弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人等三名を免訴する。
         理    由
 被告人Aの弁護人近藤亮太、同奥村仁三、同寺尾元実の上告趣意、同被告人の弁
護人奥村仁三の上告趣意及び被告人B、同Cの弁護人林武雄の上告趣意は、それぞ
れ末尾添附のとおりである。
 職権により調査するに、
 本件公訴事実中、被告人Aは、昭和二五年八月二八日頃法定の海外旅行証明書の
発行を受けることなく、漁船D丸(四六噸八五)に乗り組み、三重県南牟婁郡a海
岸よりb島およびc島まで不法出国したとの昭和二一年勅令第三一一号違反の事実
(第一審判決第一の(一)の事実)は、右行為当時においては、昭和二二年四月一
四日附連合国最高司令官の「日本人の海外旅行者に対する旅行証明書に関する覚書」
により禁止され占領目的に有害な行為として処罰されていたのであるが、昭和二六
年一二月一日以降は、日本人の海外渡航には連合国最高司令官の許可を要しないこ
ととなり、従つて右許可による旅行証明書の発行を受ける必要がなくなり、処罰さ
れることもなくなつたので、右被告人の行為に対しては、原判決後の法令により刑
の廃止があつたものと解すべきことは、昭和二七年(あ)第一五七〇号、同二九年
一二月一日言渡大法廷判決(集八巻一二号一九一一頁)の判示するとおりである。
よつて、右被告人に有罪の言渡をした第一審判決並びにこれを維持した原判決は破
棄を免れない。
 次に本件公訴事実中、
 (一)被告人Aは、E、F、G等と共に、前記b島およびc島において、薬莢、
その他真鍮屑二〇三三一瓩、銅屑三六九八瓩を前記D丸に積込み、昭和二五年九月
二七日頃三重県南牟婁郡d港に入港しその一部である銅屑三六九八瓩、真鍮屑三二
六瓩を同港に陸揚して、これに対する関税四六〇円の納付を免れて関税を逋脱し、
 (二)被告人Aは右残りの真鍮屑を名古屋に廻漕して他に売却しようと企て、被
告人B、同Cはその輸送を承諾し、同年九月末頃三重県e港より名古屋までこれを
廻送し、同年一〇月三日頃被告人B、同Cにおいても右金属が日本領土外から輸送
して来た物であることを知悉しながら、三名共謀の上、同年一〇月三日頃同市f区
g町h番地先i岸壁に右真鍮屑一二五一九瓩を陸揚し、これに対する関税一四六〇
円を納付しないで逋脱し、他の七四八六旺はこれを陸揚しようとしたが警察署員に
発見されたため、これに対する関税八七〇円の逋脱の目的を遂げなかつたものであ
る。との各関税法違反の事実(第一審判決第一の(二)及び第二の事実)について
は、右b島およびc島は、南西諸島に属するものであつて、右行為当時においては、
関税法の適用上は外国とみなされていたのであるが、昭和二七年二月一一日以降は
右地域は外国とみなされなくなり本邦の地域とせられたので、同日以降は右公訴事
実のような関税法違反の罪については、原判決後の法令により刑が廃止されたとき
に該当するものと解すべきこと昭和二五年(あ)第二七七八号同三二年一〇月九日
言渡大法廷判決及び同二七年(あ)第二四五六号同三二年一〇月九日言渡大法廷判
決において判示されているところと同一である。よつて、右公訴事実について被告
人等に有罪を言渡した第一審判決及びこれを維持した原判決は、この点において破
棄を免れない。
 よつて、弁護人等の上告趣意に対する判断を省略し、刑訴四一一条五号により原
判決並びに第一審判決を破棄し同四一三条但書に従い本件について更に判決をする。
 本件公訴事実中、被告人Aに対する前記昭和二一年勅令第三一一号違反の点(第
一審判決第一の(一)の事実)は犯罪後の法令により刑が廃止されたものであり、
又被告人A、同B、同Cに対する前記各関税法違反の点(第一審判決第一の(二)
及び第二の各事実)についても犯罪後の法令により刑が廃止されたものであること
前記のとおりであるから、刑訴四一四条、四〇四条、三三七条二号により、各被告
人に対し、いずれも免訴の言渡をなすべきものとし、主文のとおり判決する。
 この判決は、昭和二一年勅令第三一一号違反の点について、裁判官田中耕太郎、
同斎藤悠輔の少数意見があり、又関税法違反の点について、裁判官田中耕太郎、同
島保、同斎藤悠輔、同入江俊郎の少数意見があるほか裁判官の一致した意見による
ものである。
 裁判官入江俊郎の昭和二一年勅令第三一一号違反の点に関する意見は、前記昭和
二七年(あ)第一五七〇号同二九年一二月一日言渡大法廷判決記載の多数意見と同
一である。
 裁判官小林俊三は、関税法違反の点に関し、昭和二七年(あ)第四三四号同三〇
年二月二三日言渡大法廷判決(集九巻二号三四四頁)記載の同裁判官の意見と同一
意見を附加する。
 昭和二一年勅令第三一一号違反の点に関する、裁判官田中耕太郎、同斎藤悠輔の
少数意見は、密出国したとの昭和二一年勅令第三一一号違反の罪については犯罪後
の法令により刑の廃止があつたものではないというのであつて、昭和二七年(あ)
第一五七〇号同二九年一二月一日言渡大法廷判決(集八巻一二号一九一一頁)記載
の右各裁判官の反対意見のとおりである。
 関税法違反の点に関する、裁判官田中耕太郎、同島保、同斎藤悠輔、同入江俊郎
の少数意見は、被告人等の本件関税法違反の罪については、犯罪後の法令により刑
の廃止があつたものではないというのであつて、昭和二五年(あ)第二七七八号同
三二年一〇月九日言渡大法廷判決及び同二七年(あ)第二四五六号同三二年一〇月
九日言渡大法廷判決記載の右各裁判官の反対意見のとおりである。裁判官霜山精一、
同井上登、同栗山茂、同岩松三郎、同谷村唯一郎および同本村善太郎は退官のため
本件評議に関与しない。
 検察官安平政吉、同竹原精太郎、同宮崎三郎、同神山欣治出席。
  昭和三二年一二月四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    入   江   俊   郎

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