弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         埋    由
 上告代理人澤邊朝雄、同植原敬一、同藤井司の上告理由第一点の第二について
 建物の賃貸人が解約の申入れをした場合において、その申入時に借家法一条ノ二
に規定する正当事由が存するときは、申入後六か月を経過することにより当該建物
の賃貸借契約は終了するところ、賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申
し出た場合又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても、
右の提供又は増額に係る金員を参酌して当初の解約申入れの正当事由を判断するこ
とができると解するのが相当である。けだし、立退料等の金員は、解約申入時にお
ける賃貸人及び貸借人双方の事情を比較衡量した結果、建物の明渡しに伴う利害得
失を調整するために支払われるものである上、賃貸人は、解約の申入れをするに当
たって、無条件に明渡しを求め得るものと考えている場合も少なくないこと、右金
員の提供を申し出る場合にも、その額を具体的に判断して申し出ることも困難であ
ること、裁判所が相当とする額の金員の支払により正当事由が具備されるならばこ
れを提供する用意がある旨の申出も認められていること、立退料等の金員として相
当な額が具体的に判明するのは建物明渡請求訴訟の審理を通じてであること、さら
に、右金員によって建物の明渡しに伴う賃貸人及び貸借人双方の利害得失が実際に
調整されるのは、賃貸人が右金員の提供を申し出た時ではなく、建物の明渡しと引
換を賃借人が右金員の支払を受ける時であることなどにかんがみれば、解約申入後
にされた立退料等の金員の提供又は増額の申出であっても、これを当初の解約の申
入れの正当事由を判断するに当たって参酌するのが合理的であるからである。
 これを本件についてみると、記録によれば、被上告人は、昭和六二年五月一一日、
第一審の第七回口頭弁論期日において、上告人Aとの間の本件賃貸借契約の解約を
申し入れ、同時に立退料一〇〇万円の支払を申し出ていたところ、原審の第一回口
頭弁論期日において、裁判所が相当と認める範囲内で立退料を増額する用意がある
ことを明らかにした上、平成元年七月二一日、原審の最終口頭弁論期日において、
立退料を三〇〇万円に増額する旨を申し出ていることが明らかである。そして、原
審の適法に確定した事実関係によれば、被上告人が昭和六二年五月一一日にした解
約の申入れは、立退料三〇〇万円によって正当事由を具備するものと認めるのが相
当であるから、本件賃貸借契約は、右解約申入れから六か月後の昭和六二年一一月
一一日の経過によって終了したものといわなければならない。したがって、これと
異なり、被上告人が平成元年七月二一日に立退料の増額を申し出た時から六か月後
の平成二年一月二一日の経過をもって本件賃貸借契約が終了するとした原判決には、
借家法一条ノ二にいう解約申入れの効力の解釈を誤った違法があるが、平成二年一
月二二日以後の建物の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を命じた原判決を変更し
て昭和六二年一一月一二日以後の建物の明渡し及び賃料相当損害金の支払等を命ず
ることは、いわゆる不利益変更禁止の原則により許されない。論旨は、結局、原判
決の結論に影響しない部分の違法をいうに帰し、採用することができない。
 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    香   川   保   一
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    木   崎   良   平

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