弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人甲、同乙の平等負担とする。
         理    由
 被告会社および被告人乙、同甲の弁護人岩村隆弘、岩村辰次郎、被告人乙、同甲
の弁護人名川保男の上告趣意は、法令違反と量刑不当の主張、被告人乙、同甲の弁
護人長谷川一雄の上告趣意は、法令違反の主張であつて、いずれも刑訴四〇五条の
上告理由に当らない。
 なお、所論法令違反の主張について左のとおり附加する。
 本件罐詰類についての物品税と取引高税は、昭和二四年法律二八六号(以下法二
八六号と略す。)および同年法律二八五号(以下法二八五号と略す。)によつて、
その各施行期日である昭和二五年一月一日以降廃止されたのであるが、右施行前に
課し又は課すべきであつた物品税および右施行前に取引金額を受領した取引に係る
取引高税については、法二八六号附則二項および法二八五号附則三項が「なお従前
の例による」旨を規定しているので、それらの納付等については右各法律施行后に
おいてもなお従前の各法律の適用があるわけである。しかし、右附則二項および附
則三項の各規定は、右の趣旨を規定したに止まり、その逋脱に関する行為の処罰に
ついてまで規定した趣旨のものとは解せられない。また、法二八六号附則八項およ
び法二八五号附則一〇項にいう「この法律施行前にした行為」とは、右各附則の他
の規定の文言および他の法律等において使用されている一般の用語例に徴して見て
も、その文言どおり、右各法律施行日である前記日時以前の行為を指示するもので
あつて、その施行後の行為を意味するものとは解せられない。されば、前記附則二
項および附則三項の各規定によつて、「従前の例による」とされた物品税、取引高
税の逋脱に関する行為であつても、それが右各法律施行後に属するものであるかぎ
り、前記所定の「この法律施行前にした行為」には該当せず、従つて、右附則八項
および附則一〇項の各規定は、右各法律施行后に成立する犯罪については、なんら
の関係がなく、その適用がないといわねばならない。
 ところで、本件罐詰類に対する昭和二四年一二月分の所論各租税は、前記附則二
項および附則三項の各規定によつて従前の例によることとなり、物品税については
昭和二五年一月末日までに、また取引高税については同年一月一〇日までに納付す
べきであり、その逋脱犯が成立するものとすれば、右各納期日の徒過によつて既遂
となるものと解すべきであるから(昭和三一年(あ)四七号、同年一二月六日第一
小法廷決定、刑集一〇巻一二号一五八三頁参照)、かように前記各法律施行后に成
立する逋脱既遂犯を前記附則八項および附則一〇項の各規定によつて従前の各法律
を適用処罰し得ないことは明白である。しかるに、原判決が、昭和二四年一二月分
の所論各租税について、その逋脱既遂犯が右各法律施行后に成立すると解しながら
も、なおそれは、前記附則二項および附則三項の各規定の趣旨から前記「この法律
施行前にした行為」に該当すると解すべきであるとしたのは、まことに所論指摘の
とおり、法令の解釈を誤つた違法があるといわねばならない。
 しかし、一審判決挙示の各証拠によれば、所論昭和二四年一二月の物品税および
取引高税についても、その以前のものと同様、当初からこれを逋脱する目的で、製
品を製造場から移出他に販売するに際し、B伝票を作成し、B伝票による分につい
てはその数量、受領代金等をすべてB帳簿(一審判決摘示の別途の総勘定元帳、現
金出納簿)に記入して所轄税務官吏の検査に供すべき正規の帳簿に記入せず、しか
も右B伝票B帳簿は右税務官吏に対しては秘密の取扱いをし、そして翌月一〇日ま
でになすべき法律所定の各申告は、右脱漏された正規帳簿に基ずいて過少申告をす
るという方法によつて、その脱税をしたものである事実が認められる。一審判決の
判示第一および同第二(二)の事実摘示は、十分その意を尽くしていないけれども、
その挙示の各証拠と対照すれば、右の趣旨であると認めるのが相当である。そして、
右のように、物品税又は取引高税を逋脱する目的で、製造場から製品を移出販売し
その代金を受領しながら、これについては所轄税務官吏には秘密の伝票帳簿を作成
記入し、右官吏の検査に供すべき正規の帳簿に記入しないようなことをすれぼ、そ
の行為は、法二八六号による改正前の物品税法一八条一項にいう「不正の行為によ
り物品税を逋脱せんとした」、又は法二八五号による廃止前の取引高税法四一条一
項三号の「不正の行為により取引高税を免れようとした」ものに当ると解するを相
当とする。さすれば、所論昭和二四年一二月分の各租税について前記行為が法二八
六号および法二八五号各施行前の同月中になされていることはいうまでもないから、
その所為は、前記「この法律施行前にした行為」に該当し、右改正又は廃止前の各
罰則により「逋脱せんとした」又は「免れようとした」ものとして処罰を免れない
ものといわねばならない。
 されば、一審判決およびこれを維持した原判決が、所論昭和二四年一二月分の各
租税についてその逋脱既遂犯を認定処罰したことは、前記のような法令解釈の誤り
に出でた違法があるけれども、所論各所為は結局において右各判決の適用したもの
と同一罰条によつて処罰を免れないものであること前示のとおりであるから、右の
違法はいまだ刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条(被告人甲、同乙のみ)により裁判官全員一致の意
見で主文のとおり判決する。
  昭和三三年三月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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