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平成22年7月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成21年(ワ)第3188号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成22年5月14日
判決
東京都港区<以下略>
原告株式会社てんこもり
横浜市<以下略>
原告X
原告ら訴訟代理人弁護士大毅
東京都新宿区<以下略>
被告株式会社アニメディア・ドット・コム
訴訟代理人弁護士三島駿一郎
同平間民郎
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告株式会社てんこもりに対し,105万円及びこれに対する平
成18年11月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告Xに対し,630万円及びこれに対する平成18年11月1
日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,漫画「サーキットの狼」を題材にしたテレビ番組の製作業務の下
請をした原告株式会社てんこもり(以下「原告会社」という。)及び同テレ
ビ番組でナレーションの実演を行った原告X(以下「原告X」という。)
が,同テレビ番組がDVD化されることについての承諾をしていないのに,
同テレビ番組製作の発注者である株式会社ジャパンイメージコミュニケーシ
ョンズ(以下「JIC」という。)から同テレビ番組をDVD等の表現媒体
に二次利用することを他に許諾する権利(サブライセンス権)の設定(許
諾)を受けた被告が,株式会社交通タイムス社(以下「交通タイムス社」と
いう。)に同テレビ番組のDVD化を許諾するライセンス契約を締結し,交
通タイムス社を通じて同番組のDVDを製作販売したなどと主張し,被告に
対し,原告会社においては同テレビ番組の製作業務に関する追加の請負代金
として105万円の支払を,原告Xにおいては同テレビ番組の追加の出演料
として315万円及び上記実演に係る実演家の録音権(著作権法91条1
項)侵害の不法行為による損害賠償として315万円の合計630万円の支
払を求めた事案である。
1基礎となる事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全
趣旨により認められる事実である。)
(1)当事者等
ア原告会社は,スタジオ運営,映像撮影,CG製作等を業とする株式会
社である。
イ原告Xは,テレビ番組等におけるナレーター業等を営む者である。
ウ被告は,映像製作等を業とする株式会社である。
また,被告は,平成17年5月ころから,漫画家池沢早人師(以下「
池沢」という。)の委託を受けて,同人の作品である漫画「サーキット
の狼」についての著作権の管理を行っている(乙2,被告代表者本
人)。
エJICは,CS放送やケーブルテレビで放映されているテレビチャン
ネル「MONDO21」を運営する株式会社である。
(2)「蘇れ!サーキットの狼」の放送
JICは,平成18年7月から12月にかけて,テレビチャンネル「M
ONDO21」において,「蘇れ!サーキットの狼」と題する30分枠,
全12回のテレビ番組(以下「本件番組」という。)を放送した。
本件番組は,各回ごとに漫画「サーキットの狼」の中に登場する特定の
スーパーカーを取り上げ,そのデザインを再現した実物の車両を紹介した
り,ホスト役の池沢と各回のゲストが,スーパーカーにまつわるトークを
繰り広げることなどを内容とするものであった(検甲1ないし12)。
原告Xは,本件番組の中で,ナレーターを務めた。
(3)本件番組の製作に係る経過
アJICと株式会社ソニア(以下「ソニア」という。)は,平成18年
4月18日,ソニアがJICから,以下の条件によりテレビ番組の制作
業務全般(企画,構成,脚本,キャスティング,照明,美術,撮影,録
画,録音,編集等)を請け負う旨の契約を締結した(甲3)。
番組名蘇れ!サーキットの狼
製作本数12本
形式・種別30分枠(実尺27分)
初回放送予定2006年(平成18年)7月ないし同年12月
代金1本当たり70万円(合計840万円)
イソニアと株式会社ディハウスボス(以下「ディハウスボス」とい
う。)は,上記アの契約が締結されたころ,ディハウスボスがソニアか
ら,上記アのテレビ番組の制作業務全般を請け負う旨の契約を締結し
た。
ウディハウスボスと原告会社は,上記イの契約が締結されたころ,原告
会社がディハウスボスから,上記アのテレビ番組の制作業務全般を請け
負う旨の契約を締結した(甲6,9,原告代表者Y,弁論の全趣旨)。
エ原告会社は,平成18年5月ころから11月ころにかけて,上記アの
テレビ番組の制作業務を行い,その成果物は,原告会社からソニアに,
更にソニアからJICに納品され,前記(2)のとおり,本件番組として放
送に供された。
(4)本件番組のDVD化に係る経過
アJICと被告は,平成18年11月1日,JICが本件番組について
の著作権を有することを前提として,JICが同著作権に基づいて有す
る,本件番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する
権利を被告に設定すること,被告のJICに対する著作権使用料は被告
が「買い手側(ライセンシー)」から受け取る著作権使用料(消費税
別)の50%とすること,JICは被告に対しJICが本件番組の著作
権を有することを保証することなどを内容とするライセンス契約(以
下「本件ライセンス契約1」という。)を締結した(乙1,2,被告代
表者)。
イ被告と交通タイムス社は,平成18年11月22日,被告が交通タイ
ムス社に対し,JICが製作した著作物である本件番組のDVDを製作
し,交通タイムス社が発売する書籍に付録として添付して販売すること
を許諾すること,交通タイムス社の被告に対する著作権使用料は,本件
番組1話当たり各出版部数8000部の使用料及び最低保証料を50万
円(消費税別),その12話分の合計600万円(消費税別)とし,各
出版部数8001部を超えた場合の使用料をその超えた数量に本1冊当
たり100円(消費税別)を乗じた金員の合計額とすること,被告は交
通タイムス社に対し本契約を締結する有効かつ正当な権利及び権限を保
有することを保証することなどを内容とするライセンス契約(以下「本
件ライセンス契約2」という。)を締結した(甲1,乙2,被告代表
者)。
ウ交通タイムス社は,平成19年3月ころから9月ころにかけて別紙書
籍目録記載1ないし12の各書籍(以下「本件各書籍」という。)を順
次発行し,これらを販売した。本件各書籍には,それぞれ交通タイムス
社が製作したDVD2枚が付録として添付され,そのうちの1枚には,
本件番組の1回分がそれぞれ収録されている(検甲1ないし12)。
2当事者の主張
(1)原告会社の請求について
ア原告会社の請求原因
(ア)ソニアと原告会社は,平成18年5月ころ,ディハウスボスを介
在させることなく,原告会社が直接ソニアから,前記1(3)ア記載のテ
レビ番組の制作業務全般を1回分当たり70万円で請け負う旨の契
約(以下「本件番組制作請負契約」という。)を締結した。
本件番組制作請負契約の締結に当たり,ソニアと原告会社の間にお
いては,制作した番組について,テレビ放送用にのみ供するものとさ
れ,そのDVDを製作して販売することは予定されておらず,請負代
金もそれを前提に決められた。また,ソニアと原告会社の間において
は,仮に将来上記番組のDVDが製作,販売される場合には,請負代
金の追加として相当な金額を支払う旨が合意された。
(イ)ところが,その後,被告が原告会社の承諾を得ることなく交通タ
イムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことにより,交通
タイムス社によって本件番組のDVDが本件各書籍の付録として製作
され,販売されるに至った。
(ウ)したがって,原告会社は,本件番組制作請負契約に基づく追加の
請負代金として相当な金額を請求する権利を有するところ,その金額
としては,全12回分で105万円が相当である。また,本件番組の
DVDが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告会社の承諾を得
ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結した
ことによるものであるから,原告会社は,上記追加の請負代金を被告
に対して請求することができるというべきである。
(エ)よって,原告会社は,被告に対し,本件番組制作請負契約に基づ
く追加の請負代金として105万円及びこれに対する平成18年11
月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
の支払を求める。
イ原告会社の請求原因に対する被告の認否及び反論
(ア)ア(ア)の事実はいずれも不知。
(イ)ア(イ)の事実のうち,被告が原告会社の承諾を得ることなく交通
タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したこと,交通タイ
ムス社によって本件番組のDVDが本件各書籍の付録として製作さ
れ,販売されたことは認め,その余は争う。
(ウ)ア(ウ)の主張は争う。
原告会社と被告との間には,何らの契約関係もないから,被告が原
告会社に対し,本件番組制作請負契約に基づく追加の請負代金の支払
義務を負う理由はない。
また,被告が交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結
したのは,本件ライセンス契約1によってJICから被告に設定され
た本件番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する
権利に基づいて,交通タイムス社が本件番組のDVDを製作し,本件
各書籍に付録として添付して販売することを許諾したものにすぎず,
これに関して,被告が原告会社から金銭の請求を受けるべき理由はな
い。
(2)原告Xの請求について
ア原告Xの請求原因
(ア)追加の出演料
aソニアと原告Xは,平成18年5月ころ,原告Xが前記1(3)ア記
載のテレビ番組にナレーターとして出演し,ソニアが原告Xに対
し,番組1回分当たり10万円(合計120万円)の出演料を支払
う旨の契約(以下「本件番組出演契約」という。)を締結した。
本件番組出演契約の締結に当たり,ソニアと原告Xの間において
は,制作した番組について,テレビ放送用にのみ供するものとさ
れ,そのDVDを製作して販売することは予定されておらず,出演
料もそれを前提に決められた。また,ソニアと原告Xの間において
は,仮に将来上記番組のDVDが製作,販売される場合には,出演
料の追加として相当な金額を支払う旨が合意された。
bところが,その後,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイ
ムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことにより,交通
タイムス社によって本件番組のDVDが本件各書籍の付録として製
作され,販売されるに至った。
cしたがって,原告Xは,本件番組出演契約に基づく追加の出演料
として相当な金額を請求する権利を有するところ,その金額として
は,全12回分で315万円が相当である。また,本件番組のDV
Dが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告Xの承諾を得るこ
となく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したこ
とによるものであるから,原告Xは,上記追加の出演料を被告に対
して請求することができるというべきである。
(イ)実演家としての録音権侵害による損害
a原告Xは本件番組においてナレーターを務めているところ,原告
Xが本件番組中で行ったナレーション(以下「本件ナレーション」
という。)は,著作権法2条1項3号の「実演」に当たるから,原
告Xは,本件ナレーションについて,実演家としての録音権(同法
91条1項)を有する。
b被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件
ライセンス契約2を締結したことにより,交通タイムス社によって
本件ナレーションの録音が含まれる本件番組のDVDが本件各書籍
の付録として製作され,販売されるに至った。
cしたがって,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社
との間で本件ライセンス契約2を締結した行為は,原告Xの本件ナ
レーションについての実演家としての録音権を侵害するものであ
り,被告は,故意又は過失により当該侵害行為を行ったものである
から,民法709条に基づき,原告Xに対し,原告Xが被った損害
を賠償する義務がある。
d被告の上記録音権侵害の結果,本件ナレーションの録音が含まれ
る本件番組のDVDが製作,販売されたことにより,原告Xは,同
業種間のバッティングを理由に主要自動車メーカーのCMや車関係
の番組に起用される機会を失った。これによって,原告Xは営業上
の得べかりし利益を失ったものであり,その額は315万円に及
ぶ。
(ウ)小括
よって,原告Xは,被告に対し,本件番組出演契約に基づく追加の
出演料として315万円及び本件ナレーションについての実演家とし
ての録音権侵害による損害賠償として315万円の合計630万円並
びにこれに対する平成18年11月1日から支払済みまで商事法定利
率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
イ原告Xの請求原因に対する被告の認否及び反論
(ア)追加の出演料請求について
aア(ア)aの事実はいずれも不知。
bア(ア)bの事実のうち,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通
タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したこと,交通タ
イムス社によって本件番組のDVDが本件各書籍の付録として製作
され,販売されたことは認め,その余は争う。
cア(ア)cの主張は争う。
原告Xと被告との間には,何らの契約関係もないから,被告が原
告Xに対し,本件番組出演契約に基づく追加の出演料の支払義務を
負う理由はない。
(イ)実演家としての録音権侵害による損害賠償請求について
aア(イ)aの事実はいずれも認める。
bア(イ)bの事実のうち,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通
タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したこと,交通タ
イムス社によって本件ナレーションの録音が含まれる本件番組のD
VDが本件各書籍の付録として製作され,販売されたことは認め,
その余は争う。
cア(イ)cの主張は争う。
本件ナレーションは,原告Xの許諾を得て,映画の著作物たる本
件番組の放送のための原盤に録音されたものである。したがって,
著作権法91条2項により,本件ナレーションの録音が含まれる本
件番組のDVDを製作することが原告Xの本件ナレーションについ
ての録音権を侵害することにはならない。
また,被告が交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締
結したのは,本件ライセンス契約1によってJICから設定された
本件番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する
権利に基づいて,交通タイムス社が本件番組のDVDを製作し,本
件各書籍に付録として添付して販売することを許諾したものにすぎ
ず,これによって,原告Xの本件ナレーションについての録音権が
何ら侵害されるものではない。
dア(イ)dの事実は否認する。
第3当裁判所の判断
1原告会社の請求について
(1)原告会社の主張によれば,原告会社の本訴請求は,本件番組制作請負契
約に基づく請負代金の一部を請求するものと解されるところ,このような
請負契約に基づく請負代金の支払義務を負うのは当該契約を締結した当事
者たる発注者であって,それ以外の者が請負代金の支払義務を負うのは,
その者が発注者の債務を引き受けるなど,債務負担の原因となり得る特段
の事実がある場合に限られるものといえる。
しかるところ,原告会社は,本件番組制作請負契約について,ソニアと
原告会社との間において,ソニアを発注者,原告会社を請負人として締結
されたものと主張する一方で,本件番組制作請負契約の当事者ではない被
告が原告会社に対し同契約に基づく請負代金の支払義務を負うべき原因と
なり得る事実を何ら主張していない。原告会社は,交通タイムス社による
本件番組のDVDの製作,販売によって,原告会社の本件番組制作請負契
約に基づく追加の請負代金請求権が発生したこと,他方,交通タイムス社
によって本件番組のDVDが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告
会社の承諾を得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2
を締結したことによるものであることから,原告会社は上記追加の請負代
金を被告に対して請求することができる旨主張するが,原告会社が主張す
る上記各事実によっても,被告が原告会社に対し本件番組制作請負契約に
基づく追加の請負代金の支払義務を負うべきことが何ら根拠付けられるこ
とにはならない。
したがって,原告会社の本訴請求に係る上記主張は,その主張自体にお
いて失当であることが明らかである。
(2)以上によれば,原告会社の本訴請求は理由がない。
2原告Xの請求について
(1)追加の出演料請求について
原告Xの主張によれば,原告Xの本訴請求は,本件番組出演契約に基づ
く出演料の一部を請求するものと解されるところ,このような番組出演契
約に基づく出演料の支払義務を負うのは当該契約を締結した当事者たる出
演依頼者であって,それ以外の者が出演料の支払義務を負うのは,その者
が出演依頼者の債務を引き受けるなど,債務負担の原因となり得る特段の
事実がある場合に限られるものといえる。
しかるところ,原告Xは,本件番組出演契約について,ソニアと原告X
との間において締結されたものと主張する一方で,本件番組出演契約の当
事者ではない被告が原告Xに対し同契約に基づく出演料の支払義務を負う
べき原因となり得る事実を何ら主張していない。原告Xは,交通タイムス
社による本件番組のDVDの製作,販売によって,原告Xの本件番組出演
契約に基づく追加の出演料請求権が発生したこと,他方,本件番組のDV
Dが製作,販売されるに至ったのは,被告が原告Xの承諾を得ることなく
交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結したことによるもの
であることから,原告Xは上記追加の出演料を被告に対して請求すること
ができる旨主張するが,原告Xが主張する上記各事実によっても,被告が
原告Xに対し本件番組出演契約に基づく追加の出演料の支払義務を負うべ
きことが何ら根拠付けられることにはならない。
したがって,原告Xの追加の出演料請求に係る上記主張は,その主張自
体において失当であることが明らかである。
(2)実演家の録音権の侵害による損害賠償請求について
原告Xは,被告が原告Xの承諾を得ることなく交通タイムス社との間で
本件ライセンス契約2を締結したことにより,交通タイムス社によって本
件ナレーションの録音が含まれる本件番組のDVDが本件各書籍の付録と
して製作され,販売されるに至ったのであるから,被告が原告Xの承諾を
得ることなく交通タイムス社との間で本件ライセンス契約2を締結した行
為は,原告Xの本件ナレーションについての実演家としての録音権を侵害
する旨主張する。
しかし,仮に原告Xが本件ナレーションについて実演家としての録音権
を有するとしても,本件ナレーションの録音行為は交通タイムス社による
本件番組のDVDの製作によって行われたものであり,被告が交通タイム
ス社との間で本件ライセンス契約2を締結した行為それ自体は本件ナレー
ションを録音する行為に当たるということはできない。
また,前記第2の1の事実と証拠(甲1,乙1,被告代表者本人)及び
弁論の全趣旨を総合すれば,①被告と交通タイムス社間の本件ライセンス
契約2は,JICから本件ライセンス契約1に基づいてJICの著作物で
ある本件番組をDVD等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する権
利(サブライセンス権)の設定(許諾)を受けた被告が,交通タイムス社
に対し,本件番組のDVDを製作し,交通タイムス社が発売する書籍に付
録として添付して販売することを許諾する内容の契約であり,JICが保
有する本件番組の著作権以外の他の権利を対象とするものではないこと,
②被告は,本件ライセンス契約2に基づいて,交通タイムス社から,交通
タイムス社が発売する書籍の出版部数に応じて本件番組の著作権使用料(
最低保証料を含む。)を取得することができるが,交通タイムス社が行う
本件番組のDVD(その複製物を含む。)の製作及び販売には,被告が直
接関与することはなく,上記書籍の出版部数,ひいては,本件番組のDV
Dの複製物の製作数量をいくらとするのかなどについても交通タイムス社
の独自の判断で行うものとされていたことが認められる。
上記認定事実に照らすならば,本件番組のDVD(その複製物を含
む。)の製作及び販売の主体は,あくまで交通タイムス社であって,被告
が交通タイムス社を通じてあるいは交通タイムス社と共同して本件番組の
DVDの製作及び販売を行ったものということはできない。
したがって,原告Xの上記主張は,採用することができない。
(なお,本件ライセンス契約2の契約書(甲1)の2条には,「AはBに
対し,本契約を締結する有効且つ正当な権利及び権限を保有すること,本
番組に関し第三者から一切の異議,請求がないこと,及び万一第三者から
何らかの異議,請求等があった場合はAの責任においてこれを処理し,B
に一切の迷惑を及ぼさないことを保証する。」(「A」は被告,「B」は
交通タイムス社)との規定があるが,上記規定は,被告が,交通タイムス
社に対し,本件番組の著作権者であるJICとの関係で,本件ライセンス
契約2を締結する有効かつ正当な権利及び権限を保有することを保証する
趣旨の条項であって,上記規定から被告が交通タイムス社に対し本件番組
に係る著作隣接権の権利処理が行われていることを保証したものとまで認
めることはできないし,上記契約書を全体としてみても,そのような保証
をしたことをうかがわせる条項は他に存しない。したがって,本件ライセ
ンス契約2の解釈としては,本件番組のDVD化に係る利用行為を行う主
体である交通タイムス社が,その責任において,本件番組の利用のために
必要とされる著作隣接権者の許諾を得るべきものと解される。また,仮に
被告と交通タイムス社との間において本件番組の利用のために必要とされ
る著作隣接権者の許諾があることについて被告が保証するとの合意があっ
たと解釈する余地があるとしても,その合意の効力は,本件ライセンス契
約2の契約当事者である被告と交通タイムス社間の法律関係を規律するに
すぎず,原告Xに及ぶものではない。)
(3)小括
以上によれば,原告Xの本訴請求はいずれも理由がない。
3原告らが本件口頭弁論終結後に提出した準備書面について
(1)本件審理の経過(本件では,原告らが本件口頭弁論終結後に訴訟代理人
弁護士を選任した経過がある。)にかんがみ,原告らが本件口頭弁論終結
後に提出した平成22年6月30日付け原告第2準備書面記載の主張につ
いて,念のため検討する。
アまず,上記原告第2準備書面中には,被告は,原告Xの許諾を受ける
ことなく交通タイムス社を通じて本件番組のDVDを製作,販売し,こ
れによって,原告Xの本件ナレーションについての実演家としての録音
権を侵害し,あるいは,原告Xの人格権を侵害している旨の記載があ
る。
しかしながら,前記2(2)のとおり,本件番組のDVDを製作,販売し
た主体はあくまでも交通タイムス社であり,他方,被告は,JICが本
件番組について保有するものとされる著作権に基づいて本件番組をDV
D等の表現媒体に二次利用することを他に許諾する権利をJICから設
定された上で,当該許諾権に基づいて,交通タイムス社に対し,本件番
組のDVDを製作し,本件各書籍に付録として添付して販売することを
許諾したものにすぎないのであって,被告自身が主体となって,交通タ
イムス社を通じて本件番組のDVDの製作,販売を行ったなどと評価し
得る事情は認められない。
したがって,原告Xの上記原告第2準備書面中における主張は,その
前提を欠くものであって,理由のないことが明らかである。
イ次に,上記原告第2準備書面中には,被告は,原告会社に対し,ディ
ハウスボス,ソニア及びJICとともに共同不法行為責任を負う旨の記
載がある。
しかしながら,上記原告第2準備書面の記載をみても,ディハウスボ
ス,ソニア,JIC及び被告のいかなる行為が,原告会社のいかなる権
利又は法律上保護される利益を侵害するのかが明らかではないから,原
告会社の同準備書面中における主張は失当というほかない。
(2)以上のとおり,平成22年6月30日付け原告第2準備書面記載の主張
は,前記1及び2の認定判断を左右するものではない。
4結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの本訴各請求は
理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官大鷹一郎
裁判官大西勝滋
裁判官石神有吾
(別紙書籍目録)
1題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.1
サーキットの狼LegendLOTUS
発行日平成19年3月1日
2題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.2
サーキットの狼LegendLAMBORGHINI
発行日平成19年3月1日
3題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.3
サーキットの狼LegendNISSANFAIRLADYZ
発行日平成19年4月1日
4題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.4
サーキットの狼LegendLANCIA
発行日平成19年5月1日
5題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.5
サーキットの狼LegendPORSCHE
発行日平成19年5月1日
6題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.6
サーキットの狼LegendFERRARI
発行日平成19年6月1日
7題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.7
サーキットの狼LegendDETOMASO
発行日平成19年6月1日
8題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.8
サーキットの狼LegendMAZDA
発行日平成19年7月1日
9題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.9
サーキットの狼LegendLAMBORGHINI
発行日平成19年7月1日
10題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.10
サーキットの狼LegendFERRARI
発行日平成19年8月1日
11題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.11
サーキットの狼LegendTOYOTA2000GT
発行日平成19年8月1日
12題名CARTOPMOOKSupercarCollectionVol.12
サーキットの狼LegendBMW
発行日平成19年9月1日

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◎事務所事件の共同受任可

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
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履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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