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平成16年(ワ)第10514号 職務発明の対価等請求事件
口頭弁論終結の日 平成17年4月28日
          判         決
    原      告      A
    訴訟代理人弁護士      伊原友己
    同             加古尊温
    被      告      株式会社藤井合金製作所
    訴訟代理人弁護士      山上和則
    同             藤川義人
    補佐人弁理士        園田敏雄
    同             宮崎栄二
          主         文
 1 被告は、原告に対し、199万0601円及びこれに対する平成8年9月1
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを100分し、その1を被告の、その余を原告の各負担とす
る。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請求
   被告は、原告に対し、1億8000万円及びこれに対する平成8年9月1日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は、被告の従業員であった原告が、その在職中にした職務発明1件及び
職務考案3件につき、特許法35条3項又は実用新案法11条3項に基づいて、特
許ないし実用新案登録を受ける権利を使用者である被告に承継したことに対する相
当な対価の未払分の支払いを請求した事案である。
 1 前提となる事実(証拠により認定した事実は末尾に証拠を掲げた。その余は
争いがない事実である。)
  (1) 被告は、ガスコンセントを含むガス栓等のガス器具用部品の製造販売等を
業とする株式会社である。
    原告は、昭和41年2月14日、被告に入社し、平成10年11月までは
技術部ないし研究所で製品開発に従事し、その後平成13年3月20日の退職まで
は品質管理部に所属していた。
    原告の役職は、昭和46年から研究所設計主任、昭和47年から研究所第
一設計係長、昭和51年から研究所開発第一課長、平成4年から研究所次長、平成
10年10月から研究所部長、同年11月から品質管理部部長であった(乙第5号
証の1ないし19及び弁論の全趣旨)。
  (2) 原告は、被告に在職し、その研究所に勤務している期間中、その職務とし
て、ガスコンセントに関し、別紙職務発明・考案目録記載の発明及び考案(以下同
目録の記載にしたがって「本件発明」及び「本件考案1」ないし「本件考案3」と
いう。)をし(ただし、本件発明及び本件考案2は、原告の単独発明ないし単独考
案として特許出願ないし実用新案登録出願がされ、本件考案1及び3は、同目録記
載のとおり原告外数名の共同考案として実用新案登録出願がされている。)、その
特許ないし実用新案登録を受ける権利を被告に譲渡した。
    本件発明及び本件各考案については、別紙職務発明・考案目録記載のとお
り、特許ないし実用新案登録がされた(これらの特許及び登録実用新案を、以下
「本件特許」及び「本件実用新案1」ないし「本件実用新案3」という。)。
  (3) 被告は、「ガスコンセント」という呼称を付して製造販売している全ての
商品(以下「本件商品」という。)のガス栓本体部分において、本件発明及び本件
考案1を実施している。
    また、被告は、本件商品のうちの壁埋込みタイプであるR型の着脱ユニッ
ト部分において、本件考案3を実施している。
    なお、被告は、これまで、本件考案2を実施したことはない。
  (4) 被告は、原告に対し、工業所有権報償規定に基づいて、本件発明及び本件
各考案について、下記のとおり、出願報償金及び登録報償金を支払った。
     本件発明   出願報償金3000円、登録報償金10000円
     本件考案1  出願報償金2000円、登録報償金 5000円
     本件考案2  出願報償金2000円、登録報償金 5000円
     本件考案3  出願報償金1000円、登録報償金 3000円
    また、被告は、原告に対し、同規定に基づいて、本件考案1に対する特別
報償として3万円を、本件発明及び本件考案2を含めた多数の発明並びに考案(た
だし、本件考案1及び3は含まない。)に対する特別報償として、部下2名と共に
10万円(一人3万3333円に相当する。)を支払った。
 2 争点
  (1) 本件特許権及び本件各実用新案権により被告が受けるべき利益の額
   〔原告の主張〕
   ア 本件商品の総売上高は、本件特許権の権利期間満了日までで、121億
円を下らないと見込まれる。
     このうち、本件特許権及び本件各実用新案権によって、本件発明及び本
件各考案を他者が実施することを禁ずることによる超過売上高は、総売上高の2分
の1に相当する60億5000万円を下らない。
     そして、本件商品の利益率は10パーセント程度であるから、上記超過
売上高により、被告は6億0500万円の利益を上げることができるところ、これ
が、本件特許権及び本件各実用新案権により被告が受けるべき独占の利益の額に相
当する。
     あるいは、被告が本件発明及び本件各考案について、他者に実施許諾し
たとすると、総売上高の2分の1に相当する60億5000万円を他者が売り上げ
ることとなる。
     そして、その場合の実施料率は売上高の10パーセントを下らないか
ら、被告は6億0500万円の実施料を得ることができるところ、これが、本件特
許権及び本件各実用新案権により被告が受けるべき独占の利益の額に相当する。
     したがって、本件特許権及び本件各実用新案権により被告が受けるべき
独占の利益の額は、6億0500万円を下らない。
   イ ガスコンセントは一体の製品であり、補修部品としての別売りはともか
くとして、プレートや付属品が本体とは別に大量に売れるというものではない。着
脱ユニットやプレートセットは、本来は、一つのパッケージにしてもよいものを、
ガスコンセントの施工の便宜から、別のパッケージにしているにすぎないものであ
る。したがって、プレートや付属品の売上にも、被告が受けるべき独占の利益は含
まれているというべきであり、これを控除すべきものではない。
     なお、本件商品の販売につき、被告が他社へ支払った実施料は、被告が
受けるべき独占の利益額の算定にあたって考慮すべき性質のものではない。
   ウ(ア) 本件発明はガス栓における基本的技術であり、その価値は極めて高
い。
      また、本件特許に、被告が主張するような特許無効理由は存在しな
い。
      本件発明がされ、これを大阪瓦斯株式会社(以下「大阪ガス」とい
う。)に提案して、新型ガスコンセントの開発に目処が立ったことが、大阪ガスと
被告を含めた新型ガス栓の共同開発に繋がったのであり、本件発明がもたらした被
告への大阪ガスの信任の大きさは計り知れない。また、被告は、本件特許権を有し
ているからこそ、大阪ガスの新型ガスコンセントのシェアのほとんどを獲得できて
いるものである。
    (イ) 本件考案1は、本件発明の製品としての信頼性を大きく高める技術
であるから、その価値は本件発明に匹敵するほどのものである。
      被告は、本件実用新案権1の権利期間いっぱいに独占の利益を享受し
てきたのであるから、本件考案1が価値のないものであると主張することは許され
ない。
    (ウ) 本件考案2は、現時点で被告において実施していないものではある
が、本件考案3は本件考案2を発展させたものであるから、本件考案3の基本技術
として、高く評価されるべきものである。
    (エ) 本件考案3を考案したからこそ、被告は大阪ガスの要求を満たすこ
とができ、より大きな受注に繋がったものである。
      被告は、本件商品のうちR型全てに本件考案3を実施してきたもので
あるから、本件考案3が価値のないものであると主張することは許されない。
   エ 被告は、独占の利益は特許権ないし実用新案権の登録後にしか生じない
と主張するが、特許ないし実用新案登録を受ける権利の対価請求権は、その承継時
に定まるのであるから、登録前であっても独占の利益が観念されるべきであり、少
なくとも、補償金請求権が発生する公開の時点からは、独占の利益が観念できるも
のである。
   〔被告の主張〕
   ア 本件商品の販売開始は平成2年11月である。
     被告の第50期(平成2年8月1日から平成3年7月31日まで)から
第63期(平成15年8月1日から平成16年7月31日まで)における本件商品
(「ガス栓本体」、「着脱ユニット」及び「プレート」を指し、これらがセットと
なっているものと単体で販売されたもののいずれも含む。)の売上高は77億80
40万6178円であり、平成16年8月分の本件商品の売上高は5393万30
61円であり、その合計は78億3433万9239円である。
     このうち、ガス栓本体(本件発明及び本件考案1が実施されている部分
である。)の売上高は、55億6006万8490円であり、R型着脱ユニット
(本件考案3が実施されている部分である。)の売上高は、7624万8586円
である。
     このような従来実績を踏まえると、本件商品の売り上げについて、今後
もガス栓本体については年間6億円、R型着脱ユニットについては年間390万円
の売り上げがあると予想され、これを平成16年9月から本件特許権の権利期間が
満了する平成18年6月までの22か月分で計算すると、今後、ガス栓本体につい
ては11億円、R型着脱ユニットについては357万5000円の売り上げが得ら
れるものと予想される。
     これらを合算すると、本件特許権の権利期間満了までのガス栓本体の売
上高は66億6006万8490円、R型着脱ユニットの売上高は7982万35
86円となる。
     なお、本件商品のガス栓本体には、本件発明及び本件考案1とは関係の
ない、金具等の付属品が含まれているため、これらの売上高分は控除すべきであ
る。そこで、ガス栓本体のうち本件発明及び本件考案1の実施部分(以下単に「実
施部分」という。)の売上高を製造原価比率によって算出すると、平成2年11月
から平成16年8月までの実施部分の売上高は、18億8952万1371円であ
り、平成16年9月から本件特許権の権利期間が満了する平成18年6月までの2
2か月分の予想売上高は、3億5926万円となり、これらを合計すると、22億
4878万1371円となる。
   イ 特許権ないし実用新案権が独占権を生じるのは、これらの登録以後であ
る。
     したがって、本件発明及び本件各考案について、特許ないし実用新案登
録を受ける権利の承継を受けたことによって被告が得るべき利益を算定するにあた
っては、登録前の売上に対応する分は算定されるべきではないか、相当低く算定さ
れるべきである。
   ウ(ア) 被告を含めたガス機器メーカー5社と大阪ガス、東京瓦斯株式会社
(以下「東京ガス」という。)、東邦瓦斯株式会社(以下「東邦ガス」という。)
のガス会社3社との間で平成10年3月30日付で締結された「ガスコンセントに
関する実施契約書」(乙37)に基づき、被告は、本件商品の販売にあたって、こ
れまで200万円余りの実施料を支払ってきた。今後、年間60万円を5年間にわ
たり支払い続けるとすれば、支払総額は、約500万円となる。
    (イ) 被告とガス機器メーカー3社及び東京ガスとの間で平成14年6月
10日付けで締結された「ガスコンセント(4社権利)に関する実施許諾契約書」
(乙49)に基づき、被告は、本件商品の販売にあたって、第63期末(平成16
年7月31日)までに、約1200万円の実施料を支払ってきた。
    (ウ) 被告とガス機器メーカー1社及び東京ガスとの間で平成14年6月
10日付けで締結された「ガスコンセント(2社権利)に関する実施許諾契約書」
(乙50)に基づき、被告は、本件商品の販売にあたって、第63期末(平成16
年7月31日)までに、約110万円の実施料を支払ってきた。
    (エ) 被告とガス機器メーカー1社及び東京ガスとの間で平成15年9月
22日付けで締結された「過流出防止弁に関する実施許諾契約書」(乙51)に基
づき、被告は、本件商品の販売にあたって、第63期末(平成16年7月31日)
までに、約1860万円の実施料を支払ってきた。
    (オ) 被告と大阪ガスとの間で締結した「既設埋込型ガス栓取替用埋込型
ガスコンセントの実施に関する契約書」に基づき、被告は、本件商品の販売にあた
って、4万7820円の実施料を支払った。
    (カ) これらの実施料は、「使用者が得るべき利益」の算定にあたって勘
案すべきである。
   エ(ア) 本件発明は、基本発明ではなく、スライド式ガス栓に公知の先行技
術を組み合わせて利用した改良発明にすぎず、他に容易に想起可能な代替手段は数
多く存在する。
      そのうえ、無効審判請求がされた場合、無効とされる可能性もある。
      したがって、本件特許権の排除的効力は著しく弱い。
    (イ) 本件考案1は、基本的には公知の技術の単なる利用によるスライド
式ガス栓の一つの実施技術であり、しかも種々に存在する公知技術の利用に特徴が
あるにすぎないから、他社が代替技術を実施するのは容易である。
      したがって、本件実用新案権1による排除的効力は実質的に存在しな
い。
    (ウ) 本件考案2及び3は、いずれも、公知技術を単に寄せ集めた一つの
実施技術にすぎず、代替可能な技術が多々存在する。
      したがって、本件実用新案権2及び3による排除的効力も実質的に存
在しない。
    (エ)a 本件商品の大阪ガスへの売上実績は、被告の技術力に基づく信用
を背景としたものであり、また、後記(2)の〔被告の主張〕のとおり、被告を含めた
ガス会社とガス機器メーカーによる共同開発に被告が参加することができたことに
よるものであって、本件発明及び本件各考案が貢献したものではない。
       また、大阪ガスに本件商品と同種商品を販売することができる事業
者としては、被告の他には株式会社ハーマン(以下「ハーマン」という。)がある
のみであるが、被告とハーマンとの間には、大阪ガスに納入する商品については、
どちらか一方のみが特許権等を有していたとしても、他方に対して権利行使をしな
いという黙示の合意が存在するから、本件特許権及び本件各実用新案権は、大阪ガ
スに納入する商品に関しては、ハーマンに対して排除的効力を有しておらず、結果
として、大阪ガスに販売される商品について、本件特許権及び本件各実用新案権は
排除的効力を有していない。
       したがって、大阪ガスへの売上について本件発明及び本件各考案の
営業貢献は存在しない。
     b 東京ガスは、ピストンリング方式を採用しているから、本件発明及
び本件各考案の実施品が採用される余地はなく、本件発明及び本件各考案の営業貢
献は存在しない。
     c 東邦ガスは、大阪ガス方式と東京ガス方式を併用しており、本件発
明及び本件各考案の実施品が採用される余地はあるが、本件発明及び本件各考案に
よらない東京ガス方式により参入することも可能であるから、本件特許権及び本件
各実用新案権には排除的効力はなく、営業貢献も存在しない。
     d また、本件商品は、多数の権利の実施品であり、これらによる排除
的効力があるため、本件特許権及び本件各実用新案権が存在しないとしても、第三
者が本件商品を販売することはできない。しかも、ガス会社に対するガス機器の販
売は、ガス会社のメーカーに対する信頼性が重要であり、技術力だけでは、ガス機
器をガス会社に自由に販売できるものではない。
     e 加えて、本件考案1は、後記(2)の〔被告の主張〕のとおり、被告を
含めたガス会社とガス機器メーカーによる共同開発において考案されたものであ
り、これらの会社の間では、これらのガス機器メーカーが考案の実施品をこれらの
ガス会社に販売した場合には、お互いに実施料の授受は行わないことになっている
のであるから、本件実用新案権1は、これらのガス機器メーカーがこれらのガス会
社に製品を販売するについて、排除的効力を元々有しないものである。
    (オ) 以上の事情に照らせば、被告が本件特許権及び本件各実用新案権を
取得することにより、本件発明及び本件各考案を実施する権利を独占することによ
って得られる利益は、存在しない。
      また、仮にこれが存在するとしても、独占の利益を算定するための仮
想のライセンス料は、世間相場よりも相当低いものと見るべきである。
  (2) 被告が貢献した程度(原告と被告の配分)
   〔原告の主張〕
   ア 本件発明及び本件各考案がされた経緯
    (ア) 本件発明は、昭和61年の初めころ、大阪ガス株式会社(以下「大
阪ガス」という。)から新しいガス栓のアイデアを提出して欲しいとの要望を受け
た被告が、同年3月頃、全社員に対して新規アイデアの募集をしたのに対し、原告
が、従来のテーパー状ではなく円筒状の形態をとるガス栓をひらめき、これを技術
思想にまとめて被告に提出したものである。
    (イ) 本件発明等のアイデアの提供を受け、昭和61年11月ころから、
大阪ガスを含めたガス会社3社と被告を含めたガス機器メーカー5社(以下「本件
8社」という。)が、新型ガス栓を共同開発することになり、昭和63年9月下旬
まで共同開発(以下「本件8社共同開発」という。)が進められた。
    (ウ) 本件考案1は、本件8社共同開発の中で、原告の発明である円筒ス
ライド栓の開閉に用いられる内蔵スプリングに課題が見出され、この解決策として
原告が本件考案1をし、被告が共同開発会議に提案したものである。したがって、
本件考案1は、実質的には原告の単独考案である。
    (エ) 本件考案2も、本件8社共同開発の中において、原告の考案を、被
告が共同開発会議に提案したものであって、原告の単独考案である。
    (オ) 本件考案3は、本件考案2をユニット化したものであるところ、実
質的には被告内において原告とその部下の2名が考案したものであり、共同考案者
となっている大阪ガスの従業員は実質的には考案者ではない。
   イ 被告が貢献した程度
     原告は、勤務時間の内外や昼夜を問わず、思索を練って発明ないし考案
に至ったものである。
     本件発明及び本件各考案は、大規模な実験設備や大勢の人員を要するよ
うなものではなく、被告による研究開発投資もほとんどなかったのであるから、被
告が貢献した程度はわずかである。また、権利化における被告の貢献については、
特許ないし実用新案登録を受ける権利の承継後の事情であり、被告において広いク
レームでの権利化を目指したことで手続を複雑化させたものでもあるし、特許事務
所に依頼して手続していたものでもあるから、通常以上の貢献はない。
     したがって、原告が研究所勤務の技術者であったことを考慮しても、被
告が貢献した程度は70パーセントを上回ることはない。
   ウ 本件各考案について、共同考案者間において原告が貢献した程度
     上記アのとおり、本件考案1は実質的には原告の単独考案であり、本件
考案2は原告の単独考案である。
     本件考案3については、実質的には原告とその部下の2名の考案であ
り、その元となった本件考案2は原告の単独考案であるから、原告の貢献度は高い
というべきである。
   〔被告の主張〕
   ア 本件発明及び本件各考案がされた経緯
    (ア) 新型ガスコンセントの開発は、昭和61年度から、大阪ガスが開発
計画をスタートさせ、被告にもその計画を開示したことから、被告においてもその
仕様の下で開発を開始したものである。
      被告は、同年2月17日、新機構コックに関するブレーンストーミン
グ及び基礎実験方法を議題として会議を行ったが、この段階で、本件発明の主要要
素は出尽くしていた。
      昭和61年3月25日、大阪ガスが、新機構ガス栓仕様等の説明会を
開催し、ツマミ無しのガスコンセント、ソケットの突棒で栓を突いてガスの供給、
遮断を実現すること、新型ガスコンセントの外観イメージ、ソケットの着脱仕方な
どの開発の方向性が示された。
      被告は、大阪ガスの開発仕様に基づいて社内全体にアイデアを募集し
たところ、合計約80点の提案があった。その中には、円筒栓の提案も、原告も含
めて4名からされていた。
      同年4月8日、被告は井上トータルデザインに対し、ソケット着脱機
構外観のデザインを依頼した。そのデザイン(乙23の3c)において、本件商品
のうちR型の着脱機構とほとんど同じものが示されている。
      同年5月の打合せで、栓式については原告他1名のチームの担当とな
った。原告は、同月、円筒回転栓の性能確保試験を行い、また、翌6月、スライド
低減機構の各種試験を行い、試験成績書をまとめた。
      同月30日、被告は、新機構ガスコック説明書等を大阪ガスに提出し
て提案をした。
      被告は、大阪ガスからの要求事項、開発経緯、試作品の内容、試験内
容等を、試験成績書の情報やデータを元にまとめ、同年7月1日、本件発明として
特許出願した。
    (イ) 昭和61年10月から11月にかけて、本件8社による共同開発の
話が本格化し、本件8社共同開発が開始された。昭和62年3月27日付で締結さ
れた共同開発契約では、本件8社共同開発により得られた発明等は、本件8社で共
有にすることとされている。そして、これに該当するものは、本件8社が共同で出
願しており、その際、発明者等も本件8社から各社を代表して1名ずつ入っている
が、実際の発明者等が誰なのかは厳密に検討されたものではない。
    (ウ) 本件8社共同開発の昭和63年4月7日の会議では、被告及びハー
マンから、円筒スライド栓の試験報告において、栓が戻らない旨の報告がされ、第
2回試作品は栓用スプリングを2個式とすることの検討がされた。その後、同年5
月10日の会議では、被告から、スプリングの座屈対策でスプリングを2本使用す
ることが報告された。
      本件考案1は、上記の技術的問題を解決することを目的としてされた
ものである。
    (エ) 本件8社共同開発の昭和61年12月17日の会議では、ミツワガ
ス機器からソケット取外し機構の設計図面が報告されているが、これは本件考案2
の原型ともいえる。
      本件考案2は、昭和61年3月に大阪ガスから提示された仕様説明書
での外観イメージを元として同年4月に井上トータルデザインに依頼して得られた
デザインと、同年12月にミツワガス機器から提示された機構を設計要素として考
慮して設計されたものである。
      本件考案2は、本件8社共同開発によるものであるから、本来本件8
社の共同出願とする必要があったが、被告は、出願を先行させ、後に出願人の名義
変更によって共同出願とすることにしたものである。
    (オ) 本件8社共同開発が終了した昭和63年12月、被告は、大阪ガス
と共同して、製品開発を行うこととなった。
      ガスコンセントのソケット取外し機構について、施工するときの利便
性を向上させるため、大阪ガスからの要望で、大阪ガスと被告との間で検討が行わ
れた。
      ところで、本件8社共同開発の昭和62年4月の共同開発会議では、
各社からソケット離脱機構についての提案がされており、このうち、ハーマン、ミ
ツワガス機器、サンコーガス精機からの提案は本件考案3の要素をほぼ充たしてお
り、これに被告の提案を加えると本件考案3となるものである。
      このように基本部分が既に生じていたものをまとめ、実用新案登録出
願をしたのが本件考案3である。
   イ 被告が貢献した程度
    (ア) 本件発明については、その基本コンセプトを提案したのは原告では
ない。
      上記ア(ア)のとおり、大阪ガスからの提案と、これを受けた被告での
ブレーンストーミング会議において、本件発明の基本構成と特徴的構成は、製品開
発の構成として位置づけられ、あるいは確認、指摘されていたものである。
    (イ) 本件考案1については、その二つある特徴的構成のうちの一つは、
既に公知のものであって、被告に存し、研究所員が自由に閲覧することができる技
術文献に記載されているものであり、もう一つは、これを備えていなくとも実用上
格別の支障がないものである。そして、このようなアイデアは、原告独自のアイデ
アといえるか疑問である。
    (ウ) 本件考案2については、上記ア(エ)のとおり、昭和61年3月に大
阪ガスから提示された仕様説明書での外観イメージを元として同年4月に井上トー
タルデザインに依頼して得られたデザインと、同年12月にミツワガス機器から提
示された機構を設計要素として考慮して設計されたものであり、原告の貢献度は極
めて低い。
    (エ) 本件考案3については、上記(ウ)のような本件考案2を基礎とした
ものである上、上記ア(オ)のとおり、本件8社共同開発の昭和62年4月の共同開
発会議において、ハーマン、ミツワガス機器、サンコーガス精機からのソケット離
脱機構についての提案は本件考案3の要素をほぼ充たしていたものであり、これに
被告の提案を加えると本件考案3となるものであり、加えて、大阪ガスとの共同開
発によるものであるから、やはり原告の貢献度は極めて低い。
    (オ) 上記の事情に加え、①被告は、本件発明及び本件各考案に至る過程
で、試作品の作成、試験、試験結果の評価にあたり、被告の人的、物的資源を供与
していること、②本件発明及び本件各考案は、研究所開発第一課長としての原告の
職務遂行過程そのものにおいてされたものであること、③これらの他、本件発明及
び本件各考案がされるに至るまで、被告は、多額の人件費、研究開発費、施設、設
備等を提供し、また、被告に蓄積されていた経験やノウハウ等も利用されているこ
と、④本件特許権及び本件各実用新案権の登録に至るまで、被告の特許担当者や弁
理士の多大な貢献がされていること、といった事情が存在する。
    (カ) 以上の各事情に照らせば、本件発明及び本件各考案がされるについ
て、被告の貢献度は100パーセントか、それに限りなく近いものというべきであ
り、したがって、原告の貢献度はほとんどないものというべきである。
  (3) 被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額
   〔原告の主張〕
    被告が原告に対して支払うべき相当な対価は、原告が本件特許権及び本件
各実用新案権を有することによって得られる独占の利益の額に、本件発明及び本件
各考案がされるについて原告が貢献した程度を乗じて算定すべきである。
    そして、上記(1)及び(2)の〔原告の主張〕のとおり、本件特許権及び本件
各実用新案権により被告が受けるべき独占の利益の額は6億0500万円を下ら
ず、本件発明及び本件各考案がされるについて被告が貢献した程度は70パーセン
トを上回ることはなく、本件考案1は実質的に原告の単独考案であり、本件考案3
は原告の単独考案である本件考案2をユニット化して発展させたものであるから、
共同考案者間において原告が貢献した程度は高いというべきである。
    したがって、被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額は、6億05
00万円に30パーセントを乗じて得られる1億8150万円を下回らない。
    そして、既に被告が原告に対して支払った、「前提となる事実」(4)記載の
報償金を控除しても、少なくとも1億8000万円は未払いのままである。
    よって、原告は、被告に対し、上記1億8000万円及び本件特許権及び
本件各実用新案権のうち最終の登録日の後の日である平成8年9月1日以降の遅延
損害金の支払いを求める。
   〔被告の主張〕
    上記(1)及び(2)の〔被告の主張〕で主張した事情に照らせば、被告が原告
に対して支払うべき相当な対価の額は、既に被告が原告に対して支払った「前提と
なる事実」(4)記載の報償金を超えるものではない。
第3 当裁判所の判断
 1 本件発明及び本件考案3について特許又は実用新案登録を受ける権利を被告
に承継させたことに対する対価について
  (1) 争点(1)(被告が受けるべき利益の額)について
   ア いわゆる独占の利益の算定方法について
     本件において、被告が本件発明及び本件考案3を実施して本件商品を製
造販売していることは当事者間に争いがなく、一方、本件発明及び本件考案3につ
いて、被告が他者に実施を許諾して実施料を得ているという事情は認められない。
また、本件実用新案権3は、被告と大阪ガスとの共有にかかるものであるが、後記
エ(ア)②のとおり、大阪ガスは、本件考案3を実施した製品を自ら製造していな
い。
     このような場合、本件発明ないし本件考案3の実施品の販売額(ただ
し、本件商品の全体の販売額をそのまま計算に用いるべきか否かについては後記ウ
で検討する。)のうち、本件発明ないし本件考案3について特許ないし実用新案登
録を受ける権利を得たために売り上げることができた部分(すなわち、職務発明な
いし考案についての法定の通常実施権に基づく実施を超える部分である。以下「超
過実施分」という。)について、相当な実施料率を乗じて得られるべき実施料を算
出し、これをもって、被告が本件発明ないし本件考案3について特許ないし実用新
案登録を受ける権利を得たことにより得られるべき利益であると考えるのが合理的
である。
     ただし、本件実用新案権3は、被告と大阪ガスとの共有にかかるもので
あり、後記カのとおり、このような事情に基づく調整が必要となる。
     そこで以下、上述の算定方法により、被告が得られるべき利益の額を算
定する。
   イ 対象となる時期について
     職務発明又は職務考案について、特許又は実用新案登録を受ける権利を
使用者等が承継し、特許又は実用新案登録を出願した場合、これにより使用者等が
いわゆる独占の利益を受けることができる期間は、特許ないし実用新案登録の出願
公開時から、特許権ないし実用新案権の権利存続期間満了時までであると解するべ
きである。
     なぜならば、特許又は実用新案登録を受ける権利を承継し、特許又は実
用新案登録を出願しても、使用者等は、他者による当該発明又は考案の実施を禁ず
ることも、当該発明又は考案を実施している他者に金銭を請求することもできない
から、この期間は、使用者等がいわゆる独占の利益を受けているということはでき
ない。
     これに対し、特許ないし実用新案登録の出願公開がされたときは、使用
者等は、未だ他者による当該発明又は考案の実施を禁ずることはできないが、一定
の条件の下ではあるものの、当該発明又は考案を実施している他者に対し補償金を
請求することができるようになるのであるから、この時点以降は、使用者等に、特
許又は実用新案登録を受ける権利の承継を受けたことによる利益を観念することが
できる。
     したがって、本件においても、本件発明については、特許出願公開日で
ある昭和63年1月21日から本件特許権の権利存続期間満了日である平成18年
7月1日までの間において、本件考案3については、実用新案登録出願公開日であ
る平成4年2月4日から本件実用新案権3の権利存続期間満了日である平成17年
5月24日までの間において、それぞれ本件発明ないし本件考案3によって被告が
受けるべき利益のうち、被告が特許ないし実用新案登録を受ける権利の承継を受け
たことによる利益の額を算定すべきものである。
   ウ 本件発明ないし本件考案3の実施品の販売額について
    (ア) 本件商品は、ガス栓本体部分、着脱ユニット部分、プレートセット
部分からなり、それぞれ別個に箱詰めされて販売されている(争いがない)。
      そして、被告は、本件発明を、本件商品のガス栓本体部分において実
施し、本件考案3を、本件商品のうちR型の着脱ユニット部分において実施してい
る。
      このような場合、本件発明ないし本件考案3の実施品の販売額として
は、本件発明についてはガス栓本体部分の販売額を、本件考案3についてはR型の
着脱ユニット部分の販売額を、それぞれ把握すべきである。
      この点、原告は、ガスコンセントは一体の製品であり、着脱ユニット
やプレートセットは、施工の便宜から、別のパッケージにしているにすぎないもの
であり、これらがガス栓本体部分とは別に大量に売れるというものではないから、
本件商品全体の販売額を基礎とすべきであると主張する。
      しかしながら、仮に原告の主張のとおり、ガスコンセントが一体の製
品であるとしても、本件特許権はガス栓本体の主要部分であるガス弁に関するもの
であり、本件実用新案権3は着脱ユニットの主要部分であるソケット取外し機構に
関するものであることを考慮すれば、本件発明あるいは本件考案3が、本件商品全
体の売上に寄与したものということはできず、本件発明が寄与した売上部分はその
実施されたガス栓本体部分に、本件考案3が寄与した売上部分はその実施されたR
型の着脱ユニット部分に、それぞれ限定されると解すべきである。
      また、被告は、本件商品のガス栓本体部分には、本件発明とは関係の
ない金具等の付属品が含まれているから、これらの販売額部分は基礎とすべきでは
ないと主張する。
      確かに、本件発明は、ガス栓のうちガス弁に関するものであり(甲
5)、ガス栓本体部分全体についての技術ではないが、かといってガス栓本体部分
の全体に影響を及ぼさないような一部品に係る技術というものでもなく、ガス栓の
中心部分に係る技術であること、また、上記のとおり、ガス栓本体部分は、これを
一つの単位として箱詰めされて販売されていることに照らせば、金具等の付属品の
販売額部分を控除するのは相当ではなく、ガス栓本体部分全体の販売額を基礎とす
べきである。
    (イ) 本件発明の実施品(ガス栓本体部分)の販売額
      上記のとおり、本件においては、本件発明に関しては、特許出願公開
日である昭和63年1月21日から本件特許権の権利存続期間満了日である平成1
8年7月1日までの間における、本件発明の実施品である本件商品のうちのガス栓
本体部分の販売額及び販売見込額を算出する必要がある。
      乙第45号証によれば、本件商品の販売開始時期は早くとも平成2年
8月以降であり、販売開始から平成16年8月末までのガス栓本体部分の販売額は
55億6006万8490円であると認められる。
      そして、同号証によって認められる、平成3年8月から平成4年7月
までの第51期から、平成15年8月から平成16年7月までの第63期までの1
3年間にわたって、年間のガス栓本体部分の販売額が最高でも5億7500万円余
りであったことを考慮すると、平成16年9月以降のガス栓本体部分の販売見込額
について、年間6億円という被告の主張も、合理性を有するものとして認めること
ができる。
      そうすると、平成16年9月から平成18年7月1日までの22月間
についてのガス栓本体部分の販売見込額は、下記の計算式のとおり、11億円とな
る。
       ○計算式      600,000,000÷12×22=1,100,000,000
      したがって、昭和63年1月21日から平成18年7月1日までの間
のガス栓本体部分の販売額及び販売見込額の合計は、66億6006万8490円
と認められる。
    (ウ) 本件考案3の実施品(R型着脱ユニット部分)の販売額
      上記のとおり、本件においては、本件考案3に関しては、実用新案登
録出願公開日である平成4年2月4日から本件実用新案権3の権利存続期間満了日
である平成17年5月24日までの間における、本件考案3の実施品である本件商
品のうちのR型着脱ユニット部分の販売額及び販売見込額を算出する必要がある。
      乙第46号証によれば、本件商品のうちR型着脱ユニット部分の販売
開始時期は早くとも平成5年8月以降であり、販売開始から平成16年7月末まで
のR型着脱ユニット部分の販売額は7624万8586円であると認められる。
      そして、同号証によれば、R型着脱ユニット部分の販売額は、販売を
開始した平成5年8月から平成6年7月までの第53期から、平成12年8月から
平成13年7月までの第60期までの間は、年間約580万円から970万円まで
の間を推移していたものの、平成13年8月から平成14年までの第61期から、
平成15年8月から平成16年7月までの第63期においては、それぞれ約420
万円、約450万円、約380万円と、それ以前に比べて減少していることが認め
られ、これと前記直近の3年分の販売額とを考慮すれば、平成16年8月以降のR
型着脱ユニット部分の販売見込額としては、年間420万円と認めるのが相当であ
る。
      そうすると、平成16年8月から平成17年5月24日までの9.8
月間についてのR型着脱ユニット部分の販売見込額は、下記の計算式のとおり、3
43万円となる。
       ○計算式         4,200,000÷12×9.8=3,430,000
      したがって、平成4年2月4日から平成17年5月24日までの間の
R型着脱ユニット部分の販売額及び販売見込額の合計は、7967万8586円と
認められる。
    (エ) 本件商品の販売に際して他社に支払った実施料について
      被告は、被告と他社との契約に基づき、本件商品の販売にあたって、
他社が特許権等を有する発明等の実施料を支払っているから、この事情は使用者が
得るべき利益の算定にあたって勘案すべきであると主張する。
      確かに、製品の販売にあたって他社に発明等の実施料を支払っている
場合は、製品の販売に要する経費が増大することとなり、使用者が得るべき利益に
影響を及ぼすことは否定できない。
      しかしながら、上記のとおり、他社に支払うべき実施料は、製品の販
売に要する経費の一項目である。したがって、本件のように、いわゆる独占の利益
を、職務発明ないし考案についての法定の通常実施権に基づく実施を超える部分
(超過実施分)と相当な実施料率を基に算定すべき場合においては、上記他社に支
払うべき実施料は、販売額から控除すべき性質のものではなく、超過実施分に乗じ
るべき相当な実施料率の算定にあたって考慮すべきものである。
      したがって、ここでは他社に支払った実施料については考慮しない。
   エ 本件発明ないし本件考案3の実施品の販売額のうち、超過実施分の占め
る割合について
    (ア) 乙第45号証、当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨によれ
ば、本件発明ないし本件考案3の実施品を含む本件商品であるガスコンセントの市
場について、以下の事情が認められる。
     ① 本件商品は、ガス栓である。都市ガス用ガス栓は、ガス事業法によ
るガス工作物であり、ガス事業者が自社のガス工事のために購入して使用するもの
であって、一般のガス器具のように市場で流通するものではない。したがって、都
市ガス用の本件商品の購買者は、基本的にガス事業者に限定される。
     ② ガス栓の保安維持責任はガス事業者にあることから、そのガス栓の
購買先は、従来からの信頼の高いメーカーに限られ、一定の購買量を当該メーカー
に付加しつつ、ガス事業者の要求仕様による開発を指示し、あるいは品質確保につ
いて指導している。
       そして、ガスコンセントについては、本件8社共同開発に参加した
ガス機器メーカー5社以外に、これを製造販売している業者はない。
     ③ 平成12年度版ガス事業便覧(乙3)に掲載された需要家メーター
取付数のガス事業者別比率から見たガス事業者のシェアは、東京ガスが約34パー
セント、大阪ガスが約25パーセント、その他のガス事業者が合計で約41パーセ
ントである。
     ④ 全国の都市ガス事業者の中で、東京ガスと大阪ガスのシェアが極め
て大きいため、両社の開発によるガス栓が都市ガス業界の標準となり、他のガス事
業者にも採用され、購買されている。
     ⑤ ガスコンセントの方式には、現在のところ、本件発明が実施され得
る円筒スライド栓方式のほかにピストンリング方式が存在し、大阪ガスは前者を、
東京ガスは後者を採用している。その他のガス事業者は、それぞれ、これらのいず
れか一方あるいは双方を採用している。(弁論の全趣旨)
     ⑥ 平成15年度における財団法人日本ガス機器検査協会のガス栓の検
査数は、341万7970個であり、同年度における被告によるガス栓の販売数
は、115万2543個であったから、ガスコンセント以外のガス栓も含めたガス
栓全体の市場における被告のシェアは、約34パーセントに達する。
     ⑦ 被告の本件商品の販売個数は、平成7年ころ以降、20万個を若干
上回ることが多く、平成15年8月から平成16年7月末の期間をみると、本体セ
ット換算で26万3478個となっている。
    (イ) 上記(ア)の各事情に照らせば、被告が本件特許権や本件実用新案権
3を有するからといって、そのことが、それまでガス器具メーカーとしてガス栓を
製造販売していなかった業者が新たにガスコンセントの市場に参入することを排除
する主たる要因となるものではなく、ガスコンセントを含めたガス栓市場の性質と
現状そのものが、新たな業者の市場参入を妨げる大きな要因となっているものと認
められる。
      したがって、本件特許権や本件実用新案権3が、ガスコンセントの市
場に、それまでガス栓を製造販売していなかった業者の新規参入を排除することに
果たす役割は、非常に小さいものといわなければならない。
      しかしながら、上記のようなガス栓市場の性質と現状は、確かにその
市場に参加する業者の変動を妨げる大きな要因であるものの、ガス栓の供給者にな
るために、ガス会社からの高い信用を得なければならないという事情を考慮しても
なお、将来にわたって新規業者の参入排除を保障するまでのものではない。後記オ
(イ)のとおり、本件8社共同開発により得られた技術について、本件8社以外のガ
ス機器メーカーに実施を許諾することが否定されていないことも、これを裏付ける
ものである。
      したがって、本件特許権や本件実用新案権3を含めた諸権利が存在す
ることが、被告が本件商品を販売している市場への新規業者の参入を困難にさせる
効果を有することを完全に否定することはできない。
    (ウ) また、円筒スライド栓方式を含め、大阪ガスが採用する方式のガス
栓市場における被告のシェアは、上記(ア)③及び⑥に基づいた被告の試算(被告準
備書面(1)43頁参照)によっても約76パーセントにすぎず、被告以外にも大阪ガ
スや同社と同じ方式を採用するガス事業者の信用を得て、ガス栓を販売している業
者、すなわち被告の競争者が存在するものと認められる。
      このように市場における競争者が存在することに照らせば、被告が本
件特許権や本件実用新案権3を有することにより、市場における競争上、一定の有
利な地位に立つことができたものと認めるのが相当である。
      なお、被告は、本件商品と同種商品を販売する事業者としては、ハー
マンがあるのみであるが、被告とハーマンとの間には、大阪ガスに納入する商品に
ついては、どちらか一方のみが特許権等を有していたとしても、他方に対して権利
行使をしないという黙示の合意が存在すると主張する。しかしながら、上記被告主
張の事実を認めるに足りる証拠はない(仮に、被告の上記主張を認めるとしても、
被告とハーマンとの間のそのような関係は、いわば黙示の包括的クロスライセンス
契約が締結された状態というべきであるから、これによって被告はハーマンが有す
る特許権等の技術を自由に利用することができるという利益を得ており、本件特許
権及び本件実用新案権3も、そのような包括的クロスライセンスの場に提供される
ことで被告が上記の利益を得ることに寄与しているというべきであるから、いずれ
にしても、被告が職務発明ないし考案についての法定の通常実施権を得ている以上
の利益を被告に得させているものということができる。)。
      また、被告は、本件商品は、多数の権利の実施品であるから、本件特
許権及び本件各実用新案権が存在しないとしても、第三者が本件商品を販売するこ
とはできないとも主張する。しかし、被告以外の業者が円筒スライド栓方式のガス
コンセントを供給する際に、本件商品と全く同一の製品を製造販売する必要はな
く、これと同等品であれば足りるのであるから、被告の主張はその前提を欠くもの
である。しかも、被告の主張自体、本件特許権及び本件実用新案権3が、他の「多
数の権利」と共に、被告が他者との競争上優位に立つために資するものであること
を含意するものでもあるから、いずれにしても、上記判示したところを左右するも
のではない。
    (エ) ところで、使用者等は、従業者等が職務発明について特許を受けた
ときには、その特許権・実用新案権を承継しなくても、これについて法定の通常実
施権を有しており、もともと当該発明・考案を実施するに当たって、特許権者・実
用新案権者に実施料を支払って実施する第三者と比較して、当該実施料の分だけ製
造原価の面で優位に立っているものである。したがって、ブランド力、技術力等に
おいて第三者が被告を相当上回る等特段の事情のない本件においては、本件特許権
及び本件実用新案権3を被告が承継せず、第三者が原告からその実施許諾を受けた
としても、その者は、被告と対等の立場で競争できたとは認められない。
    (オ) なお、ガス栓やガスコンセントの市場においても、特許権や実用新
案権を有することに一定の経済的意義が存することは、例えば、後記オのように、
本件商品の販売に際して、被告が他社に実施料を支払っていることや、本件特許権
や本件実用新案権3について、被告自身がその費用を負担して出願し、登録後も権
利存続期間満了に至るまで、権利維持に費用を支出していることからも明らかであ
る。
      この点につき、被告は、ガス栓メーカー業界では、知的財産権を取得
することによって他社を排除するというよりも、他社による知的財産権の取得によ
り、自己の営業を妨害されないようにするという防衛的な色彩が強いと主張する
が、上記述べたところに照らして採用することができない。
    (カ) ところで、被告は、本件発明及び本件考案3につき、いずれも、代
替手段が数多く存在すると主張する。
      しかしながら、代替手段となる技術が存在するからといって、それだ
けで、特許権や実用新案権がその経済的価値を失うというものではなく、代替技術
の存在に加え、代替技術の方が、技術的な側面や経費的な側面等において優れてい
るか、少なくとも同等であるなどといった事情があるときにはじめて、その特許権
や実用新案権の経済的価値が損なわれるものというべきである。
      なぜならば、たとえ特許権や実用新案権に係る技術に代替技術が存在
するとしても、その代替技術が技術面、経費面等で劣るものであれば、特許権や実
用新案権に係る技術を利用する意義は十分に存在するものであるし、あるいは特許
権や実用新案権に係る技術を実施した製品が、代替技術を実施した製品に比べて高
い競争力を有する蓋然性も高いからである。
      これを本件についてみるに、本件発明及び本件考案3について、上記
のような特許権や実用新案権の経済的価値を損なわせるような事情は認められな
い。したがって、本件発明及び本件考案3について、仮に代替技術が存在するとし
ても、これによって、被告が本件発明や本件考案3につき特許ないし実用新案登録
を受ける権利を有することにより得られるべき利益がないものということはできな
い。
    (キ) また、被告は、本件特許は無効とされる可能性があるとも主張す
る。
      しかしながら、本件特許について、少なくとも平成16年9月2日ま
での間に、特許無効審判が請求されたことはなく(甲4)、その後、本件の口頭弁
論終結時までに特許無効審判が請求されたといった事情も認められない。また、被
告が、本件特許権を行使すべく、他社と交渉し、あるいは他社に警告したところ、
本件特許について特許無効理由が存在する旨の反論を受けたり、あるいは交渉の働
きかけや警告を無視されたといった事情の主張もなく、そのような事情が存在した
とも認められない。
      このような状況に照らせば、仮に、被告が主張するように、本件特許
が無効とされる可能性があるとしても、それは抽象的な可能性にとどまるものであ
って、他社が本件特許権を無視して経済活動をしたというものでもないから、少な
くとも本件の口頭弁論終結時までの間、被告は本件発明につき特許を受ける権利を
有することにより利益を得ていたものと認めることができる。
      そして、上記の状況に加え、本件特許権の権利存続期間が約1年2月
を残すのみであることに照らすと、今後、本件特許について特許無効審判が請求さ
れるなどといった事情が生じる可能性も高くはないものと認められるから、結局、
仮に、本件特許に無効とされる可能性があるとしても、被告が本件発明につき特許
を受ける権利を有することにより得られるべき利益の多寡に影響を及ぼすものでは
ないと解すべきである。
    (ク) そして、上記(ア)ないし(オ)で各検討した事情を総合考慮すると、
本件発明ないし本件考案3の実施品の販売額のうち、超過実施分は、販売額の30
パーセントを占めるものと認めるのが相当である。
   オ 超過実施分に乗じるべき相当な実施料率について
    (ア) 乙第45ないし第51号証によれば、本件商品の中には、本件発明
及び本件考案3のほか、「ガスコックにおけるソケットの固定解除装置」(登録第
2521054号実用新案)、「ガスコックにおけるソケットの安全装置」(登録
第2501091号実用新案)、「ガスコック」(登録第965072号意匠)、
「電気コンセント付きガスコック」(登録第904427号意匠)、「ガスコッ
ク」(登録第904454号意匠)、「ガスコック」(登録第956992号意
匠)、「ガスコック」(登録第2560351号実用新案)、「ガスコック」(登
録第2560265号実用新案)、「カバー付きガスコック」(登録第90444
4号意匠)、「過流出防止弁」(登録第2043447号実用新案)及び「スライ
ド弁等」(特公平8-10031号公報に係る特許ほか約10件の実用新案及び意
匠)の実施品であるものがあり(ただし、同時に全部を実施することになるわけで
はない。)、平成16年7月末までの間に、ガス栓本体部分の販売数量は約240
万個であるのに対し、上記実施数量は、被告から東京ガス、大阪ガス、東邦ガスに
対する販売で「スライド弁等」(特公平8-10031号公報に係る特許ほか約1
0件の実用新案及び意匠)を実施した分を除いても延べ210万個以上に上ってい
ること、被告は、その実施数量に応じた約定実施料を支払っていることが認められ
る。
      もっとも、上記各証拠によっても、被告が本件商品の販売にあたって
実施している発明等の詳細は明らかではなく、例えば、その対象が「埋込型ガスコ
ンC型意匠」や「埋込型ガスコンCE型意匠」とされ、本件商品のうちガス栓本体
部分やR型着脱ユニットへの実施がされているか多大な疑問が残るものも存在す
る。
    (イ) 乙第37号証によれば、本件特許権や本件実用新案権3に関するも
のではないが、本件8社共同開発の過程で開発された技術等(前記「スライド弁
等」(特公平8-10031号公報に係る特許ほか約10件の実用新案及び意
匠))に関し、その一部または全部を実施するガスコンセントを販売する場合の実
施料について、本件8社のうちのガス機器メーカー5社が本件8社のうちのガス事
業者以外の者に販売するときには、製品1個当たり7.5円とする旨の契約がされ
ており、この契約に添付された、本件8社以外のガス機器メーカーに実施許諾をす
る際の標準契約書式では、原則として、本件8社のうちのガス事業者に販売すると
きには、製品1個当たり20円、それ以外のガス事業者に販売するときには、製品
1個当たり30円とされていることが認められる。
      また、乙第49ないし第51号証によれば、これも本件特許権や本件
実用新案権3に関するものではないが、被告は、ガスコンセントの販売において、
前記(ア)記載の発明・考案・意匠を実施する際に、製品1個(1口)当たり、1件
の権利について6円ないし60円の実施料を支払っていた(ただし、特許権等の共
有権者全員に実施料を支払う場合の合計額)ことが認められる。
    (ウ) 乙第45及び第46号証によれば、平成16年8月までにおける本
件商品のガス栓本体部分の平均単価は約2298円であり、平成16年7月までに
おける本件商品のR型着脱ユニット部分の平均単価は、Rタイプにつき約383
円、R2タイプにつき約657円であることが認められる。
    (エ) 以上の各事情に加え、本件に現れた諸事情を総合考慮すると、本件
発明及び本件考案3のいずれについても、超過実施分に乗じるべき実施料率として
は、それぞれ販売額の2パーセントが相当である。
   カ 本件実用新案権3が被告と大阪ガスとの共有にかかることによる調整
    (ア) 乙第49ないし第51号証は、いずれも、東京ガスとガス機器メー
カーの共有にかかる特許権等についての実施許諾契約書であるが、このいずれにお
いても、実施品を東京ガスに販売するに際しては、実施料を支払わず、また、実施
品を大阪ガス又は東邦ガスに販売するに際しては、権利者であるガス機器メーカー
に対してのみ実施料を支払い、東京ガスに対しては実施料を支払わない旨が規定さ
れていることが認められる。
      また、上記オ(イ)のとおり、本件8社共同開発の過程で開発された技
術等に関し、本件8社の契約に添付された標準契約書式では、本件8社以外のガス
機器メーカーに実施許諾をする際の実施料について、原則として、本件8社のうち
のガス事業者に販売するときには、製品1個当たり20円、それ以外のガス事業者
に販売するときには、製品1個当たり30円とされていることが認められる。
      以上の各事実に照らせば、ガス事業者とガス機器メーカーの共有にか
かる特許権等について、これを他のガス機器メーカーに実施を許諾するにあたって
は、その製品販売時の実施料につき、権利の共有者であるガス事業者に販売する際
には、これを支払わないこととするか、あるいは他のガス事業者に販売するときよ
りも低額にする旨の条件とするのが、業界における慣行であると推認することがで
きる。
      したがって、本件においても、本件考案3についての超過部分のう
ち、大阪ガスに販売した部分については、上記オで検討した相当実施料率よりも低
減した実施料率を乗ずるべきものというべきであり、その実施料率としては、上述
の事情に照らして、上記オで検討した相当実施料率の3分の2とするのが相当であ
る。
    (イ) そこで、被告による本件商品の販売額における、大阪ガス向けの販
売額と、その他のガス事業者向けの販売額の比率を検討する。
      ガス事業者のシェアは、上記エ(ア)③のとおり、
       ○ 東京ガス:大阪ガス:その他=34:25:41
     であるところ、他に特段の証拠も事情もないから、ガスコンセント市場
におけるガス事業者のシェアも、これとほぼ等しいと推定することができる。
      そして、上記エ(ア)⑤のとおり、大阪ガスは本件発明が実施され得る
円筒スライド栓方式を、東京ガスはピストンリング方式を採用し、その他のガス事
業者はそれぞれこれらのいずれか一方あるいは双方を採用しているところ、その他
のガス事業者全体における円筒スライド栓方式の採用割合は、特段の証拠も事情も
ないから、上記東京ガスと大阪ガスのシェアの比によって推定すべきである。
      したがって、本件商品の市場となる、円筒スライド栓方式のガスコン
セント市場におけるガス事業者のシェアの比は、
       ○ 大阪ガス:その他=25:41×{25÷(34+25)}
                 ≒25:17
     となる。
      そして、他に特段の証拠も事情もない以上、この比が、超過実施分に
おける、大阪ガス向けの販売額と、その他のガス事業者向けの販売額の比率である
と推定するのが相当である。
   キ 結論
     以上をまとめると、被告が本件発明ないし本件考案3について特許ない
し実用新案登録を受ける権利を得たことにより得られるべき利益は、以下のとおり
算定される。
    (ア) 本件発明について           3996万0411円
       ○計算式      6,660,068,490×0.3×0.02≒39,960,411
    (イ) 本件考案3について            38万3216円
       ○計算式
         79,678,586×0.3×{25÷(25+17)}×{0.02×(2/3)}
        +79,678,586×0.3×{17÷(25+17)}×0.02
       ≒383,216
  (2) 争点(2)(被告が貢献した程度〔原告と被告の配分〕)について
   ア 本件発明がされた経過について
    (ア) 当事者間に争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれ
ば、本件発明がされた過程について、以下のような事情があったものと認められ
る。
     ① 昭和61年2月3日、被告が、大阪ガスから、同年度の開発計画と
して、ピアノタッチ式ガスコックの開発仕様書を受け取り、これを受けて、被告に
おいても開発を開始した。
     ② 被告は、同年2月17日、研究所において新機構コックに関するブ
レーンストーミングと基礎実験方法についての会議を行った。
       ブレーンストーミングでは、操作方法について、回転、ピアノ方
式、押す、引く、スライド、タッチ方式、擦る、叩く、センサ作動といったアイデ
アが、開閉機構(摺動)について、栓、ディスク、スライド、バルブ、はさむ、バ
タフライ、チャッキ弁、ゲート弁、液体密閉、膨張、ボールといったアイデアが、
形状について、円形、球形、矩形、円錐、扇形といったアイデアが、材質(表面処
理)について、黄銅、セラミック、ゴム、樹脂、エコノール、タフラム、ニダック
スといったアイデアが、リセット方法について、スライド方式、ばね式、てこ式、
逆圧、マグネットといったアイデアが、トルクを軽くする方法について、面圧を軽
くする、摺動面を小さくする、材質、潤滑剤、ベアリング、加工精度、スライド方
向といったアイデアが出された。
       また、基礎実験については、開閉機構や開閉動作を行う際の力を小
さくすることを考える必要がある、摩擦力を小さくするにおいては、摩擦係数を小
さくするには限界があり、面圧を小さく(浮かす)ことでどうか、ただし、開閉動
作中で行いゴミかみを考慮し浮かすのはミクロン単位とする、回転による開閉動作
よりもスライドさせた方が良い、といった検討から、当面、摺動の際の摩擦力を調
べるといった実験を行うこととし、摩擦力に関係する要素を取り上げ、比較するた
めの条件として、当時実験中のディスクバルブの形状・機構を用いることとした
(乙16)。
     ③ 同年3月25日、被告が、大阪ガスから、ソケット着脱方式の新機
構ガスコックの開発方針の説明を受けた。そこでは、開発は3ステップに分けて行
われることとされ、第1ステップでは、ガスの供給、遮断をボタンの押し込みで操
作するスイッチと、ソケットの取り外しをボタンの押し込みで操作するスイッチの
2個の押しボタンを用いるガスコンセントの開発が、第2ステップでは、ガスの供
給、遮断をフェザータッチのボタンで操作するスイッチの1個の押しボタンを用
い、ソケットの取り外しはソケット自体の押し込みによって行うガスコンセントの
開発が、最終の第3ステップでは、ソケットの突棒のストロークをディスク等の回
転運動に変換することでガス弁を開閉し、または、ガス弁をソケットの突棒で直接
開閉することにより、ソケットの着脱そのものによってガスの供給、遮断を操作
し、ソケットの取り外しはソケット自体の押し込みによって行う、押しボタン無し
のガスコンセントの開発が、それぞれ要求された(乙17ないし19)。
     ④ 上記③と前後して、被告は、新機構ガスコックについてのアイデア
を、被告社内全体から募集した。これに応じた提案は80点近くに上ったが、その
中には、円筒スライド栓方式を提案するものとして、原告の提案(乙21の③)の
他にも、少なくとも2つの提案(乙21の⑦、⑧)があった(乙20、21)。
     ⑤ 被告は、新機構ガスコックについて、栓式、バルブ式、ディスク式
と複数の方式で並行して開発を行うこととし、同年5月16日及び同月30日の打
合せによって、栓式の開発担当者を原告他1名のチームで行うこととした(乙2
4、25)。
     ⑥ 原告は、同年5月7日から同月20日にかけて、試作された円筒回
転栓を用いてその性能確認試験を行い、また、同年6月2日から同月13日にかけ
て、試作された円筒スライド栓を用いてスライド低減機構栓各種試験を行った。
     ⑦ 同年6月30日、被告は、大阪ガスに対し、新機構ガスコックの提
案を行った。
       被告が提案した方式には、円筒回転栓方式(数種類)、磁石式円筒
回転栓方式、円筒スライド栓方式、回転ディスク方式、スライドディスク方式があ
った(乙28の1ないし29)。
     ⑧ 同年7月1日、被告は、原告を発明者として、本件特許出願をし
た。
    (イ) 上記(ア)の各事情によれば、本件発明は、大阪ガスから提示された
開発仕様に基づき、被告において新機構ガスコックを開発するに当たり、研究所内
でのブレーンストーミングや社内での新機構ガスコックについてのアイデア募集を
経て、原告他1名が栓式機構の開発担当者として選任され、その開発の中で、原告
を中心に、実現可能な技術としてまとめ上げられたものであると認めることができ
る。
    (ウ) なお、この点につき、被告は、本件発明の基本構成と特徴的構成
は、大阪ガスからの提案と、これを受けた被告でのブレーンストーミング会議にお
いて、製品開発の構成として位置づけられ、あるいは確認、指摘されていたもので
あると主張する。
      しかしながら、大阪ガスからの開発仕様の提示においては、具体的な
ガスコックの機構については限定されておらず(乙15、18、19)、それ故
に、被告においても様々な方式で多種類の機構を開発し、大阪ガスに提案したもの
であるから(上記(ア)⑤、⑦)、大阪ガスからの提案において、本件発明の基本構
成や特徴的構成が示されていたとはいえない。
      また、被告研究所におけるブレーンストーミング会議も、正にブレー
ンストーミングとして様々なアイデアを出し合うことを主眼としたものであり、実
際にも上記(ア)②のとおり多種多様なアイデアが出されたものの、具体的かつ詳細
な技術内容に及ぶものであったとは認めがたいから、これで製品開発の方向性が定
められたとか、本件発明の基本構成や特徴的構成が確認されたということもできな
い。
      そして、上記(イ)のとおり、本件発明に、大阪ガスから提示された開
発仕様や、研究所内でのブレーンストーミングや社内での新機構ガスコックについ
てのアイデア募集が影響を与えたことがあるとはいえ、特許を受けるべき発明とし
ては、単なるアイデアの断片ではなく、実現可能な技術としてまとめ上げることが
必要となるのであるから、本件発明における原告の貢献が存在しないとか、皆無に
近いということはできない。
    (エ) また、原告は、本件発明は、被告によるアイデアの募集に対し、原
告が、従来のテーパー状ではなく円筒状の形態をとるガス栓をひらめき、これを技
術思想にまとめて被告に提出したものであると主張する。
      しかしながら、上記(ア)の各事情に照らせば、原告が独自に本件発明
の着想に至り、これを独自に実現可能な技術としてまとめ上げたものであるとは認
められず、他に原告の上記主張を裏付ける証拠はない。
   イ 本件考案3がされた経過について
     争いのない事実、甲第11号証(本件実用新案権3の実用新案登録公
報)、乙第39号証(被告と大阪ガスとの平成元年3月2日に行われた会議の会議
議事録)及び弁論の全趣旨によれば、本件考案3は、ソケット取外し装置に関して
は既に本件8社共同開発により本件考案2が考案されていたところ、実際の施行現
場における便宜から、ソケット取外し機構をユニット化するようにとの大阪ガスの
要望を受け、被告において、被告の指示により、被告の従業員であった原告外1名
を中心として開発がされたものであると認められる。
   ウ その他の事情について
     上記ア及びイの本件発明及び本件考案3がされた経過の他、本件発明及
び本件考案3に関して、以下のような事情が認められる。
    ① 本件発明及び本件考案3をした当時、原告は被告の研究所開発第一課
長として製品開発に携わっており、本件発明及び本件考案3のいずれも、本来的に
その職務に属するものであった(前記「前提となる事実」(1)、(2))。
    ② 原告は、本件発明及び本件考案3に際し、被告の施設や設備を利用
し、また発明者ないし考案者とはされていない他の被告従業員も、本件発明ないし
本件考案3の過程に関与していた(発明ないし考案の効果確認や試作品の製作につ
いては当事者間に争いがなく、その余の過程についても、上記ア及びイの本件発明
及び本件考案3がされた経過に照らしてこのように推認することができる。)。
   エ なお、被告は、本件8社共同開発の昭和62年4月の共同開発会議で各
社から提案されたソケット離脱機構のうち、ハーマン、ミツワガス機器、サンコー
ガス精機からの提案は本件考案3の要素をほぼ充たしており、これに被告の提案を
加えると本件考案3となるから、原告の貢献度は極めて低いと主張する。
     確かに、乙第34号証の13の1及び第35号証の9の1ないし5によ
れば、上記共同開発会議で、各社がソケット離脱機構を提案していることが認めら
れるものの、上記各号証によれば、ここで提案された機構と本件考案3との間に
は、発想において通じるところがあるとしても、具体的な構成にはなお相違が認め
られるところであるから、上記事情から原告の貢献が極めて低いということはでき
ない。
     また、被告は、昭和61年4月8日に、被告が井上トータルデザインに
依頼してデザインされた、ソケット着脱機構外観のデザイン(乙23の3c)に、
本件商品のうちR型の着脱機構とほとんど同じものが示されているとも主張する。
     しかしながら、乙第23号証の3cのデザインは、具体的にどのような
構成をとるものか必ずしも明らかではないから、これによって原告の貢献が極めて
低いという根拠とはならない。
     さらに、被告は、本件特許権及び本件実用新案権3の登録に至るまで、
被告の特許担当者や弁理士の多大な貢献がされていることを主張する。
     確かに、本件特許権は、出願から2度の拒絶理由通知を受け、そのたび
に手続補正をしながらも、拒絶査定を受け、不服審判を請求しつつ手続補正をし、
さらに2度の拒絶理由通知を受け、そのたびに手続補正をし、その結果、出願公告
及び特許査定に至ったものであること、本件実用新案権3は、出願から2度の拒絶
理由通知を受け、そのたびに手続補正をして、登録査定に至ったものであること
は、当事者間に争いがない。しかしながら、これらはいずれも通常の出願手続にお
いてあり得べき範囲を越えるものではなく、それぞれの出願過程における一件書類
である乙第40及び第43号証(いずれも枝番を含む。)に照らしても、被告の特
許担当者や出願代理人において、通常の貢献を越える、特段多大な貢献をしたもの
とまで認めることはできないから、出願過程における被告の貢献は、これを特に考
慮すべきものとはいえない。
   オ 被告と発明者ないし考案者との間での貢献の程度を考慮した割合
     職務発明・職務考案の特許・実用新案登録を受ける権利の譲渡の相当の
対価を算定するに当たっては、使用者等が、事業を計画してから、発明・考案の完
成を経てさらにそれが事業として採算が取れるようにするまでに様々なリスクを負
担していること、及び、従業者等も、発明・考案を譲渡せずに利益を得ようとする
と、ライセンス先の発見やライセンス先の事業化の失敗などのリスクがあることを
考慮すべきである。すなわち、前記(1)の方式により算定した被告が受けるべき利益
は、本件発明及び本件考案3が無事に完成され、これに係る事業計画が成功し、魅
力的な独占の利益が発生しているという結果を前提として算定したものであって、
上記リスクは考慮されていないけれども、権利の譲渡の対価を算定するに当たっ
て、リスクの大小を考慮することは不可欠であるから、前記(1)の方式により被告が
受けるべき利益を算定した場合には、使用者等が貢献した程度を考慮して前記権利
の譲渡の相当の対価の額を定める際には、上記リスクがあることを前提とすべきで
ある。このことを前提として、上記アないしウの各事情のほか、本件に現れた諸事
情を総合勘案すると、本件発明及び本件考案3がされるにあたって、被告と発明者
(原告)ないし考案者(原告外1名)の関係で、被告が貢献した程度を考慮して、
権利の譲渡の対価額を定めに当たり、被告が受けるべき利益に乗ずべき割合は、い
ずれについても5パーセント)と認めるのが相当である。
   カ 本件考案3の共同考案者らの間における原告の貢献の程度について
     本件考案3がされた経過については、上記イのとおり認められるとこ
ろ、被告従業員であった共同考案者である原告ともう1名との間の関係は、本件の
全証拠によっても明らかではないから、両名の間の本件考案3への貢献の程度は、
同程度と認めるべきである。
  (3) 争点(3)(被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額)について
   ア 被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額は、被告が本件発明ない
し本件考案3について特許ないし実用新案登録を受ける権利を得たことにより受け
るべき利益の額(上記(1))に、本件発明及び本件考案3がされるについて、被告が
貢献した程度を考慮した割合(上記(2))を乗じて算定すべきである。
     したがって、被告が原告に対して支払うべき相当な対価の額は、以下の
とおり算定される。
    (ア) 本件発明について           199万8021円
       ○計算式          39,960,411×0.05≒1,998,021
    (イ) 本件考案3について              9580円
       ○計算式           383,216×0.05×0.5≒9,580
   イ 前記「前提となる事実」(4)のとおり、被告は、原告に対し、既に、本件
発明について特許を受ける権利の対価として、1万3000円を、本件考案3につ
いて実用新案登録を受ける権利の対価として、4000円を、それぞれ支払ってい
る(なお、本件発明及び本件考案2を含めた多数の発明並びに考案に対する特別報
償として、3万3333円も支払っているが、「多数の」発明及び考案について特
許ないし実用新案登録を受ける権利の対価というだけで、その内訳等は明らかでは
ないから、本件発明について特許を受ける権利の対価としての既払額には算入する
ことができない。)。
     したがって、これら既払額を控除すると、本件発明について特許を受け
る権利の相当な対価のうち、198万5021円が、本件考案3について実用新案
登録を受ける権利の相当な対価のうち、5580円が、それぞれ未払いであること
となる。
 2 本件考案1及び2について実用新案登録を受ける権利を被告に承継させたこ
とに対する対価について
  (1) 本件考案1について
   ア 本件考案1は、原告の主張によっても、本件発明を改良するものである
ところ(前記争点(1)〔原告の主張〕ウ(イ))、その実用新案登録出願公開(平成2
年6月4日)は、本件特許の出願公開(昭和63年1月21日)よりも遅く、また
本件実用新案権1の権利存続期間満了日(平成15年7月15日)は本件特許権の
権利存続期間満了日(平成18年7月1日)よりも早いのであるから、被告が本件
商品を販売している市場について、本件特許と独立して、本件考案1のみの実施を
独占したり、あるいは他者に実施を許諾することは現実的な事柄ではない。
     したがって、本件発明について特許を受ける権利の承継を被告が受け、
被告が本件特許権を有している以上、これとは別に、本件考案1について実用新案
登録を受ける権利を被告が承継したことによって被告が得ることができる利益は、
極めて小さいものといわざるを得ない。
   イ 加えて、本件考案1は、本件8社共同開発の中で考案に至ったものであ
ることは当事者間に争いがないところ、本件8社共同開発の共同開発契約書(乙3
6)によれば、その中で開発された技術についての工業所有権は、その参加8社の
共有とすることが定められており(10条1項)、現に本件考案1についても、本
件8社共同で実用新案登録出願がされ、本件実用新案権は8社の共有となってい
る。
     なお、原告は、本件考案1は実質的に原告の単独考案であると主張する
が、その実用新案登録出願に際して原告を含めた8名(本件8社各1名)の共同考
案として出願されたというばかりでなく、本件8社共同開発の開発会議議事録(乙
34〔枝番を含む〕)及び開発会議に提出された資料(乙35〔枝番を含む〕)に
よっても、本件考案1が実質的に原告の単独考案であるとは認めがたく、かえっ
て、昭和63年4月7日の開発会議で被告及びハーマンから、栓が戻らない旨の報
告がされ、これを受けて第2回試作品は栓用スプリング2個式の検討がされ、同年
5月10日の開発会議で被告からスプリングを2本使用することの報告がされるな
ど、本件考案1は本件8社の共同開発の過程で徐々に形成され、完成に至った技術
であると認めることができるから、仮に原告が本件考案1について実用新案登録を
受ける権利を被告に譲渡しなくとも、本件8社のうち被告を除く7社が実用新案登
録を受ける権利を有し、登録によって実用新案権者となったであろうことに変わり
はない。
     したがって、仮に原告が本件考案1について実用新案登録を受ける権利
を被告に承継させなくとも、本件8社のうち、原告を除く7社も、実用新案権者又
は職務考案についての法定の通常実施権者として、本件考案1の実施権を有するの
であるから、原告がこれら7社に本件考案1の実施を許諾して実施料を得る見込み
はない。
   ウ しかも、前記1(1)エ(ア)②のとおり、本件8社共同開発に参加したガス
機器メーカー5社を除いて、ガスコンセントを製造する能力と、これをガス会社に
販売する能力を併せ持つガス機器メーカーは、少なくとも現時点まで存在しないこ
とが認められるのであるから、仮に原告が本件考案1について実用新案登録を受け
る権利を被告に承継させなかったとしても、原告が、本件発明とは別個に、本件8
社以外の者に本件考案1の実施を許諾して実施料を得る見込みは低く、しかもこの
ような実施許諾をする際には、本件実用新案権1の共有者である被告以外の7社の
同意を得ることが必要となるのであるから、そのような実施許諾により実施料を得
る見込みはほとんどないものといわざるを得ない。
   エ そして、被告が、これまで、本件考案1について他者に実施を許諾し、
実施料を得ていたという事情は認められない。
   オ 以上のとおりの検討に照らせば、原告が本件考案1について実用新案登
録を受ける権利を被告に承継させたことに対する相当な対価は、既に被告が原告に
支払った3万7000円(前記「前提となる事実」(4))を超えるものとは認められ
ない。
  (2) 本件考案2について
    本件考案2は、被告において実施されたことはなく、また、被告が、これ
まで、他者に実施を許諾し、実施料を得ていたという事情も認められない。
    このことからすれば、被告が本件考案2について実用新案登録を受ける権
利を得たことにより得た利益は、極めて小さいものといわざるを得ず、原告が得る
べき相当な対価も、既に被告が原告に支払った7000円(前記「前提となる事
実」(4))を超えるものとは認められない。
  (3) 以上のとおり、本件考案1及び2について実用新案登録を受ける権利を被
告に承継させたことに対する相当な対価は、いずれも、既に被告において原告に支
払った金額を超えるものではないから、これらについての原告の請求はいずれも理
由がない。
 3 結論
   以上のとおりであるから、原告の請求は、主文第1項掲記の限度で理由があ
る。
   よって、主文のとおり判決する。
      大阪地方裁判所第26民事部
           裁判長裁判官     山  田  知  司
              裁判官     高  松  宏  之
              裁判官     守  山  修  生
 (別紙)
              職務発明・考案目録
1 本件発明
  発明の名称      ガス弁
  発明者        原告
  出願人        被告
  出 願        昭和61年7月1日 (特願昭61-155684号)
  公 開        昭和63年1月21日(特開昭63-13970号)
  公 告        平成7年2月22日 (特公平7-15312号)
  登 録        平成8年2月2日  (第2013589号)
  特許権者       被告
  権利存続期間満了日  平成18年7月1日
2 本件考案1
  考案の名称      直動摺動弁
  考案者        原告外7名
  出願人        被告外7名(本件8社)
  出 願        昭和63年11月22日(実願昭63-152218号)
  公 開        平成2年6月4日   (実開平2-72871号)
  公 告        平成5年7月15日  (実公平5-27750号)
  登 録        平成6年4月6日   (第2014001号)
  実用新案権者     被告外7名(本件8社)
  権利存続期間満了日  平成15年7月15日
3 本件考案2
  考案の名称      ソケット取外し装置
  考案者        原告
  出願人        当初は被告、後に被告外7名(本件8社)に変更
  出 願        昭和63年5月20日(実願昭63-67111号)
  公 開        平成元年11月30日(実開平1-169692号)
  公 告        平成6年8月22日 (実公平6-31273号)
  登 録        平成7年5月23日 (第2062822号)
  実用新案権者     被告外7名(本件8社)
  権利存続期間満了日  平成15年5月20日
4 本件考案3
  考案の名称      ガス栓のソケット取外し機構
  考案者        原告外2名
  出願人        被告及び大阪ガス
  出 願        平成2年5月24日(実願平2-54333号)
  公 開        平成4年2月4日 (実開平4-13893号)
  登 録        平成8年8月2日 (第2515960号)
  実用新案権者     被告及び大阪ガス
  権利存続期間満了日  平成17年5月24日
                                  以上

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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