分
の各請求はいずれも棄却すべきものと判断するが、その理由は原判決「理由」(原
判決一五丁表一行目から二八丁表三行目まで)説示のとおりであるからこれを引用
する。
二 次に、控訴人が当審で訴えを追加的に変更した部分について判断する。
1 控訴人が被控訴人加茂市に対し、学校法人加茂暁星学園の四年制大学建設事業
に関し、加茂市の公金を寄付する旨の決定(議決)をしてはならない旨の裁判を求
める訴えについては、これが地方自治法二四二条の二第一項一号に基づく住民訴訟
であり、控訴人は、被控訴人加茂市に対して、同法条に基づき加茂市議会の議決の
差止めを求めていることは明らかである。ところで、右法規に基づき、普通地方公
共団体の住民が許容される差止め請求訴訟は、同法二四二条所定の違法な財務会計
上の行為に関してのものであり、その差止め請求の対象となるのは、当該普通地方
公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員の違法
又は不当な同法所定の四種類の財務会計上の行為及び一定の怠る事実であるから、
議会の行為はその議決をも含め請求の対象とはならないものである。したがって、
控訴人のこの部分の訴えは、その余の点について判断するまでもなく不適法として
却下を免れない。
2 控訴人が被控訴人加茂市長を相手方として、同市長が学校法人加茂暁星学園に
対してした平成四年度分寄付金九七九〇万円を支出する旨の決定の取消しの裁判を
求める部分については、前記引用にかがる原判決理由説示のとおり(同一六丁裏一
行目から同五行目まで)、平成四年五月一日、同市長が右の旨の決定をしたことが
認められるところ、右訴えは、地方自治法二四二条の二第一項二号に基づく住民訴
訟であるが、同号で取消しの対象となる行為は、行政処分性を有する行為でなけれ
ばならない。そこで、同市長のした右決定が同号にいう行政処分に該当するかにつ
いてみるに、前記引用にかかる原判決理由説示(同一六丁表五行目から同一七丁表
八行目まで)のとおり、右決定は、私法上の贈与契約の申込みに対する承諾と同様
のものであり、行政処分性を有しないものであると解すべきである。したがって、
控訴人の右訴えは不適法なものとして却下を免れない。
3 控訴人が被控訴人加茂市長を相手方として、前記平成四年度分寄付金九七九〇
万円の支出決定後、同市長は、同学園に対し、加茂市の公金の支出の決定をしては
ならないとの裁判を求める部分については、前記引用にかかる原判決の理由「第二
 本案について」(同一七丁裏六行目から二八丁表三行目まで)に説示のとおり、
学校法人加茂暁星学園に対する加茂市の公の財産の支出に違法性は認められず、そ
の理由がないから棄却すべきものである。
三 なお、控訴人は、当審において、行政事件訴訟法二二条に基づき、学校法人加
茂暁星学園を本件訴訟に訴訟参加させるべき旨の裁判を求めているので、この点に
ついて判断するに、同法二二条は、地方自治法二四二条の二が規定する住民訴訟に
おいては、その第一項二号の取消訴訟、無効確認訴訟についてのみ準用されるが、
これにより、訴訟参加が認められる第三者とは、「訴訟の結果により権利を害され
る」第三者であると解されるところ、本件住民訴訟で地方自治法二四二条の二第一
項二号に基づき控訴人が求める裁判は、前記のとおり、被控訴人加茂市に対する市
議会決議の取消し、被控訴人加茂市長に対する学校法人加茂暁星学園への土地無償
譲渡契約の取消し、同市長が同学園に対してした寄付金の支出命令の取消し、同市
収入役に対する同寄付金の支出行為の取消しであるが、請求に対する判決の結果に
よって、同学園の権利が害されることはないといわねばならない。すなわち、前記
引用にかかる原判決理由説示のとおり、同市の同学園に対する寄付は、加茂市補助
金交付規則に基づき交付されるものであるが、同規則は、交付についての細則を定
めたものに過ぎず、また、土地無償譲渡契約も私法上の契約であって、これらはい
ずれも行政処分性を具備せず、したがって、これらの寄付及び無償譲渡は、同学園
に対して、経済的な利益をもたらすことはあるものの、それは経済的な利益に過ぎ
ず、かつ、事実上のものであって、本件訴訟の結果により、同学園が権利を害され
ることはないからである。右によれば、控訴人の前記参加の申立ては理由がないか
ら、これを却下することとする。
四 以上によれば、控訴人の本件訴えのうち、被控訴人加茂市に対する訴え、被控
訴人加茂市長に対する訴えのうち、同市長がした学校法人加茂暁星学園への土地の
各無償譲渡契約の取消し、同市長のした同学園への五八〇〇万円の寄付金の支出命
令の取消し及び同市長が同学園に対してした平成四年度分寄付金九七九〇万円を支
出する旨の決定の取消しを求める訴え並びに被控訴人加茂市収入役に対する訴えの
うち、同収入役が平成四年七月三〇日、同学園の大学建設事業に関して行った建設
事業費寄付金五八〇〇万円の支出行為の取消しを求める部分はいずれも不適法であ
るからこれを却下すべきであり、その余はいずれも理由がないから棄却すべきもの
であり、前記当審における訴えの追加的変更部分を除く部分について、これと同旨
の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、当
審における訴えの追加的変更部分のうち、被控訴人加茂市は、同学園に対し、大学
建設事業に関して加茂市の公金を寄付する旨の決定(議決)をしてはならないとの
部分及び同市長は、同市長がした同学園への平成四年度分寄付金九七九〇万円を支
出する旨の決定を取り消すとの部分の訴えをいずれも却下し、被控訴人加茂市長
は、平成四年度分寄付金九七九〇万円を支出する旨の決定後、同学園に対し、加茂
市の公金の支出の決定をしてはならないとの部分の請求を棄却し、控訴人の当審に
おける参加の申立ては却下することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八
九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 岩佐善巳 稲田輝明 平林慶一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛