弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
一 原告らの本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告は別紙物件目録記載の教育財産につき加須市立加須東中学校(以下「東中
学校」という。)の校庭等の用地としての用途を廃止する決定をしてはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
(本案前の答弁)
主文と同旨。
(本案の答弁)
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告らはいずれも加須市の住民である。
2 被告は、別紙物件目録記載の土地を教育財産(以下「本件教育財産」とい
う。)として管理しており(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二三条第
二号、同法第二八条第一項)、東中学校の校庭等の用地に供しているところ、その
用途を廃止するとの方針を決定し、本件教育財産上にある東中学校の旧校舎を解体
した後、速やかに右用途廃止決定を行うことを明らかにしている。
3 被告は、加須市長である訴外Aの意向のみに従い、何らの合理的理由がないの
に右用途廃止決定を強行しようとしているのであり、被告のこの行為は教育委員会
としての職責を放棄するものであって、右用途廃止決定は被告に与えられた裁量権
を濫用し又は逸脱する行為であるから、違法である。
4 そして、もし右用途廃止決定が強行された場合、本件教育財産は普通財産とし
て加須市長が管理することになるが、そうすると、そのまま数年間も利用されない
で放置される蓋然性が高く、それは他方で東中学校における教育環境の低下を招
き、その結果、加須市に対し回復困難な損害を生じさせるおそれがある。
5 そこで、原告らは、加須市監査委員に対して、平成四年四月三日、地方自治法
第二四二条に基づき、被告が本件教育財産の用途を廃止する決定をしないよう相当
の措置を求める旨の監査請求をしたところ、同監査委員は同年五月二七日、措置の
必要を認めないとの決定をし、同月二八日ころ、原告らにその旨を通知した。
よって、原告らは被告に対し、地方自治法第二四二条の二第一項第一号に基づき、
本件教育財産につき東中学校の校庭等の用地としての用途を廃止する決定をしては
ならない旨の判決を求める。
二 被告の本案前の主張とこれに対する原告らの反論
(被告の主張)
地方自治法第二四二条の二に規定する住民訴訟の対象は、普通地方公共団体の執行
機関又は職員による財務会計上の行為に限られるところ、原告らが本件訴えで差止
めを求めている被告の行為はこの財務会計上の行為に該当せず、したがって、本件
訴えは、住民訴訟の対象とならない事柄をその対象とするものであるから不適法で
ある。
(原告らの反論)
被告による本件教育財産についての用途廃止決定は、地方自治法第二四二条第一項
にいう「財産の管理」に該当し、その差止めを求める本件訴えは同法第二四二条の
二に規定する住民訴訟の対象になると解すべきである。また、同法第二四二条の二
に規定する住民訴訟の対象が財務会計上の行為に限られるとするのは、同法の立法
趣旨からみて具体的妥当性を欠き相当でない。
三 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2の各事実は認める。
2 同3の主張は争う。
被告が本件教育財産について用途廃止決定をするのは東中学校に係る教育施設の整
備事業の施行に伴い、本件教育財産がそのほかの学校施設と道路によって分断さ
れ、これをそのまま校庭等に供しておくことは生徒に交通上の危険が生ずることと
なったからである。教育施設の整備事業の施工に伴い、東中学校においては、本件
教育財産について用途廃止がされても、その規模に応じた十分な広さの校庭等が確
保されることになっている。
3 同4の事実のうち本件教育財産につき右用途廃止決定がされた場合、加須市長
がこれを普通財産として管理することになることは認めるが、その余は争う。
4 同5の事実は認める。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 地方自治法第二四二条の二の定める住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関
又は職員による同法第二四二条第一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実
が最終的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものである
ところから、これを防止するため、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求す
る権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたもの
である(最高裁判所第一小法廷昭和五三年三月三〇日判決民集第三二巻第一・二号
四八五頁)。したがって、普通地方公共団体の住民が住民訴訟によってその予防又
は是正を求めることができるのは、当該地方公共団体の執行機関又は職員による行
政上の諸活動のうち財務会計行為、すなわち普通地方公共団体の公金その他の財産
の財産的価値の維持、保全を直接の目的とする行為であって、その行為の結果如何
によって直接に当該地方公共団体に財産的損害を与え、又は与えるおそれのあるも
のに限られるのであって、それ以外の行為は、たとえ、それによって当該地方公共
団体の財産上に何らかの影響を及ぼすものであっても、これを住民訴訟の対象とす
ることはできないというべきである。
これを本件についてみるのに、被告は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律
第二三条第二号、同法第二八条第一項により、加須市長の総括のもとに加須市の教
育財産の管理をしているが、この管理行為は被告が職責とする教育行政上の観点か
ら行われるものであって(同法第二三条)、教育財産の財産的価値に着目し、その
維持、保全又は実現を直接の目的とするものではないから住民訴訟の対象となる財
務会計行為には該当しないものである。原告らが本件訴えによって差止めを求めて
いる本件教育財産の用途廃止決定は正にこのような教育行政上の観点から行われる
管理行為なのであるから、住民訴訟の対象となる財務会計上の行為ということはで
きない。したがって、原告らの本件訴えは住民訴訟の対象とすることのできない事
柄を対象とするものであるから不適法というべきである。
三 よって、原告らの本件訴えは不適法としていずれもこれを却下することとし、
訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条第一
項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 大塚一郎 中野智明 中川正充)
別紙物件目録(省略)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛