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平成22年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(行ケ)第10318号商標登録取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年2月3日
判決
原告有限会社ニコニコヤみやげ店
同訴訟代理人弁理士富田光風
被告特許庁長官
同指定代理人内山進
安達輝幸
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が異議2008−900457号事件について平成21年8月31日にし
た決定を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告が有する本件商標に係る
登録異議の申立てについて,特許庁が登録を取り消した別紙異議の決定書(写し)
の本件決定(その理由の要旨は下記2のとおり)には,下記3の取消事由があると
主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)本件商標(甲1の1∼3)
商標登録番号:第5159303号
商標の構成:「ももいちごの里」の文字を標準文字で表して成る。
指定商品:第30類「菓子,パン」
商標登録出願日:平成20年2月21日
登録査定日:平成20年7月10日
設定登録日:平成20年8月15日
商標掲載公報発行日:平成20年9月16日
(2)本件決定
有限会社福屋(以下「福屋」という。),徳島市農業協同組合(以下「JA徳島
市」という。)及びAは,平成20年11月17日,本件商標について登録異議の
申立てをした。
特許庁は,同申立てを異議2008−900457事件として審理し,平成21
年8月31日に「登録第5159303号商標の商標登録を取り消す。」とする本
件決定をし,同年9月18日,その謄本は原告に送達された。
2本件決定の理由の要旨
本件決定の理由は,要するに,福屋が大福に付した「ももいちごの里」の商標
(以下「引用商標」という。)は周知であるところ,本件商標は,引用商標と同一
の商標であり,かつ,その指定商品は引用商標が使用されている商品「大福」と同
一又は類似の商品であるから,商標法4条1項10号に該当し,登録を受けること
ができない,というものである。
3取消事由
引用商標が周知であるとした認定判断の誤り
第3当事者の主張
〔原告の主張〕
(1)引用商標の使用時期の立証に不備があること
ア仮にそれまで引用商標に周知性があったとしても,本件商標の出願日以前の
一定期間において引用商標の使用を証明できない期間があれば,長期間不使用の状
態が続き,本件商標の出願日には引用商標が周知性を喪失し,商標法4条1項10
号の適用が困難となる(同条3項)。
イすなわち,出願日以前の直近の証拠である甲22の発行日(平成19年3月
10日)から出願日(平成20年2月21日)までに約1年の期間があり,この期
間の使用が立証されなければ,引用商標の周知性が喪失している可能性があり,同
条1項10号の規定の適用ができないはずである。
ウ引用商標の使用開始時期は不明であるところ,その使用開始日が甲22の発
行日(平成19年3月10日)から出願日(平成20年2月21日)までの期間内
であっても,その日が出願日に近ければ使用されていない期間が長くなり,当初周
知であっても周知性を喪失することがある。仮に使用開始日が出願日から遠ければ,
周知性が喪失する可能性は小さいが,その使用開始日は決まっているわけではない
ので,周知性が喪失しているかどうか不明である。
エこのように,周知性が喪失しているかどうか不明な引用商標を根拠に,商標
法4条1項10号の規定を適用して商標登録を取り消すべきではない。これに反し
てされた本件決定は違法であり,取り消されるべきである。上記規定は,未登録の
商標でも商標法の保護対象である業務上の信用を発生している場合に,公平の原則
に基づき登録主義の例外として認められたものであるから,厳格に解すべきであり,
単に商標の周知の可能性では足りず,必ず周知であることが必要である。
(2)採用すべきでなかった証拠を採用したこと
ア本件決定が讀賣新聞の徳島版の記事を大阪本社版の記事と誤って拡大して採
用したこと
本件決定が商標の周知性の認定に採用した讀賣新聞の徳島版の記事(甲24)は,
徳島県の地元読者を対象とするもので他の地方版には掲載されない。また,徳島版
の普及率(購読数/徳島県下の総世帯数)は3.18%で,地元の徳島新聞の普及
率の25分の1である。購読部数は1万0006部で,大阪本社版の約252分の
1であるから,讀賣新聞の徳島版に記載されても,徳島ではほとんど知り得ないの
で,商標の周知化には役立たない。
また,上記記事(甲24)には,福屋商標「ももいちごの里」の記載がないから,
周知性の認定から除外すべきである。
イ自他商品識別標識となり得ない書証を周知性認定の証拠としたこと
(ア)商標の使用とされるためには,単に商標の文字列が記載されているだけで
は足りず,自他商品識別標識としての存在が認識される必要がある。そして,商標
の本質は自他商品識別標識たることにあるから,その存在が一目して分かる程度に
目立つ必要がある。したがって,虫メガネが必要なほど文字が小さかったり,文字
が文中にはめ込まれ,同じ大きさの文字で挟まれたり,文字に連なって記載された
りする等,文字列が文中に同書体,同サイズ,同間隔に混在されると,一目してそ
の独立した存在を認識することができず,商標の使用とはいえない。よって,この
ような使用態様では,いくら数を集めても商標の周知性を立証することにはならな
い。
(イ)新聞や雑誌の記事に掲載された事実は,その商標が他の文字と区別のない
表示であっても,周知性認定の証拠となり得るとした本件決定は,商標法4条1項
10号の規定を設けた趣旨からみても,心理学上からみても,また取引の経験則か
らみても,認められない。本件決定は,証拠に記載の商品の表示について,新聞,
雑誌等で採り上げられたものか,広告としての商品の記載(記事広告)であるかの
判断を誤ったものである。
ペイドバブリシティ(paidpublicity)とは,新聞社や雑誌社に広告料を支払っ
て,通常の記事のような形をとって読者へ情報を発信する方法であり,記事広告,
記事風広告ともいわれる。記事広告は編集記事のように見せかけるために,商標の
文字列は目立たないように説明文の中に混在させたり,商標自体を明確にさせない
など,留意しているから,消費者は,記事広告における商標(文字列)が,いわゆ
る自他商品識別機能のある本来の商標であるとは認識し難い。本件商標は新聞記事
の文中に目立たないように混在されているので,自他商品識別機能を有する本来の
商標とは認められないものと解される。したがって,会社の主力商品でブランドの
周知化を図るのは,従来の商標を前面に出した広告,宣伝によらなければならず,
記事広告ではブランドの周知化には役立たない。
また,タウン情報誌とは,基本的には1つの都市に重点をおいて,その都市の最
新情報を扱う情報誌のことである。福屋の宣伝が記載されている証拠として引用さ
れたタウン情報誌(甲6,13,15,16,18,20,22),一般雑誌(甲
9,11)があるが,これらの福屋の商品の掲示は,広告として記載されたもので
あり,有名だから雑誌に取り上げられ,記載されたものではない。
(ウ)「ももいちごの里」の文字列が説明文の中に混然一体に配置されているも
の(甲6,9,15,16)は,消費者にとっては自他商品識別力ある商標とは認
識できないから,周知性認定の証拠とすべきでない。
雑誌ではなく新聞に掲載されたもので,商標として認められない証拠(甲4の1
・2,26の1)は,商標法4条1項10号の適用に当たって,除外すべきである。
さらに,商標と認められない可能性のあるもの(甲11,13,20,22)も,
同様に除外すべきである。
ウ本件商標の出願後に作成又は採取した資料を証拠としたこと
商標の周知性は出願時において判断される(商標法4条3項)から,本件商標の
出願後に発行又は採取された証拠(甲3,4の2・3,5,18,30)は,除外
されるべきである。
過去の事実を,後に作成した資料で証明するには,その資料は客観的に公平で正
しいことが証明されていなければならないはずである。本件商標の出願後に,自己
のホームページから採取された書証は信頼性に乏しい。特に異議申立てが可能であ
ることを知ったと考えられるその後に採取した書証については要注意である。
エその外,商標の周知性認定の判断資料として情報量が不足するもの(甲27
∼29),商標法4条1項10号の適用時に必要な日付の記載がないもの(甲2)
等も,採用すべきでない。
(3)引用商標の使用商品が季節商品であることを見逃して周知性を判断したこ

ア商標法4条1項10号の適用に当たっては,商標の周知性の立証等について,
商標の使用期間や使用した商品の数量等を総合勘案して判断すべきである。
本件決定は,季節商品の販売期間,販売数量等について納品書,請求書等で確認
し,商標の周知性の影響等について考慮すべきであったのに,これを怠って引用商
標が周知性を獲得したと判断を誤った。
イ本件決定は,商品の話題性が商標の周知性を獲得することがあり得るという
が,商品の話題性があれば商標の周知性を獲得する理由は何か等について何ら説明
していないし,心理学上からみても,取引の経験則からみても,納得できない。商
品に話題性があれば,取引者,需要者は商品に注目するようになるが,その分,商
標への注意がそがれ,かえって周知化が難しくなるはずである。また,仮に商品の
話題性があるとしても,商品「ももいちご大福」は福屋以外の菓子店も販売してい
る(甲11)のに,引用商標だけが周知性を獲得する理由がない。
(4)小括
上記(2)のとおり,採用すべきでない書証を除くと,引用商標の使用例が少なく
なり,正当な書証は,甲4の2・3のみとなり,結局,引用商標「ももいちごの
里」は,周知性が認められないことになる。
なお,原告をはじめ,福屋と同じ市内の菓子業者の多くは,本件商標の出願後に
おいても,引用商標の存在を知らないとの聞取り結果がある。
このように,引用商標に周知性はなく,商標法4条1項10号に該当しないから,
本件決定は,取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
(1)引用商標の使用時期の立証に不備があるとの主張について
引用商標の周知著名性は,十分に認められるものである(甲2∼6,8,9,1
1,13,15,16,20,22,24,26の1,28∼31)。
商標の周知性及びその使用の事実を示す証拠が使用期間の全日にわたって,日々
連続していないとしても,その証拠の内容及び期間の前後の使用の事実により,実
際に使用してきたことが十分に証明される。
なお,「ももいちごの里」は,「ももいちご」の収穫時期に製造される季節商品
であるから,収穫されない時期については,引用商標を使用した商品の販売はされ
ない。しかし,そのような季節商品であっても,周知著名性を獲得したら,季節外
の時期においても「ももいちごの里」の商標が使用された場合には,引用商標が想
起されるのであり,その商標が使用されない期間があるとしても,その周知著名性
は継続している。
(2)採用すべきでなかった証拠を採用したとの主張について
ア本件決定が讀賣新聞の徳島版の記事を大阪本社版の記事と誤って拡大して採
用したとの主張について
本件決定は,甲24について,徳島版の記事の証拠として採用し,判断したもの
である。
イ自他商品識別標識となり得ない書証を周知性認定の証拠としたとの主張につ
いて
使用の事実の証明においては,その使用態様が重要な要件となり得ることは当然
であるが,本件決定においては,引用商標が周知性を獲得したかどうかが問題であ
る。雑誌や新聞等において,商標を記載してその商標に係る商品の紹介がなされて
いる場合には,たとえ,文中に記載されている場合であっても,一定の興味を持っ
て注意深く読まれることから,当該商標について何ら需要者の記憶に残らないとは
いえない。よって,このような態様による雑誌等への掲載の事実も,周知性を獲得
する証拠となり得る。
原告が,引用商標の使用かどうかということではなく,引用商標の周知性立証に
おける表示態様について論じているとしたら,その解釈を全く誤っているものとい
わざるを得ず,失当である。
記事広告も通常の記事も需要者が目にするものであるから,雑誌等に掲載される
ことにより,より周知となるものである。原告が指摘する証拠のうち,例えば,甲
6の記載中,「ももいちごの里」の部分が自他商品の識別標識としての機能を有す
ることは明らかである。「ももいちごの里」を商品の普通名称として認識している
需要者は皆無であって,原告が挙げる証拠の記載に接する需要者は,いずれもその
商品に名付けられた名称,つまり商標として理解し,記憶されるというべきである。
商標法4条1項10号については,他人の表示の周知性の程度をもとに判断する
のは当然であり,本件決定が「周知の可能性」をもって認定したものではないこと
は明らかである。
ウ本件商標の出願後に作成又は採取した資料を証拠としたとの主張について
当該証拠に記載された内容が本件商標の出願時における周知性の証拠になるなら
ば,当該証拠の作成日等が仮に出願日以降であったとしても証拠となり得る。証拠
方法の作成日を基準とする原告の形式的な主張は,全く根拠がないものである。
(3)引用商標の使用商品が季節商品であることを見逃して周知性を判断したと
の主張について
周知性は,商標の使用開始時期,使用期間,生産譲渡の数量,その他,広告宣伝
の回数や一般紙,雑誌における記事掲載の回数及び内容等を把握し,その事実を総
合勘案して判断することとされており(商標審査基準),確かに生産譲渡の数量も
周知性の判断における一つの要素ではあるが,様々な事実を総合的に判断するので
あって,すべての要素について正確に把握できなければならないものではない。生
産譲渡の数量が少ない場合でも,雑誌や新聞などに掲載されることが多ければ周知
性を獲得することも十分にあり得る。
引用商標に係る福屋の商品の販売数量が正確には把握できなかったとしても,ま
た,商品の販売期間が季節的であるとしても,本件の場合,雑誌,新聞,テレビ放
映等の事実を総合勘案した結果,周知性を獲得したものと判断できるのである。な
お,本件決定は,福屋の使用商品が徳島県佐那河内村の特定農家の生産する「もも
いちご」の収穫時期に合わせて製造される季節商品であることを十分認識し,判断
したものである。
(4)小括
引用商標の周知性に係る書証についての原告の主張は,いずれも当を得ていない
ものであり,当該証拠により引用商標が本件商標の出願時及び登録査定時において
周知であることは十分に認められ,原告の主張はいずれも失当である。
よって,本件商標は,商標法4条1項10号に該当するものであるから,その登
録を取り消すとした本件決定に何ら違法な点はなく,取り消されるべき理由はない。
第4当裁判所の判断
1引用商標の周知性について
(1)認定事実
ア「ももいちご」について
「ももいちご」は,平成4年に大阪中央青果市場と異議申立人であるJA徳島市
の佐那河内支所とが共同開発し,JA徳島市と栽培協定を結んだ徳島県佐那河内村
の特定の農家において生産されているイチゴのブランド名である。「ももいちご」
は,普通のイチゴの3倍以上はある180gの大きさとジューシーで甘くて柔らか
い香りを特徴とする。12個から24個入りで,8000円ないし9000円の価
格を付けることもある(甲4の1∼3,甲19,32)。
異議申立人Aは,「ももいちご」及び「百壱五」の文字を二段に併記した商標に
ついて,第31類「いちご」を指定商品として,平成11年10月8日に,商標登
録第4323578号の設定登録を受けた(弁論の全趣旨)。
イ大福「ももいちごの里」について
福屋は,「ももいちご」をそのまま使用した大福を開発し,平成14年から,
「ももいちごの里」との商標(引用商標)を使用し販売を開始した。福屋では,引
用商標「ももいちごの里」をいちご大福(引用商標を付した福屋のいちご大福を,
以下「使用商品」ということがある。)の個別包装及び包装箱に付して使用してい
るほか,インターネットを介する通信販売も行っている。福屋のホームページには,
「ももいちごの里通信販売」の表題の下に,「ももいちごの里」と表示された使用
商品の写真が掲載されている。また,福屋のNETショッピングサイトでは,「も
もいちごの里」の写真が掲載され,使用商品の説明がされている。使用商品は,1
個480円ないし630円,3個化粧箱入り1箱2100円,6個化粧箱入り1箱
4095円で,毎年12月初旬から翌年4月上旬までの期間限定で,1日の販売も
当初は限定販売で,販売されている(甲3,4の1∼3,甲5,6,25)。
ウ新聞・雑誌等への掲載
(ア)平成14年12月12日付け徳島新聞(甲25)
「ミニミニ情報」として,福屋の「ももいちごの里」が販売される旨の記事が,
写真入りで紹介されている。
(イ)平成16年1月6日付け讀賣新聞(甲4の1)
徳島版の「四国食紀行」の欄に,「甘∼い果汁たっぷり」,「ももいちご徳島
県佐那河内村」の見出しの下に,「ももいちご」が紹介され,「ももいちごを使っ
て徳島市内の和菓子店『福屋』は2002年から,イチゴ大福『ももいちごの里』
を売り出している。…発売初日,480円という値段にもかかわらず,開店から4
時間で120個を完売。」等の記述がされ,上記イチゴ「ももいちご」及びイチゴ
大福「ももいちごの里」の写真が掲載された。なお,同新聞の販売部数は,徳島県
において約1万部である(弁論の全趣旨)。
(ウ)「神戸ウォーカー」平成17年2月16日号(角川書店発行。甲15)
「まだある!全国から見つけてきた編集部セレクトの激ウマイチゴフード」のタ
イトルの下において,「和菓子処福屋のももいちごの里」について,カラーの写
真入りで紹介されている。なお,上記雑誌は,隔週に発行されるいわゆるタウン情
報誌である(弁論の全趣旨)。
(エ)「関西ウォーカー」平成18年2月15日号(角川書店発行。甲13)
「めちゃ売れイチゴものをお取り寄せ」のページにおいて,「『和菓子処福屋』
のももいちごの里」として,カラーの写真入りで紹介されている。なお,上記雑誌
は,隔週に発行されるいわゆるタウン情報誌である(弁論の全趣旨)。
(オ)「中国・四国じゃらん」平成18年3月号(リクルート発行。甲16)
「春先取り!新作スイーツ」のページにおいて,「福屋」として紹介され,カラ
ーの写真と共に,「ももいちごの里」の記載がされている。なお,上記雑誌は,月
1回発行される旅の情報誌である(弁論の全趣旨)。
(カ)「月刊タウン情報トクシマ」平成18年3月号(株式会社メディコム発行。
甲20)
「グルメニュース」のページにおいて,「季節限定『ももいちごの里』大福はほ
ぼ毎日完売!」の見出しの下に,カラーの写真と共に「季節限定のももいちごの大
福『ももいちごの里』525円。人気商品で夕方には売り切れてしまうこともある
ので,予約が確実」等の記述がされている。なお,上記雑誌は,徳島の月刊タウン
情報誌である。
(キ)平成18年4月1日付け徳島新聞夕刊(甲26の1)
「トレンド」として福屋の店舗が取り上げられ,店舗内の写真や商品の写真等と
共に,「『福屋』共通の看板メニューは,期間限定のももいちごの里(1個525
円)。」等の記述がされている。なお,同新聞の販売部数は,約25万部であり,
徳島県内の世帯数約30万世帯の約82%を占めている(弁論の全趣旨)。
(ク)「月刊タウン情報CU」平成19年2月15日号(株式会社メディコム発
行。甲6)
「大正創業の老舗が全国に誇る!キング・オブ・いちご大福」の表題の下に,1
ページ全体を使って,「ももいちごの里」が紹介されている。カラーの写真と共に,
「福屋のももいちごの里1個550円※12月初旬∼4月上旬までの期間限定(も
もいちごの出荷による)」と記載されている。なお,上記雑誌は,徳島の月刊タウ
ン情報誌であり,実売部数は月6000ないし8000部前後である。
(ケ)「女性自身」平成19年2月27日号(光文社発行。甲11)
「華麗なる『いちご』族」の表題の下に,「和菓子処福屋」「ももいちごの里」
としてカラーの写真入りで紹介されている。なお,上記雑誌は,創刊以来2294
号を数える女性週刊誌である。
(コ)「ASA」平成19年4月号(株式会社あわわ発行。甲22)
「人気カフェのいちご情報」の特集記事において,「福屋のももいちごの里5
50円」として写真入りで紹介されている。なお,上記雑誌は,昭和63年から発
行されている月刊誌である。
(サ)「STORY」平成19年6月号(光文社発行。甲8,9)
「冨田リカさんのスウィーツめぐり」と題するページにおいて,「大粒のいちご
を丸ごと真っ白い餅で包んだ大福」として,カラーの写真入りで使用商品が紹介さ
れ,「佐那河内産のももいちごは普通のより倍以上の大きさ。”ももいちごの里”
1個¥550」と説明されている。なお,上記雑誌は,月刊誌であり,平成20年
4月から6月の発行部数は,約26万部である。
エテレビ・ラジオでの放送
(ア)ABC朝日放送のテレビ番組「おはよう朝日です」(甲28,29)
平成18年1月9日放送の上記番組の全国取り寄せグルメコーナーで使用商品が
取り上げられ,「こんな大福見たことない!絶品!!激ウマいちご大福」として
「ももいちごの里化粧箱6個入り」「3,465円(送料別)」のテロップ表示
と共に,使用商品及び出演者が試食している様子が放映された。
また,平成17年3月25日放送でも,「和菓子処福屋」及び「ももいちごの
里」のテロップ表示と共に使用商品及び出演者がこれを試食している様子が放映さ
れた。
(イ)FMラジオ放送(甲30)
関東地域を放送エリアとする「J−WAVE」(平成16年12月10日放送),
徳島近辺を放送エリアとする「FM徳島」(平成17年2月25日放送)等で使用
商品が紹介されたことが,福屋のホームページに記載されている。
オ出願日以降における引用商標の掲載状況等
(ア)徳島バスホームページ(平成20年3月5日。甲32)
「とくしま応援プロジェクト」として,ももいちごの関連商品として,使用商品
の紹介がされている。
(イ)マップルマガジン徳島2009(平成20年5月1日発行。甲18)
「トクシマスイーツ」として,福屋の「ももいちごの里」が写真入りで紹介され
ている。同誌に掲載されているデータは,平成19年10月から平成20年1月に
取材したものであるとの記載がある。
(ウ)インターネットによる検索(甲31)
検索サイトGoogleで「ももいちごの里」を検索した結果,平成20年8月
9日現在,2500件余がヒットし,上位20位までがすべて福屋の使用商品に関
するものであり,いずれも使用商品及び引用商標に言及している。
(エ)「YOMIURION−LINE」サイト(平成20年8月9日プリン
トアウト。甲4の2・3)
「四国食紀行」として,前記(1)ウ(イ)と同一の記事が掲載された。
(2)周知性の有無
前記(1)ウ・エ認定の事実のとおり,福屋のいちご大福「ももいちごの里」は,
平成14年に発売が開始されてそれが地元徳島県の新聞で報道されて以降,平成1
6年1月から平成19年6月にかけて,徳島県の新聞やタウン情報誌等に掲載され
たほか,全国で発売されているグルメ雑誌や旅行雑誌を含む雑誌等にもたびたび紹
介され,テレビやラジオ放送でも取り上げられたものである。よって,引用商標は,
遅くとも,平成19年6月ころまでに,徳島県のみならず少なくとも関西地方にお
ける取引者,需要者に,徳島県佐那河内村の特定の農家において生産されている
「ももいちご」を使用した福屋のいちご大福を表示するものとして,広く認識され
ていたものということができ,前記(1)オ認定の事実に照らしても,その後,本件
商標登録出願の時及び商標登録査定の時まで,その周知性が継続していたというべ
きである。
(3)原告の主張について
ア原告は,平成19年3月以降出願日である平成20年2月までの立証がない
と主張する。
しかし,まず,平成19年6月発行の月刊誌に引用商標を使用した商品が掲載さ
れた記事があることは,前記(1)ウ認定のとおりである。また,上記記事の発行日
から出願日までも,約8か月の期間があるが,前記(1)イ認定のとおり,引用商標
に係る福屋の「ももいちごの里」がももいちごの収穫時期にあわせて販売される季
節商品であることに照らすと,一定の周知性を獲得した商品についての宣伝広告が
されたことの証拠が約8か月途切れているからといって,直ちに周知性を喪失した
ということはできない。加えて,そもそも,宣伝広告等,周知性の立証を日々途切
れることない形で行うことは容易ではないところ,前記(1)オ認定の出願日以降の
引用商標の掲載状況等も併せ考慮すると,引用商標は,その後も引き続き周知性を
有しているというべきである。
イ原告は,採用すべきでなかった証拠を採用したと主張する。
(ア)まず,本件決定が,讀賣新聞徳島版(甲24)の記事を大阪本社版の記事
として採用したということはできず,その点に関する原告の主張は失当である。
(イ)また,前記(1)ウに認定した雑誌や新聞への掲載は,いずれも,福屋が販
売する「ももいちごの里」の名称のいちご大福を,写真とともに紹介するなど,自
他商品識別機能を発揮する態様で使用されている。よって,これらの記事への掲載
が,商標としての使用に当たらず,周知性の認定の基礎とならないということはで
きない。なお,引用商標に係る福屋の「ももいちごの里」の記事が,仮に記事広告
として掲載されたものであったとしても,一定の販売部数のある新聞や雑誌に掲載
された以上,その読者において引用商標を認識し,その結果広く知られることにな
るのであるから,この点に関する原告の主張も失当である。
(ウ)さらに,商標登録出願の時及び商標登録査定又は拒絶査定の時(拒絶査定
に対する審判が請求された場合には,これに対する審決の時)において商標法4条
1項10号に該当する商標は,商標登録を受けることができないところ(商標法4
条3項参照),前記(1)ウ・エのとおり,出願日以前に発行された証拠により,本
件商標登録出願の時の引用商標の周知性が認められ,前記(1)オのとおり,その後
も周知性が継続していると認められるのであって,原告の主張は採用できない。
ウ原告は,商標を付した商品の販売期間や販売数量等を認定することなく周知
性を認めたことが誤りであるとも主張する。
商品の販売数量は,周知性認定の1つの要素となることは原告主張のとおりであ
るとしても,宣伝広告により広く知られる数量限定の商品も存在することに照らし,
販売数量を認定しなかったことから直ちに周知性の判断が誤りであるということは
できない。なお,使用商品の販売期間は,前記(1)イ認定のとおりである。
エ原告は,その他るる主張するが,いずれも,採用することができない。
(4)小括
以上のとおり,引用商標が周知であるとした本件決定の認定に,誤りはない。そ
して,本件商標と引用商標とは同一であり,本件商標の指定商品の中には引用商標
に係る大福が含まれるから,本件商標が商標法4条1項10号に該当することは明
らかである。これと同旨の本件決定の判断に誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由は理由がない。
2結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却さ
れるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官高部眞規子
裁判官杜下弘記

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弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
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採用担当宛