弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件につき相川簡易裁判所が被告人に対し略式命令をした訴訟手続を破
棄する。
         理    由
 本件非常上告申立の理由は末尾添付書面記載のとおりである。
 よつて記録を調査するに、被告人Aは、所論のとおり、料理店を営み芸妓を雇傭
中、使用者は満一八才に満たない女子を衛生又は福祉に有害な場所における業務に
就かせてはならないにも拘らず、自己が雇傭するB(当時一五才)及びC(当時一
五才)を昭和三〇年四月四日より同年五月末日まで、芸妓として酒席に侍する業務
に就かしめ、以て前示有害な業務に就業させたものである、との公訴事実につき、
昭和三〇年八月二〇日相川簡易裁判所に公訴を提起せられると同時に略式命令を請
求せられ、同裁判所は略式手続により同月二六日右と同一の犯罪事実を認定し、こ
れに対し、労働基準法六三条二項、一一九条一号、昭和二九年六月一九日労働省令
一三号女子年少者労働基準規則八条四四号、罰金等臨時措置法二条、刑法一八条を
適用して、被告人を罰金三、〇〇〇円に処し、所論のとおり労役場に留置する旨の
略式命令をなし、右命令は同月二八日被告人に送達されたが、正式裁判申立期間の
経過により同三〇年九月一二日確定するに至つた事実が認められる。
 しかし、被告人は成人であるところ、少年法三七条一項によれば、かような成人
の犯した少年についての労働基準法六三条(三項を除く)に関する同一一九条一号
の罪に係る事件の公訴は、家庭裁判所にこれを提起しなければならないのみならず、
裁判所法三一条の三第一項三号によれば家庭裁判所はかような事件については専属
管轄権を有するのであるから、本件については何ら原審相川簡易裁判所は管轄権を
有せず事件の本案について裁判をすることができないこというまでもない。従つて、
本件公訴を受理した原審としては刑訴法四六三条により本件について通常手続に従
い同三二九条に則り管轄違の判決を言い渡すべきものであつた。しかるに原審はこ
れをしないで、略式手続により前記のような本案裁判をしたのであるから、その訴
訟手続は法令に違反したものであること明らかである。本件非常上告は理由がある。
 よつて、刑訴法四五八条二号に従い、本件につき右簡易裁判所が被告人に対し略
式命令をした訴訟手続を破棄すべきものとし裁判官全員一致の意見で主文のとおり
判決する。
 本件公判には検察官安平政吉が出席した。
  昭和三二年二月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
 裁判官本村善太郎は退官のため署名押印することができない。
         裁判長裁判官    垂   水   克   己

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