弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人比嘉正憲の上告理由について
 合資会社の社員の金銭出資義務は、定款又は総社員の同意によりその履行期が定
められていないときは、会社の請求によりはじめてその履行期が到来し、特定額の
給付を目的とする金銭債務として具体化されるものというべきであり、かかる金銭
債務となる前の出資義務は社員たる地位と終始すべきものであつて、社員が退社し
て社員たる地位を喪失するときは、出資義務も消滅するに至るというべきであるか
ら、右退社員の合資会社に対する持分払戻請求権は成立しないと解すべきである(
大審院昭和一五年(オ)第六八号同一六年五月二一日判決・民集二〇巻一二号六九
三頁参照)。
 本件についてこれをみるに、原審の確定した事実は、(一) 上告人A1、同A2、
同A3及び第一審原告D(以下「上告人A1ら四名」という。)は昭和四四年八月
六日に設立された合資会社たる被上告会社の有限責任社員である、(二) 上告人A
1ら四名の出資の目的は被上告会社の定款により金銭とされ、その価額は、上告人
A1、同A3及び第一審原告Dにつき各六一万円、上告人A2につき三〇万五〇〇
〇円と定められていた、(三) 被上告会社の右定款及び登記簿上、上告人A1ら四
名の前記各金銭出資義務は全部履行されたことになつているが、上告人A1ら四名
がその退社前に右出資額に相当する金銭を現実に被上告会社に支払つたことはない、
(四) 被上告会社の定款又は総社員の同意によつて前記金銭出資義務の履行期が定
められていたことはないところ、上告人A1ら四名がその退社前に被上告会社から
右金銭出資義務の履行の請求を受けたことはない、(五) 上告人A1ら四名は昭和
五二年三月三一日被上告会社を退社した、というのであり、右事実認定は、原判決
挙示の証拠関係に照らし、正当として首肯することができ、右の事実関係のもとに
おいては、上告人A1ら四名は被上告会社に対し退社による持分払戻請求権を取得
しないというべきであるから、これと同旨の原審の判断は、正当として是認するこ
とができる。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認
定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実を前提として若しくは独自の見解
に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    佐   藤   哲   郎
            裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    高   島   益   郎
            裁判官    大   内   恒   夫

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