弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人の上告趣意第一点について。
 当裁判所の判例に従えば、犯人の処罰は、特別予防及び一般予防の要請に基いて
各犯罪各犯人毎に妥当な処理を講ずるものであるから、各犯人毎にその処遇の異な
ることあるべきは当然である。事実審たる裁判所は、犯人の性格、年齢及び境遇並
に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を審査してその犯人に適切妥当な刑罰を量定する
のであるから、犯情の或る面において他の犯人に類似した犯人であつてもこれより
重く処罰せられることのあるのは理の当然であり、これを目して憲法一四条の規定
する法の平等の原則に違反するということはできない。(昭和二三年(れ)四三五
号同年一〇月六日大法廷判決)。そうして刑の執行猶予を言い渡すか否か、選挙権
を停止するか否かというようなことも広義における刑の量定の問題であること当裁
判所の判例に示されているとおりである(昭和二八年(あ)五三二二号同二九年六
月二日第二小法廷決定)。そうだとすれば、何年間刑の執行を猶予するか又は何年
間選挙権を停止するかということは、事実審たる裁判所が各犯人毎に法定の範囲内
で自由に裁量するところに委ねられているものといわなければならない。懲役四月
に処せられた他の被告人には一年間の執行猶予が言い渡されたにもかかわらず、懲
役三月に処せられた本件被告人には二年間の執行猶予が言い渡され、そのために後
者が前者よりも長い期間選挙権を停止されるという結果を生じたとしても、これを
目して憲法一四条に違反するものと言うを得ないこと前記判例の趣旨に徴して明ら
かである。
 それ故原判決には、所論のような憲法違反はなく論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、一、被告人とA、B、C等の間には選挙運動依頼金銭授受等に関する共
謀があつたこと並びに二、被告人は尠くとも金六千円についてはCよりA、B及び
Dに供与する趣旨を以て受取つたものである。という事実を前提として、原判決の
判例違反を主張するけれども、右のような事実は原判決の認定していないところで
あるから、所論引用の各判例はいずれも本件に適切でなく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨は事実誤認及び量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 なお記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見である。
  昭和二九年一〇月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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