弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
       事   実
一 控訴人は、「原判決を取消す。控訴人が被控訴人の教員たる地位を有すること
を仮りに定める。被控訴人は控訴人に対し、昭和五三年四月以降本案判決確定に至
るまで、毎月二一日限り金一一万円を仮りに支払え。訴訟費用は第一、二審とも被
控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴人は、主文と同旨の判決を求め
た。
二 当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、次に付加するほか原判決事実摘示
と同一であるから、ここにこれを引用する。
       理   由
一 当裁判所も、当審における新たな証拠調の結果を斟酌しても、控訴人の本件仮
処分申請は失当として却下すべきものと判断するものであつて、その理由は次に付
加するほか原判決理由と同一であるから、ここにこれを引用する。
1 原判決二一枚目表八行目の後に行をかえて、次を加える。
「(5) 昭和五二年四月、学生の「教養ゼミナールⅡ」の選択希望が取られた
際、控訴人のゼミナールを第一希望とした学生が定員二〇名に対し七〇数名に達
し、専任講師を含めた講師のゼミナール希望中群を抜いて多く、第三希望まで含め
ると、約三分の二の学生が控訴人のゼミナールを希望していた。」
2 原判決二一枚目裏五、六行目の「(後記信用しない部分を除く。)」の後に次
を加える。
「、成立に争いのない疎甲第三、第四、第七、第九号証、第一一ないし第一四号
証、第一六ないし第一八号証、第三七号証、疎乙第六号証の一、二、第二六号証の
一ないし三、第五一号証、第五六、第五八号証、原本の存在及び成立に争いのない
疎乙第五四号証、原審証人Aの証言により真正に成立したものと一応認められる疎
乙第五号証の一、二、当審証人Bの証言により真正に成立したものと一応認められ
る疎乙第五七号証、当審証人A、同C(但し、いずれも後記認定に反する部分を除
く)、同Bの各証言、当審における控訴人本人尋問の結果(第一、二回)(但し、
いずれも後記認定に反する部分を除く。)」
3 原判決二二枚目表六行目の「なお、」から同一一行目の「とつた」までを削除
し、次を加える。
「被控訴人は、昭和四九年四月から、旭川大学経済学部に貿易学科を新設したが、
その際従来の専任教員のほか新たに委嘱専任教員制度を設けた。すなわち、被控訴
人は、昭和四三年の旭川大学開学当初から多額の累積赤字を抱えて財政状態が極め
て悪く、加えて理事長、学長の相次ぐ辞任等によつて経営管理体制が一時混乱した
状態にあつたことから、特に昭和四六年頃以降において重大な経営危機に陥つた。
被控訴人は、この難局を打開すべくかねてより対策を検討していたが、ようやく昭
和四七年に旭川大学再建実施計画を最終的に決定し、それ以後徐々に経営管理体制
を確立し、大学における教学内容の整備充実を図つて行つた。そして、大学再建の
ために最も緊急かつ重要な財政事情を改善する方策として学生数を増加することと
し、昭和四九年度から貿易学科を新設することとした。しかし、右学科の新設に伴
ない、大学設置基準を充足するために必要な教員を専任教員のみで構成すること
は、右のような財政事情及び人的資源から実現が困難であつたことから委嘱専任制
度を設け、学問的に優れた他大学教員を主として名義借り的に委嘱専任教員として
招聘し、もし可能なら集中講義方式によつて講義を担当してもらい、日本最北端に
ある大学の特殊性について理解を得る一助とすることとした」
4 原判決二二枚目裏五行目の後に行をかえて、次を加える。
 「控訴人は、昭和三九年三月北海道大学文学部哲学科卒業後、東京大学教養学部
研究生を経て、昭和四〇年四月同大学大学院社会学科研究科文化人類学課程修士課
程に入学し、昭和四五年三月同博士課程を終了したものであり、以後現在に至るま
での間駒沢大学北海道教養部、北海道教育大学岩見沢分校、北海道大学教養部その
他の大学等において、人類学、生物学、考古学等の非常勤講師を勤め、旭川郷土博
物館の嘱託にもなつている。控訴人は、ゼネラルアンソロボロジーを専門領域とし
ており、編著書として「北方の民具(1)(2)」、「北海道前近代の文化史
(1)(2)」等があり、人類学、民族学、考古学等に関する多くの論文を発表し
ている。控訴人は、昭和四九年度から旭川大学に一般教育科目として文化人類学が
開講されたことに伴ない、同大学専任教員の推薦を受けて同年四月一日任用期間一
年間の非常勤講師として採用され、翌昭和五〇年四月一日さらに一年間更新され
た。」
5 原判決二三枚目表四行目の「なお、」から同一〇行目の「である」までを削除
し、次を加える。
 「その結果、旭川大学経済学部教員は、その責務、勤務条件の内容に応じて専任
教員、嘱託専任教員、委嘱専任教員の三つに区分されることとなつた。専任教員
は、任用期間について期間の定めがなく、教授会を構成し、人事検討委員会、教務
委員会等の各種委員会に所属し、被控訴人の大学運営に参画し、原則として、一週
六講義以上の授業を担当するほか、他大学に出講する場合には大学当局の承認を要
することとされている。これに対し、嘱託専任教員は、嘱託期間は原則として二年
間で必要に応じて更新することとされ、教授会、委員会の構成員とはならず、授業
担当のみが責任であり、他大学への出講について大学当局の承認を得ることを要し
ないものとされている」
6 原判決二三枚目裏四行目の「において、」から同二四枚目表六行目の「得た」
までを削除し、次を加える。
 「経済学部における日本経済史は、専門教育科目の一つとして最も重要かつ基礎
的な授業科目であり(なお、経済学関係学部設置基準要項によれば、大学設置基準
一九条及び二三条により専門教育科目を置く場合の授業科目の例示として、日本経
済史が主要科目中の必置科目として掲げられている。)、学部開設後間もなく開講
され昭和四八年度までD専任教授が集中講義方式によつて講義を行なつていたが、
昭和四九年度から同教授が委嘱専任教授になり事実上講義が出来なくなつたため、
急遽地元の他の学校で専任教員を勤めていたEに非常勤講師を依頼し、同年度と翌
昭和五〇年度の二年間講義を担当してもらつた。
 ところが、昭和五一年二月頃、E講師が多忙を理由として同年度以降の講義担当
を辞退したため、被控訴人は、北海道大学その他を通じて後任者の人選を急いだ
が、時間的に切迫していたことから適任者が得られなかつた。そこで、経済学部長
Aは、同年三月中旬頃、同月末日をもつて非常勤講師として一年間の期間が終了す
ることになつていた控訴人に対し、右経緯を説明して従来担当していた人類学、教
養ゼミナールに加え、新たに日本経済史の担当を要請し、その際任用期間について
は、日本経済史が控訴人の専門領域外であり相当の準備期間を要することを配慮し
て二年間とし、地位は非常勤講師よりも待遇の良い嘱託専任講師としたい旨伝え
た。これに対し、控訴人は、日本経済史、とりわけ近代、現代経済史に関しては全
くの専門領域外に属し、それまで講義経験もなかつたものの、昭和五一年度専任教
員の公募で不採用になつたこともあり最終的に右申入れを承諾した。同月二六日に
開かれた旭川大学教授会において、人事検討委員会の議を経た右同趣旨の提案がな
され、審議の結果当面の暫定的措置として止むを得ないものとして承認された。
 控訴人は、昭和五一年度及び昭和五二年度の二年間嘱託専任教員として勤務し、
大体において毎週火曜日の午後と翌水曜日の午前講義を担当し、年間出勤日数は各
五〇日であつた。被控訴人大学において、右各年度における専任教員の出勤日数
は、東京都内に居住し毎月集中講義を行なつていた会計学専任教授F及び病気療養
中の専任教員を除いて、毎週四日以上、年間一九〇日ないし二一〇日位であつた」
7 原判決二四枚目裏六行目の後に行をかえて、次を加える。
 「これに対し、控訴人は、日本経済史を前半と後半に二分し、前半を控訴人が、
後半を新任教員が担当すること、あるいは北海道経済史を開講して担当させて欲し
い旨要望したが、経済学部長Aは、諸般の事情からいずれも実現不可能である旨答
えた。その後、昭和五三年三月初旬までの間、控訴人から被控訴人に対して、二年
間の任用期間の更新について特段の申入れはなかつた。昭和五三年度から日本経済
史を担当したG専任講師は、特に明治維新以降における近代、現代史を中心に講義
する方針を採つた。」
8 原判決二四枚目裏七行目の「昭和五二年度」から同二五枚目表六行目の「決定
した」までを削除し、次を加える。
 「旭川大学教授会は、昭和五二年度の学則改正により、従来の方式を改め、履修
すべき授業科目区分として一般教育科目、外国語科目、保健体育科目、専門教育科
目の四つを掲げ、右各科目別に別表として基本的科目と思料される分野について具
体的な授業科目名及び単位数を表示することとし、授業科目区分中必ずしも経済学
部としての基本的、恒常的科目とは考えられないものについては、『特論』とし
て、例えば一般教育科目区分は、人文科学特論、社会科学特論、自然科学特論とし
て科目名を表示するにとどめ、特論中にいかなる授業科目を設けるかは、大学にお
ける教学の目的を最も効果的に達成するためそれぞれの時代的要請及び学問的発
展、推移等を総合的に考慮して弾力的に対応することにした。この結果、従来学則
上人類学は履修すべき一般教育科目中に科目名として表示されていたものが、以後
自然科学特論中の講座として開講し、学則上に科目名が表示されないことになつ
た。なお、日本経済史は、専門教育科目区分中の授業科目として明示された。
 旭川大学教授会は、昭和五三年三月二日、昭和五三年度における開講科目につい
て審議したが、新年度における学生数の増加に伴ない専門ゼミナールが一九から三
〇に増加すること、必須科目である体育実技の編成上教室の使用について制約が生
じること、三、四年生の合併授業を出来る限り少なくするため講義数を増やす必要
があることの諸事情を考慮して、一般教育科目中若干の科目について削減せざるを
得ないとの判断に達し、人類学も削減の対象とすることを決定した。右教授会の席
上、すでに昭和五三年度以降の日本経済史の専任講師が決まり、また人類学も右の
経緯から開講しないことになつたことに関連し、控訴人の昭和五三年度以降におけ
る地位について人事検討委員会から控訴人との雇用契約は更新しないとの提案がな
され、種々論議が交された。数名の教授会講成員からは、更新拒絶に対して疑義や
反対意見が述べられたが、結局多数決により控訴人との契約は更新しないこととす
るが、この点につき被控訴人において控訴人と十分話合いをしたうえで納得を得る
よう努力することとの意見を付して、右提案を承認した。
 旭川大学学長Hは、同月二日付書面で控訴人に対し、同月末日をもつて控訴人の
任用期間が満了するところ、教授会において契約を更新しないことを決定した旨を
通知した。これに対し、控訴人は、同学長に対し、同月八日付書面で右通知の不当
性を訴えて徹回を求めた。そこで、経済学部長Aは、控訴人と連絡を取つて円満に
事態を解決しようとしたが、控訴人に拒絶されて話合いの機会を得られなかつた。
その間控訴人は、教授会、理事会等に対して書面で重ねて右の不当性を訴え、通知
の徹回、謝罪並びに地位についての善処を要求したが、被控訴人側から格別の応答
がないまま時日が経過し、結局本訴の提起に至つたものである」
9 原判決二五枚目裏七行目の「証人I」から同八行目の「尋問の結果中」までを
削除し、次を加える。
 「原審証人I、当審証人Cの各証言、原審・当審(第一、二回)における控訴人
本人尋問の結果及び疎甲第四五号証の一ないし四、第四八号証、第五八号証の一、
二、第六〇ないし第六二号証、第六五ないし第六七号証の各記載のうち」
10 原判決二六枚目裏一行目の「更に、」から同二、三行目の「解せられるとこ
ろ」までを削除し、次を加える。
 「大学が各年度に開講すべき授業科目をいかに選択し編成するかは、大学設置基
準の枠内において、各大学における教学の基本方針に従い、財政事情、学生数及び
教員の人数、物的施設の規模等諸般の事情を考慮して、大学がその数量により独自
の判断の下に決定すべき大学の根幹に関わる事項であつて、最終的には教授会の議
を経て決定されるところのものであり」
11 原判決二七枚目裏六行目の「からといつて」の後に行をかえて次を加える。
 「(被控訴人の就業規則七七条、第七八条の規定が嘱託の教員である控訴人に適
用のないことは同規則第三条の規定によつて明らかである。)」
二 以上のとおりであり、控訴人の本件仮処分申請を却下した原判決は相当であつ
て本件控訴は理由がないから、民事訴訟法三八四条一項によりこれを棄却すること
とし、訴訟費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 安達昌彦 渋川満 大藤敏)

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