弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 被告P1,被告P2,被告大日本土木株式会社,被告P3及び被告P4は,東
大阪市に対して,連帯して,金5089万2300円及びこれに対する被告P1,
被告P2,被告P3及び被告P4については平成10年10月20日から,被告大
日本土木株式会社については平成10年10月21日から,支払済みに至るまで年
5分の割合による金員を支払え。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らに生じた費用の6分の1と被告P5に生じた費用を原告らの
負担とし,原告らに生じたその余の費用とその余の被告らに生じた費用については
10分の1をその余の被告らの負担とし,10分の9を原告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
       事実及び理由
第1 請求
 被告らは,東大阪市に対して,各自,金6億1000万円及びこれに対する被告
P5,被告P1,被告P2,被告P3及び被告P4については平成10年10月2
0日から,被告大日本土木株式会社については平成10年10月21日から,支払
済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,東大阪市が被告大日本土木株式会社(以下「被告会社」という。)に対
して発注した「平成7年度公共下水道第2工区管渠築造工事」(以下「本件工事」
という)にかかる請負契約(以下「本件工事契約」という。)に関して,本件工事
契約が締結されるに先立って行われた入札に際し,被告らによって談合が行われた
ことにより,東大阪市が損害を被ったと主張して,東大阪市の住民である原告ら
が,談合にかかわった被告らに対し,地方自治法242条の2第1項4号後段によ
り,東大阪市に代位して,不法行為に基づく損審賠償の支払を求め,また,被告P
5に対しては,予備的に,仮に被告P5が上記談合にかかわっていなかったとして
も,談合の存在を知り又は知り得たにもかかわらず漫然と公金を支出したとして,
地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,東大阪市に代位して,不法行為
に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。
1 前提事実(争いのない事実及び証拠から容易に認定できる事実)
(1) 当事者
ア 原告らは,東大阪市民である。
イ 被告P5は,本件工事契約が締結された当時,東大阪市長の地位にあった者で
あり,工事契約を締結する権限を有していた(甲5の刑
事記録甲48,被告P5本人)。
ウ 被告P1は,平成3年から平成7年5月まで東大阪市の市長公室長であった者
である(甲7の刑事記録甲10)。
エ 被告P2は,本件工事契約が締結された当時,土木建築等を目的とする株式会
社田中組(以下「田中組」という。)の代表取締役であった者である(甲4の刑事
記録甲24)。
オ 被告大日本土木株式会社(以下「被告会社」という。)は,土木建築業工事等
を目的とする株式会社である(甲4の刑事記録甲25)。
カ 被告P3は,本件工事契約が締結された当時,被告会社の大阪支店土木営業部
長の地位にあった者である(甲4の刑事記録甲25,甲7の刑事記録乙1)。
キ 被告P4は,本件工事契約が締結された当時,被告会社の大阪支店副支店長の
地位にあった者である(甲4の刑事記録甲25,甲7の刑事記録乙12)。
(2) 東大阪市の入札制度(甲4の刑事記録甲3,甲5の刑事記録甲37,甲5
の刑事記録甲41,甲5の刑事記録甲42)
ア 起工書の作成
 東大阪市では,公共工事が行われる場合,まず,各関係部署において,公共工事
の原案が作成,計画され,各関係部署において,工事の設計を民間のコンサルタン
トに依頼する。設計書等ができあがった時点で,各関係部署において,工事価格の
積算を行って,工事内訳書に工事価格を記入する。工事価格の合計に消費税を足し
た価格が設計金額となる。各関係部署の検査室の検査を受け,工事起工書を作成
し,各工事の規模に応じて決済を受けた後,総務部調度課に工事起工書が送付され
る。
イ 指名業者選定作業
 総務部調度課において,東大阪市建設工事指名選定要項に従って指名業者の選定
が行われる。本件工事のように発注予定金額が3億円以上10億円未満の工事につ
いては,12社以上の指名業者を指名しなければならないと定められている。ま
た,各公共工事の種類ごとに,発注工事金額により,指名業者の指名格付がなされ
ており,下水道工事等土木一式工事については,工事価格が3億5000万円を超
える工事についてはAランクの指名業者を指名することになっている。当時,Aラ
ンクの指名業者は250社が登録されていた。調度課長は,工事関係部署と打合せ
をして,指名業者を選定し,指名原案を作成する。本件では,Aランクの業者とし
て登録されている業者の中から16社が指名業者として選ばれ,指名原案が作成さ
れた。
ウ 指名業者の決定
 指名
原案作成後,東大阪市建設工事業者審査委員会(以下「審査委員会」という。)の
審査を受け,市長の決裁を終えた時点で指名業者が決定される。もっとも,実際に
は,秘書課を通じて,調度課課長が作成した指名原案について,事前に指名業者決
定権者である市長の事実上の了承を得たうえで,審査委員会の審査を受けるという
手続になっていた。
エ 指名業者の通知
 指名業者が決定されると,調度課から各指名業者に対し,電話により,現場説明
の日時,場所が連絡される。工事内容については一切通知されない。
オ 現場説明
 現場説明では,指名業者に対し,入札用紙2部と設計図,仕様書,単価抜設計書
(金抜き設計書)などが配布され,入札日,入札場所,工事内容と入札一般事項等
の説明が関係各部署の担当者から行われる。なお,本件においては,現場説明は,
指名業者を個別に一社ずつ呼んで資料を配付し,工事内容を伝えるという,個別資
料配付方式によって行われていた。
カ 予定価格調書の作成
 入札書比較価格とは,当該入札の上限価格をいう。工事価格は,物品の定価を基
にして計算されており,実際は定価よりも安い価格で購入できることから,工事価
格から通常2,3パーセントを引いた価格を実勢価格として入札書比較価格を計算
し,これに消費税相当額を足した価格を予定価格としている。当時の東大阪市で
は,工事価格から0パーセント,1.6パーセント,1.9パーセント,2.4パ
ーセント,2.7パーセントを引いて5とおりの入札書比較価格の原案を算出し,
それぞれに消費税相当額を足して5とおりの予定価格の原案を作成し,5とおりの
原案のうちから決定権者が入札書比較価格及び予定価格を決定していた。
 限定価格入札書比較価格とは,当該入札の下限の価格をいう。限定価格入札書比
較価格に消費税相当額を加えた額を限定価格という。一定の価格以下で落札契約を
すれば,工事に手抜き等が生じることが必至であることから,最低価格が決定され
ているのである。当時の東大阪市では,工事価格から現場管理費の80パーセント
の額及び一般管理費の全額の合計額を引いたものが限定価格入札書比較価格とされ
ており,これに消費税相当額を加えたものが限定価格とされていた。
 各指名業者らは,入札の際,消費税相当額を抜いた額を記入して入札するので,
入札書比較価格を超えた価格で入札するか,限定価格入札書比較価格を下回る価格
を入札す
ると失格となり,入札書比較価格と限定価格入札書比較価格との間で落札すること
になっている。
 決裁権限者は,入札日までに,調度課長及び調度係長の助言を受けて,予定価
格,入札書比較価格,限定価格及び限定価格入札書比較価格を設定して予定価格調
書を作成し,その場で封書に入れて封印し,入札日まで保管することになってい
る。
キ 入札
 入札者(指名業者)は,消費税を抜いた工事請負金額を入札用紙に記入し,入札
箱に投かんする。全員が投かん後,調度課の係員が開票するとともに,封印されて
いた予定価格調書を開封し,入札書比較価格と限定価格入札書比較価格との間で一
番低い工事請負金額を記入した入札者が落札することになる。仮に,入札書比較価
格と限定価格入札書比較価格との間の価格で入札した指名業者がなければ,再入札
をすることになる。その際,第1回の入札で限定価格入札書比較価格以下で入札し
た業者は,再入札には参加できないとされている。
ク 契約の締結
 入札後に落札者と仮契約が締結され,その後,予定価格が2億円以上の場合は,
東大阪市議会に上程され,議会の承認を得た後に,正式に契約が締結される。
(3) 本件工事契約締結の経緯
ア 起工書の作成(甲5の刑事記録甲41)
 建設第2課は,平成7年8月20日ころ,本件工事の起工書を作成して市長であ
る被告P5の決裁を受け,調度課に送付した。本件工事の工事価格は,6億282
4万2000円,設計金額は6億4708万9260円であった。
イ 指名業者の選定
(ア) 当時の東大阪市の助役であったP6(以下「P6助役」という。)は,平
成7年8月中旬ころ,東大阪市総務部調度課課長P7(以下「P7課長」とい
う。)に対し,本件工事の指名業者に株式会社森本組(以下「森本組」という。)
を加えるよう依頼した(甲5の刑事記録甲37,甲5の刑事記録甲44)。
 被告P1は,東大阪市長公室秘書課の課長代理P8に対し,平成7年6月ころ,
本件工事に関し,森本組が落札するという談合情報があり,P6助役が絡んでいる
ようだが,そのような話に巻き込まれないように忠告しておくようにとの連絡をし
た(甲5の刑事記録甲38,甲6の刑事記録甲64)。
(イ) 被告会社は,かねてより本件工事を落札することを強く希望していたこと
から,被告P3は,株式会社銭高組を通じて,同会社の下請業者であり,かつ,東
大阪市の公共工事の受注に影響力が
あると言われていた田中組の代表取締役である被告P2を紹介してもらった。そし
て,被告P3は,被告P2に対し,平成7年6月ころ,被告会社が本件工事の入札
に参加できるようだれか頼んでくれるよう依頼をし,被告P2はこれを了承した
(甲6の刑事記録甲63,甲7の刑事記録乙2及び3,甲15の2)。
 ところで被告P2と被告P1の妻とは子供のころからの知り合いであり,被告P
1が東大阪市市長公室長に就任したことから,被告P2は被告P1に対し,東大阪
市の発注に係る土木工事につき,田中組を入札参加業者として指名選定してほしい
旨依頼し,被告P1がこれに応じて,田中組のために便宜を図るなど互いに親しく
交際していた(甲15の1)。そこで,被告P2は,被告P1に対し,平成7年7
月中旬ころ,本件工事の入札の指名業者に被告会社が選定されるようにしてほしい
と依頼し,被告P1はこれを承諾した。その際,被告P1は,被告P2に対し,森
本組が本件工事を落札しようとして働きかけを行っていることを伝えた(甲6の刑
事記録甲63及び64,甲16の2ないし4)。
 被告P2から上記森本組の動向を聞いた被告P3は,森本組が入札に参加すれ
ば,被告会社が落札することができない可能性があると考え,被告P2に対し,本
件工事の入札に森本組が参加できないようにすることが可能かどうか尋ねたとこ
ろ,被告P2は,森本組を指名業者の選定から除外して本件工事を落札しようとす
るなら,本件工事の落札価格の3パーセントの金員が必要である旨を述べた(甲6
の刑事記録甲63,甲7の刑事記録乙3)。
 被告P3は,上司である被告P4から,落札した際には落札価格の3パーセント
を支払うという条件で,本件工事の指名業者の選定から森本組を除外してもらい,
被告会社が落札することができるようにしてもらうことについて了解を得た(甲7
の刑事記録乙4)
 被告P3は,被告P2に対し,平成7年8月上旬ころ,被告会社が本件工事を落
札することができたら落札価格の3パーセントに相当する金員を支払うとの条件を
承諾することを伝えて,森本組を指名業者の選定から除外してもらうことを依頼
し,被告P2はこれを承諾した(甲6の刑事記録甲63,甲7の刑事記録乙4)。
 被告P2は,被告P1に対し,平成7年8月20日ころ,本件工事に関し,森本
組が本件工事の指名業者に選定されると被告会社が落札できない可能性があ
るので森本組を指名業者の選定から除外するよう依頼し,被告P1はこれを承諾し
た(甲6の刑事記録甲63,甲6の刑事記録甲64)。
(ウ) 被告P1は,P8に対し,平成7年8月下旬ころ,本件工事の指名業者の
選定に被告会社を加えること,森本組については談合のうわさがあるから指名業者
の選定から除外するようにP7課長に伝えてくれと言った(甲5の刑事記録甲3
8,甲6の刑事記録甲64)。
 P8は,P7課長に対し,平成7年8月20日過ぎ,本件工事の指名業者の選定
に被告会社を加えること及び森本組を指名業者の選定から除外することを要請した
(甲5の刑事記録甲37,甲5の刑事記録甲38)。
(エ) P7課長及びP8課長代理は,平成7年9月初旬ころ,P6助役に対し,
森本組には談合の情報があり,上の方から指名するなとの指示が来ているとして森
本組を指名業者には選定できないことを説明した。これに対してP6助役は特に何
も言わなかった(甲5の刑事記録甲37)。
(オ) P7課長,いずれも調度課の職員であるP9主幹,P10課長代理,P1
1主査,P12主査は,平成7年9月上旬ころ,本件工事の指名業者の選定会議を
開いた。選定会議のたたき台となる素案はP11主査が作成しており,同素案で
は,森本組が指名業者として入っていた。P7課長は,秘書課からの情報で森本組
には談合のうわさがあるので外そうと述べ,森本組は指名業者の原案から外され
た。また,P7課長は,P8から被告会社を指名業者に加えるよう要請されていた
が,P11主査が作成した素案にもともと被告会社が加えられていたので特に何も
言わなかった。
 その結果,被告会社を含めた16社を指名業者とする指名原案が作成された。そ
の後,P7課長は,この原案をもとに総務部長,総務部次長,助役,市長の被告P
5に説明に回り,決裁権者である被告P5から事実上の了承を得てから,指名原案
が審査委員会に上程された(甲5の刑事記録申37,甲5の刑事記録甲39ないし
42)。
(カ) 平成7年9月8日,審査委員会が開催され,調度課が作成した指名原案ど
おりの内容で決議され,決裁段階においても修正されることなく,指名原案どおり
指名業者が選定された(甲5の刑事記録甲37)。
ウ 現場説明会
 指名業者が決定したことを受けて,直ちに調度課の職員が,各指名業者に対し,
現場説明会の日程を連絡した。そして,平成7年9月11日,
現場説明会が行われ,金額の部分が空白となった設計書等が手渡されるとともに,
入札日(平成7年9月26日)が連絡された。なお,このときの現場説明会は,個
別資料配付方式によって行われている(甲5の刑事記録甲37)。
エ 予定価格調書の作成
 P7課長及びP11主査は,入札日の4,5日前に,予定価格及び限定価格の原
案を作成した。その後,P7課長及びP11主査が予定価格の原案をもって市長の
被告P5のところへ行き,本件工事の予定価格が6億3155万8920円,限定
価格が5億0374万3130円,入札書比較価格が6億1316万4000円,
限定価格入札書比較価格が4億8907万1000円と決定された(甲5の刑事記
録甲37)。
オ 落札価格の調査
 被告P3は,被告P2に対し,平成7年9月中旬ころ,被告会社以外の指名業者
を教えてもらえないかと尋ねてきた(甲6の刑事記録甲63,甲7の刑事記録乙
5)。そこで,被告P2は,被告P1に対し,本件工事の指名業者に選ばれた被告
会社以外の会社を調べて教えてほしい旨を依頼したところ,被告P1は,P8から
本件工事の指名業者16社を聞いてこれを被告P2に教え,被告P2は被告P3に
これを伝えた(甲6の刑事記録甲63及び64,甲7の刑事記録乙5)。
 被告P3は,被告P4と相談したうえで,被告P2に対し,平成7年9月下旬こ
ろ,本件工事についての被告会社の見積額を述べて,この価格で本件工事が落札で
きるかどうか調べてもらうことを依頼し,被告P2はこれを承諾した(甲6の刑事
記録甲63,甲7の刑事記録乙5)。
 そこで,被告P2は,被告P1に対し,本件工事をどの程度の価格で落札できる
のか調べてもらうよう依頼し,その後,被告P1は,被告P2に対し,6億100
0万円で落札することができる旨伝え,被告P2は,被告P3に対し,その旨を伝
えた(甲6の刑事記録甲63,甲7の刑事記録乙6)。
カ 入札
 平成7年9月26日,本件工事に関する入札が実施され,被告会社が6億100
0万円で落札した。ほかの指名業者はいずれもその入札価格が入札書比較価格を超
えていたため失格となっている(甲5の刑事記録甲37)。
キ その後の経緯
 被告会社は,被告P2に対し,本件工事を落札することができた謝礼として18
00万円を支払い,同1800万円は最終的には本件工事に係る地域における工事
について影響力を有するとされる山口
組系暴力団である奥浦組に支払われた。なお,この1800万円は,被告会社の下
請業者である山本土木株式会社が用立てた(甲6の刑事記録甲55及び56,甲6
の刑事記録甲58ないし61,甲6の刑事記録甲63,甲6の刑事記録甲65)。
(4) 監査請求(甲1,2の1)
 原告らは,東大阪市監査委員に対し,平成10年7月3日,本件工事にかかる入
札について談合を行った談合業者に対し東大阪市に契約代金全額を返還させるこ
と,東大阪市の幹部職員などに対する損害賠償請求等適切な措置をとることなどを
求めて住民監査請求をしたが,同監査委員は,平成10年8月28日,原告らの監
査請求を棄却した。
2 争点
2-1 本案前の争点
 適法な監査請求を経ているか。
2-2 本案の争点
(1) 本件契約の違法性
(2) 責任の有無
(3) 損害
3-1 本案前の争点についての当事者の主張
(1) 監査請求期間を徒過した監査請求であること
(被告らの主張)
 本件工事契約は,平成7年10月26日,東大阪市と被告会社との間で締結され
ており,本件監査請求がなされたのは本件工事契約から2年8月経過した平成10
年7月3日であるから,本件監査請求は,「当該行為のあった日又は終わった日か
ら1年」という監査請求期間を徒過しており,適法な監査請求を前置していないか
ら,本件訴えは不適法である。(2)監査請求期間を徒過したことにつき「正当な
理由」がないこと(被告P5・P1・P2の主張)
 本件工事の入札結果は,東大阪市議会に提出されており,市議会の議決を得て,
本件請負契約が締結されており,さらに本件入札の結果は一般市民に公開されてい
るから,だれでも入札の結果を知ることができる状態になっていたといえる。した
がって,監査請求期間を徒過したことにつき「正当な理由」は認められない。
(被告会社・同P3・同P4の主張)
ア 地方自治法242条2項但書にいうところの「正当な理由」が認められるに
は,当該行為が秘密裡に行われたことが必要であるところ,東大阪市においては,
設計金額が2億円以上の公共工事については,東大阪市議会の議決を経ることにな
っており,本件工事の入札結果についても市議会の議決を経たうえで本件工事契約
が締結されており,また,東大阪市では,公共工事の指名競争入札に関しては,落
札後の3か月間,同市役所の調度課に「入札結果調書」の写しを編綴した台帳を備
え付けることに
なっており,広く一般市民の閲覧に供されている。そして入札結果調書には,落札
業者名,落札価格及び指名入札業者各社の入札状況が克明に記載されているのであ
るから,本件工事契約の締結行為は東大阪市の住民にとって秘密裡に行われたので
はないから,本件監査請求が監査請求期間を徒過して行われたことにつき,「正当
な理由」はない。
イ 仮に本件工事が秘密裡に行われたものであるとしても,住民が入札結果調書を
閲覧するなどの方法により,相当の注意力をもって調査すれば,平成7年12月末
ころまでには,本件工事契約の違法性及び不当性を疑わせるに足りる事実を知るこ
とができたのである。
ウ 仮に,上記入札結果調書を閲覧することによっては,本件工事契約の違法性及
び不当性を疑わせるに足りる事実を知ることができなかったとしても,本件工事契
約締結の前提となる本件入札について,朝日新聞は,平成10年4月23日の夕刊
で,「下水道工事談合疑惑予定価格漏らす?」との見出しのもと,東大阪市が平成
7年度に発注した同市α内の公共下水道工事の入札に絡み,予定価格が事前に落札
業者に漏れていた疑惑があること,平成7年9月下旬に指名業者16社全社が参加
して入札が実施されたこと,岐阜市内にある中堅ゼネコンが6億1000万円で落
札したことなどが報道されている。また,同種の記事が,平成10年4月24日発
行の毎日新聞の夕刊にも記載されていた。かかる新聞報道に加えて,平成10年3
月中旬ころから,被告P5にまつわる各種の不正疑惑が新聞報道で取りざたされて
いたことを合わせて考慮すれば,遅くとも平成10年4月24日までには,住民に
おいて相当の注意力をもって調査すれば,本件工事契約について原告らが主張する
何らかの違法性及び不当性を疑わせるに足りる事実を知ることができたことは明ら
かである。原告らは,遅くとも平成10年6月24日までに監査請求を容易になし
得たであろうから,本件監査請求が監査請求期間を徒過したことについて「正当な
理由」はない。
(原告らの主張)
ア 本件では,工事契約締結行為自体は秘密裡に行われていないかもしれないが,
契約の前提となる入札に際して,談合が行われていたことは住民にとっては到底知
り得ることではなかったのであるから,本件工事契約締結行為の違法性及び不当性
を疑わせるに足りる事実すなわち談合の事実を知ることができたと解されるときか
ら相当な期
間経過内に監査請求をすれば,「正当な理由」が認められるべきである。
イ 被告P1が,本件工事の談合に関して逮捕されたのは平成10年6月3日であ
り,本件監査請求がなされたのは,平成10年7月3日である。談合は本来的に秘
密裡に行われること,本件談合は東大阪市が積極約に関与して行われた官製談合と
もいうべきものであり,蜜行性が極めて高かったこと,東大阪市では情報公開条例
が存在しなかったため,住民が市の行為を知ることができる機会が極めて限定して
いたことを考えると,住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて本
件工事の談合行為を知ることができたのは,被告P1が逮捕された平成10年6月
3日である。原告らは,被告P1が逮捕された日から30日後に本件監査請求を行
っており,本件工事契約が違法であることを知り得たときから相当な期間内に監査
請求を行っている。
ウ 被告らは,平成10年4月23日の朝日新聞の夕刊の報道により,本件工事契
約の存在及びその内容を知ることができたと主張しているが,同新聞記事には,落
札した業者名も,入札に参加した業者名も記載されておらず,また,予定価格を漏
らしたとされる元市幹部の名前も特定されていないのであるから,住民が監査請求
をすることができる程度に本件工事の違法性を基礎付ける事実が明らかになってい
るとはいえない。また,同記事は,十分な根拠のある記事かどうかも明らかではな
い。よって,同新聞記事だけで,住民に対し,監査請求を提起することを要求する
ことはできないというべきである。
エ また,被告らは,上記新聞報道に加えて,平成10年3月中旬ころから,被告
P5にまつわる各種の不正疑惑が新聞報道で取りざたされていたことを合わせて考
慮すれば,平成10年4月末ころには,本件工事契約が違法であることを知り得た
と主張するが,この当時主に問題にされていたのは,被告P5の愛人の住民票が移
動されていた問題などであり,本件工事の談合について住民が監査請求をすること
ができるような問題ではなかった。
オ 結論
 したがって,本件においては,監査請求期間を徒過したことについて正当な理由
があるから,本件訴えは適法である。
3-2 本案の争点に対する当事者の主張
(1) 本件契約の違法性について
(原告らの主張)
ア 被告会社は,本件工事を落札するため,被告会社の大阪支店土木営業部長であ
った被告P3において,
被告P2に対し,被告会社が本件工事を落札できるよう協力を依頼した。被告P3
から依頼を受けた被告P2は,被告P1に対し,上記依頼があったことを伝え,被
告P1は,被告P5と共謀のうえ,被告P2と連絡を取りあって,被告会社に本件
工事を落札させるための談合工作を行うこととなった。そして,被告らは,ほかの
入札参加業者15社の入札担当者に対し,本件工事は被告会社が落札することを伝
え,ほかの業者は入札書比較価格を超える額で入札することを合意し,その結果,
被告会社が計画どおり入札書比較価格をぎりぎり下回る価格で落札し,本件工事契
約を締結したのである。
イ 入札指名及び予定価格情報入手は,談合のための準備行為であり,入札指名及
び入札予定価格情報を入手しても談合を行ったうえで落札しなければ意味がない。
また,談合がなされなければ,予定価格のほぼ上限で落札することは期待できない
のであるから,本件において談合が行われたことは明らかである。
ウ 被告らは,刑事事件において談合罪で立件されなかったことを強調するが,競
売入札妨害罪で立件された場合,これに重ねて談合罪についても立件する必要は必
ずしもないのであるから,談合が行われなかったことの理由とはならないし,被告
らの主張は,刑事事件にさえならなければ違法行為が存在しなかったと主張してい
るに等しく,そのような論法が誤りであることは明らかである。
(被告会社・P3・P4の主張)
ア 本件工事の入札にかかる刑事裁判においては,談合罪ではなく,競売入札妨害
罪の成立が認定されたに止まっており,刑事事件において,被告らの行為が談合と
評価されたり,刑事事件として起訴されていない以上,違法な談合が存在したと考
える余地はない。
イ また,談合罪は,公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的の存在を要件と
する目的犯であるところ,本件工事にかかる入札過程において,そのような事実は
一切認定されておらず,また,刑事手続においてもそのような観点からの検討はな
されていないのであるから,原告らの主張は失当である。
ウ 本件工事は,東大阪市において行政計画上必要不可欠なものとの判断によりそ
の起工が決定され,建設局下水道部設計課職員の積算によって算出された6億28
24万2000円という工事価格に基づいて決定された入札書比較価格以下の6億
1000万円で契約が締結されたのであり,金額的にも妥当である
。したがって,本件工事契約締結自体にはこれを無効とすべき違法性はない。
(被告P5・P1・P2の主張)
否認する。
(2) 責任
(原告らの主張)
ア 被告P5の責任について
(ア) 主位的請求
 被告P5は,ほかの被告らと共謀し,本件工事の入札に際して談合を行って,被
告会社に不当な高額で落札させ,東大阪市に対して損害を与えた。したがって,被
告P5は,他の被告らとともに東大阪市に対して共同不法行為を行った者として,
損害賠償責任を負っている。
(イ) 予備的主張
 被告P5は,当時,東大阪市長として,職員を監督し,違法行為があればこれを
是正すべき職務上の義務を負っており,かつ,本件公金の支出権限を有していたと
ころ,被告P5は,本件契約に関して違法行為が行われていることを知っていた場
合はもちろん,違法行為が行われている疑いがある場合には,これを調査し,是正
する義務があったにも拘わらず,ほかの被告らによる違法行為を知りながら,漫然
と被告会社と契約を締結し,本件公金の支出を行ったものである。被告P1が市を
退職してからも,被告P5の側近の地位を利用して,市の職員に対し不法な影響力
を行使し,談合などに関与し続けていたことは公共工事に関与する市の職員及び業
者の間では広く知られていた。被告P5だけがこのことを全く知らなかったとは到
底考えられないのであり,被告P5は,少なくとも本件工事において被告P1を中
心として談合が行われていたことを知っていたことは明らかである。
 仮に,被告P5が本件工事に関して談合が行われていることを知らなかったとし
ても,長期にわたって市の職員はすべて被告P1の違法行為を知りながらこれに関
与していたというのであるから,被告P5としても,談合が行われていることを容
易に知り得る状況であったのである。被告P5は,公共工事に関して違法行為が行
われていることを容易に知り得る状況にありながら,注意義務を尽くさず,漫然と
工事契約を締結し公金の支出を行っていたものであって,責任を免れることはでき
ない。
イ 被告P5以外の各被告について
 被告P5以外の被告らはいずれも,共謀して,本件入札に際して談合を行い,そ
の結果本件工事を被告会社に不当な高値で落札させ,東大阪市に損害を与えた。し
たがって,被告P5以外の被告らは,ほかの被告らとともに東大阪市に対して共同
不法行為を行った者として,損害賠償責任を負って
いる。
(被告らの主張)
 否認する。
(被告P1・被告P2の主張)
 被告P1・被告P2は,東大阪市から損害賠償を請求されるような違法性を認識
していなかった。
(被告P5の主張)
 仮に本件工事の入札に関して違法行為が行われていたとしても,被告P5は,本
件の入札において違法行為が行われていたことを知らなかったし,本件工事の入札
に関して違法行為が行われることを予見することができなかったのであるから,被
告P5には故意又は過失が存しない。
(被告P3の主張)
 被告P3は,被告会社の単なる従業員にすぎず,本件工事契約の当事者ではない
から,被告P3個人に対して損害賠償請求をするのは不当である。
(3) 損害
(原告らの主張)
ア 主位的主張(契約代金全額が損害であること)
(ア) 地方自治法施行令167条の6第2項は,一般競争入札の公告について,
「普通地方公共団体の長は,前項の公告において,・・・入札に関する条件に違反
した入札は無効とする旨を明らかにしておかなければならない」と規定しており,
指名競争入札についても,同令167条の12第2項は,参加者の指名にあたっ
て,「・・・普通地方公共団体の長は,入札の場所及び日時その他入札について必
要な事項をその指名する者に通知しなければならない」と定め,同条3項で「16
7条の6第2項の規定は,前項の場合にこれを準用する」とされている。したがっ
て,被告会社を含む入札に参加した業者らは,談合をすれば契約自体が無効とされ
ることは十分に覚悟のうえで談合に及んだのであるから,本件契約は契約が公序良
俗違反かどうかを検討するまでもなく無効であると解すべきである。
 また,本件工事契約は,被告らの犯罪行為を前提とする契約であって,公序良俗
に著しく反するから,無効である。
 以上のとおり本件工事契約は無効であるから,本件契約に基づいて被告会社に対
して支払われた6億1000万円全額に相当する損害を東大阪市が被ったというべ
きである。
(イ) 本件においては,談合が行われたからこそ,東大阪市は被告会社と契約を
締結し,その結果,本件契約金額全額が支払われたのであり,談合が行われなけれ
ば東大阪市は被告会社と契約を締結することはなく,したがって工事代金が支払わ
れることもなかったのであるから,本件工事代金全額が損害となる。
(ウ) 被告らは,東大阪市が本件工事の成果物を受け取ったことを理由に損害が
ないと主張しているが,かかる主張は損益相殺の主張であり,被告らの側に対価物
の価格について主張立証責任があるというべきであり,これについては被告らは一
切主張立証していないのであるから,6億1000万円全額が損害として認定され
るべきである。
イ 予備的主張
(ア) 入札制度は,入札に参加する業者の間で価格を競わせることにより適正な
契約価格を形成することを目的とする制度であるところ,被告らの談合行為によっ
て適正な契約価格の形成が阻害されたことは明らかである。そして,適正な契約価
格とは,公正な入札がなされた場合に形成される価格であるから,被告らの談合行
為によって東大阪市が被った損害額は,本件契約における代金額と被告らの談合行
為がなく,公正な入札がなされた場合に形成されていたであろう本件工事の代金額
との差額であると解すべきである。
 東大阪市における平成7年度における入札価格5000万円以上の公共下水道工
事の落札結果をみると,落札率が95パーセントを超えるものが圧倒的に多く,8
6パーセント台から94パーセント台のものは存在せず,85パーセント台以下の
ものは77パーセントを中心に存在する。このように統計結果によれば,落札率の
分布に2つの山があり,落札率が2分している理由は談合の有無以外に考えられな
い。すなわち,落札率が95パーセントを超えるケースは談合が行われていた結果
であり,85パーセント台以下のケースは談合が行われなかった結果である。そし
て,東大阪市の平成7年度の入札64件のうち,談合が行われていたと推認される
落札率95パーセント以上の工事(51件)の平均落札率は98.3パーセントで
あり,談合がなかったと推認される残り13件の平均落札率は78.5パーセント
である。そして,本件において,入札書比較価格6億1316万4000円の7
8.5パーセントは4億8133万3740円となり,限定価格入札書比較価格4
億8907万1000円を下回ることになるので,このような場合は限定価格入札
書比較価格(いわゆる最低制限価格)が予想落札価格となるものと考えるべきであ
る。
 したがって,本件談合が行われたことにより東大阪市が被った損害額は,本件工
事の契約金額(落札価格に消費税を加えた額)6億2830万円と限定価格5億0
374万3130円との差額である1億2455万6870円であるというべきで
ある。
 刑事摘
発された長崎県及び広島県発注の土木工事をめぐる談合事件7件について捜査当局
が算出した談合が存在しなかったと仮定した場合の平均落札率は81.4パーセン
トであり,座間市発注の土木工事をめぐる談合事件2件で算出した平均落札率は8
6.47パーセントである。これらの結果から談合の成否により落札率は概ね15
パーセントから20パーセント変動する経験則があるとされており,また日弁連
「入札・談合ホットライン」の結果によれば,地方自治体の発注する公共工事にお
ける談合による損害は予定価格の20パーセント以上であると報告されている。さ
らに,「第6回独占禁止法研究会」における報告では,三重県久居市においては,
談合が刑事事件になったことにより,その後の落札率は75パーセント程度に落ち
ているという実態が報告されている。
 以上のような調査結果からすれば,地方自治体における談合による被害は,概ね
予定価格の20パーセントであり,本件工事において談合がなかったと仮定した場
合,限定価格入札書比較価格で落札されていたと
いうことができる。
(イ) 原告らの予備的主張は,統計的データーに基づく立論であることから,証
明の程度が問題となると思われるが,仮に,損害について立証できたとはいえない
としても,本件損害の立証の困難性から,民訴法248条を適用して,1億245
5万6870円の損害を認めるべきである。
(ウ) 被告会社は,モリタ建設,林建設工業と裏ジョイントを組み,それぞれに
対して20パーセントずつ利益分配をする旨の合意をしている。モリタ建設及び林
建設工業は本件工事に関して何の工事も分担していないからかかる金員は専ら談合
に協力したことに対する見返りとして支払われた談合金である。このような談合金
の提供は,これらの金員を支払っても利益があるから支払われるのであり,本件談
合がなければ,少なくとも談合金の金額だけは低く落札されることになったことは
明らかである。
ウ 原告らの主位的主張に対して
(被告らの主張)
 本件工事の落札価格である6億1000万円という金額は,本件工事の種類や規
模,難易度,地域の特性,当時の経済情勢その他一切の事情から判断すれば,決し
て不当な高額ではなく,適正な価格であったのである。そして,被告会社は,本件
契約に基づいて,本件工事を完了し,東大阪市に引き渡しているのであるから,東
大阪市は,本件契約を締結したこ
とによって何らの損害も被っていない。
(被告会社・P3・P4の主張)
 原告らは,本件工事契約が無効であるから,契約代金全額が損害であると主張す
るが,一般的に,談合による入札に基づいて落札した場合であっても,契約自体は
無効にはならないものとされており,本件のように談合による入札ではなく,刑事
裁判上,競売入札妨害罪の成立が認定されたにとどまる場合においては,工事の契
約が無効であるとの結論を導くことはできない。仮に,本件工事契約が私法上無効
と評価されたとしても,東大阪市は本件行為の成果物の引渡を受けているのである
から,工事代金全額が損害であるとの結論を導くことはできない。すなわち,本件
工事契約が私法上無効と評価されることと,不法行為により東大阪市が被った損害
の有無・程度とは別問題である
 原告らは,東大阪市が本件工事の成果物を受け取っている点につき,損益相殺の
主張としか考えられないとして,被告らが成果物の価格(自由競争に基づく入札が
なされた場合に形成されたであろう価格)について主張立証責任を負担していると
主張する。しかしながら,本件訴訟の訴訟物は,不法行為に基づく損害賠償請求権
である以上,請求原因としての損害の発生の事実及び損害の具体的数額について
は,原告らが主張立証すべきことは当然である。
エ 原告らの予備的主張に対して
(被告らの主張)
 最低制限価格というのは設計金額などからみてこれを下回る価格では落札を認め
ないとの趣旨で設定された価格にすぎないので,最低制限価格で落札されるのが通
常であるとの原告らの主張は全く理由がなく,これをもって談合がなされなかった
場合の落札価格とみなすことはできない。
 また,指名競争入札における落札価格は,入札の対象となる工事の種類,内容及
び規模,入札参加業者の数及び規模,発注者と入札参加業者との関係,入札当時に
おける経済情勢,当該地域の特性,その他種々の要因が複雑に影響し合って形成さ
れるものであるから,このような種々の落札価格の形成要因を捨象して,本件工事
において談合がなかったとした場合の落札価格を予想することは不可能である。し
たがって,本件訴訟においては損害の具体的数額のみならず,損害の発生自体もい
まだ立証されていないというほかない。
第3 争点に対する判断
1 本案前の争点―適法な監査請求を経ているか
(1) 法242条2項本文は,普通地方公共団体の執
行機関,職員の財務会計上の行為は,たとえそれが違法・不当なものであったとし
ても,いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとしておくことが法的
安定性を損ない好ましくないとして,監査請求の期間を定める一方,当該行為が普
通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,1年を経過してからはじめて明らか
になった場合等にもかかる趣旨を貫くことが相当でないことから,同項但書は,
「正当な理由」があるときは,例外として,当該行為のあった日又は終わった日か
ら1年を経過した後であっても,普通地方公共団体の住民が監査請求をすることが
できるとしたのである。したがって,当該行為が秘密裡にされた場合,同項但書に
いう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が
相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたか
どうか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監
査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和63年4月22日第
二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。
(2)ア まず,法242条2項但書の「正当な理由」が認められるには,当該行
為が秘密裡になされたことが要件となると解されるところ,当該行為自体は公然と
行われた場合であっても,当該行為が違法であることを基礎付ける事実が隠蔽され
ている場合は,普通地方公共団体の住民が当該行為について監査請求をすることが
期待できないから,当該行為が秘密裡になされた場合に該当すると評価すべきであ
る。
イ この点,被告会社,被告P3,被告P4は,本件工事契約自体は公然と行われ
ていたことから,本件工事契約は秘密裡に行われたものでないと主張するが,本件
工事契約が締結されたこと自体は公然と行われていても,談合が行われたこと自体
は行為の性質上隠蔽されており,かつ,かかる事実は,本件工事契約の違法性を基
礎付ける事実であることから,当該行為が秘密裡になされた場合に該当すると解す
べきである。
(3)ア 次に,監査請求期間を徒過したことにつき「正当な理由」が認められる
ためには,「住民が相当の注意力をもって調査したときに当該行為を知ることがで
きなかったこと」が要件となるところ,前述のとおり当該行為自体は公然と行われ
ていても当該行為の違法性を基礎付ける事実が隠蔽されている場合は当該行為が秘
密裡に行われたと
評価すべきであるから,住民が相当の注意力をもって調査したときに当該行為の存
在及び当該行為が違法であることを知ることができたのはいつの時点かということ
が問題となる。そして,当該行為又は当該行為の違法性を基礎付ける事実が隠蔽さ
れている場合には,住民が監査請求をすることがおよそ期待できないということを
理由に,監査期間を徒過したことについて「正当な理由」があるとされるのである
から,住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて住民監査請求をす
ることが期待できる程度に当該行為及び当該行為の違法性を基礎付ける事実を認識
することができたのはいつかという観点から検討されるべきである。
イ 被告会社,同P3,同P4は,本件工事の入札結果調書が一般の閲覧に供され
ていること,入札結果調書には落札業者名,落札価格及び指名入札業者各社の入札
状況が克明に記載されていることから,仮に本件工事が秘密裡に行われたものであ
るとしても,住民が入札結果調書を閲覧するなどの方法により,相当の注意をもっ
て調査すれば,平成7年12月末ころまでには,本件工事契約の違法性及び不当性
を疑わせるに足りる事実を知ることができたと主張する。
 しかしながら,証拠(甲4の刑事記録甲22)によれば,指名業者・入札結果等
調書には,工事名,入札日,指名業者名,各指名業者が幾らで入札したか,どの業
者が落札したか,現場説明会の日,工期,工事場所が記載されているにすぎず,同
調書には,入札書比較価格,限定価格入札書比較価格等は記載されていないのであ
るから,指名業者・入札結果等調書の記載から,当該契約について談合がなされた
事実を,住民監査請求をすることが期待できる程度に認識することはおよそ不可能
であるといわざるを得ない。したがって,平成7年12月末ころまでには,本件工
事契約の違法性及び不当性を疑わせるに足りる事実を知ることができたとの被告会
社,同P3,同P4の主張は採用することができない。
ウ 証拠(甲35)によれば,朝日新聞が,平成10年4月23日付の夕刊で,
「下水道談合疑惑 予定価格漏らす?」との見出しで・東大阪市が平成7年度に発
注したα内の公共下水道工事の入札に絡み予定価格が事前に落札業者に漏れていた
疑惑があること,同入札には中堅ゼネコン業者16社が指名され入札が行われたこ
と,岐阜市内にある中堅ゼネコンが6億1000万円で落札したこと
,落札業者が事前に予定価格の情報を入手し,自社の落札価格を確実にするため,
ほかの指名業者に入札金額の調整を持ちかけた疑いがあることが判明していること
を報道した事実が認められる。
 以上の事実によれば,平成10年4月23日の時点で,住民が本件工事の入札に
談合等の不正が行われたことについてのではないかという合理的な疑問を有するこ
とは可能であったというべきであるから,この時点において,普通地方公共団体の
住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為が違法であるこ
とを知ることができたというべきである。
 そして,原告らは,平成10年7月3日に監査請求を行っており,本件工事契約
が違法であることを知ることができたときから3か月以内に監査請求がなされてい
るのであるから,当該行為が違法であることを知ることができたときから相当な期
間内に監査請求をしたということができる。
(4) 以上によれば,本件においては原告らの行った監査請求は,監査請求期間
を徒過したことにつき「正当な理由」があるから,本件訴えは適法である。
2 談合が行われたかどうか
(1) 証拠(甲5の刑事記録甲49,甲6の刑事記録甲50,甲7の刑事記録乙
6,9及び13)によれば以下の事実が認められる。
ア 被告会社の大阪支店土木第1営業部長であったP13は,平成10年6月22
日,取調べに当たった検察官に対し,自己の職務が,主として官公庁発注の土木工
事に関して,その入札前に,同業者間の調整をすること,いわゆる談合をする役目
であったこと,本件工事に関しても,ほかの指名業者が判明した時点で,被告P4
から指示を受けて,他の指名業者の担当者に対し,被告会社が本件工事を落札する
ことができるよう依頼していたこと,他の指名業者のうち,林建設工業及びモリタ
建設は協力をしぶったので,共同企業体として本件事業を行い,林建設及びモリタ
建設に本件工事の利益を分配するという条件で協力を取り付けたこと,被告会社が
本件工事の入札に際し,6億1000万円で入札することを決めたのち被告P4に
指示されて他の指名業者に対して具体的な入札金額を伝えて,その金額で入札して
もらうよう依頼したこと,以上の事実を認める旨の供述をしている(甲6の刑事記
録甲50)。
イ 被告P4は,平成10年6月20日,取調べに当たった司法警察員に対して,
被告会社が6億1000万円で入札をする
ことを決まってから,被告P4がP13に対して,被告会社以外の指名業者に連絡
をして被告会社より高い価格で入札してもらうように各社に依頼するように指示
し,その後,P13から他の指名業者との間で入札金額の調整が済んだことの報告
を受けた事実,これにより被告P4は,被告会社が6億1000万円で落札するこ
とができると確信していたことを認める供述をしている(甲7の刑事記録乙1
3)。
ウ 被告P3は,平成10年6月21日,取調べに当たった検察官に対し,被告会
社以外の指名業者については被告会社よりも高い金額で入札することで話がついて
いると思っていた旨を供述している(甲7の刑事記録乙9)。
エ 本件契約締結当時被告会社の専務取締役統括大阪支店長であったP14は,平
成10年6月23日,取調べに当たった検察官に対し,P14は,被告P4から,
被告会社が本件工事を単独受注をしたが,モリタ建設及び林建設工業と協業企業体
で,いわゆる裏ジョイントで工事をすることになったとの報告を受けた事実を認め
る供述をしている(甲5の刑事記録甲49)。
オ 被告P3,被告P4及びP13は,被告P3が被告P2から入札できる金額と
して教えてもらった6億1000万円という金額は,被告会社ができるだけ利益を
上げながら確実に落札できる価格,すなわち入札書比較価格に極めて近い金額であ
ると認識していた(甲6の刑事記録甲50,甲7の刑事記録乙6,甲7の刑事記録
乙9,甲7の刑事記録乙13)。
(2) 以上の各事実及び前記前提事実を前提に検討すると,被告P3は,被告会
社が本件工事を落札することのできる価格として入札書比較価格に極めて近い価格
を聞き出しているところ,談合を行わずに自由競争のもとで入札を行う意思がある
ならば,たとえ被告会社が入札書比較価格よりも低い価格で入札しても,ほかの業
者が被告の入札価格以下の価格で入札すれば被告会社は本件工事を落札できないこ
とになるのであるから,被告会社としては少なくとも限定価格入札書比較価格につ
いても調査する必要があるのにもかかわらず,本件において入札書比較価格のみを
念頭において入札価格を設定している被告会社の行動態度に徴すると,被告会社
は,本件工事の入札において談合が行われることを当然の前提としていたと認めざ
るを得ない。のみならず,被告P3及び被告P4は,被告P2から,落札金額の3
パーセントの報酬を支払う
約束をしたうえで被告会社以外の指名業者を聞き出しているところ,かかる報酬を
支払ってまであえて被告会社以外の指名業者を聞き出そうとしたのは,高額な報酬
を支払ってもそれを上回る利益を獲得することができるからであったことにほかな
らず,この点も,被告会社が談合工作を行う前提として被告会社以外の指名入札業
者を聞き出したとの疑いを強く推認させるものというべきである。
 他方,前記認定のとおり,被告P3,被告P4及びP13は,捜査段階において
いずれも本件工事に関して談合が行われたことを認める趣旨の供述をしているとこ
ろ,上記被告両名の刑事被告事件においてかかる供述の信用性について争われたな
どの事情は一切主張されておらず,本件訴訟においても供述調書の信用性を疑わせ
る事情は何ら主張立証されていないことからすると,これらの供述は十分信用に値
するということができる。
 以上に述べたところに,実際にも被告会社は落札することのできる上限の価格で
ある入札書比較価格をわずかに下回る価格で落札し,ほかの指名業者はいずれも入
札書比較価格を上回る価格で入札していることを総合考慮すれば,被告会社と他の
指名業者との間で談合が行われた事実は優にこれを認定することができる。
(3) これに対し,被告会社,同P3,同P4は,本件工事の入札にかかる刑事
裁判においては,競売妨害罪の成立が認定されたにすぎず,談合罪としては起訴さ
れていないと主張するが,刑事被告事件で,検察官が談合罪として起訴するか,競
売妨害罪として起訴するかということと,実際に談合が行われたかどうかというこ
とは別問題であるから,かかる主張は採用することができない。
(4) よって,被告会社,被告P3,被告P4,被告P2,被告P1が本件工事
の入札に関して談合を行った事実が認められ,他にかかる認定を覆すに足りる証拠
はない。
3 責任の有無
(1) 被告P5の責任
ア 主位的主張
 原告らは,被告P5が,被告P1と共謀のうえ,被告P2と連絡を取りあって,
自ら談合工作を行ったと主張する。
 しかしながら,証拠(甲5の刑事記録甲36)によれば,P7課長は,被告P1
からある業者を指名業者に選定するようにとの依頼が来た場合は,清水市長の事実
上の指示に基づくものと理解していたことが認められるものの,P7課長におい
て,実際に被告P5が被告P1に対して指名業者の選定について指示していたこと
を確認していたわけではなく,あくまでもP7課長の推測にすぎないから,これを
もって被告P5が本件工事について談合工作を行っていたことを推認することはで
きない。
 また,証拠(甲5の刑事記録甲38)によれば,被告P1は,P8に対し,被告
P1が市長公室長の職を退いた時に,今までは被告P1が自ら調度課長に業者の指
名について指示していたがこれからはP8に連絡を依頼する旨,そしてそのことは
市長も承知の話である旨を述べた事実が認められるが,被告P5が実際にそのこと
を承知していたかどうかは不明であるし,被告P1が,P8に対して,本件工事の
入札に関し指示を与える際に,被告P5から指示を受けたことをうかがわせるよう
なことは述べていないことからすると,被告P1のかかる言辞のみから,本件工事
について被告P5が自ら談合工作を行っていたことを推認することはできない。
 その他,本件の全証拠を検討しても,未だ被告P5自身が本件工事の入札及び契
約の締結にあたって行われた談合工作に関与していた事実について確信を抱かせる
に足りず,被告P5が,他の被告らと共謀して,本件入札の談合工作を行ったとの
原告らの主張は採用することができない。
イ 予備的主張
(ア) 原告らは,被告P5は,ほかの被告らが本件行為について違法な行為を行
っていたことを知っていたか,容易に知り得たにもかかわらず,漫然と被告会社と
本件工事契約を締結したのであるから,被告会社と本件工事契約を締結した過失が
あり,責任を免れることはできないと主張する。
 ところで,普通地方公共団体の長は,指名競争入札により,工事又は製造の請負
の契約を締結しようとする場合において,予定価格の制限の範囲内で最低の価格を
もって申込みをした者と契約を締結することが著しく不適当であると認めるとき
は,その者を落札者とせず,予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした
ほかの者のうち,最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができる
(地方自治法施行令167条の10条1項,同条の13)と定められているとこ
ろ,請負契約を締結しようとする工事の入札に際して談合が行われたのであれば,
予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者と契約を締結するこ
とが著しく不適当であるのは明らかであるから,指名競争入札に関して,談合が行
われた場合,普通地方公共団体の長には予定価格の制限の
範囲内で最低の価格をもって申込みをした者と契約を締結してはならない義務があ
ると解するのが相当である。
 したがって,市長が,本件工事の指名競争入札に関して,談合が行われたことを
知っていたか,知り得たにもかかわらず,契約を締結して公金を支出した場合に
は,市長は,故意又は過失により違法に契約を締結したものというべきである。
(イ) そこで,被告P5が,本件工事につき談合工作が行われていたことを知っ
ていたか,又は知り得たのかどうかについて検討する。
a 原告らは,被告P1が,被告P5の側近としての地位を利用して違法行為を行
っていたことから,被告P1が本件工事に関して談合工作を行っていたことにつ
き,被告P5が知っていたあるいは容易に知り得たことは明らかであると主張す
る。
 しかしながら,談合はその性質上秘密裡に行われるものであるし,被告P1が被
告P5の側近であったとしても,被告P1が,自己の行動について逐一被告P5に
報告していたとは限らず,側近たる地位を利用し独断専行していたということは十
分あり得るのであるから,単に被告P1が被告P5の側近であることのみをもっ
て,被告P5が,自己の側近である被告P1の関与のもとに本件工事について談合
工作が行われたことを知っていたあるいは容易に知り得たものとは即断できず,ま
た,かかる事実を認め得る的確な証拠もない。
b さらに,原告らは,被告P1が,東大阪市の発注する公共工事につき日常的に
談合工作を行っていたこと,被告P1が東大阪市を退職してからも,被告P5の側
近であったという地位を利用して談合などに関与し続けていたことは広く知られて
いた事実であって,このことはマスコミでも報道されていたのであるから,被告P
5のみがこれを知らなかったとは考えられないと主張するところ,証拠(甲4の刑
事記録甲3,甲5の刑事記録甲37及び38,甲6の刑事記録63及び64,甲1
7ないし19)によれば,以下の事実が認められる。
(a) 東大阪市において,平成6年初めから,平成7年の工事のうち本件工事よ
り前に締結された工事のうち,2億円以上の応札金額であった工事は平成6年5月
18日に入札された2件と平成6年8月25日に入札された2件の合計4件があ
り,その落札率は,それぞれ99.16パーセント,98.71パーセント,9
8.20パーセント,98.21パーセント,応札額が入札書比較価格(証
拠上は予定価格とされているが入札書比較価格の誤りであると解される。)を下回
る業者数はそれぞれ,1社が3件と2社が1件である(甲17)。
(b) 東大阪市において,平成7年度の工事のうち本件工事より前に入札された
工事のうち応札価格が5000万円以上の工事は28件あり,落札率が98パーセ
ント以上の工事が17件ある(甲18,19)。
(c) 被告P7,被告P1及びP8は,いずれも取調べに当たった検察官に対
し,被告P1が市長公室長であった当時は,被告P1が直接調度課課長に対し,被
告P1が平成7年春ころ市長公室長を退いた後は,被告P1は,P8を通じて,調
度課課長に対し,どの工事にどの業者を指名業者とするかということについて指示
していた事実を認める供述をしている(甲5の刑事記録甲37及び38,甲6の刑
事記録甲64)。
(d) 被告P2は,取調べに当たった検察官に対し,同被告が,被告P1に対
し,何度か工事の件で入札に参加できるように頼んだことがあった事実を認める供
述をしている(甲6の刑事記録甲63)。
 以上の事実によれば,当時東大阪市においては,確かに本件工事以外に公共工事
の受注に関して談合が行われていたことがあり,少なくとも,被告P1が,本件工
事契約以前においても,東大阪市の発注する公共工事の入札に関して談合工作を行
っていたことは十分推認し得るところである。
 しかしながら,そうであるからといって,被告P5が,東大阪市の公共事業の指
名競争入札に関して,従前から被告P1の関与のもとに談合が行われていることを
知っていたものとは断定できないし,実際に被告P5がかかる事実を知っていたこ
とを認め得る的確な証拠もない。
 また,マスコミによる報道についても,甲35号証によれば,被告P1が継続的
に談合工作にかかわっていたことがマスコミにより報道されたのはいずれも本件工
事契約締結後のことであるから,この点に関する原告らの主張も理由がない。
c 以上によれば,被告P5は,被告P1が従前から談合工作を行っていたことに
ついて知っていたあるいは容易に知ることができたとまでは認められないというべ
きである。
(ウ) そして,被告P5としては,被告P1が従前から談合工作を行っていたこ
とについて知り得る状況であったのであればともかく,そのことを知らなかった以
上,入札書比較価格と落札価格が近接していることから談合が行われてい
るとの判断に至らなくても無理はないというべきであり,したがって,被告P5
が,本件工事の入札において入札書比較価格と落札価格が近接していたことを契機
に,談合が行われていなかったかどうかを調査しなかったとしても,その点に過失
を認めることはできない。
(エ) 以上検討したとおり,被告P5は,本件工事について談合が行われていた
ことを知っていた又は容易に知り得たにもかかわらず,漫然と被告会社と本件工事
契約を締結したことが違法であり,責任を免れることはできないとの原告らの主張
は採用することができない。
(2) 被告P5以外の被告らの責任
 前提事実及び前記2で認定した事実によれば,被告会社,被告P3,被告P4に
ついては,談合並びにその前提として指名業者の選定についての違法な工作及び入
札書比較価格の調査を行っており,被告P1,被告P2については,談合工作の前
提となる指名業者の選定についての違法な介入及び入札書比較価格の漏えいを行っ
ているのであるから,不法行為責任を負うことは明らかである。
 なお,被告P3は,同人は被告会社の従業員にすぎず,本件工事契約の当事者で
はないから,被告P3個人に対して損害賠償請求をするのは不当であると主張する
が,原告らは,契約関係に基づいて損害賠償を請求しているのではなく,不法行為
を原因として損害賠償を請求しているのであるから,被告P3が,本件契約の当事
者であったかどうかは,被告P3が責任を負うかどうかとは無関係である。したが
って,上記被告P3の主張は採用することができない。
4 損害
(1) 原告らは本件工事契約は無効であるから,本件契約に基づいて被告会社に
対して支払われた6億1000万円全額が損害であると主張する。
 しかしながら,不法行為による損害とは,当該不法行為がなかったとしたならば
現在あるべき仮定的な利益状況と,不法行為による現在の利益状態の差額であるか
ら,本件における損害とは,本件工事契約に基づいて実際に支出された額(本件工
事の落札価格に消費税相当額を加えた額)と,本件工事の入札において談合がなか
ったと仮定した場合に支出されることになる額(談合が行われなかったと仮定した
場合の落札価格に消費税相当額を加えた額)との差額であると解するのが相当であ
る。
 この点,原告らは,本件においては,談合が行われたからこそ,東大阪市は被告
会社と契約を締結し,その結果,本件契
約金額全額が支払われたのであって,談合が行われなければ東大阪市は被告会社と
契約を締結することはなく,したがって工事代金が支払われることもなかったので
あるから,本件工事代金全額が損害となると主張するが,談合が行われなかったと
しても,東大阪市は本件工事を落札した業者に工事代金を支払うことになるのであ
るから,本件契約金額全額が東大阪市の被った損害になることはあり得ず,原告ら
の主張は失当である。
 また,原告らは,東大阪市は本件工事の成果物を受け取ったから損害がないとす
る被告らの主張は,損益相殺の主張であり,被告らの側に対価物の価格について主
張立証責任があると主張する。しかしながら,東大阪市が成果物を受け取ったとの
主張が損益相殺の主張であるとの見解は,談合が行われたことによって生じた損害
が工事代金全額であることを前提にした見解であり,前述のとおり,談合が行われ
たことによって生じた損害とは,本件工事の落札価格に消費税を加算した額と,本
件工事の入札において談合がなかったと仮定した場合に形成された落札価格に消費
税を加えた額との差額であると解すべきであるから,原告らの主張は前提を欠き失
当というほかはない。
 以上検討したところによれば,本件契約に基づいて被告会社に対して支払われた
本件工事代金全額が損害であるとの原告らの主張は採用することができない。
(2) 前述のとおり,本件工事契約につき談合が行われたことによる損害は,本
件工事の落札価格と,本件工事の入札において談合がなかったと仮定した場合の落
札価格との差額であると解するのが相当であるから,本件工事に関して談合が行わ
れたことにより東大阪市が被った損害が幾らかということは,結局,本件工事が行
われなかったと仮定した場合の落札価格が幾らであったかということに帰着する。
 そして,業者らが互いに工事を落札しようとして競争する結果,受注価格が下落
して利益が減少することを避け,受注業者を話合いによって決めたうえで,できる
だけ入札書比較価格に近い価格で落札することによってより多くの利益を得ること
を目的として談合が行われるのであるから,本件工事に関して談合が行われた結
果,落札価格が人為的に上昇せしめられ,東大阪市が損害を被ったことは明らかで
ある。
 これに対し,被告らは,東大阪市において本件工事の入札書比較価格及び限定価
格入札書比較価格を算出するにあたって
基準となる本件工事価格を算出した東大阪市下水道部設計課のP17が,「今回の
工事については,5億円を切ることがないというのは容易に推測できると思います
が,それ以上は6億円から7億円の間くらいになる」と述べていること(甲5の刑
事記録甲43),本件工事の受注に向けて営業活動を展開していた森本組大阪支店
の第一営業部長であるP15が,「長年の経験で,この工事が6億円ないし7億円
くらいの工事だと判断し」たと述べていること(甲5の刑事記録甲46)からする
と,6億1000万円という本件工事の落札価格は,本件工事の種類や規模,難易
度,地域の特性,当時の社会情勢その他一切の事情から判断すれば,決して不当な
価格ではなく,適正な金額であったと主張する。
 しかしながら,P17の供述は,合理的な根拠のある計算に基づくものではな
く,P17自身も明確に断定しているのは5億を切ることはないということだけで
あって,6億から7億くらいになると述べているのは推測にすぎないというべきで
あるから,かかる供述をもって,本件工事の落札価格が適正な価格であったという
ことはできない。
 また,P15の発言についても,同様に,具体的な計算に基づく発言ではなく,
単に経験から判断した予測にすぎないのであるから,かかる発言を重視することは
できない。
 他に,本件工事の入札に際して談合が行われたことにより,落札価格が上昇し,
東大阪市が損害を被ったとの前記認定を左右するに足りる証拠はない。
(3) 以上のとおり,本件工事の入札に際して談合が行われたことにより東大阪
市が損害を被ったこと自体は認められるものの,談合が行われなかったと仮定した
場合の落札価格が幾らであったかということについての立証は,実際には行われな
かった仮定的な事実についての立証であるから,極めて立証が困難であり,ひいて
は,本件工事に関して談合が行われたことにより東大阪市が被った損害額について
も,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるというべきである。し
たがって,本件においては,民事訴訟法248条を適用し,相当な損害額を認定す
ることをもって足りるというべきである。そして,同条は,損害額の立証が困難で
ある場合に損害額についての証明度を軽減することによって救済を図ろうとした規
定であると解されることから,相当な損害額であると認定するためには,証明の程
度に至るまで立証さ
れることを必要とするものではないが,損害額が当該金額になることの蓋然性が認
められるに足りる程度の立証がなされていることが必要であると解するのが相当で
ある。
(4) そこで,以下,相当な損害額は幾らかということについて検討する。
ア 証拠(甲18,19)によれば,東大阪市に平成7年度に行われた予定価格が
5000万円以上の公共下水道工事64件の入札結果は以下のとおりであったこと
が認められる。
 落札率が95パーセント以上のもの(51件)
 落札率が95パーセント未満85パーセント以上のもの(1件)
 落札率が85パーセント未満80パーセント以上のもの(1件)
 落札率が80パーセント以下のもの(11件)
 原告らは,東大阪市において平成7年度に入札が行われた公共下水道工事64件
の入札結果をみると,落札率が95パーセント以上の工事と77パーセントを中心
とする2つの山に大きく分かれており,このように大きく分かれているのは,落札
率が95パーセント以上の工事については談合が行われているからであるとしたう
えで,落札率が95パーセント以上の工事の平均落札率は98.3パーセントであ
り,これに対して落札率95パーセント未満の工事の平均落札率は78.5パーセ
ントであるところ,本件工事に関しても,談合が行われなかったと仮定すれば,落
札率は78.5パーセントになると解され,本件工事の入札書比較価格6億131
6万4000円の78.5パーセントは4億8133万3740円となり,本件工
事の限定価格入札書比較価格4億8907万1000円を下回ることになるので,
このような場合は限定価格入札書比較価格(いわゆる最低制限価格)が予想落札価
格となるものと考えるべきであるとして,本件落札価格6億1000万円に消費税
相当額を加算した6億2830万円と,談合がなかったと仮定した場合の落札価格
であるところの限定比較価格4億8907万1000円に消費税相当額を加算した
価格である5億0374万3130円(いわゆる限定価格)との差額1億2455
万6870円が,本件工事の指名競争入札について談合が行われたことによる損害
額であると主張する。
 たしかに,談合が行われる場合には,できるだけ入札書比較価格に近接した価格
で落札することによって利益を上げることを図るのが通常であるから,一般に落札
率が高くなるということはいい得るが,入札書比較価格及び
限定価格入札書比較価格は,前記第2,1(2)力のとおり一定のルールに従って
決定されるものではあるが,指名業者の積算能力や予測能力は一様ではなく,談合
が行われなかったとしても東大阪市の見積りが指名業者の見積りよりも低額になる
場合があり得,落札率が高くなることはあり得る。また,各指名業者の落札意欲が
低く,高い落札率での競争となる場合がないわけではなく,したがって,落札率が
95パーセント以上の工事についてはすべて談合が行われていたとの原告らの主張
はにわかに採用することができない。そして,落札率が95パーセント以上の工事
について談合が行われていない工事が含まれているとすれば,談合が行われなかっ
た場合の平均落札率は78・5パーセントであるとの原告らの主張は前提を欠く
し,実際にも,原告らが主張するとおり落札率が78.5パーセントになったと仮
定すると,本件工事の場合には,落札価格が限定価格入札書比較価格を下回ること
になってしまい実際にはありえない結論になってしまうことになり,78.5パー
セントという数値が果たして妥当な数値であるかどうか疑わしい。
 また,原告らは,長崎県及び広島県発注の土木工事をめぐる談合事件7件につい
て,談合が存在しなかったと仮定した場合の平均落札率が81.4パーセントであ
ること,座間市発注の土木工事をめぐる談合事件2件で算出した平均落札率は8
6.47パーセントであること,日弁連「入札・談合ホットライン」の結果によれ
ば,地方自治体の発注する公共工事における損害は予定価格の20パーセント以上
であると報告されていること,「第6回独占禁止法研究会」における報告では,三
重県久居市において,談合が刑事事件となったことにより落札率が75パーセント
程度に落ち着いていると報告されていることからも,本件工事において談合が行わ
れなかったと仮定した落札価格は,限定価格入札書比較価格であると解すべきであ
ると主張する。
 しかしながら,これらの数値が合理的な根拠に基づいて算出されたものであるの
かということは明確でないし,当該公共事業を発注する地方公共団体がどのような
算定方法によって入札書比較価格を算出しているのか,当該工事の種類・内容,入
札に参加した指名業者の落札意欲及び価格競争力,経済状況等の多様な条件の変化
によって落札率が異なってくるのであるから,かかる差違を考慮せずに,一律に談
合が行
われなかった場合の落札価格を算定することはできないというべきである。
 以上によれば,仮に本件工事の入札に関して談合が行われなかったと仮定した場
合の落札価格が限定価格入札書比較価格になることの蓋然性が認められないから,
本件工事の指名競争入札に関して談合が行われたことによる相当な損害額は,落札
価格に消費税相当額を加算した価格6億2830万円と限定価格5億0374万3
130円との差額1億2455万6870円であるとの原告らの主張は採用するこ
とができない。
イ 証拠(甲4の刑事記録甲22,甲6の刑事記録甲53)によれば,以下の事実
が認められる。
(ア) 被告会社は,本件工事を開始するにあたって,本件工事の利益率を0.1
パーセント,利益率努力目標を3パーセントとしていた。
(イ) 東大阪市と被告会社は,平成7年10月26日,本件工事契約の設計を変
更し,設計変更に伴う請負代金額の増額分は1584万9640円,うち取引に係
る消費税相当額46万1640円とする旨の工事請負変更契約が締結された。その
後,東大阪市と被告会社は,再び本件工事の設計を変更し,変更に伴う請負代金額
の増額分は2920万4620円,うち取引に係る消費税相当額85万0620円
とする旨の工事請負変更契約が締結された。
(ウ) 最終的には,本件工事の請負金額は,税抜価格6億5374万2000
円,消費税相当額1961万2260円,合計6億7335万4260円,工事原
価は5億8109万7076円,工事利益は7264万4924円,利益率は約1
1.1パーセントであった。
ウ なお,被告会社,被告P3及び被告P2は,本件工事の最終的な利益率が1
1.1パーセントとなっているのは,本社・支店の役員,従業員等の人件費,交際
費,出張旅費等の本社・支店等経費を控除する前の「現場限りの利益」であるから
であると主張する。そして,被告会社,被告P3及び被告P3は,本社・支店等経
費は工事完工高に対して約5パーセントであると主張する。しかしながら,証拠
(甲6の刑事記録甲52)によれば,被告会社の従業員であるP16は,「当初目
標の3パーセントの利益率を大きく上回る11.2パーセントの利益が出ておりま
す。」と述べていることが認められるところ,被告会社が主張するとおり,上記利
益率の算出においては,工事完工高に対して約5パーセントである本社・支店等経
費が控除されてい
ないとすると,被告会社は本社・支店等経費を控除するとおよそ利益のでない額を
当初の目標にしていたことになり,不合理というほかはない。したがって,本件工
事の利益率を算出するにあたっては,本社・支店等経費が控除されていないとの被
告会社らの主張はたやすく信用することができない。
エ 利益率努力目標はもっとも利益が上がる場合を目標に置かれるのが通常である
ところ,被告会社は利益率努力目標を3パーセントとしているのであるから,そも
そも利益率努力目標の設定に誤りがあった,あるいは,当初の予定よりも工費が節
減できたなど,利益率努力目標を上回る利益を上げることができたことについて合
理的な説明が可能な特段の事情がない限り,利益率努力目標を上回る部分の利益に
ついては,談合によって得られた不正な利益である可能性が高いということができ
る。
 そして,そもそも3パーセントという利益率努力目標の設定に誤りがあることを
うかがわせる事情を認めるに足りる証拠はなく,かえって,被告会社が,本件にお
いて被告会社が本件工事において受けた利益は高々3パーセントであって,本件工
事価格は適正な価格であると主張していることをも考慮すると,3パーセントとい
う利益率努力目標が妥当な設定であることが推認される。
 また,当初の予定より経費が節減できたなど,利益率努力目標を上回る利益を上
げることができたことについて合理的な説明がなされているかどうかという点につ
いては,被告らは,工期の短縮によって当初の予定よりも利益を上げることができ
た旨主張し,被告会社の従業員P16も,「難工事でしたが,工期を短縮するな
ど,現場や下請の努力があったために,初期の目標を大きく上回ることができたの
だと思います。」と述べている(甲6の刑事記録甲52)が,P16が述べるとこ
ろは抽象的なものにとどまり,具体的にどのような工夫がなされたことによってど
れだけ経費を節減することが可能となったのか明らかにしていないし,契約締結後
の事後的な努力によって努力目標としていた利益率を8.1パーセントも上回ると
いうことはおよそ考え難く,被告らの主張及びP16の供述は信用することができ
ない。
 かえって,証拠(甲6の刑事記録甲52)によれば,P16が,本件工事の工事
現場は人家の密集地域で道路も狭く,現場泣かせの所で,当初の設計も変更してな
んとか無事終了したという感じであった旨述べ
ていること,当初工期が平成7年10月27日からであったにもかかわらず,本件
工事の工事現場には,道路にガス管や水道管などの埋設物が多く,それらの移設工
事などで着工までの準備に時間を要したと述べていることからすると,容易に経費
の節減を図ることが可能であったとはとうてい認め難い。
 また,被告会社,被告P3及び被告P2は,本件工事に先立って受注していた工
事の仮設材を転用することによって,本件工事にかかる経費を2000万円程度圧
縮することが可能であったと主張し,被告会社は,かかる主張を裏付ける証拠とし
て仮設材転用リスト一覧表(乙5)を提出する。しかしながら,同リストは,被告
会社自身が作成したリストにすぎず被告の主張を裏付ける客観的な証拠であるとは
言い難い。また,本件工事の竣工報告書(甲6の刑事記録甲52)には仮設材を転
用することによって経費の節減が可能であった旨の記載は全くされておらず,また
P16の前記供述にも本件工事の利益率が高くなったことの理由として仮設材を転
用したことについて何ら触れるところはない。したがって,他の工事の仮設材を本
件工事に転用することによって2000万円程度経費を圧縮することができたとの
上記主張も,採用することができない。
 また,本件では本件契約締結後,2回の設計変更が行われ,それに伴って報酬額
も変更されているところ,変更契約が締結されることが原因となって利益率が増大
するのは,変更契約が談合によって契約された当初の契約よりも利益率の高い契約
である場合であるが,変更契約についても不正が行われたことをうかがわせる事情
を認めるに足りる証拠はないから,本件契約締結後に変更契約が締結されたからと
いって利益率が増大するとは考えにくい。
 以上によれば,そもそも利益率努力目標の設定に誤りがあった,あるいは,当初
の予定よりも工費が節減できたなど,利益率努力目標を上回る利益を上げることが
できたことについて合理的な説明が可能な特段の事情が存在したとは認め難いとい
うべきである。
オ もっとも,被告会社と他の指名業者とでは,競争力が違う場合には,被告会社
が工事原価に通常の利益よりも利益を上乗せして入札価格を設定しても,被告会社
が落札することができる可能性がある。
 しかしながら,証拠(甲5の刑事記録甲37,甲5の刑事記録甲39,甲5の刑
事記録甲40,甲5の刑事記録甲42)によれば本件
工事においてはAランクの業者で,かつ経営事項審査の点数が1500点前後から
2000点までの中堅ゼネコンから選出することになっていたところ,森本組は,
かかる条件に合致していたこと,P11主査が,調度課において本件工事の指名業
者を選定する際に作成した指名業者の素案には森本組が入っていたこと,本件工事
はシールド工法で行われる予定であり,森本組はシールド工法に関する実績もあっ
たこと,調度課において指名業者を選定するにあたって森本組が指名業者の選定か
ら除外されたのは,P7課長が森本組には談合のうわさがあるから指名業者から外
そうと述べたことが唯一の理由であることが認められ,被告会社が指名業者の選定
から森本組を除外するよう依頼しなければ森本組が指名業者に選定されていたのは
確実であったといってもさしつかえないというべきである。
 加えて,証拠(甲7の刑事記録乙13)によれば,当時の建設業界は,バブル経
済が破綻した影響を受け,平成6年ころから民間工事の発注件数が減少しており,
公共工事に期待する傾向が強くなっていたこと,森本組は本件工事を落札すること
について強く希望していたこと,証拠(甲6の刑事記録63,甲7の刑事記録乙3
及び乙4)によれば,被告P3は,被告P2に対して,「森本組が入札に参加した
ら,うちは負けます。どうにかならないですか。」と述べるなど,本件工事の指名
入札業者に森本組が選定されて,森本組と被告会社とが競い合えば,被告会社は本
件工事を落札することができない可能性があるとの認識を有していたことが認めら
れ,以上の事実を総合すれば,森本組が入札に参加したうえで,公正な入札が行わ
れたのであれば,被告会社としてはできるだけ入札価格を低く設定しても本件工事
を落札できたかどうかわからないという状況にあったのであるから,少なくとも利
益率が努力目標である3パーセントを上回るような落札価格で落札することができ
たとは考え難く,少なくとも,これを上回る8.1パーセント分については談合に
よってはじめて得ることができた利益である蓋然性が高いということができる。
 そして,前述のとおり,本件契約締結後に設計変更及びそれに伴う報酬の変更が
行われたことによって被告会社の受ける利益率が増加するとは考え難いことからす
ると,本件工事工事契約の落札価格のうち少なくとも8.1パーセント分は談合が
行われたことによって得る
ことができた利益であると解するのが相当である。
 したがって,本件工事につき談合が行われたことにより東大阪市が被った損害額
は,本件工事の落札価格6億1000万円に消費税相当額を加えた6億2830万
円と落札価格から8.1パーセントを減じた価格5億6059万円に消費税相当額
を加算した5億7740万7700円との差額5089万2300円と算定するの
が相当である。
5 結論
 以上の次第で,原告らの被告P5に対する請求については理由がないからこれを
棄却することとし,その余の被告らに対する請求については,その余の被告ら各自
に対し,5089万2300円並びにこれに対する被告P1,被告P2,被告P3
及び被告P4については不法行為後の平成10年10月20日から,被告会社につ
いては不法行為後の平成10年10月21日から,支払済みに至るまで民法所定の
年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからかかる限度
で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担
について行訴法7条,民訴法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき行訴法7
条,民訴法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第二民事部
裁判長裁判官 三浦潤
裁判官 林俊之
裁判官 中島崇

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