弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人の弁護人山村利宰平の上告趣意第一点について、
 所論は、本件については国税徴収法第三二条を適用処断すべきものであつて刑法
第九六条ノ二を適用処断すべきものではないというのであつて刑訴第四〇五条に規
定する上告理由とならない。しかし刑法第九六条ノ二にいう「強制執行」とは、民
事訴訟法による強制執行又は民事訴訟法を準用する強制執行を指称するもので、国
税徴収法に基く滞納処分たる差押はこれを含まないものと解すべきである。何とな
れば刑法第九六条ノ二の規定は民事訴訟法により裁判所の判決によつて勝訴の判決
を得た債権者も債務者その他の者の仮装行為その他の不正手段によりその判決の執
行を徒労に帰せしめられる弊があつたので、この弊を除き司法裁判の執行を完うし、
裁判の効力を確保するため昭和一六年法律第六一号による刑法の一部改正の際に新
たに制定せられたものであつて、主として民事訴訟法による強制執行の妨害を排除
せんとする趣旨に出でたものであること、一方国税滞納に基く滞納処分たる差押を
妨ぐる行為については、既に明治三〇年法律第二一号国税徴収法第三二条において
これを禁止し処罰する規定を設けていて、右刑法改正に際し右滞納処分としての差
押を妨害する行為を刑法において処罰する旨規定する必要はなかつたこと、しかも
国税徴収法に基く滞納処分については、差押その他の執行手続に関し、同法に詳細
規定されていて、民事訴訟法の強制執行に関する規定を準用するものではないこと、
その法定刑も刑法九六条ノ二には罰金の選択刑が存する外懲役刑については両者相
等しく何等軽重のないこと等に徴すれば、刑法第九六条ノ二にいう「強制執行」と
は主として民事訴訟法による強制執行を指し、国税徴収法による滞納処分たる差押
はこれを含まないと解するを相当とするからである。ただ国税徴収法第三二条第四
項には「前各項ノ場合ニ於テ刑法ニ罰条アルモノハ本条ヲ適用セズ」と規定してい
るが右条項は明治三〇年の制定にかゝり前示刑法の改正はもとより右刑法(明治四
〇年法律第四五号)の制定前より存在するものであつて同項に「刑法ニ罰条」とい
うのは刑法九六条ノ二のごときを指すものではないから同条項あるがために右改正
にかかる刑法九六条ノ二を以て国税の滞納処分にも適用あるものと解しなければな
らないものではない。果して右のとおりとすれば「第一審判決が本件につき刑法第
九六条ノ二を適用したのは相当である」と判断した原判決は、法令の適用を誤つた
違法があり本件被告人の行為については国税徴収法第三二条の規定を適用処断すべ
きである。国税徴収法第三二条の規定は本件犯行後昭和二五年三月法律第六九号に
より改正されてはいるが、同法附則第一一項により改正前の行為に対する罰則の適
用については、なお従前の例による旨規定しているので、被告人の本件行為につい
ては、改正前の前記明治三〇年法律第二一号国税徴収法第三二条第一項の適用があ
るのである。そして同条項の所定の懲役刑は刑法第九六条ノ二の所定の懲役刑と軽
重がないこと前記のとおりであるから右国税徴収法第三二条第一項の法定刑の範囲
内で被告人を処断した第一審判決を維持した原判決は、これを破棄しなければ著し
く正義に反するものとはいえない。よつて論旨は結局理由がない。
 同第二点乃至第五点について、
 所論はすべて刑訴第四〇五条に規定する事由にあたらないから上告適法の理由と
ならない。又記録を調べても本件に刑訴第四一一条を適用すべきものとは認められ
ない。
 よつて刑訴第四一四条、第三八六条第一項第三号に則り、裁判官全員一致の意見
により主文のとおり決定する。
  昭和二九年四月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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