弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成22年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(行ケ)第10261号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年2月10日
判決
X原告
同訴訟代理人弁理士田中秀佳
城村邦彦
熊野剛
被告特許庁長官
同指定代理人池田聡史
長島孝志
岩崎伸二
安達輝幸
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2009−6837号事件について平成21年7月27日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記
2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が同請求は成
り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとお
り)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「広帯域バンドパスフィルタ」とする発明について,(1)
平成19年9月26日特許出願(特願2007−249433)したが(甲1),
平成21年2月25日付けの拒絶査定を受けたので,同年4月1日,これに対する
不服の審判を請求した。
特許庁は,上記請求を不服2009−6837号事件として審理した上,(2)
平成21年7月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との本件審決をし,
その謄本は同年8月6日原告に送達された。
2本願発明の要旨
本件審決が対象とした,特許請求の範囲請求項1の記載は,以下のとおりである。
以下,請求項1に記載された発明を「本願発明」,本件出願に係る明細書(甲1,
2の2,3の2)を「本願明細書」という。
中心周波数または遮断周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比
率で離隔した周波数に設定した少なくとも一対のフィルタを含む狭帯域バンドパス
フィルタを,共通信号入力端と共通信号出力端の間で並列的に接続したことを特徴
とする広帯域バンドパスフィルタ。
3本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,要するに,本願発明は,特開昭57−188119号(1)
公報(甲5。以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容
易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受
けることができない,というものである。
本件審決は,その判断の前提として,引用例に記載された発明(以下「引(2)
用発明」という。)並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点(以下「本件
相違点」という。)を,以下のとおり認定した。
ア引用発明:オーディオ帯域において,1を中心とし,その1/2またはkHz
2の等比数列にある周波数をそれぞれ通過中心周波数とし,かつ隣りの特性曲線と
は−3の点で交差すると共に,比較的急峻な通過特性をもつバンドパスフィルdB
タ()∼()を,バッファアンプ()の出力端と加算回路()の入力端と7A7J69
の間に接続し,該加算回路()の出力端から信号が出力される回路。9
イ一致点:少なくとも一対のフィルタを含む狭帯域バンドパスフィルタを,共
通信号入力端と共通信号出力端の間で並列的に接続した広帯域バンドパスフィルタ。
ウ相違点:少なくとも一対のフィルタが,本願発明においては,「中心周波数
または遮断周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した
周波数に設定した」ものとされているのに対し,引用発明においては,そのような
ものであるとはされていない点。
4取消事由
一致点の認定の誤り(取消事由1)(1)
本件相違点についての判断の誤り(取消事由2)(2)
第3当事者の主張
1取消事由1(一致点の認定の誤り)について
〔原告の主張〕
本願発明における「狭帯域バンドパスフィルタ」は,「中心周波数または(1)
遮断周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した周波数
に設定した少なくとも一対のフィルタ」を含んで構成され,「少なくとも一対のフ
ィルタ」は,総体として,1つの「チャンネル」の信号を通過させる周波数特性を
有するものである。すなわち,「狭帯域バンドパスフィルタ」を構成する「少なく
とも一対のフィルタ」は,「中心周波数または遮断周波数をチャンネルの中心周波
数から上下両側に所定の比率で離隔した周波数」に設定されたものである。
これに対して,引用発明の「バンドパスフィルタ()∼()」は,そ(2)7A7J
れぞれ通過特性()∼()で示される各チャンネルに対応し,各バンドパスフ7a7j
ィルタ()∼()の通過中心周波数は各チャンネルの中心周波数に設定され7A7J
る。また,仮に,引用発明の「バンドパスフィルタ()∼()」を「()7A7J7A
及び()」,「()及び()」,「()及び()」,「()及び7B7C7D7E7F7G
()」,「()及び()」の組に恣意的に分け,各組を「一対のフィルタ」7H7I7J
と形式的に称したとしても,引用例第2図に示されている通過特性()∼()7a7j
に変化はなく,各組における2つのフィルタの通過特性が合成されるのではない。
本願発明と引用発明とを対比すると,本願発明では,「少なくとも一対の(3)
フィルタ」が総体として1つの「チャンネル」に対応し,「少なくとも一対のフィ
ルタ」の中心周波数が「チャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔
した周波数」に設定されているのに対し,引用発明では,各バンドパスフィルタ
()∼()がそれぞれ1つのチャンネルに対応し,各バンドパスフィルタ7A7J
()∼()の中心周波数がそれぞれ各チャンネルの中心周波数に設定されて7A7J
いる点で相違する。
したがって,上記の相違点があるのに,これを看過して,引用発明にお(4)(3)
けるバンドパスフィルタ「()及び()」,「()及び()」,7A7B7C7D
「()及び()」,「()及び()」,「()及び()」のそれぞ7E7F7G7H7I7J
れが,本願発明における「一対のフィルタを含む狭帯域バンドパスフィルタ」に相
当し,引用発明におけるバンドパスフィルタ()∼()の全体よりなる構成7A7J
が,本願発明における「広帯域バンドパスフィルタ」に相当するとして,一致点を
認定した本件審決は誤りである。
〔被告の主張〕
引用例(2頁左下欄1∼8行)の記載から明らかなように,引用発明にお(1)
いては,複数のフィルタ()∼()を通過したオーディオ信号は,その後に7A7J
加算回路()に供給されて互いに加算されるものである。9
フィルタ()を通過したオーディオ信号とフィルタ()を通過したオーデ7A7B
ィオ信号とが上記加算回路で加算されるということの技術的意味を検討すると,フ
ィルタ()を通過したオーディオ信号は,もとのオーディオ信号がフィルタ7A
()の通過特性とフィルタ()の通過特性とが合成された通過特性を持つ,7A7B
仮想的な1つのフィルタの通過特性に従って濾波されることにほかならない。
同様に,フィルタ()からフィルタ()までのすべてのフィルタを通過し7A7J
たオーディオ信号が加算回路にて加算されるということは,もとのオーディオ信号
が,フィルタ()からフィルタ()までの通過特性が合成された通過特性を7A7J
持つ仮想的な1つのフィルタの通過特性に従って濾波されることにほかならない。
このことは,並列的に接続された複数のフィルタから出力される信号のす(2)
べてを共通信号出力端にて合成する構成を備える点において,本願発明も引用発明
と同様である。すなわち,例えば,本願明細書の図1に示されるようなすべてが同
列に並列的に接続されている1次対バンドパスフィルタ10aから10nにより構
成される本願発明の第1の実施の形態が,まず1次対バンドパスフィルタ10aと
1次対バンドパスフィルタ10bの2つの通過特性が合成された通過特性を持つ仮
想的な1つのフィルタである狭帯域バンドパスフィルタ11aを構成し,さらに狭
帯域バンドパスフィルタ11aから11gまでのすべての通過特性が合成された通
過特性を持つ仮想的な1つのフィルタである広帯域バンドパスフィルタ14を構成
するとしていることと論理的に矛盾しない。
そして,引用発明におけるフィルタ()の通過特性とフィルタ()の(3)7A7B
通過特性とが合成された通過特性を持つ仮想的な1つのフィルタは,フィルタ
()からフィルタ()までのすべてのフィルタの通過特性が合成された通過7A7J
特性を持つ仮想的な1つのフィルタに比べて相対的に「狭帯域」になっていること
は明らかであるから,前者の仮想的な1つのフィルタ,すなわちバンドパスフィル
タ()とフィルタ()とからなるフィルタを「狭帯域バンドパスフィルタ」7A7B
と称し,後者の仮想的な1つのフィルタ,すなわちバンドパスフィルタ()∼7A
()の全体よりなる構成を「広帯域バンドパスフィルタ」と称することは,単に7J
引用発明と本願発明とを対比するために便宜的にそのように称したにすぎない。
したがって,一致点の認定に誤りはない。(4)
2取消事由2(本件相違点についての判断の誤り)について
〔原告の主張〕
チャンネルについて(1)
引用例の第2図には,各バンドパスフィルタ()∼()に対応する各通過7A7J
特性()∼()が示されており,通過特性()と通過特性()とを合成し7a7j7a7b
た通過特性,通過特性()と通過特性()とを合成した通過特性,…及び通過7c7d
特性()と通過特性()とを合成した通過特性は示されていないから,これら7i7j
の合成された通過特性を「チャンネル」と称することはできない。
引用例(2頁右上欄20行∼左下欄11行)の記載によれば,各バンドパスフィ
ルタ()∼()がそれぞれ1つのチャンネルに対応し,各チャンネルがそれ7A7J
ぞれ各通過特性()∼()を有することが明らかである。「バンドパスフィル7a7j
タ()∼()」を「()及び()」,「()及び()」,「()7A7J7A7B7C7D7E
及び()」,「()及び()」,「()及び()」の組に分けてそれ7F7G7H7I7J
ぞれチャンネルを構成すること,各組における2つのバンドパスフィルタの通過特
性を合成して1つのチャンネルの通過特性とすることは引用例に全く開示されてお
らず,本件審決(5頁5∼14行,22∼28行)は,引用例の開示範囲を逸脱し
た技術事項の認定に基づくものであり,誤りである。
中心周波数及び通過特性について(2)
引用発明の「バンドパスフィルタ()∼()」を,「()及び()」,7A7J7A7B
「()及び()」,「()及び()」,「()及び()」,7C7D7E7F7G7H
「()及び()」の組に恣意的に分け,各組を「一対のフィルタ」と形式的に7I7J
称したとしても,引用例の第2図に示されている通過特性()∼()に変化は7a7j
なく,各チャンネルの中心周波数の幾何平均√(×),√(×)31.563Hz125250
,…及び√(×)は,相隣接する通過特性()∼()の特性曲Hz800016000Hz7a7j
線が−3の点で交差する周波数,すなわち,相隣接するチャンネルとチャンネdB
ルとの境界周波数を表し,それぞれの「チャンネル」の中心周波数とはなり得ない。
よって,本件審決(5頁28∼39行)の判断は,誤りである。
作用効果について(3)
ア引用発明の通過特性()∼()は−3の点で接続(交差)しており,7a7jdB
各通過特性()∼()の中心周波数領域のピーク値に対して−3とは電力比7a7jdB
50%である。引用例の第2図には,平坦な特性のように示されているが,実際に
は起伏の激しい特性である。
イこれに対して,本願明細書【0067】の記載によれば,一対の各フィルタ
の周波数特性(図示点線)が,一対のフィルタによって構成される狭帯域バンドパ
スフィルタの周波数特性(図示実線)となり,信号通過域が平坦になることが示さ
れている。
すなわち,本願明細書の図2(a)において,各フィルタ10a,10bのピー
クレベル(中心周波数1,2のレベル)を0とし,各フィルタ10a,10fofodB
bの特性曲線の交差点のレベルを仮に−6とすると,交差点での合成レベルはdB
−12となる。次に,フィルタ10aの中心周波数1の位置では,フィルタ1dBfo
0aのレベル(0)とフィルタ10bの周波数1位置のレベル(交差点のレベdBfo
ルより低いレベル,仮に−12とする)を加算した合成レベルは−12となdBdB
る。また,フィルタ10bの中心周波数2の位置では,フィルタl0bのレベルfo
(0)とフィルタ10aの周波数2位置のレベル(交差点のレベルより低いレdBfo
ベル,仮に−12とする)を加算した合成レベルは−12となる。同様に,dBdB
周波数をずらしていって各フィルタ10a,10bの合成レベルをプロットすると,
合成した周波数特性が得られる。
そして,各フィルタ10a,10bの特性をそれぞれ中心周波数1,2を中fofo
心として上下に分けると,下側領域はハイパスフィルタとして機能し,上側領域は
fofoロウパスフィルタとして機能し,各フィルタ10a,10bの中心周波数1,
2の中間領城では,ロウパスフィルタとハイパスフィルタの位置が入れ替わるため,
信号の通過が阻止されてディップを生じる。そこで,一対のフィルタ10a,10
bのうち,一方のフィルタ10bの出力位相を反転させて,各フィルタ10a,1
0bの中心周波数1,2間に形成されるディップを解消し,中心周波数1,fofofo
2間の信号通過域が平坦な周波数特性の狭帯域バンドパスフィルタ11aを得てfo
いる。
ウまた,本願明細書【0077】の記載によれば,各チャンネルが連接し平坦
な通過域を有する広帯域バンドパスフィルタを実現できることが示されている。
すなわち,本願明細書の図1に示す回路の狭帯域バンドパスフィルタの各チャン
ネルごとの周波数特性を重ね合わせると,隣接するチャンネルの境界は−3でdB
接続しており,2つ以上の狭帯域バンドパスフィルタを同時に動作させると,隣接
するチャンネルの境界は,−1以下で接続し,平坦な周波数特性が得られる。dB
したがって,本願発明は引用発明に対して格別の効果を奏するものということが
できる。
以上のとおり,本願発明が引用発明に基づいて容易想到であるとした本件(4)
審決の判断は,引用例の開示範囲を逸脱した技術事項の認定など,本件相違点につ
いての誤った判断に基づくものである。
〔被告の主張〕
チャンネルについて(1)
一般に「チャンネル」とは,ある周波数帯域をいくつかに分割した周波数帯域の
ことを指す用語であり,周波数帯域をどのようなチャンネルに分割するかは当業者
が適宜決定し得る設計事項である。この点については原告の手続補正書(甲4)に
おける主張も同様である(9頁9∼13行,10頁29∼33行)。
上記のように,「チャンネル」は,ある周波数帯域をいくつかに分割した周波数
帯域のうちの「任意の周波数帯域」とその任意の周波数帯域に対応する「回路上の
信号経路」を意味するものである。そして,周波数帯域をどのようなチャンネルに
分割するかは,原告も自認するように,当業者が任意に決定し得る設計事項である。
もっとも,引用例には「チャンネル」という用語は存在しないが,上記のように,
「チャンネル」は,「任意の周波数帯域」とその任意の周波数帯域に対応する「回
路上の信号経路」を意味するのであるから,引用発明のフィルタ()からフィ7A
ルタ()まで1つずつの周波数帯域とその周波数帯域に対応する回路上の信号経7J
路を,それぞれ1つのチャンネルと称することも,複数の例えば隣接する2つのフ
ィルタの周波数帯域とその周波数帯域に対応する回路上の信号経路を1つのチャン
ネルと称することも,いずれも当業者が任意に決定し得る設計事項であるから,引
用発明の隣接する2つのフィルタ,すなわち一対のフィルタの周波数帯域を1つの
チャンネルと称することは当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって,本件審決(5頁22∼28行)の判断に誤りはない。
中心周波数及び通過特性について(2)
引用発明において,以下のとおり,一対のフィルタの中心周波数をチャンネルの
中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した周波数に設定することは,当業者
の設計事項である。
ア乙1(55頁左欄16∼19行,図5,55頁右欄1∼7行,56頁左欄1
0∼12行)の記載によれば,バンドパスフィルタの利得が−3となる点の周dB
lh波数を遮断周波数と定義し,かつ低域側の遮断周波数を,高域側の遮断周波数をff
とした場合,中心周波数をと定義することは,周知技術である。fc
イ引用例(2頁右上欄2∼9行)の記載及び乙1に記載された上記周知技術に
よれば,引用発明のバンドパスフィルタの特性曲線が隣のバンドパスフィルタの特
性曲線と交差する点である−3の点における周波数は,それぞれのバンドパスdB
フィルタの遮断周波数であって,引用発明のバンドパスフィルタは隣り合うバンド
パスフィルタとそれぞれの通過域が途切れることなく連続するように設定されたも
のである。
ウ引用発明の隣接する2つのフィルタ,すなわち一対のフィルタの周波数帯域
を1つのチャンネルと称することは当業者が適宜なし得る設計事項であるから,引
用例記載の発明のフィルタ()とフィルタ()とからなる一対のフィルタの7A7B
周波数帯域を「チャンネル」と称すると,そのチャンネルの下限遮断周波数と上限
flfh
遮断周波数はそれぞれ,フィルタ()の下限遮断周波数とフィルタ()の7A7BfLA
上限遮断周波数であるから,該チャンネルの中心周波数,フィルタ()の中ffHBC7A
心周波数,下限遮断周波数,及び上限遮断周波数,並びにフィルタ()のfffCALAHA7B
中心周波数,下限遮断周波数,及び上限遮断周波数の対応関係は,乙1に記fffCBLBHB
載された上記定義によれば,以下のとおりとなる。
エまた,引用例の第2図によれば,フィルタ()からフィルタ()まで7A7J
のすべての周波数特性(),()…()は,対数軸で表される横軸におい7a7b,7j
て,上限遮断周波数と下限遮断周波数との差が等しくなっていることから,以下の
ような対応関係にあることが理解できる。
HALAHBLBloglog=loglogffff−−
ここでをαとすると,であるから,これを用いて
とを表すと,以下のようになる。ffCACB
すなわち,フィルタ()の中心周波数とフィルタ()の中心周波数が7A7BffCACB
チャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率αで離隔した周波数に設定さfC
れていることが理解できるから,フィルタ()からフィルタ()までのすべ7A7J
ての周波数特性(),()…()を,対数軸で表される横軸において,上7a7b,7j
限周波数と下限周波数との差が等しくなるように設定することは,フィルタ
()の中心周波数とフィルタ()の中心周波数をチャンネルの中心周波7A7BffCACB
数から上下両側に所定の比率αで離隔した周波数に設定することにほかならない。fC
fC=fLAfHB
fCA=fLAfHA
fCB=fLBfHB
fLA
fLB
fCA=
α
fC
fCB=αfC
fHA
fHB
=
α
オ上記アないしエから,引用発明のフィルタ()の中心周波数とフィル7AfCA
タ()の中心周波数を中心周波数から上下両側に所定の比率αで離隔した周7BffCBC
波数に設定することは,引用例の第2図に記載の周波数特性に基づいて,当業者が
容易に想到し得たことである。
したがって,本件審決が,引用発明において,一対のフィルタの中心周波数をチ
ャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した周波数に設定すること
が当業者の設計事項と判断したことに誤りはない。
作用効果について(3)
ア引用発明のように,複数のバンドパスフィルタを共通信号入力端と共通信号
出力端の間で並列的に接続した回路は,実体のないチャンネルという概念を除いた
実体物として捉えた本願発明の構成と対比すると,本願発明の構成要件すべてを充
足するものであるから,引用発明の複数のバンドパスフィルタからなる回路全体と
本願発明の広帯域バンドパスフィルタとは,実質的にその構成が相違するものでは
なく,したがって,それぞれの通過特性も相違するものではない。
本件審決の認定したとおり,本願発明も引用発明も,広帯域バンドパスフィルタ
の構成要件として相違するものではないから,該フィルタを通過して出力される信
号の特性においても格別相違するものでない。
イ本願明細書の図2(a)に示される狭帯域バンドパスフィルタの周波数特性
が平坦になる根拠に関する原告の主張は,図2(a)において,フィルタ10aと
フィルタ10bの合成レベルが,フィルタ10aの中心周波数1とフィルタ10fo
bの中心周波数2との間では,少なくとも−3を示す一点破線よりも上方に,fodB
すなわち−3よりも大きい値を示す直線で示されていることと照らし合わせれdB
ば,上記図2(a)の記載と明らかに矛盾する。また,本願発明のフィルタ10a
とフィルタ10bとは,本願明細書の図1のブロック図によれば,共通信号入力端
と共通信号出力端との間で並列的に接続されているから,フィルタ10aのレベル
とフィルタ10bのレベルの−6という数値を単純に加算したものを合成レベdB
ルとして計算する方法は,通過する信号の位相のずれを全く考慮しなかったとして
も,縦続接続において用いられる計算方法であって,並列接続において用いられる
計算方法ではないから,これを合成レベルとすることは理論的にも正しい計算とは
いえない。したがって,原告が,本願発明の周波数特性が平坦になると主張する点
は失当である。
また,原告は,一方のフィルタ10bの出力位相を反転させ,この反転出力と他
方のフィルタ10aの出力を合成することにより,ディップが解消されるとも主張
するが,仮に,原告の主張のように,一方のフィルタ10bの出力位相を反転させ
ることにより,平坦な周波数特性が得られるという効果があるとしても,本願発明
の請求項1は,フィルタの出力位相を反転させる反転回路については何ら特定して
いないから,上記主張は,本願発明に基づく主張とはいえず失当である。
ウ引用発明のバンドパスフィルタの特性曲線は,隣接するバンドパスフィルタ
の特性曲線と−3の点における周波数で交差しており,隣接する2つのフィルdB
タよりなる一対のフィルタの周波数帯域を「チャンネル」と称すると,隣接するチ
ャンネルの境界は,本願発明と同様に,−3で接続していることとなるから,dB
引用発明の複数のバンドパスフィルタからなる回路全体と本願発明の広帯域バンド
パスフィルタとは,ともに隣接するチャンネルの境界を−3で接続している点dB
でその構成が相違するものではなく,したがって両者の通過特性が相違するもので
はない。
エしたがって,本件審決が,本願発明の構成によってもたらされる効果が引用
発明から当業者が容易に予測することができる程度のものであって,格別のものと
はいえないと判断したことに誤りはない。
以上のとおり,本件審決の判断は,本件相違点についての誤った判断に基(4)
づくものではない。
第4当裁判所の判断
1取消事由1(一致点の認定の誤り)について
引用発明について(1)
ア本件審決の引用発明の認定には争いがなく,引用例の第1図には,バッファ
アンプ()の出力端と加算回路()との間に,バンドパスフィルタ()ない697A
し()と可変利得アンプの直列回路が並列的に接続されていることが示されてい7J
るから,引用発明におけるバンドパスフィルタ()ないし()は,並列接続7A7J
されているということができる。そして,引用発明におけるバンドパスフィルタ
()ないし()を,隣接する2つのバンドパスフィルタごとに,「()及7A7J7A
び()」,「()及び()」,「()及び()」,「()及び7B7C7D7E7F7G
()」,「()及び()」の組(以下,これらをそれぞれ「バンドパスフィ7H7I7J
ルタの組」という。)に分けると,各バンドパスフィルタの組は,2つのバンドパ
スフィルタ,すなわち「一対のフィルタ」が並列接続されたものということができ
るから,バンドパスフィルタ()ないし()は,結局,一対のフィルタを含7A7J
むバンドパスフィルタの組を並列接続したものと認めることができる。
ちなみに,バンドパスフィルタ()ないし()は,オーディオ信号の周波7A7J
数帯域をそれぞれの通過特性()ないし()に従って複数の周波数帯域に分割7a7j
するフィルタであり(甲5の2頁左上欄15行∼右上欄9行参照),各バンドパス
フィルタの出力は,それぞれのバンドパスフィルタを通過した信号であるから,バ
ンドパスフィルタの組を構成する2つのバンドパスフィルタが並列接続されたもの
であるとすると,バンドパスフィルタの組の出力は,2つのバンドパスフィルタを
通過した信号,すなわち2つの分割された周波数帯域の信号を合成した信号となる。
したがって,バンドパスフィルタの組は,2つの分割された周波数帯域の信号を
合成した信号を出力する単一のフィルタに相当するということができる。そして,
フィルタが前記信号を出力するということは,フィルタが,2つの分割された周波
数帯域の信号を合成した信号を通過する通過特性,すなわち2つのバンドパスフィ
ルタの通過特性が合成された通過特性を有するということにほかならないから,結
局,バンドパスフィルタの組は,2つのバンドパスフィルタの通過特性が合成され
た通過特性を有するということができる。
イ原告は,仮に,引用発明のバンドパスフィルタ()ないし()を,隣7A7J
接する2つのバンドパスフィルタごとにバンドパスフィルタの組に恣意的に分け,
各組を「一対のフィルタ」と形式的に称したとしても,引用例の第2図に示されて
いる通過特性()ないし()に変化はなく,各組における2つのフィルタの通7a7j
過特性が合成されることはないように主張する。
しかし,上記のとおり,引用発明において,並列接続されたバンドパスフィルタ
()ないし()を,隣接する2つのバンドパスフィルタごとに分けたバンド7A7J
パスフィルタの組の通過特性は,各組を構成する2つのバンドパスフィルタの通過
特性が合成された通過特性になるということができるのであって,原告の主張は理
由がない。
本願発明の狭帯域バンドパスフィルタ及び広帯域バンドパスフィルタについ(2)

ア本願発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり,
また,本願明細書の記載によれば,本願発明において,広帯域バンドパスフィルタ
は,複数の狭帯域バンドパスフィルタを並列的に接続することにより広い通過域を
実現したフィルタであって(【0001】),各狭帯域バンドパスフィルタは,中
心周波数又は遮断周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離
隔した周波数に設定した少なくとも一対のフィルタによって構成されており(【0
028】),広帯域バンドパスフィルタの通過域の帯域幅を一定の比で等比分割し
た周波数帯域を通過域とするものであるもの(【0047】)と理解することがで
きる。また,特許請求の範囲の請求項2及び本願明細書には,本願発明の狭帯域バ
ンドパスフィルタには,一対の1次対バンドパスフィルタを並列接続した実施形態
(第1の実施形態。【0054】【図1】),一組のハイパスフィルタ及びロウパ
スフィルタをカスケード接続した実施形態(第2の実施形態。【0085】【00
86】【図7】)及び一対の1次対バンドパスフィルタをカスケード接続した実施
形態(第3の実施形態。【0092】【0093】【図9】)とが含まれることが
記載されている。
イこれに対して,引用発明は,前記のとおり,複数のバンドパスフィルタ(1)
()ないし()を並列接続したものであって,バンドパスフィルタ()な7A7J7A
いし()によって複数の周波数帯域に分割されたオーディオ信号は,加算回路に7J
より加算されて元のオーディオ信号とされるのであるから,並列接続されたバンド
パスフィルタ()ないし()は,全体として,オーディオ信号の全周波数帯7A7J
域を通過域とする単一のバンドパスフィルタに相当し,各バンドパスフィルタ
()ないし()の通過特性()ないし()を合成した通過特性を有するバ7A7J7a7j
ンドパスフィルタということができる。
また,引用発明の並列接続されたバンドパスフィルタ()ないし()は,7A7J
前記アのとおり,2つのバンドパスフィルタ,すなわち「一対のフィルタ」を(1)
含むバンドパスフィルタの組を並列接続したものと認めることができ,各バンドパ
スフィルタの組は,2つのバンドパスフィルタの通過特性が合成された通過特性を
有するバンドパスフィルタに相当するということができる。
そうすると,狭帯域バンドパスフィルタが一対の1次対バンドパスフィルタを並
列接続した,上記第1の実施形態である場合の本願発明と,引用発明とを対比すれ
ば,引用発明におけるバンドパスフィルタの組は,本願発明における「狭帯域バン
ドパスフィルタ」に相当し,引用発明における並列接続された複数のバンドパスフ
ィルタ()ないし()は,本願発明における「広帯域バンドパスフィルタ」7A7J
に相当するということができる。
したがって,この点についての本件審決の認定に誤りがあるとはいえない。
ウなお,原告は,本願発明の「狭帯域バンドパスフィルタ」は,「中心周波数
または遮断周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した
周波数に設定した少なくとも一対のフィルタ」を含んで構成され,「少なくとも一
対のフィルタ」は,総体として,1つの「チャンネル」の信号を通過させる周波数
特性を有するものであり,中心周波数又は遮断周波数がチャンネルの中心周波数か
ら上下両側に所定の比率で離隔した周波数に設定されているのに対し,引用発明の
バンドパスフィルタ()ないし()は,それぞれ,通過特性()ないし7A7J7a
()で示される各チャンネルに対応し,各バンドパスフィルタ()ないし7j7A
()の中心周波数は,各チャンネルの中心周波数に設定されている点で相違する7J
とも主張している。
しかし,本件審決は,上記の点を本件相違点として認定しているのであるから,
原告の主張は,本件相違点についての本件審決の判断の誤りを検討する際に検討す
れば足り,本件審決の一致点の認定の誤りをいう趣旨では,これを採用することが
できない。
小括(3)
よって,取消事由1は,理由がない。
2取消事由2(本件相違点についての判断の誤り)について
チャンネルについて(1)
ア引用発明において,並列接続されたバンドパスフィルタ()ないし7A
()は,バンドパスフィルタの組を並列接続したものと認めることができ,各バ7J
ンドパスフィルタの組の通過特性は,各組を構成する2つのバンドパスフィルタの
通過特性が合成されたものとなることは,前記1において説示したとおりである。
そして,引用発明における,並列接続されたバンドパスフィルタ()ないし7A
()は,オーディオ信号の周波数帯域を,それぞれの通過特性()ないし7J7a
()に従って,複数の周波数帯域に分割するフィルタであるから,2つのバンド7j
パスフィルタの通過特性を合成した通過特性を有する各バンドパスフィルタの組も,
オーディオ信号の周波数帯域を複数の周波数帯域に分割するバンドパスフィルタと
いうことができる。
ところで,一般に「チャンネル」とは,ある周波数帯域をいくつかに分割した周
波数帯域のことを指す用語であり,本願発明において,「チャンネル」は,本願明
細書の全記載を参酌すれば,広帯域バンドパスフィルタの通過域の帯域幅を複数の
周波数帯域に分割した各周波数帯域を意味するものと解され,また,前記分割され
た周波数帯域に対応する回路上の信号経路を指す用語としても用いられている。な
お,このことは,原告が,手続補正書(甲4。9頁9∼13行)においても,主張
していたことである。
そうすると,引用発明における各バンドパスフィルタの組の出力は,オーディオ
信号の周波数帯域を複数の周波数帯域に分割した信号となるのであるから,前記
「チャンネル」の意味に照らせば,その周波数帯域は「チャンネル」にほかならず,
また,各バンドパスフィルタの組がそれぞれ「チャンネル」を構成するということ
ができる。よって,引用発明において,各バンドパスフィルタの組における2つの
バンドパスフィルタの通過特性を合成した通過特性のそれぞれの帯域を「チャンネ
ル」と称することは,当業者が適宜になし得ることにすぎないとした本件審決の判
断に誤りはない。
イ原告は,引用例には,通過特性()と通過特性()とを合成した通過特7a7b
性,通過特性()と通過特性()とを合成した通過特性等は示されていないか7c7d
ら,これらの合成された通過特性を「チャンネル」と称することはできないと主張
する。
しかし,前記1のとおり,各バンドパスフィルタの組の通過特性は,各組を構成
する2つのバンドパスフィルタの通過特性が合成されたものとなるのであるから,
引用例に合成された結果である通過特性が明示されていないとしても,各バンドパ
スフィルタ()ないし()の通過特性()ないし()が示されている以上,7A7J7a7j
2つのバンドパスフィルタの通過特性が合成された通過特性を特定することができ
ることは,当業者にとって自明である。そうすると,引用例には,通過特性()7a
と通過特性()とを合成した通過特性,通過特性()と通過特性()とを合7b7c7d
成した通過特性等についても,実質的に開示されているということができる。
したがって,これらの合成された通過特性を「チャンネル」と称することを妨げ
る理由はなく,原告の上記主張は,採用することができない。
中心周波数及び通過特性について(2)
ア引用例(2頁左上欄15行∼右上欄9行)には,前記1のとおり,バンドパ
スフィルタ()ないし()は,1を中心とし,その1/2又は2の等比数7A7JkHz
列にある周波数をそれぞれ通過中心周波数とする通過特性()ないし()を有7a7j
し,かつ隣接するバンドパスフィルタの特性曲線は−3の点で交差しているこdB
とが記載されており,第2図を参照すれば,バンドパスフィルタ()ないし7A
7JHzHzHzkHz()の中心周波数は,それぞれ,31.5,63,125,…16
とされている。
また,バンドパスフィルタ()ないし()を,隣接する2つのバンドパス7A7J
フィルタごとに分けた場合,各バンドパスフィルタの組の通過特性が,各組を構成
する2つのバンドパスフィルタの通過特性を合成した通過特性になることは,前記
1のとおりである。(1)
イところで,三谷政昭「第2章フィルタの定義から簡単な構成例までを理解
しようフィルタのいろいろな特性とその分類」(平成18年9月1日発行。乙1。
32巻9号55頁左欄16∼19行,55頁右欄1∼7行,56頁左欄1Interface
0∼12行)によれば,バンドパスフィルタにおいて,利得が−3となる周波dB
数を「遮断周波数」と定義し,中心周波数を「低域側及び高域側の遮断周波数の幾
何平均」として定義することは,フィルタの技術分野における周知の技術であった
ということができる。
ウしかるところ,引用例に記載された前記事項によれば,バンドパスフィルタ
()ないし()の通過特性()ないし()は,それぞれ−3の点で交差7A7J7a7jdB
しているのであるから,隣接する一方のバンドパスフィルタの高域側の遮断周波数
と,他方のバンドパスフィルタの低域側の遮断周波数とが連続しており,さらに,
各バンドパスフィルタは,それぞれ中心周波数が,31.5,63,125HzHz
,…,16,すなわち等比数列の関係にある周波数として与えられているのHzkHz
であるから,隣接するバンドパスフィルタの高域側及び低域側の遮断周波数が連続
し,かつ,前記中心周波数が,前記定義のとおり,低域側及び高域側の遮断周波数
の幾何平均となるような,各バンドパスフィルタ()ないし()の低域側及7A7J
び高域側の遮断周波数が定まることになる。
また,バンドパスフィルタの組は,前記1のとおり,それぞれ隣接する2つ(1)
のバンドパスフィルタの通過特性を合成した通過特性を有するバンドパスフィルタ
であるから,各バンドパスフィルタの組についても,バンドパスフィルタ()7A
ないし()の低域側及び高域側の遮断周波数から,それぞれの低域側及び高域側7J
の遮断周波数を特定することができ,さらに,前記定義から,前記特定された低域
側及び高域側の遮断周波数の幾何平均として,それぞれの中心周波数が定まること
になる。
そうすると,バンドパスフィルタ()ないし()の中心周波数は,それぞ7A7J
れの低域側及び高域側の遮断周波数の幾何平均であり,さらに,バンドパスフィル
タの組の低域側及び高域側の遮断周波数は,隣接する2つのバンドパスフィルタの
低域側及び高域側の遮断周波数により特定されるのであるから,バンドパスフィル
タの組の中心周波数が,隣接する2つのバンドパスフィルタの中心周波数の幾何平
均となること,換言すれば,バンドパスフィルタの組を構成する一対のバンドパス
フィルタの中心周波数が,バンドパスフィルタの組の中心周波数から上下両側に所
定の比率で離隔した周波数となることは,自明である。
したがって,バンドパスフィルタの組は,その周波数帯域を「チャンネル」と表
現すれば,「中心周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離
隔した周波数に設定した少なくとも一対のフィルタ」ということができる。
エ原告は,各チャンネルの中心周波数の幾何平均は「チャンネル」の中心周波
数とはなり得ないとも主張する。
確かに,バンドパスフィルタの組を構成する2つのバンドパスフィルタの中心周
波数の幾何平均は,隣接するバンドパスフィルタ()ないし()の通過特性7A7J
()ないし()の境界周波数と一致する。7a7j
しかし,各バンドパスフィルタの組の通過特性は,前記ウのとおり,引用例に示
されたバンドパスフィルタ()ないし()の通過特性()ないし()から,7A7J7a7j
2つのバンドパスフィルタの通過特性を合成した通過特性として特定することがで
きるのであり,また,通過特性の中心周波数は,低域側及び高域側の遮断周波数の
幾何平均として定義されているのであるから,各バンドパスフィルタの組の通過特
性における低域側及び高域側の遮断周波数の幾何平均は,たとえ通過特性()な7a
いし()の境界周波数と一致したとしても,中心周波数であることに変わりない。7j
したがって,原告の上記主張は,失当である。
作用効果について(3)
ア引用発明におけるバンドパスフィルタの組は,前記1のとおり,共通信号入
力端と共通信号出力端の間で並列的に接続された複数のバンドパスフィルタ
()ないし()を,隣接する2つのバンドパスフィルタごとに分けたもので7A7J
あって,2つのバンドパスフィルタの通過特性が合成された通過特性を有し,「中
心周波数をチャンネルの中心周波数から上下両側に所定の比率で離隔した周波数に
設定した少なくとも一対のフィルタ」ということができるのであるから,各バンド
パスフィルタの組の構成は,本願発明における狭帯域バンドパスフィルタの構成と
差異はない。
また,引用発明における,並列接続されたバンドパスフィルタ()ないし7A
()は,全体として,一対のフィルタを含むバンドパスフィルタの組を並列接続7J
したものと認めることができるのであるから,本願発明において,狭帯域バンドパ
スフィルタを,一対の1次対バンドパスフィルタを並列接続した実施形態とした場
合の広帯域バンドパスフィルタの構成と実質的な差異はない。
そうすると,本願発明によって,各狭帯域バンドパスフィルタの周波数特性及び
広帯域バンドパスフィルタの隣接するチャンネルの境界の周波数特性を平坦にする
ことができるのであれば,引用発明においても,同様の作用効果が得られるという
ことができるから,周波数特性が,本願発明の構成によって引用発明に対して格別
の効果を奏するということはできない。
イ原告は,本願発明における狭帯域バンドパスフィルタについて,一対のフィ
ルタのうち一方のフィルタの出力位相を反転させることにより,各フィルタの中心
周波数間に形成されるディップが解消され,中心周波数間の信号通過域が平坦な周
波数特性の狭帯域バンドパスフィルタが得られると主張する。
しかし,仮に,原告が主張する作用により各チャンネルの狭帯域バンドパスフィ
ルタの周波数特性が平坦になるとしても,本願発明は,請求項1記載のとおり,一
対のフィルタのうち一方のフィルタの出力位相を反転させるための構成を,発明を
特定するために必要な事項としていないのであって,原告の上記主張は,本願発明
の構成に基づかないものというほかなく,採用することができない。
ウまた,原告は,本願発明における広帯域バンドパスフィルタの隣接するチャ
ンネルの境界の周波数特性について,本願明細書の図1に示す回路の狭帯域バンド
パスフィルタの各チャンネルごとの周波数特性を重ね合わせると,隣接するチャン
ネルの境界は−3で接続しており,2つ以上の狭帯域バンドパスフィルタを同dB
時に動作させると,隣接するチャンネルの境界は,−1以下で接続し,平坦なdB
周波数特性が得られると主張する。
しかし,引用例には,隣接するバンドパスフィルタの特性曲線が−3の点でdB
交差していることが記載されており,引用発明のバンドパスフィルタ()ない7A
し()を,バンドパスフィルタの組に分けた場合においても,隣接するバンドパ7J
スフィルタの組の特性曲線は,−3の点で交差することとなるから,引用発明dB
においても,本願発明と同様の作用効果が得られるということができ,本願発明が
引用発明に対して格別の効果を奏するということはできない。
なお,原告は,狭帯域バンドパスフィルタを複数並列接続すると,隣接するバン
ドパスフィルタの境界にディップを生じるが,隣接する狭帯域バンドパスフィルタ
の出力位相を相互に反転させることにより解消することができるとも主張する。
しかし,特許請求の範囲の請求項1に記載された本願発明は,隣接する狭帯域バ
ンドパスフィルタの出力位相を相互に反転させる構成を,発明を特定するために必
要な事項としていないのであるから,原告の上記主張は,本願発明の構成に基づか
ない主張というほかなく,採用することができない。
小括(4)
よって,取消事由2は,理由がない。
3結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求
は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官高部眞規子
裁判官杜下弘記

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛