弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     原審における未決勾留日数中二四〇日を右本刑に算入する。
     押収にかかるダイナマイト一本(証第一号)及雷管付導火線一本(証第
二号)はこれを没収する。 原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人の負担
とする。
         理    由
 検事中根寿雄弁護人勝部良吉及び被告人の控訴の趣意は記録編綴の各控訴趣意書
(但し弁護人の分はA作成のもの)記載のとおりであるから、ここにこれを引用す
る。
 これに対する当裁判所の判断は次の通りである。
 一、 弁護人並びに被告人の控訴趣意(事実誤認)について
 (1) 公務執行妨害、傷害の点について
 しかし原判決挙示の証拠なかんずく原審証人Bの供述によると、当時C刑事及び
B巡査は判示のように被告人の挙動等に不審の点があつたので不審尋問をするため
小郡駅ホームの鉄道公安室に同行方を求め右公安室に向け歩行中、被告人は突然同
ホームに停車中の宇部行電車に乗ろうとしたので同巡査は不審尋問を続けるため右
電車の乗降口附近に立塞がり被告人の肩に手をかけ「ききたいことがあるから公安
室に行つてくれてはどうか」と申したところ、被告人はこれを振り切り逃がれよう
としてB巡査の左手を右足で蹴り上げ、よつて同巡査の右職務の執行を妨害すると
共に同人に判示のような傷害を負わしめたことを認めるに十分であり、記録を精査
するも原判決の認定事実に誤認があるとは認められない。なお被害者の供述のみに
よつて右の暴行の点を認定したとしても何等採証法則に反するものではない。論旨
は理由がない。
 (2) 爆発物取締罰則違反の点について
 しかし原判決挙示の証人Dの原審公判廷における供述及び同人の検察官に対する
各供述調書の記載によれば、当時被告人はEと称していたが、原判示日時頃判示D
方において同人に対し、その所持していた本件ダイナマイトと雷管付導火線とを一
緒に入れてあつた証第三号のブリキ罐を示し「これをしばらく預かつてくれんか」
と申し同人に預けたことを認めるに十分である。この点に関し所論は原審証人Fの
供述を援用して当時Dに右ダイナマイト等を預けたのはGなる者であつで被告人て
はないというのであるけれども、右F証人の供述は記録に現われた諸般の証拠に照
し信を措き難いところであり、原審もこれを採用しなかつたものである。その他記
録を精査するも原判決の認定事実が虚偽架空のものであり又はこれに誤認があると
は認められない。論旨は理由がない。
 二、 検察官の控訴趣意(原判示第二事実に対する事実誤認、法令適用の誤)に
ついて
 記録によると、原判示第二のダイナマイト及び雷管付導火線所持の点は、検察官
はこれを爆発物取締罰則違反として起訴したのに対し、原審はこれを火薬類取締法
違反として処断していることは所論のとおりである。そして原審鑑定人Hの鑑定書
の記載等に徴すれば、右のダイナマイト及び雷管付導火線は爆発物取締罰則<要旨>
にいわゆる爆発物に該当すると解すべきことも所論のとおりである。ところで所論
は、右は被告人において治安を妨げ又は人の身体財産を害せんとする目的を
以て所持していたものであると主張し、これに対し被告人は右の所持の事実自体さ
え、全然否認し居りもとよりその所持目的については何等の弁解等もして居らな
い。記録によると、被告人はI党員であること及び証第一一号の「メモ」を所持し
ていたことは認められるけれども、そのことだけから右の目的のあつたことをたや
すく推断することはできない。その他記録に現われた諸般の証拠によるも未だ右の
所持目的を確認するに証拠が十分であるとはいえない。しかし爆発物取締罰則第六
条は、爆発物を所持した者が、同第一条に記載した犯罪の目的でないことを証明す
ることができないときは、六月以上五年以下の懲役に処する旨を規定し、右第一条
の目的に関する挙証責任を犯人に負わせている。そして本件は正に右第六条に規定
する場合に該当する案件であると認められるから、被告人に対しては同条を適用し
て処断すべきものであるといわねばならない。然るに原判決が前記のように火薬類
取締法第五九条を以て処断したのは事実を誤認したか又は法令の解釈適用を誤つた
違法があるに帰し、右は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決は破棄
を免がれない。論旨は理由がある。
 なお、本件は併合罪の関係に在るから刑事訴訟法第三九七条により原判決全部を
破棄し、同法第四〇〇条但書に従い当審において左のとおり自判する。
 罪となるべき事実
 第一は原判決記載の第一事実と同一につきここにこれを引用する。
 第二 被告人は昭和二七年四月九日頃宇部市a町b号D方において、爆発物であ
るダイナマイト一本(証第一号)及び雷管付導火線一本(証第二号)を所持しでい
たものであるが、右は爆発物取締罰則第一条記載の犯罪の目的に出たものでないこ
とを証明することができないものである。
 以上の事実の認定証拠の標目は、第二事実に関し鑑定人H作成の鑑定書を附加す
る外原判決記載のものと同一につきこれを引用する。
 法律に照すと、被告人の右第一の所為中公務執行妨害の点は刑法第九五条第一項
に、傷害の点は同法第二〇四条罰金等臨時措置法第三条第一項に、第二の所為は爆
発物取締罰則第六条に各該当するところ、公務執行妨害と傷害とは一個の行為にし
て数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条により重い
傷害罪の刑に従い、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、傷害罪につき所
定刑中懲役刑を選択した上同法第四七条第一〇条により重い傷害罪の刑に法定の加
重をした刑期範囲内において被告人を懲役一年六月に処し、なお原審における未決
勾留日数の算入につき刑法第二一条没収につき同法第一九条第一項第一号第二項、
原審並びに当審における訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条第一項に各従
い主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 柳田躬則 判事 尾坂貞治 判事 石見勝四)

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