弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人新谷春吉、同高梨克彦の上告理由第一点について。
 「契約の当事者は、特段の事情のないかぎり、契約の内容に照応する法律効果の
発生を期待して当該契約を締結するものであり、全く無効な契約をする筈がない」
との原審の見解は、一般契約意思の解釈論として正当であり、所論のような経験則
違背があるとは認められない。そしてこの見解に立つ以上、「特段の事情の認めら
れない本件においては、本件土地賃貸借契約は、当時施行中の農地調整法五条所定
の地方長官の認可を効力発生の停止条件として締結されたものであると認めるのを
相当とする」という原審の判断もまた、その確定した事実関係の下において正当で
あるといわなければならない。
 なるほど、所論の如く、被上告人が本件土地賃貸借契約締結後直ちに本件土地の
引渡しを受けなかつたのは、当時いまだ被上告人に建物建築の準備ができていなか
つたからであり、地方長官の認可云々については、なんらの話し合いもなかつたよ
うではあるが、当事者がそのことに関して全く触れるところなかつた所以のものは、
原判決も認めるように、当時本件土地は区画整理実施の区域に含まれていて、早晩
宅地化される土地であることを互に了知していたからであると解されなくはないし、
また申請すれば認可の可能性十分であつたことが客観的に明瞭であるから、原判決
が、「特段の事情の認められない本件において」と断つて、前記の如き判断をした
のは正当であり、なんら所論の違法があるとは考えられない。
 同第二点について。
 所論摘示の原判示は、そのとおりに支持さるべきであり、なんら法令の誤解があ
るとは認められない。所論は結局独自の見解を主張するものであるから採るを得な
い。
 同第三点について。
 本件土地が区画整理事業の進行によつて宅地化されるに至つたものである旨の主
張は、被上告人が原審においてこれをしていることが窺われるから(昭和三三年九
月一八日口頭弁論調書、同月六日付準備書面参照)、原審は当事者の主張しない事
実に基いて判決したものということはできない。
 また、本件契約は、地方長官の認可を効力発生の停止条件としたものと解すべき
であるというのは、原判決が証拠によつて適法に確定した事実関係によるものであ
るから、この点においても原判決に所論の違法があるとは考えられない。それゆえ
論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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