弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件請求を棄却する。
         理    由
 記録によれば、申立人肥料配給公団がその換価金現存額四五万円に対し還付の請
求をしている被告人A所有名義の小切手一通(額面金五〇万円)は昭和二四年五月
一八日国家地方警察愛媛県本部刑事部捜査課所属の司法警察員が右被告人の任意に
提出したものを領置したもの、又同じく申立人が還付の請求をしている原審相被告
人B所有名義の現金四九万円は同年同月二二日国家地方警察愛媛県伯方地区警察署
所属の司法警察員が同人の父Cの任意に提出したものを領置したもので、第一審判
決並びに量刑不当の理由によりこれを破棄して自判した原判決が、それぞれその主
文において「被告人Aに対し押収の小切手の換価金(現存額)同Bに対し押収の現
金(現存額)を没収する」として没収の言渡をし、被告人Aは目下当裁剃所に上告
中であるが、Bは昭和二四年一二月五日一旦上告の申立をしたが同月九日右上告を
取下げ同人に対する関係においては同日を以て原判決が確定したという経過である
ことを認めることができる。原審における共同被告人が上告中のため偶々一件記録
が当裁判所に現在するとしても、裁判所は既に確定した被告事件のみに関する押収
物については最早何等の処分をすることもできないもので裁判所に対し右の如き事
件に関する押収物の還付を請求することは本来許されないものというべきであるか
ら、本件請求中B所有名義の現金四九万円の還付を求める部分は、既にこの点にお
いて失当たるを免れない。
 のみならず、本件記録中の第一審公判調書及びその記載について当裁判所がした
照会に対する原審の回答書並びに右に添付された第一審の回答書によれば、第一審
公判においては、立会検察官は、当時前記各押収物を検察庁に受入れ保管中ではあ
つたのであるが、各領置調書のみについて証拠調の請求をし被告人及び弁護入の同
意の下にそれについて証拠調が行われただけで、押収物たる現金又は換価金そのも
のについては取調を請求しなかつた結果、裁判所にあいても右現金又は換価金に対
し所定の押収手続をとらなかつたことが明白である。そして改正刑訴法の下におい
ては、裁判所において特に押収の手続をした物でなければ裁判所の押収物というこ
とはできないもので、裁判所は裁判所の押収物についてでなければ還付の決定をす
ることができないと解すべきであるかち(刑訴法第一二三条、第一二四条)、本件
請求はすべて、この点においてもこれを容れるに由ないものといわなければならな
い。
 よつて、本件請求はこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。
 右は全裁判官一致の意見である。
  昭和二六年一月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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